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カテゴリー: 生物

生物はなぜ死ぬのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小林 武彦 、 出版 講談社現代新書
タイトルの問いかけに対する答えは簡単です。だって、一つの個体がいつまでも長生きしていたら、次世代が活躍できないからです。
それは、政治の世界でも同じこと。80歳を過ぎてもなお国会議員の椅子にしがみついていたらいけないのです。潔く後進に席を譲るべきでしょう。その意味で、今回の選挙で自民党の長老たちが福岡や熊本で落選したのは良いことでした。でも、福岡にはまだアッソーという、とんでもない長老が居すわっていますね…、残念です。
これまで、地球では5回もの大量絶滅を迎えている。それは、大規模な火山の噴火とか隕石の衝突によるとみられている。しかし、現在、再び大絶滅が進行中。それは火山の噴火などではなくて人類の活動が原因。本当に子や孫、次の世代の人たちに申し訳ないことです。グレタさんの呼びかけに私たちはもっと真剣に耳を傾けるべきだと思います。
ヒトのご先祖は、今も生息するツパイのようなネズミに似た、小さな夜行性の哺乳類。恐竜が絶滅したおかげで、食料と生きる空間を拡大し、現在につながっている。
地球上にいる生物種は、名前のついているものだけで180万種。その半分以上の97万種は昆虫。昆虫は、もっとも進化して複雑化した生物。カブトムシなどの昆虫は大きくなれるのは幼虫のときだけ。つまり、幼虫の仕事は、食って大きくなること。
ハツカネズミは、野生だと寿命は1年以内。中型(体長20センチ)のハリネズミは10年、大型(体長1メートル)は20年。体長が大きくなると、寿命ものびる。
ところが、アフリカの乾燥した地域にアリの巣のような穴を掘りめぐらして、その中で一生を過ごすハダカデバネズミは、寿命が30年。これは、天敵が少ないこと、低酸素の生活環境で暮らしていること、低体温、食べる量も少ないことなどによる。このハダカデバネズミは、真社会性の生きもの。1匹の女王を中心とした分業制の社会システム。面白いのは「フトン係」といって、子どものネズミを温め、体温の低下を防ぐだけのネズミがいる。分業により仕事が効率化し、1匹あたりの労働量は減少する。このストレスの軽減が、寿命の延長に役立った。
ハダカデバネズミは何が原因で死ぬのか分かっていない。死ぬ直前までピンピンしている。老年で元気のない個体はいない。ええっ、本当でしょうか…?
ニホンザルの寿命は20年、ゴリラやチンパンジー、オランウータンは40年。そして、ゾウの寿命は80年。成獣になるまで20年もかかる。
日本人のうち100歳以上の人が8万人超。ところが、115歳をこえた日本人は、11人。全世界でも50人はいない。ヒトの最大寿命は115歳なのか…。
生物の生と死を考えさせてくれる新書です。
(2021年4月刊。税込990円)

ダニが刺したら穴2つは本当か?

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 島野 智之 、 出版 風濤社
ダニについて書かれた本です。本のオビには世にも美しいダニの電子顕微鏡写真を多数掲載とあり、実際、その見事にグロテスクかつ美しいダニの姿がとらえられています。
私は自然豊かな田園地帯に住んでいますので、夜になると窓にヤモリが張りついていますし、すぐ近くをタヌキが夜だけでなく、昼間、堂々(悠々)と闊歩している姿を見ることができます。そして楽しみの庭仕事をすると、腰が痛くなるばかりでなく、腕やら脚を何かにかまれて発赤し、痒(かゆ)みを覚えてしまいます。大自然の近くで生活すると、そんな苦労がつきまとうことになります。それはさておき、ダニの話に戻ります。
ダニは世界に5万種、日本には2000種いる。血を吸うマダニのようなダニは日本には20種類ほどしかいない。多くのダニは人間には被害を与えることなく、人間とは関係のない自然の中で暮らしている。人間の血を吸うダニ種は、世界中にいるダニの1~2%でしかない。
たとえば、アナタカラダニは花粉食であって、人間の血は吸わない。そもそも、その口器は人間をかめるような構造になっていない。また、このカベアナタカラダニにはオスがおらず、メスがメスを産む単為生殖。
ダニは、熱帯はもちろん、南極大陸から北極圏まで、地球上のあらゆる場所に生殖している。高山から海岸そして7000メートルの深海底にまで生活している。
ハモリダニは、60度の熱にも耐えられる。
身体の大きさを抜きにして、ササラダニは、かの凶暴で名高いティラノサウルスの6倍から10倍ほどアゴの力がくわえているとのこと。
島には、たくさんのダニがまとわりついている。ダニは風で吹きとばされる。
マダニは、光、酪酸、体温という3つの感覚がまだ残っている、
毎日毎日、ダニたちを研究対象にしている学者って、本当に大変ですよね。本のタイトルの疑問の答えは、本当ではないということのようです。
(2021年6月刊。税込1980円)

家は生態系

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ロブ・ダン 、 出版 白揚社
人間のすむ家から、20万種の生物が見つかっている。いやはや、すごい数です。その4分の3は、ホコリ、人体、水、食品、および腸内で見つかった細菌。4分の1は真菌。残りは節足動物、植物、その他。
人間が家の中を歩きまわると、どんな人でも1日に5000万個の皮膚断片(鱗屑、りんせつ)が身体からはがれ落ちている。そして、空中を漂う鱗屑一つひとつに数千個の細菌がすんでいて、それを食べている。
どんな人の手も、実は手だけでなく、鼻、へそ、肺、腸および体表面のすべてが、微生物叢(そう)で覆われている。
手を洗って除去されるのは、手にくっついたばかりでまだ定着していない微生物だけ。
チャバネゴキブリは、屋内の人間が暮らしている場所に限って、頑強で多産。そして、人間が好むような食物を好む。人間と同じく、一匹で孤立して暮らすのは苦手だ。
病原体の媒介という点では、イエバエはチャバネゴキブリをはるかに上回っている。下痢を起こす病原体を運んだりして、年間50万人をこえる死亡に関与している。
この本は、ゴキブリ駆除剤がきかなくなった理由を突きとめるべく、ゴキブリの口器にある味覚感覚毛の一本一本に電極を接続して感覚ニューロンの応答を調べるという実験を3年以上にわたって2000匹のゴキブリについて繰り返した日本人研究者も紹介しています。勝又(和田)綾子という女性です。すごい、ですね…。こんな地道な実験をする学者のおかげで毎日の安全・快適な生活が保持されているのですよね。感謝、感謝です。
(2021年6月刊。税込2970円)

隣のボノボ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 坂巻 哲也 、 出版 京都大学学術出版会
ボノボは、アフリカ中央部のコンゴ民主共和国の森林にすむ。体長80センチほどで、体重は35キロ以下。コンゴ盆地に生息し、ゴリラやチンパンジーとはすみ分けている。
肌は黒い。ボノボの声は鳥のように甲高く、ピャーピャーと叫びあう。
地面を歩くときは、手の平を地につけず、指の背を地面につけるナックルウォークをする。
樹上では、手と足の両方で枝を握る。ヒトにはまねができない。
ボノボはメスを中心として1年を通して集まりがよい。強さを示すデイスプレイを若いオスがよくするが、そんなオスにもメスはまったく動じない。あまりにうるさいオスがいると、子持ちのメスたちが束になってオスを追い払ってしまう。母親は大人になった息子のサポートを欠かさない。
ボノボのすむ森には、村人たちもふつうに生活している。両者は平和的に共存している。
著者は2007年からコンゴでボノボの調査を始めた。その前は、タンザニアでチンパンジーの調査をしていた(1997年から)。
ボノボの調査のためには、そばにいることに慣れてもらう必要がある。その存在を無視してくれるほど、気にしなってもらうこと。いやあ、そのためには、時間がかかることでしょうね…。
著者はボノボの調査のため、朝3時に起き、4時ころ朝食をとって、弁当をつくって暗いうちに出かける。ボノボの寝ているところに朝6時前には着く。いやはや、まだ森の中は暗いんでしょう…。大変ですね。
ボノボは、顔に毛が生えていないので、表情の動きがわかりやすい。それでもヒトほどには、表情をコミュニケーションには使わない。
ボノボの脳みそはヒトの3分の1の大きさ。
ボノボを個体識別する。性と成長段階を確認し、メスなら幼子を確認する。そして、身体的特徴を見つける。
年配のメスがおいしいそうな果実をかかえ、その周りでコドモがおねだりする。オトナがおねだりすることもある。じっとのぞき込むようにして、すぐ近くに立つのは、物をねだるときのしぐさ。気づいていなかのように目をあわせないのは、簡単に分けてやりたくないときのしぐさ。
ボノボのメスどうしは、日に何回か「ホカホカ」をする。これから採食をはじめようとする前。メスどうしが正面から抱きあい、お互いの性皮をこすりあわせる。気持ちよさそうにしている。
ボノボのメスは、生まれた集団で一生を過ごし、メスは思春期を迎えて、お年ごろになると、生まれた集団を出て、よその集団へ移る。子育てすると、その後は集団を移ることなく、年齢を重ねていく。出産間隔は4年から5年ほど。
ボノボにとって、交尾には繁殖のためとは限らない役割がある。
ボノボの集団の出会いは平和的なもので、この出会いがないとメスは移籍しない。メスは、その後、数年にわたって所属集団が安定せず、いくつかの集団を渡り歩く。
ボノボは好奇心が旺盛で、人間を観察しにやって来る。
メスたちは、出自集団を異にするにもかかわらず、よく一緒にして、毛づくろいをして、見るからに仲がよい。
オスは、オトナになっても母親との結びつきが強く、多くの個体が分散するときも、母親と一緒にいることがほとんどだ。
ボノボには子殺しはない。これはチンパンジーとは異なる。
ボノボは、現在、2万頭以下でしかなく、近い将来、絶滅するとみられている。密猟と生息地の減少、そして病気の感染だ。
いやあ、森の中での観察って、本当に大変でしょうね。その苦労をしのびつつ、ボノボの生態、その平和的な生き方に学びたいものだと思いながら読了しました。とても、興味深い本です。
(2021年8月刊。税込2420円)

昆虫学者の目のツケドコロ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 井出 竜也 、 出版 ベレ出版
昆虫学者って、昆虫との一期一会(いちごいちえ)の出会いを大切にしている人のこと。
ふーん、そうなんですね…。
空をヒラヒラと舞うように飛ぶチョウは幼虫のころはイモムシ。それが5回も脱皮して、さなぎとなったあと、空に飛び出すのですから、本当に不思議です。
完全変態のチョウは、イモムシ時代と生活スタイルがまるで違っている。口の形まで変化している。イモムシの口は鋭い歯のある一対のあごがついている。葉っぱを上手にかじりとるため。このイモムシは、どんな植物の上にでもいるというのではない。ナミアゲハのメスは、生まれてくる子ども(イモムシ)が困らないように、卵を産みつけるミカンの木を探し出している。
では、どうやって探すのか。眼なのか、鼻なのか…。ナミアゲハは色を見分けられる。しかし、決め手は舌。味が決め手だ。
植物を食べる昆虫の多くは、単色性や狭食性。植物なら何でも、どんなものでも…というのではない。そして、食べる植物の部位まで限定されている。
100万種いる昆虫の半数以上は、植物を食べている。なので、昆虫を知るためには、まず植物を知る必要がある。
ナナホシテントウやナミテントウは肉食性。カイガラムシなどの害虫を食べるので、畑づくりの頼れる味方だ。うどん粉病をひきおこすカビを食べるキイロテントウもいる。
アリは世界に1万種以上、日本には280種以上が生息している。アリはハチの仲間で、シロアリはゴキブリに近い。アリは基本的に肉食性。アリ植物というのは、自分の体内にアリが居住できる空間を用意し、アリを住まわせている。
ハチは15万種ほどもいて、その半数以上は寄生バチ。多くの寄生者にとって、寄生相手を見つけだす重要な手がかりとなるのは香りだ。
ノミは、れっきとした昆虫。ノミの足は6本、ダニは足が8本(ただし、幼虫は6本)。世界には1800種のノミがいる。シラミも昆虫だ。
日本のホタルでも、西日本と東日本では光る間隔が違っているし、遺伝子レベルでも違いが分かる。同じゲンジボタルであっても、性質が異なるし、外来昆虫を持ち込んだのと同じ。いろいろ混ぜこぜしてはいけないということなんですね。
昆虫の写真がたくさんあって、昔の昆虫少年にとって、とても楽しい本でした。
(2020年5月刊。税込2090円)

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