法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 人間

姉・米原万理

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  井上 ユリ 、 出版  文芸春秋
 私は米原万里のファンです。彼女の本のすべてとは言いませんが、かなり読みました。
 毒舌に近い、舌鋒鋭い文章に何度となくしびれました。私よりいくらか年下ですが、尊敬していました。まだ56歳という若さでなくなってしまったのが残念でなりません。本人も本当に心残りだったと思います。
 ロシア語通訳として「荒稼ぎ」もして、「グラスノチス御殿」を建てて鎌倉にすんでいたようです。結婚願望がなかったわけでないようですが、「終生、ヒトのオスは飼わな」かったというのも、男の一人としてなんとなく分かる気がしています。
 妹から見た姉・万里の実像が惜しげもなく紹介されていますので、読みごたえがありました。父親の米原いたるは鳥取の素封家に生まれ、共産党の代議士にもなった大人物です。 
両親とともにチェコに渡って苦労した話から始まります。両親は、どちらもかなりおおらかな人柄で、娘たちを伸び伸び、自由奔放に育てたようです。
 米原家は、みんな大食い、早食いだったとのことです。そして、食べ物に目がなく、食べ物を愛したようです。料理研究家である著者は、まさしく、その趣向を一生の職業としたわけです。
 タルタルステーキの話が出てきます。私が初めてフランスに行ったとき、マルセイユで同行してくれたフランス人が目の前でいかにも美味しそうにタルタルステーキを食べました。生の牛肉に生卵をのせた料理です。私も食べたかったのですが、旅行中なのでお腹をこわしたらいけないと思って、なんとか我慢しました。日本に帰ってから探しても、タルタルステーキを食べさせてくれるところはなかなか見つかりませんでした。魚のカルパッチョはあるのですが・・・。ついに東京のホテルでメニューを見つけたとき、すぐに注文しました。
 怖いもの知らずの万里は、実は、知らないもの、食べなれていない物はダメだった。食べ物に限らず、新しい事態にぶつかると、ちょっと怖じけて、二つの足を踏んだ。
 ええっ、これは意外でした。そして、万里はアルコールコーヒーもたしなまなかったというのです。ウォッカなんて何杯のんでもへっちゃら、そんなイメージのある万里なのですが、意外や意外でした。そして、万里は抹茶をたしなんでいたとのこと。びっくりします。
 そして、米原万里はモノカキになる前、詩人だったのですね。なかなか味わいのある詩が初公開されています。たいしたものですよ・・・。
 トルコあたりのリルヴァというお菓子が世界一おいしいとのこと。私もぜひ食べてみたいと思いました。
 米原万里ファンの人なら必読の本です。
(2015年6月刊。1500円+税)

『闘戦経』に学ぶ日本人の闘い方

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 斎藤 孝 、 出版 致知出版社 
私は知りませんでしたが、平安時代の末期に書かれた戦いの極意の書であり、日本最古の兵書『闘戦経(とうせんきょう)』にもとづいて、いま考えるべき心得を分かりやすく解説した本です。
 著者は授業をはじめるとき、教室に入る前に体を上下に揺すったり、ジャンプしたりして気合いを入れ、心身を活性化してから中に入る。
今日は何だか、かったるいなんて気持ちで授業に向かったことは一度もない。授業も一つの闘いなのだ。
 「てん・しゅ・かく」の三つをしっかりしないといけない。「てん」はテンションを高く保つこと。「しゅ」は修正能力。「かく」は確認を怠らないこと。
メールのやりとりは、すべて記録として残るので、決していい加減なことは言わない。
問われたときには、とにかく答えること。大切なのは答えの出来不出来ではない。何かしら言うこと。それは決断するというのと同じこと。
ネットに写真や発言をアップするときには、全世界に拡散するという覚悟でのぞむ必要がある。
部下に対しては、相手を信じて、ちょっと難しいミッションを設定し、それを正当に評価し、できていたらほめてあげること。それで人は意気に感じてがんばる。
期待されると、その思いにこたえたくなる。それが人間の本道。
勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。つまり、負けるときには、必ず理由があるということ。
臨機応変力こそ、今の時代に求められていること。
デカルトは『方法序説』で、とにかく考えて考えて考え抜けと説いた。これ以上は考えられないというところまで行った末に結論が出たら、一気に断行する。これを実践することによって、デカルトは、世の中の不安と後悔から一生脱却できた。
軍の基本は、攻めて相手を滅ぼすのではなく、災いをあらかじめ防ぐことにある。
現代に生きる私たちにも役立つ指摘というか教訓がたくさんありました。
(2016年1月刊。1400円+税)

作家はどうやって小説を書くのか

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 パリ・レビュー・インタヴュー 、 出版 岩波書店 
 話では、プロットがなにより大事だ。最初は、ぞくっとするような感覚か、書こうとしている話の気配があるだけ。それから登場人物たちがあらわれて乗っ取りにかかり、ストーリーをつくり出す。
書きはじめると、驚きの連続だ。ありがたい。そんな驚きや転回、書いているときに、どこからともなく出現してくる言葉こそ、予想外のおまけみやいなもの。そういう楽しい小さなプッシュがあるから、どんどん書いていけるんだ。
小説は、文章のリズムがちょっとおかしくなっただけでダメになる。句読点のつけかたなんかも要注意だ。
タイプライターは使わない。第一稿は手書きだ。鉛筆で書く。それから徹底的に直す。これも手書きだ。第三稿になってタイプで打つ。そして、しばらく放っておく。1週間、1ヶ月、ときにはもっと長く。それから読み返し、友人に読んで聞かせる。万事OKになったら、最終稿を白い紙に打つ。
活字にしたあとは、聞きたいのは、読みたいのは、ほめ言葉だけ。
登場人物の名前のつけ方にはこだわる。一つは、祖父や曾祖父の名前を忍び込ませる。もう一つは、なんらかの印象に残った名前を使うこと。
そうなんです。名前は私もいろいろ工夫し、考えています。ありふれた名前より、ちょっと読み方が難しい名前にします。印象(記憶)に残りやすいようにするのです。
プロットをたてず、直感、ひらめき、夢ぼんやりしたプランですすめる。登場人物や事件は一緒に浮かんでくるもの。
たくさん本を読むと、いかに自分がものを知らないかを学ぶことになる。学べば学ぶほど、どんどん分からなくなってしまう。これが真実だ。
何も聞こえていない読者に向かって、ページの上から静かに働きかけることのできる言葉を書く。そのためには、言葉と言葉のあいだにあるものに、とりわけ注意深く取り組まなくてはいけない。書いているものにパワーをくれるのは、言葉としては書かれていないものだ。
セックスについて書くのが難しいのは、セックスってセクシーなだけじゃないから。セックスについて書くには、なにより書きすぎないこと。本を読む読者が性的関心を発揮させるのに任せる。
名の通った作家に直撃インタビューしたものが一冊の手頃な本になっています。私でも知っている作家としては、カポーティ、ボルヘス、モリスン、マンローなどですが、彼らの本を読んだ覚えはほとんどありません。申し訳ないというより、残念です。もっと時間をつくり出して本を読みたいと考えています。それでも、6月に入って、半年で250冊のノルマは達成できそうです。
(2015年11月刊。3200円+税)
梅雨のあいまに晴れた日曜日、恒例の仏検(一級)を受けました。結果を先にお知らせしますと、150点満点で70点だった昨年に比べて、今年は自己採点では54点と大きく下まわってしまいました。ようやく4割の壁をこえ5割を目ざす心意気だったのですが、明らかに不出来でした。
それでも、この一週間は集中してフランス語を勉強しました。もう20年にもなりますので、過去問も繰り返し練習しました。そして、毎朝のNHKラジオ講座では早口のニュースの聞きとり書きとりに挑戦しています。まだボケたとは言われたくないので、引き続きフランス語にもがんばります。

コーヒーの科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  旦部 幸博 、 出版  講談社ブルーバックス新書
 私は喫茶店に入ったら、カフェラテかカフェオレを注文します。ブラック・コーヒーはあまり好みではないのです。飛行機に乗ったら、もっぱら日本茶です。アツアツの日本茶が美味しくいただけます。ひところは紅茶党でしたが、外では美味しく紅茶を飲めるところが少ない気がします。
 コーヒーは、「コーヒーノキ」というアカネ科の植物の種子を原材料として作られる。
コーヒーノキは寒さに弱いため、熱帯から亜熱帯に位置する生産国のコーヒー農園で栽培されている。
 コーヒーの焙煎とは、生豆を乾煎(からい)りすること。つまり、残った水分を飛ばしながら、通常180~250度まで加熱する。コーヒー豆は焙煎されたあと、時間がたつと香りが抜けたり、成分が変質したりして、香味が劣化していく。そこで、焙煎は、生産地ではなく、消費地か、その近くで行なうのが一般的。
 コーヒーノキの祖先は、2730万年前にクチナシの祖先から分岐し、その後、1440万年前にシロミミズの祖先と分岐して、アフリカの下ギニア地方(現在のカメルーン周辺)で生まれた。これって、人類の祖先がアフリカを発祥の地とするのに似ていますね・・・。
 コーヒーノキ属には125の種があるが、「コーヒー」をとるために栽培されているのは、わずか2種のみ、アラビカ種とカネフォーラ(ロブスタ)種。我々がふだん飲むコーヒーのほとんどはアラビカ種。あるいは、アラビカ種をメインとして、カネフォーラ種をブレンドしたもの。
アラビカ種はエチオピア高原が原産地。アラビカ種は、標高1000~2000メートルの気温が低目。高地での栽培に適していて、世界中で高業栽培されている。ただし、病虫害に弱いという難点がある。
アラビカ種は、他家受粉に適したタイプの花をもちながら、自家受粉も可能だいう異色の存在である。
 コーヒーノキで、もっともカフェインが多いのは生豆、つまり種子の部分。カフェインには、他の植物の生育を阻害する作用がある。また、カフェインには、ナメクジやカタツムリに対して毒性を示し、これらを寄せつけない効果(忌避作用)がある。つまり、カフェインには、外敵による食害から新芽を守るために植物がつくり出した「化学兵器」の一つなのである。
 コーヒーを初めて利用していた人間はエチオピアで西南部の人々。今でも、お茶のように飲んだり、炒めて食べたり、薬にしたり、贈り物にしたり、さまざまな利用法がある。
 コーヒーは、さび病や、霜害、干ばつの被害を受けやすく、価格が大きく変動するため、経済的には不安定な作物である。
 缶コーヒーを、発明というか、実用化したのは日本人。1965年の「ミラコーヒー」。そして、 1969年のUCCのミルク入り缶コーヒーから一般的に売れた。
江戸時代の日本人は、コーヒーについて、「焦げ臭くて、味わうに堪えず」と評した。その後、「おいしい」とみられるようになった。
カフェインは熱には非常に強く、焙煎中に分解されたり、他の化合物と反応したりすることはない。
ボードレールは、毎日10杯のコーヒー、バルザックは1日50杯ものコーヒーを飲んだ。これは、いくらなんでも飲み過ぎでしょうね。
コーヒーは肝がんのリスクを低下させるし、糖尿病リスクも低下させる。
美味しいコーヒーをゆっくり味わう。そんな精神的余裕をもちたいものですよね。
(2016年4月刊。1080円+税)

ちっちゃな科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  かこ さとし、福岡 伸一 、 出版 中公新書ラクレ 
 かこさとしは、セツルメント活動の大先輩です。私は大学生のころに3年ほど、かこさとしは大学を卒業して、会社に勤めながらセツルメント活動をしていました。
そして、かこさとしの絵本には、うちの子どもたちも大変お世話になりました。「からすのパンやさん」や「どろぼうがっこう」などは、読んでいる大人も面白い絵本でした。もちろん、100万部をこえるベストセラーである「だるまちゃん」シリーズの絵本もいいですよ・・・。
90歳になる、かこさとしが手がけた絵本は、なんとなんと600冊。すごいですね。すごすぎます。目を悪くして、絵を描くのはやめたそうですが、本のほうは、今も原稿を書いているとのこと。いやはや、たいしたものです。あやかりたいです。
セツルメントというのは、ボランティアで子どもに勉強を教えたり、医療相談や法律相談をする組織。
私が大学生のころには、全セツ連(全国学生セツルメント連合)という組織があり、年に1回、全国大会を開いて経験交流していましたが、全国から学生が1000人ほども集まり、活気あふれる交流会でした。夜行列車に乗って東京から名古屋に行ったことを今も覚えています。私は子ども会ではなく、青年部に所属していて、若者サークルに入って、楽しく べったり、ハイキングや早朝ボーリング大会などをしていました。ところが、そんなサークルもアカ攻撃がかかってきたりして、社会の厳しい現実に学生は直面して、目を見開かされていくのです。
かこさとしが繰り返し「大勢」を描くのは、自分が世界の中心にいるとはとても思えないから。この世界は多様であり、自分はどこか端っこにいる。でも、端っこでも、そこは世界の中なんだということを言いたいから・・・。
かこさとしの絵本には、余白、何も描いてない空白の部分がたくさんある。そこは、子どもたちが想像力を広げるための「延びしろ」としての余白である。
子どもたちが理科離れしているとしたら、それは大人が理科離れしているからだ。
子どもの本が売れなくなっている。なぜか・・・。日本の母親が子どもの本を買わなくなったからだ。ええっ、子どもの本まで売れてないのですか、知りませんでした。そう言えば、昔ほど、絵本が話題にならない(なっていない)気がしますね。
「花咲き山」とか「八郎」とか、日本には本当にいい絵本がたくさんありますよね。ぜひ、子どもたちに語り伝え、読み聞かせたいものです。
(2016年4月刊。800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.