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カテゴリー: 社会

貧者のホスピスに愛の灯がともるとき

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 雅基 、 出版  春秋社
山田洋次監督の映画『おとうと』のモデルの一つとなったホスピス「きぼうのいえ」の施設長だった著者の本です。心温まる話が多いのですが、つい胸に手を当てて考えさせられるエピソードもたくさんあります。著者は55歳ですが、最近、大病したということです。やはりストレス、心労が見えないところにたまっていたのではないでしょうか・・・。
なにしろ、15年間に270人もの人を見送った(看取った)というのです。私には、とても真似できることではありません。前著『山谷でホスピスやってます』(実業之日本社)に続く本です。
「きぼうのいえ」は、山谷地区でホスピス・ケア(終末期医療)を目的に、医療・看護・介護といった分野の専門職と連携して運営される在宅ホスピスケア対応集合住宅。
元ホームレスなど身寄りない人のための、日本ではじめてのホスピス。
銀行から1億円の融資を受けて、定員21人の施設をつくったのです。毎日10万円、年間3650万円の赤字が生まれる施設です。それは浄財・寄付金でまかなうしかありません。
日本のホスピスや緩和ケア病棟の平均在院日数は40日ほど。「きぼうのいえ」は、入所後2日で亡くなる人もいれば、何年も入所することになる人もいて、さまざま。
入居者は、はじめ信じられない。
「うまい話には絶対に裏がある。ひとが善意だけで、いいおこないをするわけがない」
「製薬会社から裏金をいくらもらっているのか」
「死んだら、内臓をどこかに売る気だな・・・」
そんな不信のかたまりの人たちに、愛情をおもてなしのシャワーを浴びてもらって、不信感を溶かしていく。これがスタッフの役割。
「きぼうのいえ」のスタッフのケアの中心は、積極的な傾向にある。無理して聞き出すのではなく、本人が語ってくるままに、そのひとが言いたい範囲で積極的に話を聞く。
「きぼうのいえ」では、入所者の飲酒は自由。自分で買いに行くのは何も言わないし、飲む量にも何も言わない。究極的には、お酒を飲んで死ぬ自由もある。
また、入所者の外出も自由。
「病気」になってひどく動揺するのは、会社の社長とか立派な学者という人に多い。それまで自分の人生をコントロールして(できて)きた人は、「自然」が運んでくるものを素直に受け入れることができない。
「きぼうのいえ」では、入居者がうれしそうでしあわせそうであればいい。こころの底から共鳴して、一緒に大笑いしたら、すばらしいこと。
「きぼうのいえ」のスタッフには、バーンアウト(燃え尽き症候群)がない。
これは、実にすばらしことです。大変な仕事、辛い目にあうのもたくさんな仕事を毎日続けているのに、燃え尽きないというのに本当に驚嘆します。
このような施設を私たちは本当に大切にしないといけませんよね・・・。
とてもいい本です。ぜひ、ご一読ください。著者に対して、十分に健康に留意したうえでの引き続きの健闘を祈念します。
(2019年1月刊。1800円+税)

アンダークラス

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 橋本 健二 、 出版  ちくま新書
現代日本社会の実態を正確に認識する必要があると痛感します。
非正規労働者のうち、家計補助的に働いているパート主婦と、非常勤の役員や管理職、資格や技能をもった専門職を除いた残りの人々を「アンダークラス」と呼ぶ。
その数は930万人、就業人口の15%を占め、急速に拡大しつつある。平均年収は186万円、貧困率は38.7%(女性は5割に達する)。男性の66%が未婚者で、配偶者がいるのは26%に達しない。女性でも未婚者が過半数を占め、44%近くが離死別を経験している。
アンダークラスが増えはじめたのは、1980年代末のバブル経済期から。
日本の貧困率は、1985年(昭和60年)に12.0%だった。それから30年後の2015年には15.6%となった。30年間で3.6%も上昇した。
ちなみに、日本の資本家階級は254万人ほど。これは、就業人口の4.1%を占める。
アンダークラスの若い男性は、絶望と隣りあわせに住んでいる。
アンダークラスの男性は、社会的に孤立していて、協力行動にふみ出しにくい。他者からサポートを受ける機会も少ない。
老後の生活の経済的基盤は、きわめて脆弱だ。金融資産は平均948万円。
「自分は幸せではない」と考える人の比率は、実に55.7%である。
アンダークラスと失業者は格差の解消と所得の再分布を支持する。ところが、自民党支持を拒否するにもかかわらず、その他の政党を支持するわけでもない。どの政党も支持しない。また政党への無関心をきめこむ。したがって、アンダークラスの意思は、政治には反映されない。
投票率の低下がアベ一強政権を黙って支えている現実を深刻に真剣に考えるべきだと私は考えています。
(2018年12月刊。820円+税)

キャッシュレス覇権戦争

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 岩田 昭男 、 出版  NHK出版新書
日本は今も現金が大手を振って通用している。キャッシュレス決済比率は18.4%でしかない(2015年)。韓国は89.1%、中国は60.0%、そしてアメリカは45.0%というのとは大きな開きがある。
日本の銀行券の製造コストは年に517億円。そして全国20万台あるATMから現金を引き出している、このATMの維持管理コストは現金運搬の人件費を加えると年間に2兆円。
キャッシュレス化を進めたい国の立場は、徴税を徹底したいということ。現金は匿名性が高くて、その流れを把握しにくい。
キャッシュレス化は便利だが、資産やお金の使い方が企業そして国に筒抜けになる。そのうえ、蓄積された個人情報を分析して、その人の信用度を数値化してランク付けする「信用スコア」ビジネスが始まっている。
ソフトバンクとヤフーの共同出資会社であるペイペイが2018年12月から、「100億円あげちゃう」キャンペーンを始めた。そして、実際に、10日間で100億円を使い切った。1日10億円である。
個人商店のキャッシュレス化が進まない理由の一つは、手数料の高さ。3%から7%の手数料をとられてしまうことにある。ラーメン店の多くは、カードお断りだ。
中国では、スマホ決済は日本のGDP546兆円をはるかに上回る660兆円(2016年)に達している。そして、中国では顔写真つきの身分証がなければスマホを買えない。逆にいうと、スマホがID(身分証明)の役割を果たしている。
アリペイのゴマ信用は、返済履歴や買い物履歴だけでなく、個人の生活情報(暮らしぶり)も取り込み、AI(人工知能)によって点数化したもの。このゴマ信用は、一企業の信用情報というより、人々をランク付けする半ば公的な基準となりつつある。中国政府のブラックリストに載った人間は、実際に飛行機や高速鉄道の切符が買えないという制裁を受けている。
いま、中国政府は、無料の健康診断を実施し、指紋、血液、DNAなどの生体情報の収集をすすめている。
アメリカでは、警察署の多くが、犯罪予測システムを運用している。過去に発生した管轄内の犯罪データをAIが分析し、犯罪が起きる「時間帯」と「場所」を予測し、このデータをもとに、重点的にパトロールする。
キャッシュレス社会とは、誰が、いつ、どこで、何を、いくらでどれだけ買ったかという情報が、私たちの知らないところで集められ、分析される社会でもある。個人は「丸裸」にされてしまう。
ポイントカードによって顧客を囲いこみ、年齢・性別・職業などの属性と購買動向をひも付けて記録して、自社のマーケティングに役立てようという狙いがある。
私はなるべくカードを使わないようにしています。自分の足跡を誰がずっと監視しているなんて、恐ろしすぎます。やはり、便利なものには裏があるのですよね・・・。
(2019年2月刊。780円+税)

めんそーれ!化学

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 盛口 満 、 出版  岩波ジュニア新書
私の息子が埼玉にある自由の森学園にいたとき、教師の一人だったのが著者です。なかなか変わった元気のある教師がいるものだと思っていましたら、その後、著者は沖縄に移住し、沖縄では夜間中学で理科を教え、今は沖縄大学で理科教育を担当しています。
この本は、夜間中学で生徒たちに化学を教えている授業風景を活字にしたものです。
夜間中学の生徒は、60代、70代の人たち、圧倒的に女性です。彼女らは教師の話に自分の生活体験を踏まえて反応します。その変わったやりとりが、本書の魅力となっています。
夜間中学での授業は、国家検定の教科書とは無縁のようで、初日の化学講話は、なんと肉じゃがをつくることから始まります。そして、ロウソクづくりでロウソクの化学を学びます。
よく似た外観をしているけれど、ゼリーと寒天、ナタデココは原料も成分も異なっている。ゼリーは、動物のコラーゲンが原料で、タンパク質。寒天は、テングサなどの海藻がつくり出したアガロースと呼ばれる炭水化物の仲間。ナタデココは、ココヤシのジュースを微生物を発酵させることによってつくられる。その成分はセルロースだ。セルロースは、それを分解できるのは、微生物とシロアリ。
ヤギは紙を食べない。ヤギ自身はセルロースを分離することはない。セルロースを分解できるのは、微生物とシロアリ(そして一部のゴキブリ)のみ。
化学の授業を通して、沖縄のおばあたちの楽観的な生活を知ることができ、化学もまた現実のなかで生きていると思ったことでした。
(2018年12月刊。880円+税)

横田空域

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 吉田 敏浩 、 出版  角川新書
実に腹の立つ本です。途中で、あまりにバカバカしくなって何度も読むのをやめたくなりました。いえ、著者の悪口ではなく、この本をけなしているわけでもありません。
日本の空をアメリカが支配していて、アベ政権は文句のひとつも言おうとしないバカさかげんに腹を立てたのです。まったく、これでは恥ずかしくて日本は独立国家とはとても言えません。ドイツやイタリアはアメリカに言うべきことをきちんと言っているのに、日本だけがアメリカの言いなり、アメリカに隷従しているのです。例の思いやり予算と同じです。アメリカにはほんの少しだってたてつけないというのですから、今のアベ政権なんて、売国奴政権みたいなものです。なさけない限りです。
横田空域とは、正式には横田進入管制区といい、「横田ラフコン」と略される。南北で最長300キロ、東西で最長120キロ、首都圏から関東・中部地方にかける地域の上空をすっぽり覆っている。高度2450メートルから7000メートルまで、6段階に設置され、日本列島の中央をさえぎる巨大な「空の壁」となっている。
横田基地のアメリカ軍が横田空域の航空管制を握っているため、羽田空港や成田空港に出入りする民間機は、アメリカ軍の許可がなければ横田空域内を通過できない。そのため迂回を強いられる。
日本の空の主権がアメリカ軍によって侵害されている。世界的にも異例な、独立国としてあるまじき状態が長く続いている。
そして、この横田空域でアメリカ軍は、低空飛行訓練、対地攻撃訓練、パラシュート降下訓練にフルに利用している。まさしく軍事空域である。事故率が高く、欠陥機とも呼ばれているオスプレイも何の制約も受けずに首都圏の空を飛び回っている。
この横田空域には、実は国内法上の法的根拠は何もない。日米地位協定にも明文の規定はない。日米合同委員会の密約があるだけ。
一国の首都の中心部にフェンスで囲まれ、銃で武装した警備員がいて、外国の軍事高官や将校、政府要人に加えて、情報部隊の諜報員までが出入りする外国軍基地が存在している。尋常ではない。ここは事実上の治外法権ゾーンになっている。
2017年11月、トランプ大統領は、大統領専用機を羽田でも成田でもなく、横田基地に乗りつけた。そこから米軍ヘリで六本木のヘリポート基地に飛んでくる。これは日本を独立国家とみていないことを示しています。
横田基地から出入りしているアメリカ人は出入国管理局の対象とはならず、出入国の記録もないと聞いています。アメリカの裏庭の感覚で出入りしているのです。許せません。
イラク戦争に従軍したアメリカ軍パイロットは、日本の空で操縦・攻撃の技能、戦技を磨いて、イラクの戦場へ行って激しい空爆を繰り返した。つまり、アメリカのイラク侵略戦争を日本は直接的に支えたのです。
在日米軍基地は、アメリカ軍の海外での戦争の出撃拠点となっている。日本の防衛のためにアメリカ軍がいるわけではありません。そんな戦争のための基地の維持費など、アメリカ軍の経費を年に6000~7000億円も日本は税金で負担している。
うっ、うっ、ホント許せません。海外でのアメリカ軍の人殺し作戦を私たちが税金で支えるなんて・・・。
アメリカ軍だって、アメリカ本土では、ほとんど人の住んでいない広大な砂漠地帯などで低空飛行訓練をしているのです。なのに、日本では都市の上を我が物顔で低空飛行を続けています。そして、ときに学校の校庭に不時着したり、部品を空から落とすのです。なんということでしょうか・・・。
ドイツやイタリアにできたことが、日本にもできないはずはありません。要は政府のやる気です。そして、それを後押しする国民の監視の目なのです。
わすか280頁ほどのちっぽけな新書ですが、独立国家とは言えない恥ずかしい日本の実体をあますところなく明らかにした怒りの本です。ぜひ、あなたも最後まで読んでください。
(2019年2月刊。840円+税)

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