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カテゴリー: 人間

わが盲想

カテゴリー:人間

                                (霧山昴)
著者  モハメド・オマル・アブティン 、 出版  ポプラ文庫
 アフリカはスーダンから19歳のときに日本へやって来た盲目の青年の哀しくも面白い奮闘記です。
 私の娘も、突然、弱視になって盲学校に在学中ですので、目が見えないことの不便さをしのびながら読みました。
 それにしても、底抜けの楽天性であるので、まるで漫談を読んでいるように気楽に読める本です。じめじめした暗さがのないのが救いです。
 著者は、今37歳。19歳の時に日本に来たので、もう20年近く日本にいるから、もちろん日本語はぺらぺらだ。それも、おやじギャグがうまい。
 本をつくるには、視覚障害者向けに、音声読み上げソフトがついたパソコンを使う。イヤホンをつけてキーボードを打つと、打った文字を機会が読み上げてくれる。漢字変換するにしても、「ごとう」と打って変換キーを押すと、「前後の後」、「藤の花のフジ」と機会が言うので、正しい漢字が読みあげられたときにエンターキーを押す。このように、すべて音声による作業である。
 著者が日本に来たのは1998年1月のこと。東京は雪景色だったから、寒さに震えてしまった。そして初めて食べた日本食はカレーライス。あっという間に三杯をたいらげた。
 スーダンでも、イスラムの世界ではどこでも、自分の裸を他人に見せてはいけない規則がある。だから、公衆浴場は困る。そうなんですか・・・。
 福井県で勉強を初め、こてこての福井弁になじんだようです。
 「スーダンって、どこにあるのですか?」
 「ヨルダンという国があるでしょ。その隣にヒルダンがあって、その真ん中にアサダンとスーダンがあるんです」
 これって生真面目な人が聞いたら、本気にしてしまいますよね。
 著者はスーダンの女性と結婚することが出来ました。その女性が示した条件は二つ。
 お酒を飲んでいませんか?
 お祈りをしていますか?
 スーダンでは、酒飲みは社会的信用は低い。実は、著者は日本に来て、お酒を飲んでいた時期があったのです。でも、お酒はやめていたので、飲んでいないと即答することができたのです。偉い!
 スーダンでは、結婚する前に、新郎と新婦の家族が、それぞれ相手の家族について調べる習慣がある。近所の評判とか、両親の職場での評判を聞いて、家族同士のつきあいができるかどうか判断するのだ。こうして、著者はたった1ヶ月前に電話で知りあった女性と結婚した。スーダンでは、あることだが、日本では口が裂けても話せない。
 スーダンの伝統的結婚儀礼では女性しか出席しない。それぞれ女性が50人ずつ集まった。新婦は新郎に向かって牛乳を口にふくむと、遠慮なく吹っかけた。
 『恋するソマリア』を書いた高野秀行氏が著者の友人とのことで、最後に二人の対談ものっています。
 お寿司が大好きな盲目のスーダン人です。こうやって人間の輪が広がっていくのって、いいですよね・・・。これこそ、まさに積極的な平和主義の実践だと思いました
(2015年2月刊。640円+税)

無人島に生きる七六人

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                               (霧山昴)
著者  須川 邦彦 、 出版  新潮文庫
 明治32年4月から12月まで、太平洋の真只中で、日本人船員16人が遭難したあと無人島にたどり着いて全員が無事に日本に帰り着いたという実話です。
 明治の日本の男たちは、実にたくましいと驚嘆しました。
 私が何より感嘆したのは、16人の男たちが守り通した「四つのきまり」です。
 一つ、島で手にはいるもので、暮らしていく。
 二つ、出来ない相談を言わない。
 三つ、規律正しい生活をする。
 四つ、愉快な生活を心がける。
 無人島に生活するに当たっての誓いです。最後の四つがいいですね、笑いを忘れないようにしたのです。
 そして、勉強もしたというのですから、本当に偉い人たちです。
 船の運用術、航海術の授業。数学と作文の授業もある。習字は、砂の上に木を削った細い棒の筆で書く。石板の代わりにシャベルを使い、石筆にはウニの針を使う。漢字と英会話、英作文もある。
 一日の仕事がすんで、夕方になると総員の運動が始まる。相撲、綱引き、ぼう押し、水泳、島のまわりを駆け足でまわる。それから海のお風呂に入って、そのあと夕食。規則正しく、毎日これを繰り返す。月夜には、夜になってすもうをとる。そのために立派な土俵をつくった。
 夕食後には、唱歌。詩吟も流行した。
 雨の日は、みんなほがらかに、にこにこした。雨水は、飲用水になる。午後から茶話会をし、おやつを食べた。米のおかゆを雨水でつくって食べる。実に美味しい。
 余興の隠し芸を披露して、おなかの皮をよじって大笑いする。ウミガメ(正覚坊)の卵はうまい。そして、海藻を食べているから、肉も美味しい。
 無人島にいるとき、ぽかんと手をあけて、ぶらぶら遊んでいるのが、一番いけないこと。
 16人は、順番に、まわりもちに決めた。見張り、炊事、たきぎ集め、まき割り、魚とり、ウミガメ(正覚坊)の牧場当番、塩づくり、宿舎掃除せいとん、万年灯、雑業・・・。
これらの仕事は、どれも自分たちが生き延びるためには、ぜひやらなければいけない仕事だ。みんな熱心に自分の仕事に励んだ。
 涙の出てくるほど、美しく、たくましい和装「ロビンソン・クルーソー」集団の話です。
 実話なので、感慨深いものがあります。ちょっと疲れ気味だと感じているあなたにご一読をおすすめします。私の生まれる直前、昭和23年6月10日の本が復刊したものです。
(2010年6月刊。430円+税)

腸が寿命を決める

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                               (霧山昴)
著者  澤田 幸男・神矢 丈児 、 出版  集英社新書
 人間が生きていくうえで必要な栄養素と水分を体内に取り込む(吸収する)ことができるのは、腸だけ(胃はビタミンB1、鉄、カルシウムは吸収する)。
 人間が病気になるのを防ぐ、からだの「免疫システム」の80%は、腸が担っている。
 口の中でのそしゃくが不十分だと、口から取り入れた食べ物は半分ほどしか消化されずに体外へ排出されてしまうことになる。そしゃくはきちんとしないと、食べ物にふくまれた栄養素の消化・分解の下準備ができない。
 胃に入った食べ物は、胃壁から分泌される強力な胃酸で殺菌される。
 十二指腸がないと、人間は生きていくことができない。
 大腸は、栄養素を吸収することはできるが、消化できない。
 大腸には、消化のための酸素を出す機能はない。大腸内には、無数の外来細菌がすみついている。人間ひとりにつき、100種類を超え、合計数は100兆個以上になる。
 善玉菌(乳酸菌類)は、人間の身体には存在しない消化酵素をもっている。
 酵素は、小腸で消化できなかった残りの栄養素、とくに食物繊維やオリゴ糖などの糖質類を分解し、大切なエネルギーを作り出してくれる。
 健康な人の場合、便の80%は水分である。食べ物の残りカスは、3分の1ほどで、残る3分の2は、さまざまな現象によってはがれ落ちた腸内細菌だった。
 腸は、もっともっと大切にされるべきだという点は、私もまったく同感です。
(2015年4月刊。740円+税)

驚異の小器官・耳の科学

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                                (霧山昴)
著者  杉浦 彩子 、 出版  講談社ブルーバックス新書
 年齢(とし)をとって、少し耳が遠くなっているようです。聞こえにくくなりました。同世代では補聴器をつけている人もいますが、幸い、まだそこまでではありません。
人間は、時間情報については、視覚よりも聴覚の方が優位な影響をもつ。目でとらえた変化に対して身体が動くよりも、音に反応して体が動く反応の方が早い。
 素早い動きをしなければならないスポーツでは、聴覚が重要な役割を果たしている。
 人間は、まず音を聞いてから、目で確認している。
 聴覚障害の方が視覚障害よりも疎外感が深い。
 胎児は、胎内で母親の心音や話し声を聞いている。
 壊れた鼓膜は、すぐに再生してくる。耳鼻科では聞こえないのを治すため、わざと鼓膜を破ることがある。
 キヌタ骨、ツチ骨、アブシ骨という耳小骨は、生まれたときから成人のサイズとほぼ同じ大きさをもつ例外的な骨。5万個ほどの神経細胞が小児期のあいだに、どんどん死滅して、10代では3万個台に減ってしまう。90代には1万個台になる。
 母国語を聞き取るためには、小児期における神経淘汰が大切だ。これは、神経細胞の数を減らしていくことは、よく聞く言葉のパターンを覚えていくということ。
 1歳までにある程度パターン認識できたかどうかが、その後の言語発達に重大な影響を及ぼす。言語の臨界期は6歳頃。言葉は、まず聞いて、話して、読んで、書いて、という4段階で発達していく。どんな複雑な言語も、まずは聞くところから始まる。繰り返し決まったパターンの発音を聞いていくことで言語を認識するための脳が育っていく。
 音楽と言語では、脳の使い方が異なっている。言語中枢はあるが、音楽の方には中枢はないようだ。
 最後に、耳垢について、著者は何もしないのがよいと強調しています。自然に出てくるのです。まあ気にはなりますけどね・・・。それだけのことなんです。
(2014年10月刊。860円+税)

フラガール物語

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                                 (霧山昴)
著者  清水 一利 、 出版  講談社
 蒼井優の踊りには圧倒されました。映画『フラガール』の話です。大きなスクリーンでみて、また我が家のテレビでみました。
 常盤炭鉱が行き詰まってつくられた常盤ハワイアンセンター。誰だって、半年もてばいいほうだと思っていました。
 女の子がへそ丸出しで踊る。そんな踊りにスケベな男はともかくとして、リピーターがいるはずがない。私だってそう思います。ところが、その限界を突破したのです。そして、ついに日本アカデミー賞をとる映画にまでなったのでした。
 それでは、どうやってフラガールが誕生したのか、どんな苦労があったのか、知りたくなりますよね。この本は、その要求にこたえてくれるものです。
 福島県いわき市のスパリゾートハワイアンで、毎日昼夜2回のステージを彩るダンシングチーム。フラガールを養成するのは常盤音楽舞踏学院。そして、この学院は昭和40年の設立から50周年を迎えた。
 常盤炭鉱では1トンの石炭を掘るたびに40トンもの温泉が湧き出ていた。この温泉を掘るだけで、年に何億円ものお金がかかった。そこで、温泉を利用したレジャー施設を思いついた。すごい逆転の発想です。
1期生はがんばった。普通なら3年かかるものを、3ヶ月でやり切った。本当に、よく耐えた。
昭和41年1月に、常盤ハワイアンセンターが開業した。
 私が大学に入る前の年ですから、まだ、私は高校3年生です。
オープン直後のステージには、連日、大勢の客がつめかけた。
 昭和44年(1969年)に43人もいたダンサーが、どんどん減っていき、昭和51年には30人を割り、昭和55年には20人を下まわってしまい、ついに昭和63年末には12人にまで減ってしまった。史上最少の危機を迎えた。入ってくる子が少ないのに、辞める子が多かった。やっと一人前になったころに、「寿退社」していく。
 学生時代にアルバイトを経験している子は長続きした。ダンサーの給料は一般のOLに比べたら高給だから、これだけの給料は、ほかではもらえないことが分かっているので、頑張ろうと思うからだ。
 ソロダンサーは、いわばダンシングチームの「顔」。一番大事なのは「華」。その子がステージに立つと、周りがパーッと明るくなるような雰囲気をもっていて、群衆で踊っていても、その子だけは浮き上がって見える。そんな子でなければ、ソロはつとまらない。私生活が乱れているような子、きちんとした言葉づかいができないような子は、ソロはできない。
 うむむ、なるほど、ソロになるのは厳しいものなんですね・・・。
 400人のダンサーのうち、ソロになれたのは、わずか63人。踊りの技術だけでなく、日ごろの人間性やチームをまとめるリーダー的な素養までもが選考の対象となる。
 2006年(平成18年)映画『フラガール』が公開され、観客125万人、興行収入150億円という大ヒットを記録した。そして、第30回日本アカデミー賞で最優秀作品賞などを受賞した。
 いやあ、本当にいい映画でした。かつての炭住街がCDで再現されていましたが、本当になつかしい光景でした。
 福岡県内にも、筑豊と筑後には炭住街がありふれていましたが、残念ながら今はまったくありません。もったいないことをしました。
映画『フラガール』の最後に蒼井優の踊るのがタヒチダンス「タネイムア」だ。人の汗しぶきに圧倒されます。もし、この映画をみていないという人がいたら、今すぐDVDを借りるか買うかして、みてみて下さい。今夜は、芸術に浸って、ぐっすり眠れますよ。
(2015年1月刊。2500円+税)

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