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カテゴリー: 社会

「橋下総理」でいいんですか?

カテゴリー:社会

著者   小西 進 、 出版   日本機関紙出版センター 
 日本に新しい政治が生まれる。アメリカのような二大政党が選挙の結果で政権交代していくシステムが出来た。
 こんな大きな期待を背負ってスタートして二大政党制ですが、今ではすっかり期待はずれの感があります。日本人の忘れやすさを代表するのが橋下徹・大阪市長が代表も兼ねる日本維新の会です。この本は、今や人気絶頂にある橋下徹の内実・真相に迫っています。
橋下徹の言葉は、いつも、いつもながらシンプルである。
 橋下徹は、TPP賛成で、ブレない。労働市場は基本的に自由化すべしと主張する。
 橋下徹は、昔から核武装論者を自認していた。日本は、アメリカの核の傘の中で守ってもらい、原子力空母や潜水艦によって守ってもらっていると主張する。
 橋下徹は次のように演説した。
 「自分でしっかり生きていくことができる力を持つ。分かちあい、助けあい、弱者切り捨てだけ、このような甘い言葉こそ、本当に危険。国民が自立することを忘れてしまい、他人を頼ることを根本原則にすれば、もはや国家として地域として成り立たない。社会保障は、もうもたない。もたれあい、たよりあい、依存しすぎ、悪しき流れをきちっと絶つ」
 驚くべき冷たさ、弱肉強食そのもの超保守政治家です。非正規社員、派遣社員ばかりで、とりわけ若者が自立できない労働環境になっていることを橋下徹は、すっかり忘れてしまっています。こんな政治家は無用です。
 高校生に向かって、「いまの日本は、自己責任がまず原則」と開き直る橋下徹。これほど政治家として無責任な放言はありません。「自己責任」ではどうしようもなくなっている現実をなんとかすることこそ、政治家の果たすべき使命ではありませんか・・・。
橋下府政は、その前の太田府政のときの借金2848億円(年平均)を上回る3587億円を借金した。
 大阪府の財政危機の大きな原因は、関西空港2期事業などの巨大開発。りんくうタウン、阪南スカイタウン、水と緑の健康都市の3事業だけで4440億円の赤字を生んだ。そして、同和対策事業に年50億円も投入して継続した。
その反面、橋下徹の弱い者いじめは徹底しています。
 敬老パスの有料化、コミュニティーバスへの補助費削減、国保料減免の縮減、障害者スポーツセンターの統廃合、などなど・・・。
 橋下徹は、能や文学が好きな人を「変質者」と呼んだ。
 2011年6月29日、橋下徹は有名な演説をした。
 「日本政治で一番重要なのは、独裁だ。独裁と言われるくらいの力、これが日本の政治に一番求められている」
 橋下徹の政治の中身は、民主党や自民党とまったく同じ、いや、もっとひどい政治を一気にすすめようとしています。右側から民主主義を攻撃する突撃隊の役割を果たしているのです。
 「決める政治」と言っても、悪い方向にどんどん強引に決められ、すすめられたら大変なことになりますよね。もう、いいかげんマスコミが橋下徹をもてはやすのは止めてほしいとつくづく思います。
(2012年8月刊。1143円+税)

地熱エネルギー

カテゴリー:社会

著者    江原 幸雄 、 出版    オーム社 
 この夏、電力不足で停電になると電力会社と政府・財界からさんざん脅されましたが、猛暑のなかでもなんとか停電もなく耐え抜きました。原子力発電所に頼らなくてもやっていけること、原子力発電所に頼ってはいけないことが次第に国民に浸透していることを実感します。
原発以外のエネルギーとして、地熱発電にもっと力を注ぎこむべきだと強調している本です。先日、同じことを伊藤千尋氏(朝日新聞)も言っていました。九州には、既に九重に大きな地熱発電所があります。それを大いに活用すればいいのです。
 地熱発電所の歴史は古く、いま世界各地で地熱発電も非常に熱心に進めている。世界最初の地熱発電は、1904年、イタリア北部のラルデレロに始まった。
現在、世界中30ヶ国で地熱発電がおこなわれ、2010年には世界の地熱発電所は1000万kwをこえた。2015年には1850万kwをこえる見込みである。
 日本では、1999年までに全国18ヶ所、54万kwの地熱発電国になったが、その後は原発推進のため、すすんでいない。日本の地熱資源ポテンシャルは2000万kwをこえると推定されている。
地球の中心は6000度Cと推定されており、偶然だが、太陽の表面温度と同じ。地球も堆積の99%は1000度C以上、100度C以下は0.1%にすぎない。したがって、地球は巨大な熱の塊と言うことができる。
 日本の地熱ポテンシャルが2000万kwというのは、アメリカ、インドネシアに次いで世界第3位。日本は世界に冠たる地熱資源大国なのである。ところが、現在、わずか2%、54万kwしか利用されていない。
安全で安いと言われてきた原発が、実のところ、人類がコントロールできないほど危険なものであり、その始末することが不可能なことを考えたら、コストは無限大のようなものだ。このことが明らかになってきた今、私たちは地熱エネルギーのコストが少しくらい割高でも、これを活用しない手はないと思います。
 とってもタイムリーな本でした。
(2012年3月刊。2800円+税)

舟を編む

カテゴリー:社会

著者    光浦 しをん 、 出版    光文社 
 辞書は、モノ書きを自称する私にとっては必須不可欠なものです。いまも本の最終校正の真最中ですが、辞書を引く手間を惜しまないようにしています。思い込みによる間違いも多々ありますし、何より同じ言葉を繰り返さず、異なった表現にするためには辞書を引いておかないと、とんだ恥さらしをしかねません。
 この本は、辞書づくの過程を面白く、ドキドキワクワクの世界に仕立て上げたものです。思わず応援したくなります。なんといっても、言葉との名義性には目を大きく見開かされます。
 めれんという言葉をはじめて知りました。慌てて私の愛用する角川国語辞典で探しましたが、幸いのっていませんでした。酩酊を意味する言葉です。「仮名手本忠臣蔵」に出てくる言葉のことです。
それにしても、声という言葉に、季節や時期が近づくけはいという意味があったなんて。信じられません。でも、たしかに「四十の声を聞く」という文章はありますよね・・・。
 辞書は、言葉の海を渡る舟だ。だから、海を渡るにふさわしい、舟を編む。
ここに、この本のタイトルは由来しています。
 辞書を作るのに、何年、いや10年以上かかるのは珍しくない。そして出来上がった辞書は出版社の誇りであり、財産だ。人々に信頼され愛される辞書をきちんと作れば、その出版社の屋台骨は20年は揺るがない。
山にのぼるとは言うが、山にあがるのが、まず言わない。天にものぼる気持ちといっても、天にもあがる気持ちとも言わない。なぜか?
 「こだわり」の本来の意味は、拘泥すること、難癖をつけていること。だから、いい意味で使ってはいけないのだ。そうだったんですか・・・。これまた、知りませんでした。
 辞書用の紙は特殊なもの。厚さは50ミクロン。重さも、1平方メートルあたり45グラム。そして裏写りはしない。問題は、ぬめり感。指に吸いつくようにページがめくれる。しかも、紙同士がくっついて複数のページが同時にめくれてしまうことがない。
 辞書づくりの人は用例採集カードを常時もって歩いている。何か目新しいコトバに出会うと、その場ですぐにカードに書きとめる。
 うむむ、辞書の作成にかかわる人々は、相当重症のオタクとみました。でも、そんなオタクの人々が、日本の文化を下支えしているのですね。とても面白い本でした。
(2012年2月刊。1500円+税)

テレビは原発事故をどう伝えたのか

カテゴリー:社会

著者   伊藤 守 、 出版   平凡社新書  
 ふだん、リアルタイムでテレビを見ることはまったくない私ですが、さすがに去年の3.11のときには、日本はこれからどうなるのかという不安とともにテレビを注視していました。
この本は、テレビが原発事故をきちんと国民に伝えていたのかどうか、それを検証しています。
 結論としては、ノーと言われざるをえません。「大本営発表」と同じで、心配ないと根拠なく繰り返した政府発表をなぞっただけでした。
 政府の「ただちに人体に影響のあるものではない」との発表をただ繰り返すだけのテレビ報道に対して、多くの人が不安や苛立ちをいだいた。
 NHKの解説は、政府の会見内容をより詳しく説明し、解説することに終始した。
だから、NHKって、本当に公共放送なのか、政府を唯一のスポンサーとする民法なのではないかと思ってしまうのです。
福島第一原発から飛散する放射性物質の量がはっきりしていないのに、放出される放射能は微量だと断定的に主張され、かつ、健康への被害はないと断定された。ところが、政府の中枢も、警察も、すでに放射能が飛散していることを承知していた。メディアは、その事実を把握できていなかった。
3月11日の15時30分に1号機が爆発した。日本テレビ系列の副島中央テレビのカメラがとらえていた。ところが、この映像が日本テレビ系列の全国ネットで放映されたのは、爆発から1時間14分も過ごした16時50分だった。
テレビは、政府や保安院の発表に依拠して、事態をむしろ楽観視する方向にリードしていった。政府発表にのみ依拠して、傍観者的に事態を説明するだけ。
 「即、人体に影響が出る値ではない」
 私たちは、3.11のあと、何度となくこのセリフを聞かされました。でも、本当でしょうか・・・???即死しなくても緩慢死というものがありますよね。本当に心配です。
(2012年6月刊。780円+税)

地方都市のホームレス

カテゴリー:社会

著者   垣田 裕介 、 出版    法律文化社 
 ホームレスの人々がいるのは、決して大都会である東京そして福岡市だけではありません。福岡県内の小都市にも少なからず存在しています。この本は大分市のホームレスの実情を聞きとりしつつ究明しています。
日本の野宿生活者は、1990年代に著しく増えた。2002年8月ホームレス自立支援法が制定、実施された。
 ホームレスのうち野宿生活をしていないものを、「野宿状態にないホームレス」と呼ぶ。厚生労働省によるホームレスの目視による概数調査の結果、全国には2003年に2万5千人、2007年に1万8千人、2008年に1万6千人を割るといった減少傾向にある。
野宿生活者は50~60代に集中している。野宿が5年以上の者が4割強。
 生活保護を野宿生活者が申請したとき、路上、公園のままでも開始決定するのは、自治体の2割にすぎない。
野宿生活者のなかで女性が1割を占める。
野宿生活の7割は収入のある仕事をしていて、その7割はアルミ缶などの廃品回収する都市雑業である。1割は建設日雇。仕事をしている者の平均月収は4万円。
年金を受給しながら野宿生活している人の年金月額は3万円、8万円、10万円そして14万円となっている。借金をかかえているため、その取立から逃れるため、野宿をしている。
 収入としては、自動販売機やコインパーキングのおつり拾いもある。食事としては、パン屋が廃棄する売れ残りのパンがある。コンビニの賞味期限切れ弁当は、以前と違って食べられなくなった。コンビニ側が食べられないようにしているから。
 野宿生活者の4分の1が、ひとり親世帯に生まれ育っている。
野宿生活者の最終学歴は、中学卒業が5割強、高校卒業(大学中退をふくむ)が4割強。
刑務所から出所した者が、野宿生活をすることも少なくない。
地方都市でもホームレスが増えているということは、それだけ家族の絆が弱まっているということですよね。人と人とのつながりをもっともっと強めたいものです。
(2011年6月刊。3000円+税)

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