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カテゴリー: 司法

おりとライオン

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 楾 大樹、 今井 ジョージ 、 出版  かもがわ出版
けんぽう絵本です。先日、久留米で楾(はんどう)弁護士の憲法講座に参加しました。そのとき買ったのが、この「けんぽう絵本」です。
子どもから憲法の役割がわかる絵本、できました。そうです。憲法の入門書『檻の中のライオン』が絵本になったのです。
楾弁護士の話は途中10分休憩があるものの、なんと2時間以上ぶっとおしです。ところが、スライドを使いながら、小さなぬいぐるみ人形をつかいながらで、あっという間にすぎてしまいます。
私の前に小学5年生の男の子がすわっていました。福岡の女性弁護士の息子です。あとで憲法のことがとてもよく分かったと感想を言っていたそうです。
私も、まったく同感です。憲法は国の理想を定めたものだと安倍首相は常にもっともらしく言います。教科書にも、社会のルールを定めたものとしか書かれていないとのこと。
憲法って、そんなものじゃありません。悪いことするか分からない安倍首相のような不届き者をきつくしばるためにこそ憲法があるのです。
口から出まかせのことを国会の場で堂々と開き直っている安倍首相ですが、その言動は、まさしく憲法をふみにじるものです。この点は、国民の側に「不断の努力」が欠けている(弱い)のだと私は思います。
どうぶつたちは、どうにかこうにかライオンをおさえつけました。そして、きまりとおりをつくっておりにライオンをいれました。きまりには、ライオンがしなければならないことと、ライオンがしてはいけないことをかきました。このたいせつなきまりとおりがけんぽうです。
けんぽうは、わたしたちのしあわせやじゆうをライオンからまもってくれる、とてもたいせつなきまりなのですね。
小学生の子どもたちに、ぜひ読ませたい絵本です。
(2019年8月刊。1400円+税)

一粒の麦、死して

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 田中 伸尚 、 出版  岩波書店
『史談裁判』の著者として有名な森長英三郎弁護士の「大逆事件」との関わりに焦点をあてた本です。不思議なことに、森長弁護士は先輩弁護士の小伝をたくさん書いていながら、自分については「伝記拒否」を遺書に書いていたというのです。信じられません・・・。
「大逆事件」の仮出獄者には公民権がないだけでなく、釈放してからも常に警察に見張られ、その居場所を明らかにしなければいけなかった。
「大逆事件」では、死刑者12人。死刑判決のあと無期に減刑された12人のうちの8人は獄中で病死、自殺で死亡した。つまり20人が命を失った。戦後1947年の時点では、4人だけ生き残っていた。
「大逆事件」で起訴された26人の被告人の弁護をした弁護士には、国選(官選)、私選もあるが、磯部四郎、花井卓蔵、今村力三郎、鵜沢総明。いったん引き受けながら辞退したのは江木衷(まこと)弁護士。
検察側は検事総長の松室致(いたる)や、司法省民刑局長の平沼騏一郎(きいちろう)。
「大逆事件」の被告人となった26人の被害者を記憶する記念碑が全国に12基ある。東京監獄、市ヶ谷刑務所は、今の新宿区余丁町88番地にあった。ここで「大逆事件」の死刑が執行された。
1964年7月15日、死刑者慰霊塔がたてられた。
石川啄木は、「大逆事件」のころ東京朝日新聞社の校閲記者だった。啄木は、平出修弁護人や社内で得た情報から、かなり正確に「大逆事件」の真相をつかんでいた。
「それは、単に話しあっただけ、意思の発動だけにとどまっていて、まだ予備行為にも入っていなかった・・・」
森長英三郎が弁護士になったのは、弁護士の大量増員による弁護士窮乏化が喧伝(けんでん)されていたころだった。弁護士が1912年ころの2000人が3倍以上の7000人になっていた。昭和恐慌による弁護士の窮乏化が始まっていた。加えて、戦時体制が強化されるなかで、弁護士会も全体として戦争に協力する方向になっていた。
したがって、弁護士全体がときの政府や非常時に迎合していた。治安維持法は悪法であり、被告人の行為は正当だとまでは言えなくても、もっと穀然とした態度で弁論できる方法があったのではないか・・・。
「大逆事件」で刑死した一人の和歌山の医師・大石城之助はアメリカに留学して、アメリカで医師免許をとっている。そして、この大石は医師業のかたわら情歌作者としても活動していた。大石は、1899年1月に日本を出てシンガポールに滞在した。さらにインドで伝染病を研究し、社会主義も学んで1901年1月に日本へ帰国した。
「團珍」が1901年10月に情歌大懸賞として情歌を募集したところ、全国から3万6000首もの広募があった。
大石が茶飲み話として語ったアメリカ視察の話が天皇暗殺の謀議とされたのだ。
1911年、与謝野鉄幹がつくった詩の一部は次のようになっている。
「ほんにまあ、皆さんいい気味な
その城之助は死にました
城之助と城之助の一味が死んだので、
忠良な日本人は之から気楽に寝られます。
おめでとう」
「大逆事件」の関係者・遺族をずっとずっと掘り起こす旅を続けていたというから、たいしたものです。驚嘆しました。
(2019年12月刊。2700円+税)
 日曜日の午後、久しぶりに庭に出ました。
 チューリップ畑が雑草だらけでしたので、一生けん命引き抜きました。チューリップの芽があちこち隠れていました。今年は温かくて紅梅も白梅も咲いています。鮮やかな黄色の黄水仙そして淡い黄色のロウバイも咲き誇っています。
 ヒヨドリが群れを出して飛びまわっています。今年の冬はなぜかジョウビタキの姿をあまり見かけません。
 ジャガイモを植える準備としてウネづくりもしました。朝からノドが痛くて、風邪の前ぶれかもしれません。コロナウイルスにやられないよう免疫力をつけるつもりです。

検察調書があかす警察の犯罪

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 警察見張番 、 出版  明石書店
県警本部警備部外事課の警部補が不倫相手の女性とともに覚せい剤を常用していて、シャブボケの幻覚によって警察官に発覚したのに、現行犯逮捕されることもなく、部下から知らされた県警本部長の指示によって事件がもみ消されようとしたという恐るべき事件の顛末が検面調書(検察官面前調書)によって明らかにされています。
事件が起きたのは今から20年前の1999年(平成11年)10月末のこと。神奈川県警を舞台としています。ことが発覚したあと、渡辺泉郎本部長ほか4人は起訴され、全員有罪(ただし、みな執行猶予)です。県警本部長のほかは、生活安全部(生安部)の部長、警務部の部長、その下の監察官室の室長と監察官の合計5人が起訴されたのでした。監察官という、本来、警察内部の不正をただすべき立場の人間までも、このような犯罪に加担していたわけですので、警察内部の体質を如実に示しているものとしか言いようがありません。
県警本部の庁舎に問題の警部補たちは深夜0時ころ押しかけてきて、意味不明な言動をしたことから、注射痕を見て覚せい剤使用を自認したというのです。それだったら、すぐに現行犯逮捕すべきところ、二人とも逮捕されず、女性は自宅に帰され、警部補のほうは県警本部内にとめおかれ、あとでホテルに連れ出されて覚せい剤が尿から検出されなくなるまで缶詰め状態(軟禁)にされました。
懲戒免職処分にしようとすると、解雇予告除外認定を申請する必要があり、そのとき覚せい剤使用を理由として明らかにせざるをえない。そこで、県警本部は組織ぐるみで論旨免職(依願退職の一つ)にしようとした。そのため、警部補の自宅マンションをガサ入れするときも、その前に、まずいものが出ないよう県警本部の警察官が先に入って処分することもした。
警部補をホテルに軟禁し、連日、尿検査をした。それは正式鑑定手続ではないので、採尿容器も正規のものは使えず、ネスカフェの空き瓶などを使用した。しかし、なかなか陰性反応に変わらなかった。陰性反応に変わったのは、1週間してからだった。
それまで、警部補にどんどん水を飲ませ、風呂に入って汗をかかせていた。
では、なぜ県警本部長はこのような隠蔽工作に走ったのか・・・。
現職警察官による覚せい剤使用事件が公になったときの警察組織に対するダメージの大きさを心配した、警察の威信が大きく失墜するのを恐れた、という。しかし、本当にそれだけだったのか・・・。渡辺本部長自身の経歴に傷がつき、その後の出世に響くということも大きかったのではないか。また、前任の小林元久・神奈川県警本部長は、警察庁警備局長に栄転していたうえ、内閣情報調査室長への栄転が決まったと新聞報道されていた。そこまで悪影響が及ぶ心配もあった。
要するに、警察の威信保持という名をかりて、実は自己保身を優先させていたというわけです。
また、外事課の高松課長補佐は、「せっかくだから記念撮影しよう」と呼びかけ、みんなで集合写真まで撮っています。まったく悪いことをしているという気がないというのにも驚かされます。
今年正月の恒例の人間ドッグのときに積んだ状態になっていたものを読了した本の一つです。読んでよかったです。今も、警察の体質は残念ながら変わらない、同じとしか思えません。
(2003年6月刊。2800円+税)
 大寒になっても雪がまだふりません。
 庭のあちこちに水仙の花が咲いています。およそは白い花ですが、いくつか黄水仙もあります。
 オーストラリアで火事が多発して、コアラが何万頭(匹?)も死んでいるとのこと。かわいそうです。でも、グレタさんの指摘を無視していると、温暖化のため人間だって地球に住めなくなるかもしれません。「戦争にそなえて軍備増強」より、こちらのほうがよほど差し迫っていると私は思うのですが・・・。

司法書士始末記

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 江藤 价泰 、 出版  日本評論社
弁護士と司法書士の協働は必要不可欠です。手続的にこまかいところは司法書士のほうが優れていますし、大局的観点での手続・解決だと紛争処理に慣れた弁護士のほうが一日の長がある気がします(もちろん、これはあくまで一般論でしかありません)。
この本はベテラン司法書士による事件処理にあたっての失敗談やら教訓が語られていて、大変参考になります。
司法書士制度は、1872年(明治5年)に司法職務定制が定められて以来、150年近い歴史を有している。1919年(大正8年)に司法代書人法が成立し、1935年(昭和10年)に司法書士法が制定され、戦後、何度も改正されて確立した。
司法書士会と弁護士会の違いは、なんといっても自治権が認められているかどうかです。弁護士会には監督官庁がありません。いえ、戦前は裁判所検事局の監督を受けていました。弁護士会の総会は検事正のご臨席の下で開かれていたのです。信じられませんよね・・・。
ところが、司法書士会は今も法務局の監督下にあります。ですから、司法書士会の総会では、法務局長が訓辞を述べ、局長表彰というものがあります。司法書士は日々の活動についても、さらには売上についても法務局に報告することになっていました(今も、でしょうか・・・)。
権力とたたかってでも社会正義と基本的人権を擁護するのが弁護士の責務です。弁護士がお金もうけだけしか考えないようになると、弁護士会の存在はうっとうしいだけです。会費はバカ高いし、何やかやとうるさいことを言って個々の弁護士をしばろうとする、そんな存在の弁護士会なんて必要ないという声が出てくるのは、ある意味で当然です。でも、ひとたび権力からにらまれたとき、それを支えてくれるのが弁護士会です。そのことにぜひ文句を言っている弁護士にも気がついてほしいと私は心から願っています。
この本では、本人確認が十分でなかったことから、危くニセ所有者に騙されそうになった体験談(失敗談)も紹介されています。これは本当に怖いことです。東京都心の一等地がサギ師集団によって売却され、超大手企業が何億円も損をしてしまった事件がありました。
このとき、新米の司法書士を狙い、ともかく事を急がせ、余裕をなくさせようとします。犯人は真の所有者の元同級生で、実印や印鑑証明書までもらっていたのでした。
運転免許証のコピーではなく、ホンモノを自分の目で見て確認するくらいの気構えがプロには求められる。まことに、もっともです。
「縄のび」という言葉があることを、弁護士になってまもなく知りました。法務局に備付けてある図面(本来は公図なのですが、実は不正確な字図=あざずであることがほとんど)と現地で実測した測量図が大きく違うというのは、決して珍しいことではありません。土地の実測面積が法務局の登記簿面積よりも大きいときは「縄延(の)び」と呼ぶ。ある程度の違いは許された誤差であり、「縄延び」は認められることになっています。しかし、逆のケースも、もちろんあるわけで、字図には大きな面積があるけれど、実は現地には何もないということもありうるのです。
ある司法書士は、先輩から「離婚と境界には手を出すな」と言われたそうです。どちらも金銭をめぐる紛争というより、感情的対立という側面が強いので大変なのです。
境界確認(確定)裁判は何年もかかることがしばしばです。それで、はじめにいただく着手金は、弁護士への慰謝料みたいなものですと私は高言し、決して安請負はしないようにしています。
今から20年も前に出た本で、長いあいだ積ん読状態になっていたので、人間ドッグ(一泊)のときに持ち込んで読了しました。改めて大変勉強になりました。
(1998年3月刊。2400円+税)

倒産手続の課題と期待

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 伊藤 眞、園尾 隆司、加々美 博久 、 出版  商事法務
企業倒産の第一人者である多比羅誠弁護士の喜寿を記念した論文集です。
私は最後の第13章にある「多比羅誠弁護士の事件処理」から読みはじめました。
東京の酒類販売業者が倒産したとき、5億円をこえる売掛金債権をなんとか営業を続けながら回収していった例が紹介されています。破産して営業終了となったあとで破産管財人が債権を回収しようとしても、その回収率はとても低くなるのが必至です。そこで、破産宣告を受けても営業継続の許可を裁判所からもらっておき、破産者代表者の長男などに受け皿会社を設立させ、そこへ営業譲渡したのです。受け皿会社に、経営破綻の責任をとらせるべく、「簿価100%」で売掛金と在庫を引きとらせました。結局、最後配当の配当率は6%以上だったというから、たいしたものです。
太陽電池パネルにつくる会社の倒産では、新しいスポンサーをどうやって見つけ、確保するかについて工夫がなされました。新しくスポンサー会社として名乗りをあげた会社に秘密保持契約書をもらって資料を開示します。そして多比羅弁護士は、その会社にまっとうな数字を出すよう強く迫るのです。1億円以上、それを書面にして社長自ら持参することを求めます。そうでなければ保全管理人には取り次げないと断乎たる対応をします。8000万円の回答が出たら、ダメと断り、1億円でもダメ、1億5000万円を求め、ついに1億1500万円で話がまとまります。この譲渡価額は当初申出額の20倍まで引き上げられたのでした。
中小企業の倒産において特定調停を申立したケースもあります。そして、この特定調停が不成立となって、すぐに破産申立しますが、その手続のなかで事業譲渡を成功させました。これって、大変な裏技ですよね・・・。民事再生法の下での事業譲渡より、破産手続のなかでの事業譲渡のほうが、裁判所の許可だけで可能になるというメリットがあることを私は初めて知りました。
医療法人が倒産したときには、スポンサーとなった医療法人の代表者が新しい社員として入社し、再生計画が認可されたら、旧社員は全員退社して経営権を譲渡したというケースの紹介もあります。そして、このときスポンサー契約書は、新しいスポンサーが作成して提出した最終提案書を別紙として添付する形にして、わずか1頁ですませたというのです。これは、契約書の調査・確認の手間を省けて、短期間ですばらしい成果をあげることができたのでした。
多比羅弁護士は、「事業を再生できないか、その可能性が1%でもあれば、途中であきらめずに真剣につきつめよ。破産は、いつでも、誰でも出来る」というのをモットーにしているそうです。なるほど、ですね。すごいですよね、実際にたくさんの成果をあげているのです。
多比羅弁護士は22期ですから、私より4期先輩になります。私は日弁連倒産法制改正問題検討委員会でご一緒しました。多比羅弁護士が委員長で、私は単なるヒラ委員の一人です。ただ、私のほうは個人破産について豊富な実践例をもとにして、発言していました。
多比羅弁護士は企業倒産分野の第一人者として、数多くの立法提言をしてきました。
多比羅弁護士が関与した主な倒産事件の一覧表が末尾にありますが、会社更生事件10件、民事再生事件43件、和議事件11件、強制和議事件2件、会社整理事件5件、破産管財人33件、特別清算事件18件などなど、その量と質に圧倒されてしまいます。
園尾隆司弁護士(元・東京地裁破産部)は、倒産法における即時抗告と執行停止効を論じています。要するに、韓国を除いて、即時抗告があれば一律に執行停止を認めるのを原則としているのは、世界中で日本だけということを明らかにしています。このとき、台湾の倒産法やドイツ倒産法の改正についても、きちんとフォローしているところは、さすがです。
福岡の黒木和彰弁護士(日弁連消費者問題委員長)は、特定適格消費者団体による破産手続申立の可能性を探る論稿をよせています。
さすがに幅が広いと驚嘆したのは、伊藤眞・東大名誉教授がビットコインと倒産法制の関連で論じていたり、宇宙ビジネス事業者が倒産したときにどうなるのか、という論稿まであるのです。
さらに、アメリカで大規模法律事務所の破綻が相次いでいるとのこと、そのとき弁護士が移籍することになるわけですが、さて報酬請求権はどうなるのか、という問題です。
堂々720頁をこす大作です(定価も1万円)。クレサラ問題の冊子(1000円)を送ったら、そのお返しのようにして贈呈していただきました。どうぞ、これからもお元気に大活躍していただきますよう祈念します。ありがとうございました。
(2020年1月刊。1万円+税)

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