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カテゴリー: 社会

保守のための原発入門

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 樋口 英明 、 出版 岩波書店
 著者は大飯(おおい)原発の運転差止請求裁判を担当した裁判官です。そして、原発の操業はあまりにも危険だとして操業(運転)差止請求を認容しました。
 2017年に裁判官を定年退官したあと、弁護士にはならず、脱原発のため全国に出かけて講演活動しています。
 原発のとてつもない危険性を知ってしまったので、愛国心から、「やむにやまれぬ大和魂」(吉田松陰)から原発の危険性を訴えているとのこと。心から敬意を表します。
 著者は熊本地裁玉名支部の裁判官でしたから、私も面識があります。
著者は、自公政権が「日本を守る」として大軍拡を進めていることにも批判的です。現実を見ていない「お花畑」は、むしろ自称保守政治家のほうだ。彼らは、仮想敵国やテロリストが我が国の原発を攻撃目標とすることはないというテロリストたちに対する強い信頼を持っているようである。
 我が国の海岸ぞいに50基余の原発を並べている状況では、開戦と同時に敗戦が確定する。戦争は絶対にしてはならない。
 まったくもって同感です。原発をミサイル攻撃から守ることは不可能なのです。原発が一つでもミサイル攻撃されたら、それが日本のどこであろうと、日本列島が全体として壊滅状態になってしまうのは間違いありません。だって、わずか数グラムのデブリを取り出すのに何年もかかっていて、いつ出来るか分からないのです。ましてやミサイル攻撃にあって放射能が飛散しはじめたら、どんなに「特攻隊」を組織しても、近づくことすら出来ません。どんどん拡散するばかりなのです。
 自民党の政治家の多くは裏金まみれですが、原発再稼動を唱えてもいます。自分たちの金もうけのためなら、後世の人々にいかなる負担を負わせても構わないという心根しかありません。まさしく、今だけ、金だけ、自分だけです。そんなことを許してはいけません。
 原発の基本的な仕組みは18世紀のワットの蒸気機関と同じで、「大きなやかん」。ところが、違うのは、「停電してもメルトダウン」、「断水してもメルトダウン」。
 原発の安全三原則は、「止める」「冷やす」「閉じ込める」。
3.11の福一原発は信じられないような数々の奇跡の連続によって東京をふくむ「東日本壊滅」の事態が避けられたというのが真相。このとき、内閣は天皇をはじめとする皇族に京都へ避難するよう内々に打診したほど。
そして今、国も東京電力も楽観的見通しを述べたて、国民が原発事故の深刻さに目を向けないようにマスコミを必死で統制している。
 日本は地震が頻発する国です。今年(2024年)に入ってすぐ(1月1日)、能登半島で大地震が発生しました。マグニチュード7.6です。この被災地の珠洲(すず)市に原発を立地する計画があり、住民の反対で幸いにも実現しませんでした。もし原発があったら、福島原発事故以上の大惨事になっていたことでしょう。日本の原発は、いずれも耐震性が明らかに不足しているのです。著者はこのことを実に分かりやすく説明しています。いま読まれるべき本だと私は思いました。
(2024年9月刊。2500円+税)

学校では教えてくれない生活保護

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 雨宮 処凛 、 出版 河出書房新社
 名古屋で開かれた日弁連の人権擁護大会のシンポジウムに参加したときに購入した本です。著者が目の前でサインしてくれました。
 「生活保護を受けるくらいなら、死んだほうがまし」
 「生活保護を受けるなんて、人間終わり」
 こんな声を私もよく聞きます。最後のセーフティーネットなのに、それを利用したがらない人のなんと多いことでしょう…。
 借金をかかえて二進も三進もいかなくなっている人には、私もためらいなく自己破産をおすすめしています。そして、働けない状況なら、とりあえず生活保護を申請したらいいとアドバイスします。
生活保護を受けたほうがいいのに受けているのは、2~3割だけ。それくらいの捕捉率。ところが、スウェーデンは8割、フランスは9割。圧倒的に日本は低い、低すぎる。
 生活保護の利用者が増えないなかで、増えたのは自殺者。とくに女性に増えた。日本全国で年間の自殺者は2万1千人。1日あたり57人が自ら命を絶っている計算だ。異常に多い。これは本当にひどい状況です。すぐに手をうつべきです。
 生活保護受給者を担当するケースワーカーは、都市部では1人が80世帯を担当するのが標準。これが自治体の窓口における悪名高い水際作戦の背景になっている。
 現代日本の片隅に、「オニギリ1個。腹一杯食べたい」と日記に書きつけた人がいる。
 片山さつき議員など、自民党の国会議員が生活保護受給者を繰返し、バッシングしている。「タダ飯暮らし」を許さないという。その人の置かれた状況を知ろうともせずに…。ひどい。
 「いのちのとりで裁判」は、本当に大切な裁判です。国は争うのをやめてほしいです。全国29都道府県で原告1000人以上という大裁判。すでに勝訴判決が相次いでいる。
 持ち家があっても生活保護は受給できる。
 車も絶対に保有できないわけではない。
ペットと一緒に生活するのも、各種制約はあっても出来る。
生活保護受給者であっても大学に行きたい人は行かせるべきです。だって、そこで貧困の連鎖が止まるようにしたらいいのです。
 韓国は、生活保護を基礎生活保障に変えました。そこに学ぶ必要があります。そして、韓国では、単給。この単給化で貧困率が下がっている。2015年の受給世帯は100万世帯。そして2020年には、140万世帯超となった。
 日本の生活保護システムは非常に古いまま。日本では、コロナ禍の下で国の特例貸付となった。国が国民に借金させた。これって、ホントに支援なのか…??
 ドイツでも生活保護バッシングをする議員はいた。ところが、ドイツ連邦裁判所は現在の規定は無効だとする最高裁判決を出した。ドイツでは、よほどのことが発生したとしても、たとえば1年間は審査しない。
 日本にいる外国人は276万人。国保に加入できない外国人は100万人超、働くことを禁じられている仮放免の人は6千人。2021年6月時点で、実習生は19ヶ国・地域から、35万人が来日している。ベトナム人が一番多くて6千人近くいる。
大変勉強になる本でした。
(2024年4月刊。1562円)

釜ヶ崎、まちづくり絵日記

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ありむら 潜 、 出版 明石書店
 大阪・釜ヶ崎に生きる不思議なおっちゃん・カマやんを主人公にした4コマ漫画を中心にした本です。
釜ヶ崎とは、大阪市のJR新今宮駅の南側あたりのエリア。「あいりん地域」とも呼ばれる、日本でも有数の貧困集中地域。
 著者は、大学卒業直後の1975年(23歳)から今日まで50年間も関わってきました。単行本としては著者の9冊目になるというから、偉いものです。
 『カマやんの夢畑』(明石書店)、『カマヤンの野塾』(かもがわ出版)もあります。
 この釜ヶ崎もどんどん変わっているようです。今では釜ヶ崎を含む西成(にしなり)区の高齢化率は止まり、人口減も止まって、むしろ人口増に転じている。外国人住民が増えている。たとえばベトナム人の家族が入ってきている。それで、子どもたち相手に日本語を教えるのではなく、ベトナム語教室が開かれている。子どもたちにとっては日本語のほうがネイティブになっているから…。
 1960年代に釜ヶ崎にある小学校には1300人の児童がいた。ところが2015年には全校でわずか50人になってしまった。子どもたちがいなくなった。住んでいるのも男8対女2の比率で、60~70歳台ばかり、しかも生活保護受給者の男ばっかりになってしまった。そこで、子育て世代も住めるマチづくりを目ざして取り組んだ。
 今や新今宮駅の周辺はホテル、しかも海外からの観光客の泊まるホテルがたくさん立地している。それで、ベッド・メイキングの仕事が新しく生まれた。
 2018年4月に、世界銀行の視察団60人が「あいりん地域」を視察にやってきた。貧困地域なのに、清潔で安全、包摂的でレジリエントなまちづくりが進んでいると評価されたのだ。
 今夜一晩の寝床のない人々のための「あいりんシェルター」は2015年度に建て替えられた。ベッド数530床。そして、ここのトイレは大変清潔。NPO法人のスタッフのおかげで、いつもピッカピカ。もちろんウォシュレット。
 トイレの清潔さは人権でもある。ここを利用すると、自分は世間から人間として対等に扱われていると実感できる。
釜ヶ崎の50年の移り変わりがマンガで知ることのできる貴重な記録になっています。
(2024年6月刊。2800円+税)

生きのびるための事務

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 坂口恭平(原作)、道草晴子(マンガ) 、 出版 マガジンハウス
 どうやら著者は有名な人のようですね。私はまったく知りませんでした。早稲田大学の建築科を卒業して、作家であり、画家であり、また音楽家、建築家というマルチタレントです。
 私は音痴で、楽器はまるでダメ。せめて絵が描けたらと思いますが、小学校のとき銅賞で入選したのが最高です。マンガが描けたらいいなと思いますが、写実的な絵は残念ながら描けません。写真は好きで、そこそこの写真集を出しましたが、趣味の域を出ません。やっぱり写真は被写体のよさと、シャッターチャンスに恵まれるかどうかです。なので、いい写真をとろうと思ったら、四六時中カメラを携帯していて、チャンスを逃したらいけません。
 著者はそううつ病であることを公言しているそうです。とても偉いと思ったのは、2012年から、死にたいと思った人ならだれでもかけられる電話サービス「いのちの電話」(090-8106-4666)を続けているというのです。24時間、365日、著者につながるそうです。1日15人、年に6000人から電話を受けているとのこと。まったく頭が下がります。
 この本は5月に刊行されて、7月初めにすでに5刷、5万部も売れているそうです。読んでみて、ナットクでした。
 著者が20年前、ほとんど無一文の状態にあったとき、この苦境をどうやって脱出したのか、マンガで紹介されていきますので、よく分かります。そのときでも、「きっと、うまくいく」という確信があったそうです。シンプルに一つずつ、起きた順に対処していく。そうすると、別に死ぬことはない。大丈夫だと思ってやってきた、というのです。
 もし、人が自らの夢の方向に自信をもって進み、頭に思い描いたとおりの人生を生きようと努めるならば、ふだんは予想もしなかった成功をおさめることが出来る。これは、『森の生活』という本を書いたアメリカの哲学者ソローの言葉。著者は、この言葉どおりに生きていったのでした。
 すべての行動をコトバや数字に書きかえる。「事務」とは、行動をコトバに置きかえること。楽しいことは続けたくなるし、継続すること自体が才能になって、そして最後は、どうせうまくいく。いやあ、すごいですね。この自己肯定感にみちあふれたコトバの威力って・・・。
生きてるあいだにすることって、自分が何が好きなのかを探して、それが見つかったら、死ぬまでそれをやり続けるだけのこと。それ以外の人生は、どれもつまらない、ただの退屈な時間だ。
私にとっては、調べものをして、少し考えて、書いていくこと、これが楽しいことです。
 すべての自由な人間は冒険を恐れずに楽しむ。そして、冒険があるところには「事務」がある。冒険を始めないかぎり、事務なんて存在しない。
「事務」とは、抽象的なイメージを数字や文字に書きかえて、具体的な値や計画として見える形にする技術。
この本を読んでいると、何かしら元気が湧いてきます。そうか、自分でもできるかもしれないと思わせるのです。
 ヘタウマなマンガによるシンプルなストーリー展開なので、心にすっと入ってくる良さもありました。
(2024年7月刊。1600円+税)

内閣官房長官の裏金

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
 政権を握るということは、毎月1億円を好き勝手に使っていいということ。税務調査の心配もないし、領収書も不要。飲食代金に使おうが買収・供応資金に使おうが勝手次第。
 月1億円を自由に使える。これが官房長官の機密費です。
 ところが、実は、外務省にも同じような裏金があるのです。外交交渉で、外国の政府要人を買収・供応するための資金として「活用」されているようです。ときには、大使や外務省の担当官が、着服しているのが発覚して問題になったりもしますが、たいていは闇の中です。
この本で取り上げている裏金は、正式には「内閣官房報償費」と呼ばれます。月1億円、年12億円がきっちり支出され、使い残ったとしても国庫に返納するということはありません。
 会計検査院の実質的な審査はありませんし、領収書のチェックもありません。
 消費税を導入するとき、この官房機密費が十数億円も使われたことが明らかになっています。表向き反対していた公明・民社の議員を「買収」したのです。
 与野党対決の予想される重要法案を成立させるための国対費は1件あたり5千万円、ときに数億円になる。つまり、野党議員を裏金で「買収」していた(る)ということです。ひどいものですね…。
 沖縄県知事選挙にも、この官房機密費が使われました。1998年11月の知事選のときには1億7千万円が支出されたとのこと。
 国会議員が「海外視察」に行くときには餞別(軍資金)として、与党議員だと新人でも30万円、中堅以上なら100万円。いやあ、おいしいエサですね…、これって…。
 退任する日銀総裁、検事総長、会計検査院長にも百万円単位が渡される。最高裁長官には渡されないのでしょうかね…。
 著者は、この裏金の実態を明らかにしようと、裁判を起こしました。そして、ついに最高裁ですら、全面的ではないにしても、一部の開示を明示するよう判決したのです。
 著者の執念には、ほとほと頭が下がります。
(2018年7月刊。1200円+税)

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