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カテゴリー: 社会

あたらしい憲法草案のはなし

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  自民党の改憲草案をひろめる有志連合 、 出版  太郎次郎社エディタス
 著者のフルネームは、自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合です。
 1947年に文部省が中学生向けにつくった教科書『あたらしい憲法のはなし』と同じ体裁で自民党の改憲草案の時代錯誤であり、危険な内容をとても分かりやすく解説しています。 
ウソでしょ、まさか、今どきそんなこと言わないでしょ・・・、と突っ込みを入れたくなる場面ばかりなのですが、アベ首相もイナダ政調会長も、頭の中には、ここに書かれていることを本気で信じ込んでいて、実現しようとしているのです。
先日の参院選のとき、この本が国民に、とりわけ若い人に爆発的に読まれていたら、投票率が10ポイントも上がり、野党統一候補が圧勝して、自・公政権を覆すことができたと思います。
 本文60頁、800円ほど、一気に読めます。本書がとりわけ若い人に読まれることを願っています。
自民党の改憲草案の三原則は、
 一、国民主権の縮小
 一、戦争放棄の放棄
 一、基本的人権の制限
自民党の改憲草案の前文では、主語が「日本国民」から「日本国」に変わっている。これは、国民を必要以上につけあがらせてはいけないという考え方による。主語を変えて、国の中心が「国民」ではなく、「国」そのものであることをはっきりさせている。国があってこその国民なのである。国民主権という名のもとで、国民が調子に乗りすぎるのを防ぐために、国民主権を縮小する。
 憲法9条を変えて、日本は正々堂々と、自衛のための戦争ができるようになる。しかも「自衛権の発動」には、制限がもうけられていないので、自分の国を守るためなら、どんな戦争でもしてよいことになる。これを「積極的平和主義」と呼ぶ。国防軍が守るのは、あくまでも「国」であって、「国民」ではない。国の安定のためならば、軍隊は国民にも銃を向ける。どこの国でも、今も昔も、軍隊というのは、そういう組織なのだ。
 しかし、みなさん、心配は無用。国防軍に殺されたくないなら、政府に反抗したり、騒いだりしなければよい。
これまでの憲法では、たくさんの権利が国民に与えられている。これでは国民がつけあがって、権利、権利と騒ぐのもあたりまえ。だから自民党は国民が勘違いしないようにする工夫をこらした。国をつかさどる大きな仕事に比べたら、個人の権利などは小さな問題でしかない。
民主主義は平和なときはいいかもしれないが、非常時には邪魔なだけで、ひとつもいいことはない。憲法草案の三原則は「日ごろのそなえ」で、緊急事態条項は「いざというときの切り札」。この両面からのまもりで、日本はますます強い国になる。
民のくせに国のリーダーに命令するなんて、おこがましい。
まだまだあります。たとえば、基本的人権は日本の国土にあわない、個人より家族を大切にする、などです。こんなことを主張している自民党の改憲草案をぜひ一度、手にとって読んでみてください。あなたは、それでも自民党を支持しますか・・・。改めておたずねしたいです。
もっと早く刊行されて、参院選の前に爆発的に読まれてほしかった小冊子です。いえ、今からでも決して遅くはありません。
(2016年6月刊。741円+税)

福島第一原発・廃炉図鑑

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  開沼 博 、 出版  太田出版
 これだけ地震の多い国なのに、まだ原発を再稼働させようとするなんて、電力会社は正気の沙汰ではありません。自分の金もうけのためなら、日本人がどうなろうと、日本列島に人が住めなくなろうと、そんなの知ったことじゃないという姿勢です。許せません。
3.11から早くも5年が経ちました。福島第一原発の廃炉作業の現状を知りたい人には打ってつけの本です。写真がたくさんあって、状況がわかります。そして「いちえふ」というマンガで、作業員の状況を紹介した著者のマンガもあるので、さらに理解を助けてくれます。
1号機から4号機について、図解して、その現況が紹介されています。
放射能汚染水対策も、それなりに動いているようです。問題は、燃料デブリの処理です。あまりにも高濃度の放射能を発しているため、今でもその存在状況は把握できていません。
 4号機から燃料取り出しは、幸いなことに無事完了しました。30人の作業者チームが一日最大6班、1班あたり2時間交替で作業したとのことです。
 いま、福島第一原発で作業している人は、1日あたり7000人にもなります。そして、1500社もの事業者が関与しているのです。
昨年(2015年)9月には大型休憩所に食堂がオープンし、温かい食事が食べられるようになった。それまでは、コンビニ弁当に頼っていた。そして、ローソンが出店した。
勤務開始時間の午前8時に間に合うよう、バスはいわき市内を6時20分にスタートする。だから、5時過ぎには起きてバス停に向かう。終業時は、16時40分、残業する人に向けて6時と7時に2便が出ている。
作業員の平均年齢は46歳。このほか除染のために働いている人が、1万9千人いる。
原発の廃炉に向けた作業が真剣に取り組まれていることを知って、少しだけ安心しました。それでも、やっぱり原発って怖いですよね。東電の社長や会長(取締役は全員)が、家族ともども「福一」の近くに居住すること義務づけてほしいと思います。そうすると、もっと真剣に東電という会社は安全確保を考えるのではありませんか・・・。
(2016年7月刊。2300円+税)

平成28年・熊本地震

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  熊本日日新聞社 、 出版  熊日出版
 震度7の前震(4月14日)と本震(4月16日)は、本当に恐ろしいものでした。前震を本震と考え、あとは余震があるだけだろう・・・なんて「常識」を見事に覆した地震は、まさしく大災害です。
 そして、その日以来、今日まで震度1以上の地震が1800回をこえています。つい先日(6月29日)にも震度4の地震がありました。震度4でも怖いものですが、今では、妙になれたところがあり、それがかえって不気味です。
 この写真集は、その熊本地震による被害状況をくっきりうつし出しています。ドローンを使った空撮もありますので、被害のすさまじさが手にとるように伝わってきます。
 なんといっても、阿蘇大橋が完全に消失してしまった状況をとらえた写真には息を呑みます。私も何度も通ったことのある大橋がまったく姿を消してしまったのです。近くの山肌には巨大な土石流のあとを認めることができます。
 そして熊本城です。天守閣の屋根に瓦がほとんどありません。痛々しいまでの丸裸です。そして、櫓は今にも崩れ落ちてしまいそうです。市内中心部に堂々とそびえていたお城に威厳を感じられません。残念です。
 益城(ましき)町は、民家がボロボロです。これでは住めません。
 大自然の脅威のなか、住民がボランティアの力も借りながらお互いを支えあって生活している様子の写真で少し救われます。自衛隊の災害救助活動は必要だと思いますが、地震にかこつけて憲法を停止させる緊急事態条項が必要だなんて主張する与党の政治家には腹が立ちます。
 子どもたちの笑顔も紹介されています。本当は、みんな怖いんだよね。でも、みんなで支えあって乗り切るしかないんだよね。
熊本で被災した皆さんが、無理なく、がんばってほしいと願わずにはおれません。
(2016年6月刊。926円+税)

フジテレビは、なぜ凋落したのか

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  吉野 嘉高 、 出版  新潮新書
 私はテレビを見ません。時間がもったいないからです。ニュース番組だって、NHKのアベやモミイにおもねる視点での解説なんて聞きたくもありません。そして、殺人事件など三面記事に出てくる殺伐とした画像で自分の目を曇らせたくはありません。ですから、フジテレビがどんな番組を放映しているのか、前と比べて今はどうなのかというのは、まったく実感のない世界です。でも、この本に紹介されている状況は分かるし、納得できますので、紹介します。
かつての王者だったころのフジテレビは、チャレンジ精神が旺盛だったようです。
1980年代にブレイクしたフジテレビは長らく放送業界のリーディング・カンパニーとして時代を先導してきた。
 ところが、今や、フジテレビは見る影もない。視聴率も営業成績も、ともに、かつてないほどの惨敗を喫し、社内の雰囲気もギスギスしている。かつてのフジテレビは、仲間意識は強いけれど、同調圧力が強いわけではなく、異才や鬼才がのびのびと能力を発揮できる雰囲気があった。ところが、「70年改革」によって、編成というテレビ局の「頭脳」と、制作という「身体」が分断され、その間に深い溝ができ、社内はギクシャクとして暗い雰囲気になった。仲間意識が希薄になり、現場の意欲が大きく減退していった。
 社長が労組を敵対視していたことから、会社全体のコミュニケーション不全が問題化していった。そして、番組制作が守りに入った。経済合理性に主眼を置いた組織改革は失敗した。視聴者に楽しんでもらうためには、制作者が自ら楽しまなければならない。つくる側が楽しんで入れば、自然にその楽しさが視聴者にも伝わっていく。
フジテレビは1997年、お台場に社屋を移転した。旧社屋にあって、新社屋にないもの。その一つが「大部屋」。熱エネルギーの発生源であり、関係者に一体感をもたらしていた「大部屋」がなくなった。
そして、成果主義の社員評価がとりいれられると、同僚が助けあう「仲間」から、争って負けるわけにはいかない「敵」に変わってしまう。社員が「勝ち組」と「負け組」にはっきり色分けされてしまった。番組制作上の上司の裁量が大きくなるのに反比例して、若手の自由度は低下していった。
このように分析されると、なんとなく分かりますよね。成果主義によって、目の前の視聴率で競争させられたりしたら、バカバカしくなってしまいます。自由にのびのびと、たまに経営者ともケンカできる。そんな雰囲気の職場こそ、良い番組がつくれるんだろうと門外漢の私も思ったことでした。
(2016年4月刊。740円+税)

日本会議の研究

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  菅野 完 、 出版  扶桑社新書
 安倍首相を支えている一群の人々がなんと改憲どころか反憲そして明治憲法の復活を目ざしているというのです。呆れてしまいました。
自民党の改憲草案は天賦人権説をとらないとしています(解説書)。これは基本的人権の尊重は法律の範囲内とするということです。つまり、基本的人権は権力の命じるところによっていくらでも制限できるとします。
 「最終的な目標は明治憲法の復元にある。しかし、いきなり合意を得ることは難しい。だから、合意を得やすい条項から憲法改正を積み重ねていくのだ」
「保守革命」は、歴史認識、夫婦別姓反対、従軍慰安婦、反ジェンダーフリーの4点に課題を集中している。
安倍政権は日本会議によって支えられている。日本会議と日本青年協議会は目黒区にあるオフィスビルの同じフロアーに本部を構えている。両者は間仕切りもない。日本青年協議会の会長である椛島有三は、日本会議の事務総長をつとめている。
 元最高裁長官(三好達)が日本会議の代表でしたよね。恥ずかし限りです。この本には、現在の寺田逸郎長官も退官したら日本会議の代表に就任するのだろうか・・・と、心配しています。万一そんなことになったら、とんでもないことです。やめてほしいです。
 椛島有三は、「生長の家」の信者として長崎大学を右翼的に「正常化」した実績をもとに中央で活躍するようになりました。そして、現在、日本会議の実務を取り仕切っている人物には、「生長の家」出身者が多いようです。
 もっとも、現在、「生長の家」は、こうした右翼的活動を一切停止し、むしろ先日、安倍政権に反対し、野党を支持するという声明を公表しています。敬意を表します。
 日本会議の実体とその人脈を探り出した貴重な新書です。
(2016年6月刊。800円+税)

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