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カテゴリー: アメリカ

アメリカと戦争

カテゴリー:アメリカ

 著者 ケネス・Jヘイガン、イアン・Jビッカートン、 大月書店 出版 
 
 日本語版序文に次のように書かれています。
 海外での軍事的冒険主義へのさらなる加担を拒否した日本人の人々の思慮深さは、われわれを非常に勇気づけている。
 ええーっ、これって日本人をほめ過ぎでしょう。正直いって、私はそう思いました。でも、この本の著者は、なんとアメリカ合衆国海軍士官学校名誉教授であり、海軍大学校の教授なのです。決して冗談とか茶化して言っているのではありません。
 戦争は、あなたが望むときに始めることができる。しかし、戦争は、あなたの望みどおりには終わらない。なんと、これは、かの有名なマキャヴェリの言葉なのです。そして、アメリカの始めた戦争が、ベトナムでもイラクでも、まったくこのマキャヴェリの言葉どおりに推移していることが、この本のなかで明らかにされていくのです。大変明快な主張です。
 さらに、アナン国連事務総長(当時)の言葉も紹介されています。
 戦争とは、政治的手腕や想像力の破壊的失敗、すなわち享受すべき平和的政治手段を選択肢から強制的に排除するものにほかならない。
 なーるほど、そうなんですね・・・・。
 アメリカ合衆国についての神話の一つは、平和的な民主主義国家であるアメリカ合衆国が軽率かつ不正に戦争に突入したことは一度もないというもの。しかし、アメリカ人は、国益上、必要であれば、武力行使をいとわないことを示してきた。
 戦争とは、国家の指導者の行う最も重大な決定であるのみならず、まったく先の予測のできない冒険的なものである。戦闘が思いどおりに終結する確実な見込みは存在しない。アメリカ軍は、独立以来、これまで海外で250以上もの軍事行動を起こしてきた。すなわち、一年に一度以上、戦争を遂行してきた。
 18世紀のアメリカ独立戦争のとき、13植民地の構成員250万人のうち、半数近くがイギリス王国に忠誠を示していた。実際に武器をとった推定6万人の王党派と、ほとんどすべての植民地で求められた、革命派の大義に対する忠誠を拒絶した人々は捕えられ、強制収容所に監禁され、厳しく罰され、追放されたあげく、土地や財産をすべて没収された。かれらは、戦争が終わったとき、イギリス領カナダへ逃げ去った。
 19世紀の南北戦争は、戦争を率いた指導者の見通しをはるかに凌駕して、まったく意図していなかった結果を生み出した。南北戦争における戦死者数は、おそらくアメリカ合衆国が遂行したあらゆる戦争の戦死者を合計した統数を超越している。1860年のアメリカ総人口の2%、60万人が戦死した。
 南北戦争はイデオロギー戦争でもあった。両軍の志願兵は、自分たちは自由のために戦っていると信じていた。この信念こそが、戦争を残虐なものし、勝利を達成するまで戦争終結を遅らせることになった。戦争の長期化には、予期されたことでも、意図されたことでも、まったくなかった。当初は誰も、この戦争から徹底的な総力戦と化し、これほどまでに長期化するとは考えていなかった。
 南北戦争は、アメリカ合衆国が軍事的に無限の潜在力をもつ国家であるという信念を増長させ、美化することになった。大統領として、また軍の最高司令官として、リンカーンはかつてないほど直接的に戦争遂行上の役割を一個人として担うことになった。
 第一次世界大戦において、アメリカ軍の参戦にはわずか19ヶ月間にすぎなかったが、死者11万6000人、負傷者23万4000人をふくむ総計36万人という犠牲者を出した。
 アメリカ合衆国にとって、第一次世界大戦の結果は、国内においても全面的に期待はずれのものだった。
 第二次世界大戦の圧倒的ないとせざる結果とは、この戦争が平和とはいえない一つの平和を生み出したことである。戦争は終結せず、ただ戦闘が終了しただけだった。
 第二次世界大戦から出現したのが、米ソ両国が代理国家に戦争と死を肩代わりさせて世界中でおこなった数え切れない局地戦を生み出す、核軍拡大競争によって膠着した45年間にわたる冷戦だった。原爆を投下した目的の一つがソ連を抑止するための威嚇だったなら、それは惨めにも失敗したのだ。
 冷戦は、武装した大規模な戦闘という意味での戦争ではなかった。冷戦とは、幻想の戦争であり、真実をあいまいにするような常套句の応酬をともなうイデオロギー対立だった。朝鮮戦争は、全面戦争というより、公然と布告されなかったものの、「警察行動」にほかならなかった。
 朝鮮戦争のもっとも意図せざる劇的な結果とは、アメリカ合衆国が決定的な勝利を手にすることができなかったことである。
ベトナム戦争の第一の、そしてもっとも明白な意図せざる結果は、アメリカ合衆国にとっての恥辱にみちた敗北にほかならない。ベトナム戦争は、この大統領を思いがけず破滅させただけでなく、ジョンソン大統領の「貧困との戦い」や「偉大な社会」という抗争にも終止符をうつことになった。巨額の戦費が引きおこしたインフレ、戦争中に起こった行政権力の乱用や市民的自由の侵害行為は、1960年代後半から70年代初頭の全米に、分裂、暴力的抗議活動、不安を生み出した。
 ベトナム戦争の残虐さは、国内における戦争への支持を損なうことになり、1965年には、早くも学生が中心の強力な反戦抗議運動が登場することになった。
著者は、最後に次のように力強く呼びかけています。
 いまこそ、大幅に軍事費を削減し、武力行使よりもむしろ真剣な交渉に従事し、荒廃した社会的・経済的インフラの再建を図るべきなのだ。戦争においてアメリカ合衆国が生み出した意図せざる結果を調査することによって、戦争はおろかであり、無駄であることを示した。ひとたび、この見解が認められたら、戦争以外の手段が無限に可能となる。
 まことにそのとおりです。本当に心からの拍手を送ります。すばらしい教訓と呼びかけにみちあふれた本です。じっくり読む価値のある本として、おすすめします。
(2010年6月刊。2800円+税)

ラ米取材帖

カテゴリー:アメリカ

 著者 伊高 浩昭、 ラティーナ 出版 
 
 はじめ、この本のタイトルの意味が分かりませんでした。ラテン・アメリカを「ラ米」としたのです。つまり南アメリカのことです。もっと分かりやすいタイトルをつけてほしいですよね。
 1967年以来、48年間に及ぶラテン・アメリカ取材の記録が一冊の本にまとめられています。まさしく現在のラテン・アメリカは今昔の感があります。かつての反共・軍事独裁政権は、いまや、どこの国にも存在せず、対米自主外交というより、反米傾向が強くなっています。これは、それだけアメリカがこれまで無茶苦茶なことをやってきたことの反動、裏返しなのだと思います。
 アルゼンチンでは、肉と言えば、牛肉を意味する。でなければ羊肉だ。豚肉や鶏肉は常識では肉に入らない。肉は、すべて炭焼きか特殊なオーブンでのあぶり焼きで、ステーキは脂身か赤みの中に溶け込むように長時間かけて焼く。口に入れると、とけてしまいそうに軟らかい。パリージャの珍味は、特別注文の牛の睾丸である。
軍隊のないコスタリカの話がもっとも興味をひきます。
 軍がなければ、外交に攻撃性がなくなる。他国からも警戒されない。外交が不備でも軍が強いからといった誤った安心感を人民に与えることがなくなる。戦争は起こりえない。軍がなかったから戦争にならなかった。軍がなければ、仮想敵国がなくなり、他国の軍縮を促すことになる。武器生産国から武器禁輸の圧力をかけられなくなる。武器が手元にあれば使いたくなるだろう。なければ使えないし、使わない。武器よ、さらばだ。
 軍隊を廃止した最大の利点は、国の富を社会開発にまわせること。教育や福祉にまわせる。
 軍はクーデターの道具だから、軍がなければ、軍事独裁はありえない。
 軍という武装した政治的圧力団体が消えれば文民社会だけになり、真の対話が成り立つ。社会正義の理念をもとに合意が生まれ、これが政策になる。平和教育が説得力をもつ。軍があれば、平和教育は鈍る。
 国内総生産(GDP)の10.7%を教育と保健にまわし、政府の存在価値を示している。兵士ゼロの社会では、人民の生活が良くなる。一人あたりGDPは、他の中米諸国の2倍以上で、非識字率は4%と最低になっている。
 平和ボケって非難されることの多い日本ですが、コスタリカの話って実に説明力がありますよね。
 キューバにいたチェ・ゲバラが、なぜ今もって世界中で抜群の人気を誇っているのでしょうか? 著者の考えは、次のとおりです。死後40年もチェはなぜ、これほどまでに人気があるのか。答えは、正義に欠ける現代社会が、いぜんとして、いや、ますます正義の実現のために不正義と戦い抵抗する象徴であるチェを理想的価値の体現者として必要としているということだろう。
 最近にもチェ・ゲバラを主人公とする映画が出来て、みましたが、それほど現代社会には不正義が目に見える形ではびこっているのですよね・・・・。
ベネズエラのチャベス大統領は新しい社会主義をめざしています。明らかに反米主義です。そして、この本は、その陰の面も指摘しています。
 カラカスをはじめ、都市部では凶悪犯罪が激発し、政官界では国際原油価格の高騰で入る、潤沢な「あぶく銭」をかすめとる腐敗が蔓延している。巷での凶悪犯罪と当局者の腐敗は、明らかに社会を劣化させている。これでは革命基盤まで腐食してしまわないか心配になってしまう・・・・。
 南アメリカの歴史とその断面を知ることの出来る本です。
 
(2010年5月刊。1905円+税)
 フランス旅行の楽しみは何ですかと訊かれ、私はすぐに美味しい料理が食べられることです、と答えました。農業国フランスは、食を大切にしています。食材も味付け、盛り付けも本当に心が配られていて、美味しいのです。人生を大切にするということは食を大切にすることなんだなと実感させられます。
 リヨンのホテルからタクシー20分で(30ユーロ)ポール・ボキューズに行ってきました。三つ星レストランとして、世界に名高いところです。食事中にマダムが挨拶にまわってきました。
 ここでは、コース料理ではなく(食べきれないのを心配して)、クネルとリ・ド・ヴォーを注文しました。クネルは白身魚のすり身ゆでたもので、はんぺんに似た食感です。リ・ド・ヴォーは仔牛の胸腺肉で、少しとろっとした肉です。ワインは少しだけはりこんでヴォーネ・ロマネの赤にしました。そしてデザートはスフレにしました。いやあ、さすがに実に美味しかったですよ。

これからの「正義」の話をしよう

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著者:マイケル・サンデル、出版社:早川書房
 アメリカという国は、実にふところの奥深い国だと思わせる本です。天下のハーバード大学で史上最多の学生を集めている講義が再現された内容の本です。私はみていませんが、NHK教育テレビで連続放映され、日本でも話題になっているそうです。
 ことは、きわめて重大な「正義」を扱っています。とっつき易いのですが、その答えとなると、とても難しく、つい、うーんと腕を組んで、うなってしまいました。
 たとえば、こうです。アメリカの大企業のCEOは、平均的な労働者の344倍の報酬を手にした。1980年には、その差は42倍だった。この格差は許されるのか?
 アメリカの経営者は、ヨーロッパの同業者の2倍、日本の9倍の価値があるのだろうか?
 いま、日本の経営者(日本経団連)は、その格差を小さくしようとしています。アメリカ並みに労働者と格差を何十倍ではなく、何百倍にしようと考えています。その具体的なあらわれが、消費税10%引き上げであり、法人税率の引き下げ(40%を20%へ、半減)です。ますます格差をひどくしようなんて、とんでもありませんよね。
 アメリカの金持ち上位1%が国中の富の3分の1以上を保有し、その額は下位90%の世帯の資産を合計した額より多い。アメリカの上位10%の世帯が全所得の42%を手にし、全資産の71%を保有している。アメリカの経済的不平等は、ほかの民主主義国よりも、かなり大きい。アメリカン・ドリームなんて、夢のまた夢、幻想でしかありません。
 アメリカは、現在、徴兵制ではなく、志願制である。イラクのような戦地に勤務する新兵の出身は、低所得から中所得者層の多い地域がほとんどである。貧乏人は兵隊になって戦地へ行き、死んでこいというわけです。
 アメリカ社会でもっとも恵まれている層の若者は兵役に就くことを選ばない。
 プリンストン大学の卒業生は、1956年には750人のうち過半数の450人が兵役に就いた。しかし、2006年には卒業生1108人のうち、軍に入ったのは、わずか9人だった。ほかのエリート大学も同じ。連邦議会の議員のうち、息子や娘が軍隊にいるのは、わずか2%のみ。
 2004年、ニューヨーク州の志願兵の70%が黒人かヒスパニックで、低所得者層の多い地域の出身だった。最高4万ドルという入隊一時金や教育を受けられるときの特典は、きわめて魅力が大きい。
 いくつもある考えるべき課題を明らかにしてくれる、実に哲学的な本です。
(2010年6月刊。2300円+税)

古代アンデス、神殿から始まる文明

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 著者 大貫 良夫・加藤 春建 、朝日新聞出版 
 
  古代アンデス文明の発掘調査を日本の学術調査団が50年も続けているというのです。すごいものですね。そして、地道な発掘調査のなかで金製品の副葬品を発見するなどの成果をあげています。ただ、その発掘・発見した遺跡・遺品の維持・保存には大変な苦労があるようです。現地の人々の生活との調和を図るというのは、口で言うほど易しいことではないのでしょうね・・・・。
 この本で驚いたのは、権力者が確立してから神殿がつくられたのではないという説が提唱されていることです。ちょっと逆ではないのかしらん、と思ったことでした。
 カラー写真つきで紹介されていますので、雄大な規模の遺跡であることがよく分かりす。
アンデス古代文明といっても、本当に古いのです。前2500年から前1600年前のコトシュ遺跡、前1000年から前500年のワカロマ遺跡、前800年前から前550年のクントゥル・ワシ遺跡、前1200年から前700年のパコパンパ遺跡などが紹介されています。
ちなみに、有名なナスカの地上絵は紀元前後から6世紀にかけてのものですから、かなり時代は下ります。
日本の学術調査団は、土器よりむしろ神殿に注目した。土器以上に社会発展においては神殿の役割が重要であると考えた。神殿の建設や更新、そこで執り行われる祭祀を通じて社会が動き、農耕などの生業面を逆に刺激していったと確信した。
 太陽の神殿ワカ・デル・ソルは、長さ342メートル、幅159メートル、高さ40メートル。この建造に1億4300万個の日干しレンガが用いられた。レンガに印がついている。それは、製造した村をあらわすもので、支配地域にレンガが納入を強要した証拠と考えられる。  古代アンデス文明の豊かさを知ることは、人類はかつて野蛮でしかなかったという俗説を打ち破ることにつながります。知的世界をぐーんと広げる本でした。 
(2010年2月刊。1400円+税)

アマゾン文明の研究

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 著者 実松 克義、現代書館 出版 
 南アフリカのアマゾンに実は高度な文明社会があったという驚くべきレポートです。2段組350ページの大部な本ですが、信じられないような事実が満載でした。
 アマゾンには世界最大の熱帯雨林がある。アマゾンは世界最大の河川である。そこに存在する水量を世界中の淡水の20%に達する。川が作り出す流域面積はアメリカ合衆国に匹敵する。
 アマゾン川の特徴の一つは、水源の多さである。無数といってようほど、多くの水源があるので、最奥の源流を特定するのは困難である。
 アマゾン川の河口は350キロを越える。河口に九州ほどの島、マラジョ島が存在する。世界中の生命種の3分の1以上がアマゾン熱帯雨林にいると言われるほど、生命種の多様性が存在する。
 このまま行けば、アマゾンの熱帯雨林は数十年のうちに消失すると予想される。この破壊は肉牛のための牧草地の確保と大豆などの農業地の確保による。
このアマゾンは、人間とは無縁の未開の処女地と思われてきた。しかし、最近になって、実は、この地域にかつて大規模な人間の営みがあったことが分かりつつある。アマゾンの各地で古代人が建設した大規模な居住地、道路網、運河網、堤防システム、農耕地あるいは養魚場が発見されている。
アマゾン上流には、紀元前2000年ころからモホス文明が存在した。ただし、規模が大きくなるのはキリスト誕生ころから500年までのこと。
 その過酷な自然環境を人間が居住しやすいように造りかえるという大土木工事を実施した。運河網をつくり、農業システム、魚の養殖システムを構築した。そのためにはリーダーを頂点とする強力な政治組織、統治形態が存在した。ここには、大量の土器類が存在した。アマゾン各地に非常に大規模な古代文明が存在した。これらの社会は規模の大きさからして、巨大な人口を擁していたと考えられる。
 当時のアマゾンの人口密度は非常に高かった可能性がある。各地で大規模な居住地が建設され、また食料生産のための農業技術、あるいは農耕地の開発が行われた。
 その結果、現在550万平方キロもある熱帯雨林の大半は開墾された農耕地であった可能性がある。しかし、アマゾン全域を統一するような超国家的社会は存在しなかったと考えられる。
 アマゾン地域には、コロンブス到来時には1000万人もの人口があったと言われるが、実はこれは控え目ではないか・・・・。
 うへーっ、し、しんじられませんよね。こんなことって、本当なんでしょうか・・・・。
 まあ、事実は小説より奇なり、と言いますからね、どうなんでしょう。
(2010年3月刊。3800円+税)

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