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カテゴリー: ヨーロッパ

グラフィック版・アンネの日記

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 アリ・フォルマン、デイビッド・ポロンスキー 、 出版 あすなろ書房
アンネ・フランクは私より20歳だけ年長です。なので、いま生きていたら92歳。まだまだ日本には同じ年齢で元気なおばあさんがいますよね。
アンネは1942年、13歳の誕生日にプレゼントとしてもらった日記帳を「キティ―」と呼んで、そこに自分の気持ちを率直につづり始めたのでした。
マンガ版というと叱られるのかもしれませんが、人物と情景の描写がとてもよく出来ていて、実写フィルムを見ている錯覚にとらわれます。
1944年6月、連合軍のノルマンディー上陸作戦が始まり、米英軍がドイツをめざして進攻作戦をすすめ、アンナたちは大いなる希望をかきたてられます。そして、7月21日にはヒトラー暗殺計画(ワルキューレ計画)も実行されるのです。残念ながら失敗してしまいますが…。
1944年8月4日の午前10時すぎ、ナチス親衛隊がやってきた。誰かが密告したのだ。アンネをふくむユダヤ人8人が連行された。そして彼らの潜伏生活を助けた2人も連行された。助けた2人は2人とも戦後まで生きのびたが、ユダヤ人のほうはアンネの父親一人だけが助かった。
アンネと姉マルゴーの2人は1945年2月末から3月初めにチフスで亡くなった。その1ヶ月後にイギリス軍が強制収容所を解放した。本当にもう少しだったのですね。残念なことです。アンネの「恋人」のペーターは、1945年5月5日、収容所がアメリカ軍に解放される3日前に死亡している。これもまた残年無念なことです。
アンネは、良くできる姉と比較されるのがとても嫌だったようです。
3年近くになるアンネたちの潜伏生活が、このように視覚的にとらえられるというのは実にすばらしいことだと思いました。マンガ、恐るべし、です。
(2020年5月刊。2000円+税)

マルゼルブ

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 木崎 喜代治 、 出版 岩波書店
フランス大革命のとき、ルイ16世の弁護人となり、その後、本人も家族ともども断頭台で処刑されたという人です。久しくフランス語を勉強していますし、フランス革命についてもそれなりに本を読んでいたつもりなのですが、このマルゼルブという人物には、まったく心当たりがありませんでした。
ルイ16世の弁護人をつとめ、自らも処刑されたというのですから、どうしようない復古調の王党派だと思いますよね。ところが、この本を読むと、それは、とんでもない誤解なのです。
マルゼルブは、フランス国王の専制主義にたいしても、人民の専制主義にたいしても、ひとしく敵であった。マルゼルブは、その一方と戦ったために追放され、他方と戦ったために殺された。
マルゼルブがルイ16世の弁護人となり、身を捧げたのは、ルイ16世個人のためではなかっただろう。ルイ16世は、それには値しなかった。マルゼルブが身を捧げたのは、その72年の全存在の大義のためだったように思われる。
マルゼルブが処刑されたのは、テルミドール事件の3ヶ月前のこと。自らの弁護人に立ってくれたマルゼルブに対してルイ16世は感謝の手紙を書いている。
マルゼルブは、フランスの古い名門貴族の家に生まれた。ルソーと深くかかわり、ディドロの『百科全書』をはじめとする哲学者たちの著作が、ルイ15世のもとで出版統制局長だったマルゼルブの保護のもとで刊行された。マルゼルブは、また、租税法院の院長職にもついている。
出版統制局長として、「黙許」というものをマルゼルブは活用した。それまで年に50件だった黙許は、100件から200~250件に達した。マルゼルブのおかげで『百科全書』はフランスで刊行・流通した。
そして、マルゼルブは租税法院長として、高級官僚、つまり支配階級の一員でありながら、専制王制に対して、果敢に改革提言していた。
また、マルゼルブは、弁護士の自由と独立の重要性を次のように強調した。
「弁護士の身分の独立性と請願と印刷された意見書の自由とは、現在市民の唯一の救済手段であり、われわれの所有権を保持する唯一の防壁である」
マルゼルブは、ルイ16世の治世下の大臣の一人となり、いくつもの改革策を提言したが、ことごとく無視され、追放された。そんなマルゼルブが、ルイ16世の弁護人となって、必死に弁論したというのです。
日ごろ尊敬している高野隆弁護士(まったく面識はありません)が、このマルゼルブを紹介しながら弁論(刑事ではなく、民事です)したのをFBで読み、あわてて取り寄せて読みました。世の中、本当に知らないことだらけですよね…。
(1986年3月刊。2900円+税)

舌を抜かれる女たち

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 メアリー・ビアード 、 出版 晶文社
出だしがホメロスの『オデュッセイア』です。
ペネロペイアはオデュッセウスの妻であり、テレマコスの母。
ペネロペイアが吟唱詩人にもっと楽しい別の歌をうたってくれないかと頼んだとき、息子のテレマコスが次のように言って待ったをかけるのです。
「母上、今は部屋に戻って、糸巻きと機織り(はたおり)というご自分の仕事をなさってください。人前で話をするのは、男たちの仕事。とりわけ私の仕事です。私が、この王宮の主なのですから…」
3千年前のギリシアで、女性の公的発言が封じられる様子が語られていますが、これは今に通用するのではないか…。これが、この本の一貫した主張です。なるほど、かなりあたっていますよね。
古代ローマの『変身物語』では、若き王女ピロメラがレイプされる話があり、レイプ犯はルクレティアが強姦者を糾弾したことを知っていたので、その二の舞になることを恐れて、ピロメラの舌を切ってしまう。シェイクスピアの『タイタス・アンドロニカス』でも、同じようにレイプされたラヴィニアが舌を切断される話が登場する。
古典文学では、女性の声に比べて低い男性の声の権威がくり返し強調されている。低い声は男らしい勇敢さを。女性の甲高い声は臆病さを表した。
おおやけの場で声をあげる女性は、古代ローマのマエシアのように、両性具有の変人と扱われるが、みずからそうふるまっている。たとえば、エリザベス1世がそうだ。
イギリスでは、女性が財務大臣になったことは、これまで一度もない。
あまり受けのよくない議論を呼ぶような意見、人と異なる意見を言うだけでも、それを女性が口にすると、お馬鹿な証拠だととられる。
マーガレット・サッチャーは、声を低くするボイストレーニングを受け、甲高い声に「足りない」威厳を加えようとした。
イギリスの国会議員のうちの女性は、1970年代には4%にすぎなかったが、今は30%。いったい日本はどうでしょうか…。それでも、女性の大臣でもぱっとしない人が目立つのが残念です。今の森まさ子法務大臣、稲田朋美、片山さつきなどなど、そのレベルのあまりのひどさに嫌になってしまいます。
イギリスでは、ロンドン警視庁の総監もロンドン大主教も女性。あとなっていないのはBBCの会長だけ…。日本とは、まるで大違いですね。
わずか100頁あまりの本ですが、ずしりと重たい本でした。
(2020年1月刊。1600円+税)

未来のアラブ人(2)

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 リアド・サトゥフ 、 出版 花伝社
フランス人の母、シリア人の父をもつ6歳の子どもの目を通した1984年から1985年ころの中東の子どもたちの生活がよく描かれています。
シリアで6歳になったので、学校に行きはじめます。ところが、学校は男の子ばっかり、女の先生は容赦なく生徒の手を手にした棒で叩きます。体罰なんて平気なのです。
フランス人の母親をもつ6歳の男の子(著者)は、ユダヤ人とみなされ、ことあるごとにいじめの対象になります(何人かは著者を守ってくれるのですが…)。
アラブ人のなかで、著者はいつまでたっても浮き上がった存在です。
父親はフランスで博士号をとった学者なのですが、よりよい仕事を求めて、有力者に売り込むのに必死。
父親の夢は、自分の土地に宮殿のような豪華な建物をたてること。ところが、父親から土地を取り戻されてしまった身内の人間からは、早くフランスに帰れと言わんばかりの扱いを受けるのです。
たまに母親の実家のあるフランスに戻ると、まるで別世界。スーパーには、いろんなものが、それこそ、よりどりみどり…。何もないシリアの生活とは落差が大きすぎます。
6歳当時の子ども時代をこんなに思い出せるとは、とてもとても信じられません。でも、話の展開にはリアリティがありすぎて、すごいんです。
いやはや、シリアの小学生って、本当に大変なんだな…、つい、そう思ってしまったことでした。中東・アラブの生活に少しでも関心があったら必読(必見)の本です。
(2020年4月刊。1800円+税)

タルピオット

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 石倉 洋子とナアマ・ルベンチック 、 出版 日本経済新聞出版社
イスラエルの人口は900万人で、大阪府と同じくらい。面積は四国くらい。
イスラエルの成長をけん引しているのは、ハイテク産業。イスラエルの輸出に占めるIT製品の割合は、10.8%(2017年)。
日本企業71社がイスラエルに拠点を置いている(2018年10月現在)。5年間で3倍に増えた。
イスラエルの食糧自給率は9割超。砂漠で食料を自給するための技術開発も進んでいる。
天然資源のないイスラエルにとって、唯一の資源は、人であり、頭脳だ。
ユダヤ人は、既存の枠組みや前提条件を疑うところから始めて、新しいアイデアを出そうとする。ルールは絶対ではない。なぜダメなのかと問いかけ、議論するのがユダヤ人だ。
イスラエル人は、非常によく質問する。質問することで、お互いの視点の違いを知ることができるし、思考が刺激されて内容が発展し、新しいものが生まれることが多い。
イスラエル人の「質問好き」は、常識や前提条件を疑い、新しい発想での課題解決がイノベーションを生むことにつながっている。
イスラエルでは、正解、不正解がはっきりとした試験は少ない。正解、不正解が明確な試験だと、選ばれる人が画一化してしまうからだ。
イスラエル国民は、18歳(高校卒業)から男子3年、女子2年の兵役義務がある。
タルピオットの選抜プロセスは、高校生の早い段階から始まる。成績、健康状態などの一般的な試験で1万人が選ばれる。そして、物理、数学、コンピューターサイエンスや歴史などの科目について、クリエイティピティを測る試験があって数百人にしぼりこまれる。次に3日間の合宿があり、グループに分けられて、複数回の面接で最終的に50人が選ばれる。このこき、学業成績がトップというだけでは選ばれない。リーダーシップ、チームワーク、創造性が重視される。
タルピオットは、3年間(40ヶ月)のトレーニングプログラム。受講生の4分の1が途中でドロップアウトしてしまう。
過去40年間でタルピオットの卒業生は1000人のみ。卒業生はタルピオンと呼ばれ、イスラエル国防軍のさまざまな部隊に配属される。そして最低でも6年間は従軍し、現場で力を発揮する。
イスラエルにあって、日本にないものは、失敗を許容する文化だ。
スタートアップ(起業)でも失敗を恐れない、これは大切なことだと私も思います。
人材重視のイスラエルで成績優秀な若者を確保し、育成していくシステムがあるというのを初めて知りました。道理で強いわけです。
日本では「教育重視」のかけ声だけで、アベ流の教育改革は一部のエリート層の育成にのみ目を向け、一般ピープルを見事に切り捨てています。これでは日本はますます世界から置いていかれるだけではないでしょうか…。
(2020年3月刊。1600円+税)

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