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カテゴリー: 社会

無葬社会

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鵜飼 秀徳  、 出版  日経BP社
日本社会の現実の一端を認識させられた思いのする本でした。車中で一心に読みふけってしまいました。
2015年の死亡数は130万人。これが2030年には160万人を突破する。鹿児島県の人口170万人と同じだけの人が毎年亡くなっていく。
2030年には、孤独死予備軍は2700万人になる。核家族化の行き着く先が孤独死だ。
都内の戸山団地は高層アパートが16棟あり、人口3200人。ところが世帯数は2300。つまり、7割以上が独居状態。
都会の火葬場では炉が一杯のため、1週間から10日も待機させられる。
都会には、数千基を納骨できる巨大納骨堂が次々に出現して人気を博している。都内に10棟あり、そこではコンピュータ制御で遺骨が自動的に遺族の前に搬送されてくる。
火葬率は99.99%。日本は世界一の火葬大国。
全国の火葬場の大半は公営。ところが都区内では9つの火葬場のうち、6つは民営(東京博善)。火葬の原価は、1体あたり6~7万円。公営のように一律料金だと、赤字になる。
都会の高層マンションでは、管理組合の規約によって遺体を部屋に運び込めないところが多い。
電車の網棚に骨壺を乗せたまま、置き忘れたフリをして遺骨を遺棄するケースが増えている。
孤独死現場の清掃依頼は二つ。遺品整理と特殊清掃。遺体の発見が遅れたときの凄惨な現場には、誰も入りたがらない。
都会に出てきた団塊世代は、長男次男を問わず、「高額な土地付の墓はいらない」「死後の世界に興味はない」。遺骨は海や山野に撒いてほしい」などと考えている。
岩手県一関市には樹木葬を扱うお寺がある。ここでは人工物を一切つかわない。里山に散骨し、自然と同化していく。
隠岐にも、同じように散骨できる無人島がある。自然に還るというのはいいですね。昔のような石塔のお墓は、私も不要と思います。これも明治以降に石材店が広めたものなんですよね・・・。
海洋散骨は、あまり需要がない。遺族が手をあわせる場所がないし、風評被害を漁業者が恐れるから。
なるほど、ですね。人骨を集めて仏像をつくるというお寺もあるそうです。
日本の家庭に仏壇がどれだけあるか。戦後まもなくは80%。1981年に61%。2009年には52%。年々、低下している。わが家にも仏壇はありません。
団塊世代が次々に亡くなっていく日本では、お葬式のあり方、お墓のあり方もどんどん変わっていっています。
結婚式で仲人を立てなくなり、結納金も動かず、婚礼家具セットの購入もありません。そもそも結婚式をしないカップル、その前に結婚しない、同棲もしない男女が増えてきています。
ですから、人生の終末だって、当然変わるはずです。
お葬式を無宗教でやるというのも珍しくはなくなりました。そして、戒名をつけなくてもいいという意識も普通です。墓地を購入したり、墓石を建てるという意識も弱くなりました。はじめから納骨堂でいいと考えるのです。今でもたまに、親の遺骨の奪いあいみたいなケースに遭遇しますが、それはもうめったにあることではありません。
社会の移り変わりを大いに実感させてくれるレポートでした。一読に価する本です。
(2016年10月刊。1700円+税)
ついにチューリップの花が咲きはじめました。
16日の朝、雨戸を開けて庭を見ると、ピンクのチューリップの花を見つけました。庭に出てみると、白い花も咲いています。いずれも背の低い小さなチューリップです。
アスパラガスも出てきて、春の香りを味わうことができました。いよいよ、春が本番です。

お寺さん崩壊

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 水月 昭道 、 出版  新潮新書
坊主、丸もうけ・・・なんて、大ウソなんですよ。そう訴えている本です。
この本を読むと、なるほど、そうだろうなと納得します。だって、それほどお寺をみんな利用していないでしょ。
たとえば、お葬式にしてもそうですし、戒名にしても、私の身内が亡くなったとき、本人の遺思でつけませんでした。私も、そんなのいりません。
檀家が激減して、寺院経営は大ピンチ。そのとおりだと思います。
ところが、その一方で、怪しげな「寺院」のボッタクリ商法は昔も今も繁盛していますし、インチキ占いも相変わらずです。人間、困ったときには、どこかにすがりたいのですよね・・・。
いま、日本全国で、急激な勢いでお寺が崩壊している。いうまでもなく、経営難からだ。
清らかな精神的空間が日常から消えていくとき、荒れがちな「私」の心を鎮める装置を、いったいどこに求めたらいいのか・・・。
この10年間に、中国地方で宗教法人が減少した。広島で22法人、島根で24法人。とくに、浄土真宗系に多い。全国的には、6万法人(36%)が25年後には消滅していると推測されている。
代務住職とは、そのお寺本来の住職に代わって法事や葬式をつとめる近隣のお寺の住職のこと。
檀家の限界点は300軒。浄土真宗は葬儀のときお布施が他宗派より比較的安くて、100軒の檀家(門徒)がいるとして、年に300万円の収入となる。300軒だと900万円になる。年会費(護持費)は、1~2万円が普通なので、300軒の檀徒だと300~600万円。ところが、一般的なお寺では檀家は300軒にならないところが圧倒的。
したがって、お寺の住職は、年200万円ほどの給与となる。
宗教法人には、住職をふくめて3人以上の責任役員を置くことが法律で決まっている。
坊守(ぼうもり)は、住職の妻のこと。
寺族は、寺院に生まれた人間や住職の妻のこと。
ご院家(いんげ)さん。お坊さん同士の呼びかた。
住職の息子が跡取りを拒否することも珍しくない。
院号は、20万円以上の寄付があった人が対象。立派な布施行をしたことに対して授けられるのが院号。地方寺院が院号授与によって浄財をもらうことはない。ということは本山へ行く。ただし、後日、寺院に手数料として15%の「お返し」が本山からある。
浄土真宗本願寺派では、前年比で4億円のマイナスとなっている(H27)。
浄土真宗は、阿弥陀如来一仏が中心。
お布施は、本来なら、自分の手にあまるものを仏さまに差し出すことで、はじめて心に安らぎをいただけるという考えにもとづくもの。
他力本願を、努力しないで人頼みにするというのは、まったくの誤用。仏の本当の願い、それ(他力)に導かれることによって、煩悩の固まりである私たちであっても悟りの世界を垣間見られるようになるみたいだ。これが本願他力とされるもの。
水月とは、みづきと読むそうです。福岡のお寺の若き(若くもないのですが・・・)住職による本です。
(2017年1月刊。760円+税)

キャスターという仕事

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 国谷 裕子 、 出版  岩波新書
インタビューする前には、徹底して調べておく。だけど、本番では、いったん白紙に戻して、目の前の人物の話によく耳を傾ける。そうすることで話についていけ、的確な質問が出来る。予定した筋書きばかりを追おうとしたらダメ。
これはキャスターとしての心構えですが、弁護士の反対尋問についても言えることです。
ともかく目の前の証人の言葉そして表情を、よく聞き、また見てから、その隠された弱点をあばき出すのです。下を向いて必死でメモをとっていたらいけません。
準備は徹底的にする。しかし、あらかじめ想定したシナリオ本番では捨ててのぞむ。言葉だけでなく、その人全体から発せられているメッセージをしっかりと受けとめる。そして大切なことは、きちんとした答えを求めて、しつこくこだわる。
良いインタビューは、次の質問を忘れて相手の話を聞けたときに初めて行えるもの。
キャスターは、はじめに抱いた疑問を最後まで持ち続けることが大切だ。
インタビューに必要なものは、その人を理解したいという情熱だ。
著者が高倉健をインタビューしたとき、答えがかえってくるまでに、なんと17秒もの空白が生じたそうです。沈黙の17秒って、すごく長いですよね。でも、著者はじっと耐えて待ちました。えらいですね。並みの人にはマネできませんよね。
「あいまいな言葉で質問すると、あいまいな答えしか返ってこない。正確な質問をすると、正確な答えが返ってくる。明確な定義をもつ言葉でコミュニケーションすれば、その人は自分の言葉に責任をもつようになる」
これは、カルロス・ゴーンから聞いた言葉だそうです。さすがにフランスで高等教育を受けた人の言葉だと思いました。
正確な答えを引き出すためには、インタビューは、まさに正確な質問をしなければならない。難しいのは、入念に準備をして、その準備のとおりインタビューしようとすると、大失敗につながりかねないこと。
想定問答を練って、そのとおりに質問すると、実際のインタビューでは絶対にうまくいかない。相手の話が全然聞こえてこなくなる。自分のシナリオばかりに気をとられ、頭の中は、「次に何を質問しようか」ということで一杯になってしまうので、目の前の人の話や身体全体から出ている言葉を聞くことができなくなってしまう。
これは、法廷における敵性証人の反対尋問と、まったく同じことです。
23年間もNKHの「クローズアップ現代」でキャスターをつとめた著者ならではの話が紹介されていて、なるほど、そうだったのかと思いました。といっても、私自身はテレビは見ませんので、「クロ現」をみたことは、ほとんどありません。
緊張感のある番組づくりに著者たちが精魂かたむけていたことが、ひしひしと伝わってくる本でもあります。
NHKには、このあいだまで史上最低といわれた籾井会長が君臨していましたが、新会長のもとでも、相変わらずアベ政治の片棒かつぎをしていくのでしょうか。やめてほしいです。
権力におもねることのない番組づくりを期待します。
(2017年1月刊。840円+税)

「快傑ハリマオ」を追いかけて

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 二宮 善宏 、 出版  河出書房新社
昭和35年(1960年)4月から翌年6月まで、テレビの人気番組でした。全65話を私が見たかどうかは覚えていませんが、その主題歌は今も鮮明に覚えていますし、サングラスのカッコいい姿に私たちは熱狂していました。
私が11歳から12歳にかけての放映ですから、まだ小学生です。わが家にテレビが入って2年目くらいではなかったでしょうか。
その前の人気テレビ番組は「月光仮面」でした。オートバイにまたがって白くて長いマフラーをなびかせた月光仮面は、まさしく私たち子どものヒーローでした。
「ハリマオ」の主題歌はそのころ人気絶頂の三橋美智也がうたっています。驚くことに、この「ハリマオ」の歌は、今もカラオケで好まれる歌の上位に入っているそうです。それだけ団塊世代に印象深いし、歌いやすいのです。
主人公のハリマオは、裾をなびかせた白いパンタロンに頭に巻いた白くて長いターバン。そして黒のサングラスです。ハリマオを狙う悪役たちが何人もいて、それを次々に危機を脱出したハリマオがやっつけるのです。
この本によるとハリマオを演じた藤木敏之という役者は、その後、芸能界を引退して都内で飲食店を経営していたことまで判明していますが、その後の足どりはまったく判明していないとのことです。何があったのでしょうか・・・。
ハリマオのモデルは、福岡出身の谷豊という日本人。マレーに渡って盗賊団を組織してマレーを支配するイギリス人や華僑を襲っていた。そこに日本軍の諜報機関(F機関)が目をつけて、日本軍のスパイとして活動していたが、戦争中に30歳で病死した。
驚いたことに、谷豊はF機関の軍属として「戦死」とされて、靖国神社に合祀されているそうです。著者は、つくられた軍国美談だとしています。
しばし小学生のころの気分に浸ることのできる本でした。
(2016年11月刊。2000円+税)

ヘイトデモをとめた街

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 神奈川新聞「時代の正体」取材班 、 出版  現代思潮新社
舞台は川崎市川崎区桜木。
50年前の4月(1967年4月)、私は大学に入ったばかりでした。川崎からバスに乗って桜本へ出かけました。当時、桜木には東大生をはじめ何人かの先輩たちが下宿していたのです。川崎セツルメントの学生セツラーが桜本地域で子ども会活動をしていて、その何人かが桜本に下宿して、そこから大学へ通学していました。私は駒場での新入生歓迎オリエンテーション(新歓オリ)のあと、現地の川崎へ様子を見に行ったというわけです。それから3年あまり地域は別(私は幸区古市場)で、青年部パート(若者サークル)の学生セツラーとして活動しました。私が下宿したのは古市場です。
桜本では、パチンコ店の裏の木造アパートの2階の一室で先輩セツラーの話を聞き、まさしく別世界、異次元の話を聞いて圧倒されてしまいました。ともかく先輩セツラー(男女とも)の威勢の良さ、その元気には声も出ないほどでした。
なぜ学生セツルメントが桜本で子ども会活動をしていたのかというと、そこが在日朝鮮人、韓国人をふくむ底辺労働者が多く居住する町だったからです。子どもたちの非行も珍しいことではありませんでした。学生セツルメント活動は、今でいうボランティア活動の一種だと思いますが、私にとっては世間の現実に大きく目を開かせる学校のようなところでした。私は、そこでたくさんのことを学びました。おかげで、大学には語学の授業以外、まともに行かず、川崎市内を週に何日もうろうろしていました。そのうち、大学2年生の6月から東大闘争が始まり、ついに正規の授業自体がなくなってしまったのです。ですから、ますます私は川崎にいりびたりになっていました。
その桜本にヘイトスピーチをするデモが押しかけてきたというのです。絶対に許せないことです。ヘイトスピーチで何が叫ばれているのかを、ここで文字として紹介したくはありません。あまりにおぞましい言葉の羅列です。まさしく、それは犯罪そのものです。少しだけ品のいいセリフは次のようなものです。
「多文化共生、断固反対」
多様な文化が共生してこそ文明の発展はあったのです。それは世界の歴史が証明しています。それに「断固反対」ということは、野蛮人に戻れと叫んでいるようなものです。自らが野蛮人だと名乗っているわけです。
JR川崎駅から臨海部の京浜工業地帯へ車を走らせること10分あまり、工場群に隣接する街の玄関口、桜本商店街にたどり着く。ここは在日コリアン集住地域。その一角に、全国でも類例をみない施設がある。川崎市ふれあい館。在日コリアンと日本人が交流する場として川崎市が1988年に開設した。
2013年5月から、JR川崎駅周辺の繁華街や市役所に面した大通りを巡るコースでヘイトデモが10回も行われてきた。ところが、2015年11月、桜本地区にヘイトデモがやってくるという計画が知らされた。さあ、どうするか・・・。
川崎駅周辺に歓楽街をかかえる川崎は在日コリアンの街であるとともに、フィリピンやタイ、日系人といったニューカマーの街でもある。
2016年1月、「ヘイトスピーチを許さない」かわさき市民ネットワークが結成された。
ヘイトスピーチは明らかな犯罪行為。日本も加入する人種差別撤廃条約は、締結国は人種差別を禁止し、終了させる義務を負うと定めている。ヘイトスピーチに中立はない。被害にさらされている人たちに肩入れすることは、偏っていることでも、不公正なことでもない。
「ぶち殺せ」なんていう言葉が表現の自由であるはずがない。差別の問題に中立や放置はありえない。差別は、差別を止めるか否かだ。現状において、国は差別を止めていない。それは、残念なことに差別に加担していることになる。
まともに関心を示し、話を聞いてくれる場をつくったのは共産党だけだったとして、福岡県弁護士会の会員でもある仁比聡平参議院議員の国会での追及が紹介されています。頼もしい限りです。
ヘイトスピーチをする人は、日本では少数派だと言われているが、現実には広く許容されている。
残念なことに、この指摘はあたっているように思われます。全国チェーンの「アパホテル」に、南京大虐殺は嘘だったというデマ宣伝の本が各部屋に置いてあることが問題になっていますが、お隣の韓国・中国に戦前の日本が何をしたのか、その真実から目をそむけて、本当の親善と交流はありえません。
ヘイトスピーチは犯罪。そのことを強く確信させる本でした。
(2016年9月刊。1600円+税)

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