弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

イタリア

2025年9月20日

最後はなぜかうまくいくイタリア人


(霧山昴)
著者 宮嶋 勲 、 出版 日経ビジネス文庫

 日本人とイタリア人はかなり違うことが、この本を読むとよく分かります。そこには優劣の差があるというわけではありません。
 ただ、イタリア人は人生を愉しもうとする気持ちがとても強いようです。そこは多くの日本人に乏しい気がします。定年退職したあと、何もやることがないという日本人男性のなんと多いことでしょう...。弁護士をして感じるところです。なので、外に出ていかず、家の中に閉じこもって、やがて病気して死んで消えていくだけ...。なんだか寂しいですよね。
 イタリア人は今に集中する力が破格に強い。過去のことは簡単に忘れてしまう。
 人生はなるようにしかならない。悪あがきしても仕方がないし、むしろ事態は悪化する。物事の進み具合を見ながら、じっと待っていよう。そうすれば、何かいいことがあるだろう。そのチャンスをつかまえよう。理想にこだわって高望みし、結局は人生を楽しめず、不満ばかりがたまっていくよりは、小さなことに満足し、少しでも人生を楽しんだほうがいいに決まっている。どんな状況でもそれなりに人生を楽しむ。イタリア人は人生を楽しむ天才だ。
 イタリア人は好奇心旺盛で、いろいろやってみることが好き。なんでも屋。なので、分業は好まない。フェラーリは1台のマシンを1人の職人が仕上げる。分業しないことがイタリアの活力と創造力の高さの源になっている。
イタリア人は先の計画を立てることが苦手。一日先の予定は立てたがらない。直前までフリーハンドでいたいようだ。
 イタリア人は公私混同が激しく、そのため社会に活気が生まれ、みんな生き生きとしている。家族みんな一緒で働くことを好む。
 仕事は労働ではなく、人生。イタリア人は美しさ、見た目にこだわる。だからセンスが良い。イタリア人は何をするにしてもすぐコネを探し、頼ろうとする。
 イタリア人にとって、食事とは儀式だ。食事の時間が長いというより、食卓にいる時間が長い。食卓は人と人との出会いの場であり、相手を見定める場でもある。
 イタリア人にとって、食卓は人生のほとんどすべての問題を解決する場である。
 食卓は人間を裸にする。約束の時間はあってないようなもの。遅れてきた人を基準としてまわっていく。
 イタリアでは、人々は精神的余裕があって、楽しそう、幸せそうなのだ。
 日本のような過剰サービスがなくても人々は幸せに生きていけるということなんですね...。
 目を大きく開かされました。
(2023年11月刊。825円)

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