法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

運命の人(1~4巻)

カテゴリー:社会

 山崎豊子 文春文庫
 沖縄返還をめぐって、日本政府が密約をかわしていたことが今では客観的に歴史的な事実として定着しています。惜しむらくは、そのことについての国民の怒りが少々足りないということです。日本人って、どうしてこんなに大人しいのでしょうか。
福島原発事故で放射能が現に拡散しているにもかかわらず、既に多くの日本人が慣れて、あきらめている感があるのも同じ日本人として解せないところです。
 それはともかくとして、政府とりわけ外務省がアメリカの言いなりに外交交渉をすすめてきたこと、そして、ずっと国民を欺してきたこと、今も隠し続けていることに腹が立って仕方ありません。
 それをすっぱ抜いた毎日新聞の西山記者に対して、外務省の女性事務官と「情と通じて」と起訴状にわざわざ特記して大キャンペーンを張り、ことの本質から目をそらさせた政府、マスコミも許せません。
 おかげで西山記者は家族ともども長く日陰の身を過ごさざるをえなくなりました。まさに、正義はどこへ行ってしまったのかと慨嘆せざるをえない有り様です。
 著者はそこを本当にうまく書いていきますので、実に自然に感情移入させられ、涙と怒りで頁をめくるのがもどかしくなってしまいます。
 この本は、最後に少しばかり救いがあります。『沈まぬ太陽』にも、いくらかの救いはありました。それでも、その代償がいかに大きかったことか。
そんな不正義を許さないためには、この本を読み、政府と外務省の自主性のなさ、アメリカ言いなりの情ない姿勢に対して怒りの声をあげることではないかと痛感しました。
 依頼者の方から勧められて読んだ本です。
            (2011年2月刊。638円+税)

夕凪の街、桜の国

カテゴリー:社会

著者    こうの史代  、 出版   双葉社
 ヒロシマを生きる若き女性の生活と未来への不安を描いたマンガです。
 私が小学生のころには、ここに描かれているような、雨もりするバラック小屋みたいな家があちこちにありました。着ている服はツギアテ。靴下はほころびたら、あて布で補正する。靴も、する切れるまで履くのが当たり前。トイレは、もちろんぼっとん式です。
 ご飯を食べるときは、丸いちゃぶ台を家族みんなで囲み、小さいおかずを子どもたちが奪いあうようにして食べていました。私なんぞ、5人姉兄の末っ子でしたから、もちろん可愛がられたのですが、食べることにかけては食い意地がはって、兄たちに負けないようにハシをのばして自分の食べるものを確保していました。もらいものの羊かんを姉兄で分けるときには、どれが大きいかを目を血のように食い入るように見つめて必死でした。ですから、そりゃあ美味しいものでした。真剣度が違いましたからね。何もなくても、友だちがわんさかいて、楽しく遊ぶことだけは出来ました。
 ヒロシマでゲンバク被災者は見たことを話せず、自分が被災者だと名乗ることをはばかる時代が長かったようです。そんななかでも、若さで乗り切っていこうとする、すがすがしさあふれた青春マンガです。
(2011年6月刊。800円+税)

警視庁捜査一課刑事

カテゴリー:社会

著者   飯田 裕久   、 出版   朝日文庫
 警視庁捜査一課に12年のあいだ在籍し、勤続25年で退職して分筆業で活躍していた著者は、昨年、46歳の若さで惜しくも急逝されました。この本は自らの体験にもとづく本ですから、並みいる警察小説とは迫真度が違います。
 「○○刑事」というのは、もっぱら巡査の場合のみ。「部長」というと、一般会社では大変な地位であるから、知らない人は大幹部のように受け取るが、実は巡査部長、つまり巡査の一つだけうえの階級の者に過ぎない。
 係長は、警部補。キャップとも呼ぶ。係長の下が主任。巡査部長がなる。末席は巡査。
日本の警察官、とくに私服刑事は、宿直以外の通常勤務のときには拳銃を着装しない。拳銃は泊まりの日につけるだけという悲しい事実が定着している。有事の際に拳銃をつけて出勤するという習慣が、まるで出来ていない。
 特別捜査本部の捜査会議の様子が紹介されています。これは既に、幾多の警察小説に出てくるのとまったく変わりありません。地取りなどをやって帰ってくると、朝の会議で順に報告させられ、それが中途半端だとヒナ壇からガンガンこき下ろされるというのです。それこそ、死ねといわんばかりにやり込められる。ふむふむ、プロの世界ですね。
 最後に警察隠語集が紹介されています。知らないものがいくつもありました。
 アカ落ち・・・服役を終えること。
 牛の爪・・・・初めから犯人が割れている事件。
 グニ屋・・・・質屋。
 ゴンゾウ・・・・ベテランの域に達してもダメな警察官。
 ごんべん・・・詐欺
著者は警察をやめたあとは刑事ドラマの監修の仕事に転職していたようです。
(2011年4月刊。640円+税)

TSUNAMI3.11

カテゴリー:社会

 豊田 直巳         第三書館
 すさまじい写真集です。目をそむけたくなりますが、ここで目をそらしたらいけない、現実はもっと悲惨なんだからと言い聞かせて最後まで、目を見開いて写真を見通しました。
 とりわけ平和なときの様子を打ちした写真と被災後の状況をとった写真とを対比したところに、心が痛みました。
 6道県60市町村別に被災写真が並べてありますので、東北、北海道の被災状況が一覧できます。
 文字どおりの写真集で、キャプションはついてませんが、それだけにモノ言わない現実が心を打ちます。とんでもない状況がいくつもあります。大きな船が家の上に乗っかるなんて、ありえないことです。ビルの4階まで津波に襲われるなんて、どういうことでしょうか。
 生き残った子どもたちの笑顔で救われる気がします。でも、きっと、この子どもたちも心は深く傷ついているのでしょうね。
 そして、福島原発です。ひどいものですよね。今でも安全原発は可能だとうそぶく人がいるなんて信じられません。これほど高くついた「買い物」はないでしょう。なにしろ、後始末にいくらかかるのか誰もわからないというのですから・・・。それでいて原発は安上がりなエネルギーだなんて、よく言いますよね。もう騙されてはいけません。
 536頁で2800円の写真集です。高いですけれど、やっぱり安いというべきではないでしょうか。
 大地震と大津波の恐ろしさを実感させられる貴重な写真集です。ぜひ、ご覧ください。
            (2011年6月刊。 2,800円+税)

津波と原発

カテゴリー:社会

著者    佐野 眞一  、 出版   講談社
 この本を読んで、福島第一原発がなぜ、あの地に立地したのかが分かりました。要するに貧しい地域だったからです。そして、共産党が強くなく、反対運動は強くならないだろうという読みもありました。
大地主の一人である堤康次郎は3万円で買い、原発の敷地を3億円で売った。東電の木川田一隆社長、地元選出の木村守江代議士(後に福島県知事になる)、そして、この堤康次郎の3人で原発誘致は決まった。ボロもうけしたのですね・・・。
 作業員の被曝の許容量は国際基準の20ミリシーベルト。その許容すれすれの人がほとんどだ。だからといって素人では作業がうまくいかないので、全国から経験者を集めている。柏崎や東海の人が多い。最近は、九州からもかなり来ている。
 原発労働は、今は危険手当は1日5万円。ある会社は、日当5万円、危険手当10万円の計15万円という。ある元請会社は20ミリシーベルト浴びると、5年間、作業現場の仕事を補償するという覚書を作業員と交わしている。ここは、人間の労働を被曝量測定単位のシーベルトだけで評価する世界だ。一定以上の被曝量に達した原発労働者は、使いものにならないとみなされて、この世界から即お払い箱となる。炭鉱労働者の炭鉱節と違って、原発労働からは唄も物語も生まれなかった。
 津波は恐ろしい。しかし、それ以上に恐ろしいのが原子力発電所です。日本経団連のトップたちは一斉に、それでも日本は原発が必要だと声をそろえて強調しています。そんな人は、子や孫を飯舘村に住まわせることが出来るのでしょうか。自分と家族だけはぬくぬくと安全なところにいながら、よく言うよと私は思います。
 いったいメルトダウンした燃料棒の始末は誰が、いつ、どうやってするというのですか・・・。住友化学(日本経団連会長の出身の会社)の敷地に引き取るとでもいうのでしょうか。とても、そんなはずはありません。日本の最高の経営トップの無責任さに、泣きたくなります。
原発が安全だなんて、そんな神話にしがみつくのは、この際キッパリ止めましょうよ。
(2011年7月刊。1500円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.