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カテゴリー: 生物

花と昆虫のしたたかで素敵な関係

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 石井 博 、 出版 ベレ出版
コウモリが花と密接な関係をもっているというのに驚きました。
コウモリに受粉を依存する植物(コウモリ媒)の花は夜間に開花し、発酵臭など強い匂いをもつ。音を反響しやすい構造の花となっている(アメリカ)。
花の周囲に音を吸収する綿毛を生やすことで、花の反響音を際立たせている。種ごとに固有の反響音をもっていて、コウモリは、その音響指紋によって花の種類を識別している。
花にとっては、植物の多様性が非常に高く、同種の植物が近くに生育していないことが珍しくない熱帯の植物にとって、コウモリの飛行距離が長い(1晩で50キロメートルも飛びまわるコウモリもいる)、学習能力が高いことは重要な意味をもっている。
コウモリと花とが、こうやって依存しあっているなんて、不思議ですよね。
性的擬態を行うランは、多くの場合、たった1種の送粉者だけを利用している。
特定少数の相手とだけ関係を結んでいる植物種や訪花者のことを、送粉生態学の世界では、スペシャリストと呼ぶ。植物にとって、スペシャリストの訪花者に送粉を依存することは、異種植物間の送粉を軽減させるには有効。なぜなら、スペシャリストの訪花者は、浮気せず特定の植物種ばかりを訪花してくれるから。ところが、その訪花者がいなくなると、受粉できなくなるリスクをかかえることにもつながる。
自家受粉によって生産された種子は他家受粉によってつくられた種子(他殖種子)に比べ質が劣ることが多い。このため、自家受粉を行うのは、植物にとって好ましいことではない。
送粉と受粉を終えた古い花が花色を変化させる。古い花をしおれさせずに維持すると、株全体を目立たせることができ、より多くの送粉を惹き寄せることができる。しかし、もし株にやってきた送粉者たちが古い花にまで訪れると、送粉者に付着していた花粉が、古い花に付着してムダになってしまう。そこで、訪れてほしくない古い花の色を変えることで、その花が報酬をもたない、訪れる価値のない花であることを、送粉者にわかりやすく伝えている。
自然界で生物たちは、昆虫も花も、みんな知恵を働かせて一生けん命に生きていることがよく分かります。
農薬は、昆虫の免疫力を下げるため、寄生生物やウィルスへの抵抗性を下げ、これらの蔓延を招く危険がある。そうなんですね、豊かな自然環境をきちんと次世代につなげていきましょう。
不思議な生物界の話が満載の本でした。
(2020年3月刊。1800円+税)

美しい生物学講義

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 更科 功 、 出版 ダイヤモンド社
弁護士生活をしているうちに、人間っていったいどんな存在なのか、つくづく考えさせられました。不倫は、男と女、セックスの意味ですし、子どもの親権争いでは、そもそも親子の関係はどうあるべきなのか、遺産相続では、兄弟姉妹の優劣はあっていいのか、老後の面倒はいったい誰がみるべきなのか…。まず、ヒトに近い、サル、そしてチンパンジーやらゴリラに関心が行きました。ところが、ボノボもいたり、セックスと社会平和の関係まで考えさせられます。
相続、世代継承という点では、植物だって動いている存在だということも分かってきました。すると、植物と動物とを結ぶ昆虫の存在も目についてきます。要するに、生物全体に目が行くようになったのです。
日本の屋久島(残念ながら、まだ行ったことがありません)には、樹齢2千年とか3千年という屋久杉がある。7千年をこすという推定は、今では信用されていない。
アメリカの標高2千メートル超の高地に生えているブリスルコーンパインは4千8百年という最長の樹齢が確認されている。
いや、アメリカのモハーベ砂漠に生育するクレオソートブッシュは1万1700年も生きている。いやはや、たまげてしまいます。
ミドリムシ(ユーグレナ)は、葉緑体をもっていて、光合成することができる。それで、植物だと思える。いったいミドリムシは動物なのか…。
実際には、動物でも植物でもない生物はたくさんいる。
今、問題のコロナ・ウィルスは生物ではないということ。すると、容易に撲滅できるはずなのに、彼らはなかなか絶滅しない。いったい、なぜ…?
生物とは、次の3つの条件をみたすもの。第一に、外界と膜で仕切られていること。第二に、代謝(物質やエネルギーの流れ)を行う。第三に、自分の複製をつくる。生物は水中で誕生したと考えられている。その理由の一つは、化学反応が起きやすいからだった。
若い読者に贈る生物学講義ということで、大変わかりやすい本になっています。そのため、既に「第6刷」が発行されています。すごいものです。私の本もこんなに売れてくれたら…と、切に願っています。
(2020年4月刊。1600円+税)

カラスは飼えるか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 松原 始 、 出版 新潮社
カラスを飼おうなんて、もちろん私は一度も思ったことはありません。真黒くて、不気味で、ゴミあさりをして道路を汚してしまう…。そんな悪いイメージしかカラスにはありません。
この本で著者は結論として、うっかりカラスを飼ってはいけないとしています。
なにしろ、カラスって、40年以上も長生きすることがあるというのです。せいぜい15年ほどのイヌやネコとは違うのです。
カラスは、人間には簡単になつくことはない。
カラスは、いたずら好き。気になるものは、すべてつつく。とにかくつついて、ぶっ壊す。それからもち去り、隠す。
カラスは絶望的にしつこい。ケージの留め金を外すくらいは朝飯前。
そんなカラスを飼うのは、やめときなさいというのが著者のご託宣です。分かりました。そうします…。
カラスは、三原色に加えて紫外線も見えている。石けんとかゴルフボールを持ち去る習性は、それと関係があるのか…。
カラスの肉は食えるが、あまりおいしそうでもない。カラスの肉は高タンパク質低カロリー。タウリンや鉄分を大量に含んでいる。
南アメリカには、過去も現在もカラスが分布していない。
うひゃあ、な、なぜでしょうか…。
カラスは仲間が死んだら、その周囲で大騒ぎする。これをカラスの葬式という。
若いカラスの群れには、はっきりした順位がある。上位のオスはよくモテるし、上位のオスをめぐって、メス同士も争うことがある。
カササギは、わが家の周囲にフツーにいる鳥です。毎年、電柱の高いところに立派な巣をつくっています。毎年、九電が巣を撤去しますが、子育てが終わってからのようです。このカササギの巣は丸いボール状の構造ですが、横向きに出入口があるとのこと。いつも巣は見ていますが、初めて知りました。
カササギは九州だけでなく、最近は北海道の室蘭や苫小牧付近でも繁殖している。これは、ロシアの貨物船から来たと思われる。
カササギは、カチ(勝ち)ガラスともいいますが、これは韓国語由来だそうです。韓国では、カササギのことをカッチと呼び、大変人気がある。カッチというカラスっぽい鳥としてカチガラスと呼んだのだろう。
これが著者の意見です。著者には『カラスの教科書』などもあり、まさにカラス博士です。
(2020年3月刊。1400円+税)
 アベノマスクが5月末になってようやく届きました。郵便ポストに投げ込まれていたのです。もうマスクは町中どこでも売っていますので、どこか必要なところへ寄付するつもりです。それにしてもつくって配るのに468億円かけ、また38億円かけて追加するなんて信じられません。政権中枢に近い会社がもうかり、配ったゆうちょが助かっただけではありませんか…。
 また、持続化給付金のほうも電通と竹中平蔵のパソナが濡れ手のアワのボロもうけをするとのこと。国民の不幸を喰いものにして金もうけに走るアベ政権にはほとほと愛想が尽きます。50代、60代の女性のアベ首相の支持率が2割未満だという世論調査が出ていますが、それも当然です。ここで怒らないと、いつ怒りますか。政治が生活と直結していることを身をもって知らされている今、世の男どもはいったい何を考えているのでしょうか…。

その犬の名前を誰も知らない

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 嘉悦 洋、北村 泰一 、 出版 小学館集英社
圧倒的な面白さです。ページをめくる手がもどかしく感じられました。
日本が初めて南極で越冬したのは1957年から翌58年にかけての1年間のこと。1958年2月、第一次越冬隊は無事に全員が南極観測船「宗谷」に収容された。引き続き第二次越冬隊が昭和基地で越冬するはずだった。ところが、悪天候のため急に中止となり、第二次隊も「宋谷」にひき戻された。すると、第二次隊のため昭和基地に残された15頭のカラフト犬は見殺しにされる…。
日本の国民世論は怒りに沸騰した。カラフト犬たちは、第二次隊員のため、逃げないよう鎖につながれたままなので、餓死するに決まっている。そして、大半はそうなった。
ところが、北大の犬飼教授は、1頭か2頭は生き延びる可能性があると予言した。
そして、1年後の1959年1月14日、第三次観測隊が昭和基地に到着すると、なんと、タロとジロという2頭が生きていたのです。
私も小学生でしたので、この感激ははっきりとした記憶があります。日本中が震えました。
捨てられた恨みからかみついてくるのを心配し、犬の世話係は恐る恐る近づいたのでした。そして、タロもジロも自分の名前を呼びかけられて、やっと安心して近寄ってきたといいます。恨んではいなかったのでした。顔をペロペロなめて、とても喜んだのです。
そして、この本は、実はタロとジロが生きのびたのには、この2頭をリードした先輩犬がいたのだということを解き明かしています。それは、1968年2月に昭和基地の近くで1頭のカラフト犬の遺体が発見された事実にもとづく推測です。この事実は、同時に行方不明になっていた福島隊員の遺体が見つかった報道のかげにひっそりと隠れてしまい、報道されることがなかった。
タロとジロは発見されたとき、やせおとろえていたのではなく、丸々と肥え太っていた。いったい、何を食べていたのか・・・。それは、昭和基地にあった貯蔵庫の食糧品などをリーダー犬とともに掘り出して食べていたのだろうと推測されています。そして、タロもジロも、昭和基地に着いたときには幼犬だったのでした。これも生きのびた理由のようです。
なーるほど、と思いました。
ペンギンとかアザラシを襲って食べて生きのびたという説もありましたが、それは、あまり現実的ではないようです。
この本の面白さは、このような謎解きもさることながら、カラフト犬を犬ゾリ用に訓練し仕立て上げていく過程、南極での犬ゾリ旅行の大変さは、まさに手に汗握る迫真の状況描写の連続だからです。
カラフト犬にも、本当にいろいろ性格の違いがあること、極限状態に置かれたら、ヒトもイヌも一緒になって困難を乗りこえようと心を通わせる必要があるというところに、心打たれました。犬にも感情があり、プライドがあり、根性があるのです。あとは、それを人間がどうやって奮い立たせるか、これは信頼なくしてはやれないことです。
5月の連休最後の日曜日、寝食を忘れて(ウソです。でも、おかげで昼寝しそびれてしまいました)一心不乱に読み通しました。
少しでも犬に関心のある人には絶対におすすめの本です。犬って、やはりすごいですね…。
(2020年4月刊。1500円+税)
 土曜日の夜、うす暗くなったので、孫たちとホタルを見に行きました。歩いて5分のところに小川があり、まさにホタルが乱舞していました。これまでになく、たくさんのホタルがフワリフワリと明滅しながら漂っていました。ときどき手のひらに乗せてホタルの光を手でも感じました。孫の手のひらにも乗せてやると喜びます。
 土曜日の午後は、梅の実をちぎりました。バケツに2杯とれ、早速、梅ジュースを味わうことができました。
 日曜日の午後はジャガイモ掘りです。池中から大小さまざまなジャガイモが姿を見せ、孫も大喜びで、夕食のとき小さなジャガイモをバタジャガでいただきました。
 田舎に住む良さをしっかり味わっています。

眠れる美しい生き物

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 関口 雄祐 、 出版 エクスナレッジ
鳥は飛びながら眠ることができる。高高度で、上昇気流に乗っているときは、捕食のリスクもなく、衝突・墜落のリスクもない。ただし、グンカンドリは地上では10時間も眠るのに、飛行中はわずか40分ほどしか眠らない。
鳥類は半球睡眠できる。大脳半球を交代に休ませるのだ。鳥類の先祖は恐竜なので、恐竜も半球睡眠していた可能性はかなり高い。
ウシは、食べる時間と眠る時間の両立を図った。食べながら、うとうと眠り、眠っているあいだも食べ続ける。
動物園のカバのオスは毎日20時間も眠っている。ところが、メスが同居すると、わずか5時間しか眠らなくなった。相手のメスは、一貫して7時間以上は眠っているのに…。
イヌも、近年、ヒトと同じく、睡眠時無呼吸症候群があるのが発見され、問題となっている。
オオカミには天敵がいないので、ぐっすり眠るが、仲間とぴったりくっついて眠ることはない。
オオカミ1頭が暮らすのに30平方キロが必要とされ、7頭の群れを維持するのには東京都全域の相当する自然が必要となる。
ミーアキャットは、群れの順位は厳しく、ボスは日中37%も休んでいるのに、下っ端だとわずか10%しか休めない。
ライオンとトラが併存しているところではトラが強い。トラの安眠を妨害する唯一のものは空腹だ。なーるほど、ですね。
ナマケモノは、野生の環境では9~10時間しか眠っていない。それほど怠け者ではない。
コアラの活動時間は、夜中の6時間だけ。
マッコウクジラは海の中で、垂直姿勢で眠る。睡眠時間は7時間で、最長30分は眠っている。
タコは夜行性で、睡眠中に筋肉が無意識で動いてしまうので、色を激しく変化させながら眠っている。
脳のないクラゲも実は眠っている。
ゴリラが眠るのは、寄生虫のいないところで、眠りを妨害するゾウの群れから離れているところ。
睡眠は生き物に必要不可欠なものですが、生き物がいろんな眠り方をしているのが写真でよく分かりました。ほほっとする、楽しい写真集でもあります。
(2020年1月刊。1600円+税)

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