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カテゴリー: 社会

学問と政治

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 芦名 貞通、・・・松宮 孝明 、 出版 岩波新書
日本学術会議の任命拒否問題は今なお未解決であること、その問題点を任命拒否された6人の学者が問いかけている本です。
杉田和博という警察官僚出身の内閣官房副長官が「外すべき者」としたことが政府の文書で明らかになっています。一体なぜ警察トップだった一官僚が学術会議の任命に介入できるのか、まるで私には理解できません。最近の自民・公明政権の恣意的行政運営、学術軽視はひどすぎます。コロナ禍対策は、その典型でした。PCR検査をきちんとせず、大阪を典型として保健所を削減するなど、市民の生命と生活を脅かすばかりです。
マスコミもNHKをはじめとして政府の言いなりで、問題点をえぐり出さずに「大本営発表」ばりの報道に終始しています。そして、政府に批判的なことを少しでも言うと「反日」というレッテルをはってネット上で攻撃する人がいます。それは、自分こそ日本であり、自分と違う考えの人はすべて「反日」だと決めつけるに等しい。いやあ、怖い世の中ですね…。
政府が自分に都合のよい人を審議会の委員として選ぶのは「当たり前」という「常識」は改める必要がある。まことにもっともです。福岡の裁判所にも、審議会がいくつかありますが、とんでもない委員が当局によって選ばれているのに何回もぶつかりました。当局に忖度する意見しか言わないのです。たまには自分の頭で考えてみたら…、と思いました。2人とも大学教授でした。こんな教授の下で学ばされる学生は気の毒だと思ったことです。
同じことが、法制審議会でも起きているようです。法務省から期待される学者ばかりが選ばれているというのです。学者という看板が泣きますよね。でも、そんな本人は「こりくつ」つまり「へりくつ」を弄するのに長(た)けていますし、「メシの種」とばかりに割り切っているようで、いかに批判されようと何の病痒も感じないようです。情けない現実です。
何を学問するかは現場にまかせるべき。今すぐ何かに役立つもの、という観点も捨てさるべき。
本当に私はそう思います。自由な発想、とらわれない発想、権力にあらがう発想、これこそが社会をいい方向に動かしていく発展させる原動力だと思います。みんなが同じことを言っている社会には未来がないのです。みんな違って、みんないい。これこそ、社会が平和で、発展していく基礎なのだと私は確信しています。
岸田首相は、本当に聞く耳をもっているというのなら、任命拒否はすぐに撤回すべきです。
(2022年5月刊。税込924円)
 先日うけたフランス語検定試験(1級)の結果が送られてきました。もちろん、不合格なのですが、64点でした(150点満点)。自己採点では61点、これは4割ということです。合格点は94点ですので、30点も不足しています。この道ははるかに遠く、険しい。まさしく実感します。それでも、めげず、くじけず、ボケ防止のためにも、毎朝、NHKフランス語の書き取りを続けます。

ひと喰い介護

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 安田 依央 、 出版 集英社文庫
著者は司法書士というだけでなく、ミュージシャン、そして作家だそうです。この本は司法書士の体験も踏まえたものということです。
孤立した高齢男性たちが、より孤独で残酷な死にひきずり込まれていくという救いのない状況が描かれています。登場人物の多くは、自分のことしか考えず、悪に立ち向かうヒーロー役が登場して悪人たちを退治するというストーリーではありません。残念です。
著者は巻末の対談の最後で、高齢者のあいだでも分断、孤立化がすすみ、そこに付け込みたい人にとって「入れ食い」状態になるだろうと予測していますが、私も放っておくと、そうなるだろうという気はしています。だって、認知症かそうでないかは簡単に判別できませんし、高齢者介護施設も千差万別ですからね…。
高額の寄付金を出させる高度のテクニック…。24時間、誰かが付き添っているオーダーメイド介護は1日4万円とか6万円もする。
意思能力が完全に欠如していれば、成年後見制度が残っているのですが…。
高齢の入所者たちは、話し相手を渇望している彼ら彼女らから話を聞きだすのは非常に簡単なこと。プライバシーに関わることすべて、親族のこと、資産状況をふくめ洗いざらい引き出してしまう。
陥れられて入った施設では、四六時中、甘いものを与えられ、歯をみがくのを嫌がった結果、もともと多かった虫歯を悪化させ、次々に歯を失って、ついには、咀嚼ができず、流動食しか食べられない状態に置かれてしまう。すると認知症がさらに進行する。
介護施設に親を預けたまま、面会に来ない人も少なくない。
言葉巧みに高齢の人に接近し、その人の子まで引きずり込もうとする。今や恐るべき社会になっている。
この本を読むと、「いかに安らかに余生を過ごす」という施設でインチキが起き、それがバレないというのです。起こりうる話なので、明日の我が身…と考えざるをえませんでした。騙されてしまったという惨めな気分を味わうことになりますが、これも社会に存在するのでしょう。身が震えてしまいます。明日は我が身なのではと…。
(2018年12月刊。税込847円)

住宅営業マン・ぺこぺこ日記

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 屋敷 康蔵 、 出版 三五館シンシャ
住宅営業マン…、あまたある営業職のなかでも群を抜いたハードワーク。きわめて高い離職率を誇っている。一生に一度の高い買い物として、数千万円のお金が動く現場はきれいごとの通じない世界。会社から、「目標」という名のノルマを課され、お客からは過剰な要求、ときに不当なクレームをつけられる。
タマ「ゴ」ホームの固定給は「生かさず殺さず」ほどの金額、つまり、22万円。これに成果を出して歩合給がプラスされて、ようやく生活が成り立つ仕組み。うまくいけば年収1000万円以上も夢ではない。歩合給は、契約金額の1.2%を着工時、上棟時、完工時に3部割で支給される。
イベントの景品だけをもらいにくる「客」がいる。ところが、本気で住宅購入を考えている客ほど、景品をもらいたがらない。その逆に、景品目当ては客にならない人ばかり。
タマ「ゴ」ホームにはノルマはなく目標があるだけ。しかし、いつのまにか「目標」は「ノルマ」にすり替わっている。3ヶ月以上も契約がとれない営業マンは「接客停止」処分となる。 そして、精神的に追いつめて、自主退職の流れをつくる。
また、成績の悪い営業マンの罰ゲームとして、飛び込み営業させられる。成績が悪いと、こうなるよ、という見せしめに使われるのだ。
住宅メーカーによって、金額・坪単価にはかなりの開き(差)がある。これは、広告その他の諸経費・人件費をどれだけかけているかの差でもある。
規格設計と自由設計…。規格住宅は、間取りや外観の自由度がないだけでなく、設備のグレードも落ちて、見劣りしてしまう。
住宅営業マンは、客のもっている「お金のニオイ」に敏感だ。でも、その判断を見誤ることがある。そして、来た人のなかで、誰が決定権をもっているのかを探るのが肝心。本当にお金をもっている人は、逆にもっているフリをしない。
今日、家を買おうとは思っていない人に、今日、家を買わせるのが住宅営業マンの仕事だ。タイミングを逃がすと、客の住宅購買意欲は下がってしまう。
きのう初めて展示場に来た客に、今日、契約の確約をもらい、明日、契約する。所要3日で押し込む。これが、スーパー短期間クロージング。
住宅営業マンは、お客の前で理想の人間を演じ続ける、「一流の詐欺師」でなければならない。多くの人が、家という名の「夢」を買いに来る。
タマ「ゴ」ホームでは、頻繁に入社して退職するため、そもそも新入社員が長く働き続けることを期待していない。
タマ「ゴ」ホームでは、毎朝の朝礼で、まず額縁に入った社長の写真に向かって「おはようございます!」と挨拶する。これって、いかにも軍隊調ですよね、ひどく違和感があります…。
私の依頼者に、何人も住宅営業マンがいました。少しは、その苦労話を聞かされていましたので、話として、良く理解できました。それにしても大変な仕事ですよね…。いつまで、こんなハードな仕事をやれるものでしょうか…。でも、社会的には必要な仕事なんですよね。
(2022年6月刊。税込1430円)

非戦への誓い

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版 あけび書房
ロシアのウクライナへの軍事侵攻、つまり戦争が始まって4ヶ月になります。ユーチューブの映像でリアルに戦闘場面を見ることができます(ドローンによる上空からの撮影動画)。
戦車が撃破され爆発する映像を見るたびに、戦車内にいた4人か5人の若者たちが一瞬に蒸発したかのように死んでいったのかと、本当に胸が痛みます。
そんなロシアによる戦争を見せつけられ、少くない日本人が平和憲法、とりわけ9条に不安を抱き、軍事予算を倍増させようという自民・公明の政権党、それをあおりたてる維新などに心を動かされているようです。
でも、ちょっと待ってください。日本が原子力潜水艦をもって、北朝鮮や中国から日本を守れるなんて、ありえないでしょ。日本海側にたくさん立地している原発(原子力発電所)へのミサイル攻撃を防ぐことなんて出来るはずがありません。そんな事態にならないよう、日本が戦争に巻き込まれないように外交努力を強めることこそが日本の政治家のつとめなのです。
イラクでは、日本の沖縄は、「殺人鬼を製造する島」だと思われている、とあります。これには、正直、ショックを受けました。イラク戦争でイラクの人々を殺したアメリカ兵の多くが、「自分は沖縄の基地から来た」と話していたから、イラクでは、沖縄というところは殺人鬼をつくる島だと信じられているというのです。
いやあ、これは、とんだ濡れ衣(ぎぬ)ですよね。いや、ちょっと待った。今、日本政府が強引に建設を強行している辺野古新基地建設において、沖縄の現地住民の気持ちは、玉城デニー知事を先頭とする沖縄県庁をふくめて、ほとんど無視されていますよね…。
敗戦直前の沖縄戦の過程で、軍隊(日本軍)は住民を助けることは二の次で、目標の主たる優先順位は軍隊であって、余裕があれば(そんな余裕は実際にはない)、住民を救助することがある、という程度でした。
沖縄県民にとって、自分たちを守ってくれるはずの沖縄の軍隊は、住民の身の安全を守るどころか、軍隊を守ることが最優先だった。
戦争は、ある日突然に起きるのではない。戦争になるのが当たり前という雰囲気がつくられていく。今、まさしく現代日本が同じ状況ではないでしょうか?
アフリカ沖のスペイン領のカナリア諸島に「憲法9条の碑」があるそうです。
ロシアのウクライナへの侵略戦争が続くなか、日本国憲法9条は意味を失ってしまったのではなく、逆に今こそ9条の出番なのです。平和は銃口の先に生まれるのではなく、みんなで話し合うこと、つまり外交交渉によってこそ実現できるものなんです。
自民・公明の日本政府が非核条約を批准せず、ウィーンで開かれている国際会議に出席もしないというのは、いつものアメリカ言いなりの姿勢そのもので、世界中をガッカリさせるものでした。日本国憲法9条を馬鹿にしてはいけません。この9条を生かすも殺すも、私たち次第です。
著者は私と同じ団塊世代です。私と違って語学の天才のようですから、まさしく国際派のジャーナリストです。いつも、いい本をありがとうございます。
(2022年3月刊。税込1980円)

二本の棘

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山下 征士 、 出版 角川書店
タイトルからは何の本か分かりませんが、兵庫県で捜査一課長をつとめた著者の体験記です。森永グリコ事件のような迷宮入り事件もとりあげられていますが、とくに目新しい事実が紹介されているわけでもありません。警察の捜査というのは地道な努力の積み重ねだということ、それには市民の信頼と協力が欠かせないという、しごく当然のことが書かれています。
それにしても、警察官による銀行強盗事件が兵庫県で連続して発生したというのには改めて驚きました。福岡でも警察官の銀行強盗事件が起きましたが…。
1984年3月、警部補(42歳)が大阪市内の泉州銀行難波支店にモデルガンをもって押し入り、現金1000万円を強奪した(5分後に逮捕)。動機は、ギャンブルなどによる借金苦。翌4月、大阪・池田市の幸福相互銀行池田支店に巡査長(43歳)が猟銃をもって押し入り、121万円を奪った。犯人は、翌日、逮捕された。40代の警察官が銀行強盗するなんて、まるでアメリカのギャング映画に出てくる悪徳警官です。
森永グリコ事件では、犯人を取り逃がした滋賀県警の本部長が自殺しました。たしか、ノンキャリア組の出世頭の本部長だったように思います。
捜査に必要なのは、体力と根性だけではない。それも重要だが、広範囲にわたる教養や知識、分かりやすく説明する力、ひらめきと想像力、目に見えない人間の心を理解する力、そうしたものすべてが捜査に役立つ。なーるほど、そうなんでしょうね。
キャリア組が捜査一課長になると、よほど現場での経験やある種の根性がないと、部下がついていかない。現場主義の思想が根強くあり、県警本部の捜査一課長は、「高卒叩き上げ」の指定席になっている。そうでないと、クセのある刑事たちをまとめきれないからだ。
捜査一課長には多くの「才能」を認めて活かすことが求められる。
1987(昭和62)年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局の記者殺害事件について、著者は犯人は右翼だと推測しています。
グリコ森永事件の犯人たちは金銭目当てだったが、朝日新聞を襲撃したのは右翼思想の人間の犯行だということです。
かのサカキバラ事件、そして1974(昭和49)年11月の「八鹿(ようか)高校事件」もこのころ起きたのですね…。私が弁護士になった年の秋のことでした。
(2022年3月刊。税込1870円)

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