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カテゴリー: 社会

橋下主義を許すな

カテゴリー:社会

著者  内田樹・香山リカほか  、 出版 ビジネス社   
 「今の日本の政治で一番重要なのは独裁」
 「政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ」
 「ウソをつけない奴は政治家と弁護士にはなれないよ。ウソつきは政治家と弁護士の始まりなの」
 「生まれたての赤ちゃんから大人になるまで、教育は強制そのもの」
 「日本再生の切り札じゃないか。カジノ、これしかない」
 「小さな頃からギャンブルをしっかり積み重ねて、全国民を勝負師にする」
 これらすべてが橋下徹語録です。恐ろしいことに、こんな馬鹿げた言い分を20代、30代の若者が喝采しているのです。ウソつきは弁護士の始まりだなんて、とんでもないことです。自分はウソばっかりついて弁護士をやっていたのでしょうが、自分の体験を一般化してほしくはありません。
若者にうけている背景には、閉塞した社会を生きる市民のやり場のない不平不満のたまりにたまった蓄積がある。
 まことにそのとおりなんだと思います。
今という時代は、政治変革のあとの幻滅にみんなが浸っている状況である。所詮、民主政治とは、幻滅と希望の繰り返しである。
 あなたのウップンを晴らしますよというウップン晴らしの専門家に任せてしまって自分たちで考えることをしないと、もっと大きな問題を作りだすことになる。 
橋下は議論を否定している。ハシズムは政治の否定である。橋下は、人間をバラバラに分断して、個人個人で責任をとれ、個人でがんばれという渦の中に放り込もうとしている。
 橋下徹のやり方は、軍隊的官僚主義と能天気きわまりない単純な市場競争主義の混合物である。新自由主義でありながら、軍隊式である。
極端が極論のまま暴走して、そこに人々がスリルと魅力を感じている。どちらに行くのか分からない独裁をあえて作り出して、面白がっているのが橋下の政治である。
橋下は活字での発言はしない。それで、人々を瞬間芸の世界に巻き込む。その場その場で、一貫性がない、橋下は手を変え、品を変え、いろいろ皆の目をそらしながら、見世物をやってきた。
 子どもは商品じゃないし、人材でもない、彼らは次代の我々の共同体のメンバーなのである。
橋下の提唱する教育基本条例は根本的に間違っていますよね。ところが、それに手を叩く若者が少なくないところに今日の社会の異常さがあります。橋下が大声で叫べば皆が目をそむける。そんなあたりまえの大阪であってほしいと心から願っています。いま
貴重な一冊です。ぜひ、とりわけ大阪の人々に読んでほしいと思います。
(2011年11月刊。800円+税)

日本人事

カテゴリー:社会

著者   斉藤 智文・溝上 憲文 、 出版   労務行政
 企業の人事部で現に活躍している人、また過去に活躍していた人が次々に登場してきます。人事部の裏面は出ていないので、きれいごとだけですませていないのか、そんな疑問を感じながらも読みすすめました。まあ、それにしてもさすがは人事のプロですので、その指摘はもっともだなと言うところが多々あり、勉強になりました。
 無印・良品で有名な良品計画の社長は私と同世代、学生運動に身を投じて逮捕・拘留されたこともあるとのことです。びっくりしました。今では経営のトップなのですからね。
 大事なのは部下である。上司はいずれなくなるが、自分がいなくなるまで長くつきあうのは部下である。上司に気をつかうより部下を大事にしなさい。なーるほど、ですね。
 自分はダメだという思い込みが曲者(くせもの)だ。ダメだと感ずるだけで、どこがダメなのかを具体的に合理的に考えない。それは知識のなさとか技術の未熟であったりする。いずれも、後天的なもの、努力すれば身につくものがほとんど。自分はダメだという概念が、自分という存在はダメだということになり、必要以上に自分を傷つけてしまう。
 なるほど、自己肯定感って大切なんですよね。若いときから、自分はダメだというのではなく、自分もこれがやれる、これならやれるという確信を持たせる、持てるようにするのが大切だと思います。
 江崎グリコは、従業員の雇用を大切にする。これは創業以来の変わらぬ経営理念。これまで希望退職をふくめて、強制的な退職施策をしたことがない。ふむふむ、この会社は非正規雇用はいないのでしょうか・・・?
 取締役になると、入ってくる情報の7割は嫌なことばかり。組織の上に立つと、困ったことや嫌な情報だけが上がってくる。これはNECの人事部にいた人の言葉です。
しかし、悪い情報が上に上がってくる会社はいい組織である証し。業績が低速すると、まっ先に人に手をつけようとする企業が増えている。そこでは、社員をコストと考える風潮が蔓延している。
 本当にそのとおりです。終身雇用制という言葉はもはや死後になってしまったかのようです。使い捨ての駒のようにポイ捨てされる非正規雇用がありふれ、若者が将来展望を持てず、企業もユニークなアイデアが生まれる源泉が枯れはじめています。ソニーの業績低速はそのためだという指摘があります。
 もっと人事部のホンネの部分を聞いてみたいものだと思いました。
(2011年10月刊。1800円+税)

もう原発にはだまされない

カテゴリー:社会

著者    藤田 祐幸 、 出版   青志社
 原子力発電所で炉心溶融事故(メルトダウン)を起こす原因はいくつもある。
 その一は、配管破断事故。何らかの理由で主蒸気配管が破裂すると、一瞬にして蒸気が噴出し、原子炉が空焚きになり、炉心溶融に突入してしまう。この大口経配管破断事故は過去に起きた実績がある。2004年8月に福井県美浜原発で起きた。
 もう一つは、全電源喪失事故。原子力発電でありながら、原発が停電したらどうなるかという問題。これが今回起きたわけだが、これまで、「停電になることは、ありえない」と国も電力会社も言い続けてきた。
 1980年、フランスのラ・アーグ核燃料再処理工場で、事故が起きて従業員があきらめ、「家族と一緒に死にたい」と帰宅していったという深刻な事態が発生した。このときは、近くのフランス海軍の兵士たちが決死隊をつくって突入し、電源を回復してポンプを回すことに成功して事なきを得た。もし、これが成功しなかったら、フランスからドイツまで深刻な放射能被害にあったはず。
 福島第一原発では、メルトダウンが起きていることは分かっていても、原子炉のなかで一体、何が起こっているのかは予測しがたい。しかし、原子炉が体をなしていないことは確実だ。
 福島第一原発事故では、「止める」ことには成功したが、停電のために「冷やす」ことに失敗し、相次ぐ水素爆発によって「閉じ込める」ことにも失敗した。
 原発建屋内で作業員が着ている防護服は、放射線に対してはまったく無力。防護服は放射性物質が身体に付着しないように加工してあるだけ。被曝を避けるためなら、厚さ5センチもの鉛の鎧を着なければならない。それでは重すぎて、とても仕事にならない。なんと、あの防護服は放射性物質が付着しないように加工されているだけだというのです。これでは心配ですよね。
 そのうえ、政府は福島原発について内部補修を行う労働者の被曝濃度を50ミリシーベルトから100ミリそして210ミリシーベルトに上げていった。
 内部被曝は長期間に免疫力や抵抗力を低下させかねない。
 原発事故の本質、それに至るまでの問題が見事に整理されています。読みすすめるのが恐ろしいのですが、目をそらすわけにはいきません。政府・東電が工程表を発表して、何となく事故対策が進んでいる気にさせられていますが、今も放射能が空中そして海中・地中に拡散しているのは事実です。原発は一刻も早く日本から廃絶するしかありません。
(2011年8月刊。1500円+税)

回転寿司の経営学

カテゴリー:社会

著者   米川 伸生 、 出版   東洋経済新報社
 私は恥ずかしながら回転寿司店なるものに一度も行ったことがありません。外から店内を見て、あのぐるぐる回るすしの姿にベルトコンベアーに向かって働かされる流れ作業の工員を連想し、そんな状況に我が身を置くことへの拒絶反応を抑えがたいのです。
 この本を読んで、昨今の回転寿司の実情を知り、いささか偏見を取り除きました。でも、まだ店内へ入ってみようという気にはなりません。これはマックやケンタの店に入りたくないのと同じ気分です。
 いまの日本には、回転寿司店が4000店ある。100円寿司の大手チェーン店が、その3割を占める。100円均一の店舗は他に1000店はあるが、100円寿司の業界勢力は全体の半分ほど。業界は100円均一店とグルメ回転寿司に二極化されていて、どっちつかずの店は衰退の一途をたどっている。
 100円寿司大手チェーンの躍進は、ボックス席の成果である。ゆったりとボックス席で家族だけの時間を過ごせる。そもそも回転寿司は、アミューズメント・パークなのである。うむむ、そういうわけなんですか、ちっとも知りませんでした。
一般的な外食産業の原価率が30%であるのに対して、回転寿司では40~50%があたりまえ。
 回転寿司は、仲買人を通さず、漁港や漁船から直接買い付ける。釣り人から釣った魚を直接買い受ける店まである。さらには、海外で養殖している業者もいる。
 回転寿司が誕生したのは1958年。コンベアの特許の切れる1978年までは元禄寿司の一人舞台だった。
 1991年に広辞苑に回転寿司という項目が登場した。
 1998年、高級回転寿司店が誕生。
低価格の回転寿司は、全国的にシャリは甘め。これは子ども向けを意識しているから。東日本ではシャリは酢と塩が立っていて、関西から南へ行くにつれ、シャリは甘くなっていく。
 回転寿司のマグロは、「客寄せパンダ」の役割を担っている。
 回転寿司の市場規模は4358億円。2008年までは毎年5%以上も伸長していた。2010年は前年比2%増。上位三社(「かっぱ寿司」、「あきんどスシロー」、「無添くら寿司」)で55%を占める。
 大手100円寿司チェーンでは、コンピュータシステムを導入して、そのときの来店客数や客層から、どの寿司をどれだけ流せばよいのか適宜指示が発せられる。子どもが多ければ、子どもに人気ネタを多く流すなど、効率よくレーンを埋めている。
 回転寿司、恐るべしだと思いました。
(2011年9月刊。1600円+税)
 日曜日にフランス語検定試験(準一級)を受けました。この一週間は10年間の過去問を復習し、「傾向と対策」を繰り返し勉強しました。
 終わったあと大学の構内を歩く夕暮れの寒風に吹かれて身の縮む思いでした。
 早速、答えあわせをしました。いつものように自己甘の採点で76店(120点満点)です。なんとか一次はパスできそうです。パスしていると、1月に口頭試験を受けます。これがまた緊張の一瞬です。
 最近、大学生のときの夢を久しぶりのに見ました。全然授業に出ていなくて、兄が心配して忠告してくれたのですが、もうどうにもしようがなく、中退するしかない・・・という切羽詰まった状況でした。現実には、そのような状況になったことはありません。というか、大学2年生のころには1年ほど、ストライキのために授業そのものが受けられませんでした。
 それにしても私も若いものですね。大学気分に浸っているのですからね。これも仏検のおかげです。

死ぬという大仕事

カテゴリー:社会

著者 上坂冬子、 小学館 
 
 作家である著者はがん闘病記を連載しつつ、2009年4月14日、78歳で亡くなりました。
 2005年に卵巣がんが発見されて手術して切除したあと、強い副作用に苦しみながら抗がん剤治療に耐えて、いったんは元気な体を取り戻した。しかし、がんは3年後に再発し、2008年10月、慈恵医大病院に入院した。そこでは緩和ケアを受けることになった。
担当医は次のように語る。
 「がんという病気は、進行するのにある程度の時間がかかる。だから、患者に早い段階で告知し、その後の治療や人生をどう設計するか、じっくり考えてもらうことが必要だ」
 なるほど、と思います。
 緩和ケアが患者より良い人生を考えた全人的治療であるためには、医師には医学の知識だけではない洞察力や人間性が求められる。そしてまた、患者の側も、医師を信頼し、希望を持ち続けることが大切だ。なるほどなるほど、よく分かります。
  ホスピスケアと緩和ケアには決定的には違いがある。ホスピスに入るのは、もう手の施しようがなくなってからのこと。しかし、緩和ケアは、もっと積極的なケアを提供する。
がんの告知を受けた患者はいくつかの心理ステップを踏んでいく。はじめは否認。次は怒り。そして取引が始まる。そのあと、抑うつの時期を経て、最終的に受容という状態になる。あるがままを受け入れようという気持ちになる。
 いやあ、そうはいってもこればかりは、なかなか受容の境地にはなれませんよね・・・。
 腫瘍は、あるところを越えて、加速度的に病状が進むようになると、年齢には関係なく、手がつけられない状態になる。腫瘍は徹底的に自分本位で、自分だけが大きくなろうとする。
 余命が1ヶ月以内だと医師は分かるが、それ以上だと医師の予測はほとんど当たらないというデータがある。それくらい個人差が激しい。
 女性は枯れ木がしぼんでいくような亡くなり方をするのに対して、男性はポキッと折れるような亡くなり方が多い。
 うむむ、こんな表現ができるのですか・・・。
 抗がん剤は効かないことも多いが、それでもだらだら治療を受けている患者がいる。
 患者は、身体がつらくても、希望が持てるから精神的には楽。このため、医師と表面的には利害が一致することになる。
医師であっても、自分の父親に抗がん剤を使ってしまう。副作用が辛いと分かっていても。なぜなら患者も家族も希望をもっていたいから。また、製薬会社が抗がん剤をできるだけ広めようとしている影響もある。
著者は緩和ケアのおかげで、途中で好きなフランス料理を味わって楽しめるようにまでなったのでした。抗がん剤の副作用に苦しんで、歩けなくなったり、吐気がひどくて食事もできないというのでは、どれだけそんな生活に意味があるのか考えさせられますね。
 すごい闘病記でしたが、著者のあっけらかんとした書きっぷりに惹きこまれて一気に読了しました。
         (2009年9月刊。1200円+税)

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