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カテゴリー: 社会

メディア激震

カテゴリー:社会

著者 古賀 純一郎、 出版 NTT出版
 長く共同通信にいて、今は大学教授をしている著者がメディアのあり方について警鐘を乱打している本です。
 マスコミが権力を監視する番犬に徹し、ジャーナリズムが円滑に機能することが民主主義にとって不可欠である。日本のため、世界のため、メディアが本来の任務を忘れずにいてほしい。そしてマスコミがその役割を十二分に果たしているかどうかを監視する番犬に今後はなりたい。
 著者は「あとがき」にこのように書いています。
 フランスのサルコジ大統領は2009年1月、新聞業界への支援策として7000万ユーロを支出することを表明した。18歳になったフランス国民に自分の読みたい新聞を1年間タダで宅配するというもの。該当者はフランス全土に80万人いる。この提案には、フランスのメディア業界がこぞって賛同した。
 日本でも新聞離れがいわれて久しい。若者の新聞購読率の低下は目を覆うばかり。ただし、ブログについては日本は世界一。ケータイでのメール送信は中高生などで日常化している。新聞ではなく、インターネットでのニュース閲覧に推移している。
 ネットの読者は既報記事に触手を動かさない。ネットで読まれているのは「詳報」のページである。
 2008年広告費の実績は、新聞が前年比12.5%減の8276億だったのに対して、ネット広告費は16.3%増の6983億円だった。ちなみに雑誌の広告費は4078億円である。ネット広告は急速にふくらんでいる。広告収入がこのようにネットへのシフトが著しいことから、日本テレビ、テレビ東京、テレビ朝日が軒並み赤字になっている。
 オーストラリア出身のメディア王、ルバート・マードックはイギリスの高級紙「タイムズ」を買収したあと、イギリス最強といわれていた労働組合を木っ端みじんにした。交渉に応じない組合員は全員解雇された。
 その結果、読者・視聴者不在で日本の政権におもねる姿勢で記事・番組が作られるようになった。
 いやあ、これって怖いことですね。先日(8月28日)、福岡で「表現の自由」をテーマとしたシンポジウムが開かれました。東大の高橋哲哉教授はNHKに絶望したと報告されていました。『女性戦犯法廷』について、自民党の圧力に屈したことを反省していないということです。ジャーナリストの原寿雄氏の、ジャーナリズム再生を訴える声に感動しました。マスコミ人には、あきらめることなく頑張ってほしいものです。
 コモに戻って駅から歩いてホテルに向かう途中に、遊覧船乗り場があり、人が群がっています。1時間で戻ってこれる遊覧船があることを窓口に確認してチケットを買いました。
 コモ湖遊覧船には、いくつものタイプがあるようです。なにしろコモ湖は広いのですから、それも当然でしょう。私の乗った遊覧船より大型の船もありましたし、もっと小さい船も出ていました。コモ湖の水面は静かです。岸辺には小さなホテルがいくつもあり、庭のテラスにテーブルが並べてありました。まだ食事の時間には早いので、気持よさそうにお茶を飲んでいる人を見かけるばかりです。
 ボートに乗って、のんびり魚釣りをしている男性、モーターボートに引っ張られながら水上スキーを楽しむ若者がいます。スキーの方は途中でこけてしまいましたが、なんとか這い上がってきました。
 いくつかの波止場で止まると、そのたびに乗客の一部が船を降り、また乗り込んできます。乗ったところに戻るという客だけではないようです。
 出発したときには曇り空だったのが、やがて薄日が射してきて、暑くなりました。風はそれほど強くありません。帽子が欲しいところです。甲板の戦闘の椅子に座って、移り変わる景色に見とれながら風に吹かれた1時間はあっという間に過ぎ、出発地点に戻りました。止まっているホテルは目の前にあります。
(2009年7月刊。2200円+税)

山本周五郎、最後の日

カテゴリー:社会

著者 大河原 英與、 出版 マルジュ社
 山本周五郎は、直木賞はもとより、毎日出版文化賞、文芸春秋読者賞など、すべての受賞を辞退した。
 八百屋や魚屋が、野菜や魚が売れたからと言って、客以外の人間から褒美をもらういわれはない。それと同じじゃないか。
 うーん、ちょっと違う気がするんですけどね……。やっぱり文化って、野菜とか魚とは少し違うんじゃありませんかね。
 周五郎は、戦前のうち、戯曲、少女小説、童話、時代小説、現代小説、推理小説など、広いレパートリーを書いていた。年に平均30編もの長編や中編の作品を書きまくった。仕事が早いし、小説はうまかった。
 山本周五郎は、人が生きる喜びを書くと同時に、その苦しみ、はかなさ、むなしさを描きうる作家だった。周五郎は小説を書くために生まれ、小説を書き尽くせぬままに、その生涯を終えてしまった。
 周五郎にとって、原稿料は、出してくれる雑誌社・新聞社の、自分の仕事に対する信用状みたいなもの。自分はそれを決して裏切らない。だから相手にも、その誠意を要求する。考えているだけの報酬を出さない会社なら、いつでも縁を切る。
前借りの効用は、自分で自分をしばること。貸してくれた会社に対する義務間で自分自身をギリギリまで追い込む、それによって必ず良い作品ができあがる。
 周五郎は、作品は担当編集者との共同作業と考えていた。常に担当者にあらすじを話し、その応答を見ながら作品を作り上げていく。一見すると関係のないような会話でも、担当者の応答は周五郎の中では確実に作品の滋養となっていった。
 周五郎は、担当編集者にこれから書く作品のプロットを話し、それが面白いかつまらないか、担当者の率直な意見を聞こうとするのが常だった。もちろん、担当者としては、そんな小説はつまらないなどとは、口が裂けても言えない。周五郎が本当に面白くなりそうな話ぶりで語るので、つい釣り込まれるようにして「よろしくお願いします」と答えてしまう。
 周五郎は先刻承知のうえ、本当に担当者が興味を持って答えているかどうか、鋭い透視力を駆使して観察していた。
 自分の小説は、ジャーナリズムの条件にしたがって書くのではなく、自分の条件で仕事をする。
 山本周五郎の本は、司法修習生のとき、修習生仲間の庄司さん(現在、石巻市で弁護士)にすすめられて読みはじめ、たちまちトリコになって次々に読みふけりました。あの、なんとも言えない、しっとりした情感がたまりませんでした。心の渇きを大いに癒してくれる本でした。それは、藤沢周平と似ていますが、また少し違うのです。
 スイスに行ったとき、これまではスイス・パスといって、1週間通用するパスを事前に購入していました。初日のスイスの駅で、駅員さんに日付を記入してもらって、その日から1週間使えます。これは駅の窓口でそのつど並ぶ必要がありませんので、その都度、切符を求めて並ぶ必要がありませんので、時間を惜しみたい旅行客には欠かせないものになります。
 ところが、今回は最大1週間の旅行でしたので、手配してくれた旅行代理店が、気を利かせて3日間有効のフレキシーパスを用意していました。これは、連続して3日ではなく、たとえば1週間のうちの3日間だけ使えるというものです。
 スイスでは、フランスでも同じですが、日付の刻印をする機械はあるものの、必ず車掌が検札に来るとは限りません。ですから、検札にあわないと1日もうかることになります。あいにく今回、私は毎回車掌の検札を受けました。すると、ポストバスに乗る前に3日間のフレキシーパスを使い終わってしまったのです。さあ、どうしましょう。ディアヴォレッツァ展望台に行くときに、スイスパスの3日間を使ったわけでした。そこで、サンモリッツの駅に行き、追加料金を支払いたいと申し出たのです。ところが、窓口に座った若い女性は、大丈夫だ、このパスでまだ行けると太鼓判を押してくれました。そんなはずはありません。私が、つたない英語で(フランス語は使うなとその女性から申し渡されていました)繰り返すと、「じゃあ、明日また来てね」というのです。私も、彼女ではダメだと思って、出直すことにしました。
 翌朝、きのうの女性に再びあたったら困るなと思っていると、別の中年男性に当たりました。今度はフランス語でなんとか通じました。彼は、いろいろ調べたあげく、やはり追加料金が必要だということで、料金を提示してくれましたので、言われた金額を支払い、チケットを受け取りました。
 ポストバスに乗るときに1人スイスフランを支払う必要があると日本語で言われていましたが、駅の窓口で支払っていたおかげで、バスに乗るときには支払不要でした。
 フレキシーパスというのは、効率が良すぎて困ることがあるということです。やはり、少々のアソビは必要だと痛感したことでした。
 それにしても、駅員の対応にも質の違いがあるのですね。
 
(2009年6月刊。1800円+税)

幻想の道州制

カテゴリー:社会

著者 加茂 利男・岡田 知弘 ほか、 出版 自治体研究社
 道州制の積極的導入によって九州経済は12%成長する。
 これは、九州財界のシンクタンクである九州経済調査協会のシミュレーションである。
 日本経団連の御手洗会長は、道州制の最大のメリットを次のように強調している。
 府県の廃止や国の出先機関の統廃合によって数兆円に及ぶ財源が浮き、これを国際空港・港湾・高速道路建設などの大規模プロジェクトの建設資金や、多国籍企業誘致の補助金にまわすことができる。
 ええーっ、これって、私たち国民にとって本当にメリットのあることでしょうか……?
 国家公務員のうち、6万6000人を地方に移管し、地方公務員3万2800人をリストラして民間に転出させ、総体として公務員を激減させる。そして、都道府県議会議員の数も半分ないし3分の1にまで減らす。
 道州制になると、一つの州は平均1000万人という巨大なものとなる。そこに「州民」という感覚が育つとは思えない。
そうですよね。九州はひとつというのは、単なる掛声みたいなものですから……。
 市町村合併によって役場がなくなった結果、その役場周辺の地域経済は一挙に衰退した。飲食店は閉店が相次ぎ、土木・建設業者も仕事がなくなり、次々に倒産していった。県庁がなくなることによって、より拡大した経済衰退が再現されるだろう。
 まことにそのとおりだと思います。
 道州制は、財界の古くからの悲願だった。実は、古く戦前の昭和2年(1927年)に最初の提案がなされている。地方自治が確立する前からのものだったとは知りませんでした。ただし、現在でも、東京をどうするか、中部を北陸と東海に二分するか、四国・中国はまとめるのか二分するか、まだ結論が出ていないところもある。
 平成の大合併の結果、1999年3月に3232市町村だったのが、2009年2月に1773市町村になった。町村だけで言うと、2562が998にまで減った。これをさらに、700~1000自治体にまで減らそうというのです。むちゃくちゃです。ところが、合併に反対すると守旧派みたいなレッテル貼りがされるのです。大きいことはいいことじゃないかというのです。でも、それは間違いだと思います。地方自治は身近だからこそ意味があるのです。
 知事会と違って、全国町村会は、道州制に強く反対していますが、私も同じ意見です。
 行政の距離が遠くなって、行政サービスが低下するというのが反対の理由です。
 国民健康保険、生活保護、福祉施設、保健所、児童相談所、教育、消費者行政、どれもこれも、地域密着型でこそ意味があるものばかりではありませんか。
 官僚バッシング(たたき)、公務員無用論、地方議員多すぎ論、私はいずれにも組みしません。前に紹介しましたが、北欧では福祉現場を担っているのは公務員です。身分保障がはっきりしているから、介護も医療も安心・安定しているのです。そこでは公務員が多すぎるという不満は出ていません。だって、自分の老後が安心できる体制が確立しているわけなんですから……。
 道州制論議のまやかしに乗せられないようにしましょう。
 わずか134頁の薄いブックレットですが、とても貴重な内容です。ぜひ、あなたも手にとって読んでみてください。
 
(2009年2月刊。1600円+税)

「羅生門」の誕生

カテゴリー:社会

著者 関口 安義、 出版 翰林書房
 日本の高校国語の教科書の全部に、芥川龍之介の小説『羅生門』が採用されているとのこと。すごいですね。まあ、それだけの内容のある小説ですよね。
 作品の完成度の高さ、文章表現の見事さ、ストーリーの奇抜さ、時代を見抜く洞察力、批評性が評価された結果であろう。なるほど、そうですよね。
 芥川龍之介は、1982年(明治25年)3月1日に生まれた。龍之介の養父は、なかなかの金満家であり、高額納税者名録にも名を連ねている。有能な金融マンであり、退職後の貯えも十分だった。
生母フクは龍之介を生んだ8ヶ月後に発狂したため、龍之介は母の実家に引き取られた。実際に養育したのは、フクの姉、芥川フキだった。
 龍之介は、1910年(明治43年)9月に第一高等学校(一高)に入学した。
 大逆事件が起こったのは、まさにこの明治43年5月25日のこと。大逆事件の判決は、翌年1月にあり、1週間後には幸徳秋水ら12人に対して死刑が執行された。さらに1週間後の2月1日、一高で開かれた弁論部主催の講演会において、徳富蘆花は「謀叛論」と題する講話をなした。蘆花は、このとき42歳。
 幸徳君は死んではいない。生きているのである。武蔵野の片隅に昼寝をむさぼる者をここに立たしめたではありませんか。圧政はダメである。自由を奪うのは生命を奪うのである。我々は生きなければならない。生きるために常に謀叛しなければならない。自己に対して、また、周囲に対して……。
 当時の一高生は、蘆花の演説を主体的に受け止めずにはいられなかった。「冬の時代」であったからである。龍之介も、蘆花の講演をきっと聞いていただろうと著者は推測しています。
 芥川龍之介は若い時から利己的で、「薄暗い諦念」を持った作家だと決めつけるのは、誤りである。
 龍之介の手紙によると、若き日には若き日なりの人間の持つ感情があった。そして、若き龍之介は、優秀で信頼できる多くの友人にめぐまれていた。ただし、龍之介は生母の愛を受けることはできなかった。そこで、女性への思いも屈折したところがあったようです。
 芥川龍之介は、自己の体験をストレートには決して表現しなかった。小説の本道は虚構にあるという堅い信念があった。いわゆる現実暴露の小説は無縁であり、やりきれない思いをひねりにひねって表現した。
 『羅生門』は、謀反を盛り込んだ小説である。『羅生門』を、はじめから自殺した作家の暗い陰鬱な作品だと考えてはならない。謀反の精神は、実は芥川龍之介を中学時代から魅了してやまないものであった。
 芥川龍之介は、決して時代や社会に無関心な青白きインテリ、か弱い芸術至上主義者ではなかった。若いときから、誠実に現実の問題を見つめ、それを作品世界に盛り込もうとした作家であった。よく読むと、『羅生門』には全編に熱気が漂っているのを感じ取れるはずである。
 うむむ、そう言われると、なんだかそんな気がしてきました……。
 龍之介の『羅生門』は、蘆花の『謀叛論』を媒介として、それまで秘めていたエネルギーが一気に爆発して成ったものなのである。
 むむむ、恐れ入りました。芥川龍之介の魅力がさらに深く掘り下げられていて、魅了されました。
 
(2009年5月刊。1800円+税)

ルポ 医療事故

カテゴリー:社会

著者 出河 雅彦、 出版 朝日新書
 医療現場はミスの起きやすいところ。すべての患者が同じ治療内容で、つかう薬の種類や量が単一であれば、間違いはほとんど起きないだろう。しかし現実には、患者一人ひとりの病気は違い、当然、治療に使われる医薬品・医療機器の種類や量は、すべて異なる。そして、一人の患者でも、ずっと同じ治療内容とは限らない。容体は刻々変化する。検査値が変動すれば、一度出された投薬や処置の指示が途中で変更されるのも珍しくはない。
 医療は、準備段階から実施まで、医師・看護師・薬剤師など多くの職種の職員が関わる。治療に必要な情報はチーム全体で共有される必要があるが、その伝達の過程で不正確に伝えられる危険がある。
 しかも、病院は人手不足で、看護師らは多忙を極めている。患者の高齢化、重症化に加え、国が患者の入院日数の短縮を図っているので、患者の回転が速くなり、医療者の負担が増す。
 医療用医薬品は1万数千品目もある。そのなかに、タキソールとタキソルテル、そしてアマリールとアルマールといったように、効能や容量が異なるのに、商品名がよく似ているため、取り違えやすいものがある。
 過去に大きな医療事故を起こした病院については、事故の調査報告書をホームページで公開したり、再発防止に取り組んでいるか確かめておく必要がある。過去の失敗を忘れようとしている医療機関は、事故を繰り返す恐れがある。
 患者の身体を危険から守る役割を期待されているのが、術中の全身管理を担当する麻酔医だ。患者の身が危険にさらされそうになったら、躊躇することなく執刀医に「待て」と命じられる強さを備えていてほしい存在だ。
 医療事故にあったのではないかと疑ったときに取るべき行動は……?
①医療機関側に不審点を繰り返し尋ね、カルテなどの診療記録の開示を求める。
②治療前から事故までの経過を思い出し、記憶が薄れないうちに時系列で記録をつける。
③死亡事例では、遺体や死亡直後の周囲の様子を写真にとっておく。
④医療機関側との話し合いは、すべて録音しておく。
⑤医療機関側との話し合いに、知り合いの医療関係者に立ち会ってもらう。
⑥医療機関側に外部の第3者を交えての原因調査を求める。
⑦医療問題に詳しい弁護士に相談する。
 いやあ、まったくそのとおりですね。
医師法21条は、医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出さなければならないと定めている。ただし、「異状」とは何か具体的に定められていないため、医療関係者に戸惑いがある。
1999年の届出20件が、2004年に199件と急増した。そして、その後の2007年には、1941件になっている。病床100床あたりの医師数(2002年)は、日本は13.7、イギリス49.7、フランス42.5、アメリカ66.8となっている。これらの国々は、日本より3-5倍の医師が配置されている。日本の医師は絶対的に足りない。
日本政府も、医師の抑制策を転換した。日本の医療費は、先進国のなかで最低の水準である。対GDP比で8.0%しかない。
日本でもヨーロッパ並みに医療費をタダにすべきだと思います。選挙の公約として民主党は高速道路料金を無料化にすると言っていますが、それに必要な財源は1.3兆円だそうです。こんなお金があれば、高齢者や子どもの医療費をすぐに無料にできます。
それに、今以上に車が走ったら大気汚染もひどくなるばかりではありませんか。
自民党は1000円、民主党はタダ。これが選挙の争点だなんて、悲しくなります。
 
(2009年3月刊。860円+税)

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