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カテゴリー: 司法

キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る

カテゴリー:司法

著者:木村晋介、出版社:筑摩書房
 『マークスの山』(高村薫)を1週間かけて精読し、公判調書を読みくだく要領で 70枚ものフセンを貼りつけ、登場人物の相関図を作成しながら読破したというのです。すごーい。それだけで感嘆しました。『マークスの山』は、私は旧版と新版と2度よみましたが、そのたびに感銘を深めるだけで、そこに矛盾があるなどと感じたこともありませんでした。ただ、実は、気がついたことが一つだけありました。登場人物が、なんと私と同世代だったということです。それを考えると、たとえ権力の上層部にいたとしても、そう簡単に事件をもみ消したり、シロをクロと言いくるめるような「権力」の行使なんて無理だよな、ということです。
 横山秀夫の『半落ち』にも挑戦しています。なぜ、被疑者は空白の2日間について真相を語らなかったのか。それを話しても誰も不利益を受けないのに・・・、という指摘は、私も漠然とした疑問を抱いていたところでした。そして、弁護士が被疑者と会うには弁護人選任届が提出されていることが要件ではない。それを著者は知らなかったのではないか、という指摘には、なるほど、そうですね、とうなずいてしまいました。
 そして、夏樹静子の『量刑』にも果敢に挑戦するのです。これには驚きました。『量刑』は、私がとても感心したミステリー小説だったからです。ところが、さすがはキムラ弁護士です。『量刑』のアラをたちまち見破ってしまいました。業務上過失致死傷罪を構成するのを落としているというのです。これは、すごいことです。
 ほかにも、いろんな本が取りあげられ、キムラ弁護士の教養の深さに感じいりながら読みすすめていきました。こんなミステリー小説の読み方もあるのですね。すごいですよね、すごいです。キムラ弁護士の眼力に比べると、私って、まだまだ弁護士力がかなり不足しているようです。でも、これで弁護士35年目に入っているのですけど・・・。少しばかり自信をなくしてしまいました。シュン・・・。
 お正月休みに庭の手入れをして、今はかなりすっきりしています。黄色い小さな花をたくさんつけたロウバイが盛りです。ほんとうにロウのような色をしています。匂いロウバイと言いますが、実は、あまり匂いは感じません。私の鼻が悪いのかもしれません。
(2007年11月刊。1400円+税)

ロッキード秘録

カテゴリー:司法

著者:坂上 遼、出版社:講談社
 吉永祐介と47人の特捜検事たち、というサブ・タイトルがついています。そうです。田中角栄が首相在位当時の5億円ものワイロをアメリカのロッキード社からもらって逮捕され、有罪となった、あのロッキード事件について、検察官たちの動きを刻明に再現した本です。
 ここに登場する検事のうち3人は、私が司法修習生のときに指導を受けました。横浜修習のときの指導担当だったのが松田昇、吉川壽純の両検事です。もちろん、いずれも悪い人柄ではありませんでしたが、それほど冴えているという印象はありませんでした。どちらかと言うと、田舎の人の好いおじさんタイプの検察官だという印象を受けていました(松田検事)。村田恒検事は前期・後期のクラスで検察教官でした。いかにも熱血検事で、村田検事にあこがれ、私のクラスでは大勢の修習生が検事志望になりました。でも、理論的な深みはなく、ただひたすら一直線に突きすすむという印象を受けました。まあ、どちらにしても、若くて生意気盛りの私の印象ですから、たいした根拠があるわけではありません。私の不遜な印象にもかかわらず、みなさん、その後、ロッキード事件で大手柄を立てて、大出世していったのは周知のとおりです。
 事件は1972年(昭和47年)8月のこと。ロッキード社のトライスター(Lー1011)を全日空(ANA)に購入させようと、丸紅の社長は田中角栄の目白台の自宅に訪ね、お礼に5億円を払うと申し込み、田中角栄はこれを承知した。田中角栄の働きかけで、全日空はトライスター機を購入することになった。半年たっても5億円の支払いがなかったので、1973年6月ころ田中角栄の榎本秘書が催促した。そこで、ロッキード社は丸紅を通じて5億円を4回に分けて渡した。イギリス大使館近くの路上で1億円、公衆電話ボックスそばで1億5千万円、ホテルオークラ駐車場で1億2500万円、丸紅社長室宅で1億2500万円、いずれも現金が段ボール箱に入れられており、車のトランクに積み込まれた。
 いったい、この5億円は何に使われたのか?1974年の七夕参議院選挙につかわれた。議員28人に対して1人2000万円が田中角栄から手渡された。1973年11月から74年6月にかけてのことである。さらに、田中番をはじめとするマスコミ関係者に対してもお金が渡っている。
 田中角栄は5億円をフトコロに入れたのではなく、自民党のためにつかった。そして一部はマスコミ抱きこみ工作資金になったというのです。
 この本には、検察庁内部の合意形成過程と指揮権発動の状況が刻明に再現されています。なるほど、そういうことだったのかと思い知らされます。
 そして、検察庁と警察庁とのサヤあても紹介されます。検察庁は警察をまるで信用していません。警察を捜査にかませたら、秘密の保持なんてまるでできないのです。警視総監経験者が何人も自民党議員になっていますし、警察の体質がズブズブなのです。
 いま神奈川県警の現職警備課長がインチキ宗教の霊感商法の主宰者側だったということが発覚して大問題になっています。警察庁の警備局にも出向していたというノン・キャリアのエリートの不祥事です。恐らく共産党対策では成績をあげていたのでしょうが、まことにお粗末な警察です。内部チェック・システムがまるでなっていないのでしょう。
 警察の捜査能力には、技量、もっているアメリカからの資料、捜査意欲、守秘の点で問題がある。このように検察庁の側は考えていました。
 警察のことを検察の幹部が考える必要はないし、警察の顔を立てすぎる。
 ところが、検察庁のトップは警察との協調を重視し、第一線の検察官は保秘できない警察との共同捜査を嫌がったという場面が何回も登場します。
 30年以上前に起きた事件ではありますが、検察庁の果たすべき役割を考えるうえでも思い起こすに足りる事件だと思います。
(2007年8月刊。1700円+税)

マチベンのリーガルアイ

カテゴリー:司法

著者:河田英正、出版社:文藝春秋
 私と同じ団塊世代の弁護士です。岡山で弁護士会長をつとめ、法科大学(ロースクール)で教え、消費者問題に取り組み、オウム真理教と果敢にたたかいました。還暦を機に、そのブログを本にしたものです。毎日のエネルギッシュで地道な活動に触れ、頭の下がる思いです。
 刑事事件で、裁判官に対して「寛大な処分をお願いする」と言ってしまったことを後悔します。いつもは言わない言葉だというのです。ええーっ、私は、よく使いますが・・・。
 判決は裁判官にお願いして出してもらうものではない。法の見地から適正妥当な判決がなされるべきものであり、弁護人はその判決はどうあるべきか、被告人側からみた意見を主張すべきなのである。「裁判長さま」とか「判決をたまわりたい」など、卑屈な言い方はやめよう。これには私もまったく同感です。
 「上申書」という書面もおかしいですよね。「お上」に恐る恐るモノ申すということでしょう。冗談に「お上(かみ)」と言うのは許せますが、本気で言ってはいけません。国民が主権者であり、主人公なのです。裁判官も公務員の一人として、公僕にすぎません。
 天衣無縫とは天女の羽衣のように純粋に自然な流れのこと。私は知りませんでした。
 あちこちの裁判所を駆けめぐるため、昼食はコンビニでおむすびを買って運転しながらほおばることもある。もう少し時間があるときは、回転寿司やセルフのうどん店に立ち寄る。えっ、セルフのうどん店って、何のことですか?いずれも待ち時間ゼロで、すぐ食べられるからです。私は、最近ダイエットにはげんでいますので、昼食を抜いたこともあります。お茶で我慢しました。昼はおかずだけにしています。パンもパスタもやめています。
 クレサラ事件、つまり、たくさんの借金をかかえた人の相談に乗るのは疲れる。このように書かれています。実際そのとおりです。この本を読むと、弁護士の仕事って気苦労が多く、疲れてしまうものだということがよく分かります。著者は夜7時から示談交渉したり、土曜も日曜も相談に乗ったりして、気の休まる暇がないようです。私は夜に人と会うのはしていませんし、土・日は完全に事務所を閉めて休み、示談交渉もお断りしています。
 2歳ほどの子どもを連れてやって来た借金の相談。終わったとき、その子どもは「どうもすみません」とはっきり言って頭を下げた。親のいつもの仕草をまねたのだ。このくだりを読んで、悲しい思いをしました。子どもが、いつのまにかサラ金の取り立てに対して親の言う言葉と態度を覚えてしまったのです。
 坂本弁護士一家がオウム真理教(現アーレフ)に殺される3日前、著者の前に上祐史浩と青山弁護士がやって来た。著者が「オウムはカルトである」とコメントしたことの撤回を求めてのこと。1989年11月1日、上祐は著者に対して「おれは優秀だ。優秀なおれが洗脳なんかされるはずがない」と言い切ったとのこと。なんと傲慢なモノ言いでしょう。オウム真理教は坂本弁護士一家を殺害しておいて、ずっと否認していたのですから、許せません。
 いかにも誠実な著者の人柄がにじみ出ている本でした。読み終わって爽やかな気分に浸ることができました。ただ、表紙の絵がちょっと厳しすぎる表情なのには違和感があります。私の知る著者はもっと柔和な印象なのですが・・・。
(2007年12月刊。1429円+税)

乗っ取り弁護士

カテゴリー:司法

著者:内田雅敏、出版社:ちくま文庫
 実は、この本は、ここで取りあげて紹介したくない本なのです。でも、著者からぜひ取りあげてほしいと頼まれていますので、思いきって紹介することにしました。
 なぜ私が紹介したくないかというと、著者の書いた内容が面白くないからではありません。いえ、逆なのです。でも、ということは、とんでもない悪徳弁護士がいるということなのです。こんなにひどいことを弁護士はするのかと世間の人に思われてしまったら、弁護士全体の大きなイメージダウンになってしまう。私なりに、それを恐れたというわけです。
 いえいえ、もちろん悪徳弁護士に対して果敢にたたかいを挑んだ勇気ある弁護士がいて、ついに逆転勝利を勝ちとるわけです。その顛末がことこまかに描かれていますので、読みものとしても手に汗にぎるほどの面白さがあります。著者がとった法的手続きについては、弁護士としてもいろいろ参考になるところがあり、勉強になる本でもあります。
 でも、悪知恵の働く弁護士が資産家の依頼者を言いくるめて、身ぐるみはいでしまうって構図が、不思議なほど起きるんですよね。実は、私の身近にもそんな弁護士がいました。私と同じ団塊世代の弁護士でした。今は弁護士会の懲戒処分を受けて弁護士の仕事をしていません。見かけはまったくの紳士です。物腰も丁寧です。ところが、まともに仕事をせず、ぼったくるのです。私も、はじめ話を聞いたときには信じられませんでした。でも、何度も同じような話を聞かされ、信じざるをえませんでした。
 この本に出てくる悪徳弁護士も最後には弁護士会の懲戒処分を受け、超豪華な邸宅からも出ていかざるをえなくなりました。
 それにしても、弁護士会の調査委委員会にかけられたときに、弁護士会の担当事務職員まで買収したという話には、腰が抜けるほど驚いてしまいました。関東地方のある弁護士会で、会長の信頼していた事務職員が懲戒案件をずっと握りつぶしていたのが発覚したということもありました。
 この本で紹介される悪徳弁護士のくいつぶした金額は30億円は下まわらないというのですから、私にとっては天文学的数字としか言いようがありません。なにしろ資産が  100億円あった会社をその弁護士がダメにしたというのです。なんともはや、スケールが大きいというか、呆れた話です。頼んだ方も頼んだ方だという気もしますが・・・。
 この本には、グリコ・森永事件で「キツネ目の男」として有名になった宮崎学も実名で登場します。友人として登場しながら、友情を裏切ったり、また復活したりと、忙しい関係です。さらに、正義感あふれる裁判官たちが登場してくるのも花を添えてくれます。
 全体としては、法曹界にも悪い人ばっかりではないと実感してもらえることを念じるばかりです。
(2005年7月刊。800円+税)

裁判官の爆笑お言葉集

カテゴリー:司法

長嶺超輝 ISBN:9784344980303
読むのは1日も要りません。ちなみに
わたくしは1時間の立ち読みで済ませて
しまいました。が資料として保存する
つもりのある人は買ってください。
さだまさしの償いを引用した一工夫ある
説示もあれば、タクシー乗務員は雲助
まがいだとか、暴走族はリサイクルの
できない産業廃棄物以下だとか、いま
振り返ってみれば、結構裁判官も
法廷に私見を持ち込んでたんですね。
タイトルに「爆笑」と書いてありますが、
一つ一つの事件にど真面目に裁判官が
取り組んだ痕跡が窺える代物です。

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