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中世寺院と民衆

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著者:井原今朝男、出版社:臨川書店
 中世民衆を、戦争で被害を受ける哀れな被害者とみる歴史像は虚像である。
 著者はこう断言します。民衆は、もっとしたたかだったというのです。映画『七人の侍』を見ると、なるほど農民のしたたかな強さが実感できます。あの映画は、単なるフィクションではない。私は、確信しています。
 寺院も自ら武装していた。中世の寺院は、むしろ戦争の主体であった側面の方が強い、河原者も自らを守る武装する集団としての実力をもっていた。現代の通説では、中世の国家権力は幕府が掌握し、天皇は政治権力から切り離され、宗教的権威をもつにすぎなかったとする。しかし、前近代において、宗教や儀礼を経済や政治と区別された観念とみるとことは、歴史の実態と相違する。中世の天皇は権威だけの存在とは言えない。その社会的支持基盤は、民衆統合儀礼の社会システムそのものであった。天皇家は将軍家と並ぶ中世社会の公権力であった。
 なるほど、政治と宗教とを明確に区別できたという現代的感覚で割り切るのは間違いのようです。現代社会でも欧米に限らず、日本でも宗教を基盤とする政党は存在するわけですから、よく考えると明確な二分説が成り立たないことは明らかなのですが・・・。
 戦前の天皇は日本国の統治権を掌握し、日本の軍隊を指揮命令する最高司令官であり、大元帥(だいげんすい)と呼ばれていた。この大元帥という言葉は、中世に盛んに行われていた太元帥法(たいげんのほう)という護国法会(ほうえ)によっている。太元帥法は外敵から国土を防衛する法会であった。そうなんだ。私は、ちっとも知りませんでした。中世の日本では、飢饉や戦乱で男たちが減り、女性が男の2倍もいた。夫婦関係が成立しにくい社会では多様な性関係が発達し、性道徳が混乱するのは、いつの時代も変わらない。僧尼同宿の寺院生活が営まれていた。寺などで同宿する尼が妊娠すると、実家に帰って出産し、産後に寺に戻ってまた仏道の生活を続ける。中世の寺院は世俗化の頂点に達していた。
 生きのびるためには何でもあり、の世界になっていたんだな。そう思いました。現代の世界もそうなりつつあるように思いますが、いかがでしょうか・・・。

「うつ」を治す

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著者:大野裕、出版社:PHP新書
 うつ病に苦しむ人は世界的な規模で増加している。女性の5人から10人に1人、男性の10人から20人に1人はうつ病にかかる。発症しやすいのは25歳から35歳だが、何歳でも起こる可能性がある。さまざまなタイプのうつ病全体をあわせると、人口の10%から20%がかかっている。うつ病は多くの人がかかること、何度もかかることがある点で風邪に似ている。うつ病は、きちんと治療しないと、何度も繰り返す可能性が高い。うつ病は慢性化しやすい病気であり、死につながる危険性のある病気でもある。
 この本には人づきあいが楽になる10のヒントが紹介されています。私にも大変参考になりました。1、自分をもっと認める。2、他の人のことをもっと認める。3、問題点は何かを具体的に考えてみる。4、完璧な人間関係はない。5、意見の食い違いを恐れすぎない。6、言いづらいこともしっかりと伝える。7、言葉に頼りすぎない。8、思いこみから自由になる。9、思い切って自分流を捨てる。10、困ってもよい。困ることを恐れず、自分を信じ、相手の人を信じて、しんぼう強くつきあううちに、また新しい人間関係ができあがっていく。
 うつ病は、たとえてみればガソリンがきれてしまった自動車のようなものだ。いくらアクセルを踏んでも、ガソリンが入っていなければ車は走れない。「がんばれ」と励ましても、それは「動かない」と焦っている人に「早く車を動かせ」と言っているようなものだ。ガソリンが入るまで、つまり精神的なエネルギーがわいてくるまで、辛抱して待つことが大切だ。
 うーん、そうなんだ・・・。うつ病の治療には薬が効果的のようです。そして、そのとき、一定の投薬量を生涯飲み続ける方がいいこともあるようです。たとえていうと、高血圧の人がずっと薬をのんだ方がいいのと同じだということです。勉強になりました。

それでもヒトは人体を改変する

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著者:グレゴリー・ストック、出版社:早川書房
 遺伝子を付加する方法がわかれば、よりすぐれた人類をつくりだせるとすれば、なぜそれをしてはいけないのだ?
 この疑問に真正面からこたえ、それを否定するには、人間とは何かということまでさかのぼるというような、かなり根本的なところまで考えぬく必要があります。
 アメリカでは、エリート大学に属する学生は民族的にも文化的にも以前よりずっと多様化しているが、彼らは全人口のなかの限られた層の出身である。1990年にエール大学とハーバード大学にアメリカの全大学生の400分の1が入学したが、成績優秀な学生の10分の1が含まれていた。超一流大学への知的エリートの集中は新しい現象だ。
 この本は、次のような問いを投げかけています。あなたは体外受精と遺伝子工学とをつかって安全に赤ん坊の能力を増強するのが可能だとする。そのとき、あなたは子どものIQ値を20ポイント上げるようにするか?もし、そうしないとき、子どもが大きくなったときに、なぜ、ほかの子どものように自分の頭がよくないのかと尋ねられたとき、どう答えるか?うーん、本当にそんな時代がやって来るのでしょうか・・・?

白土三平論

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著者:四方田犬彦、出版社:作品社
 今から30年前の学生で白土三平の『カムイ伝』をまったく読んでいない人は、どれだけいただろうか・・・。少しあとに出てきた『ゴルゴ・サーティーン』も人気が高かったが、白土三平のマンガには、なにより香り高い思想性があった。しかし、人物描写は決してスマートではない。いかにも劇画調で、いささかの泥臭さがあった。でも、自然の風物がふんだんに登場してきて、一揆というのはこういう状況だったのか、と勉強になったものだ。
 私の生活していた学生寮では、白土三平が連載していた『ガロ』は、『ジャンプ』や『マガジン』などとは違った愛読者がいて、奪いあうようにしてまわして読んでいた。
 340頁もあるこの本で、私たちは白土三平について、その生いたちからたどることができる。父親が左翼美術家の岡本唐貴だということを知り、白土三平が信州の真田村に疎開していたことも分かる。白土三平の自然の風物は、この子ども時代の原体験をもとに発展させられたものだ。
 ところが、1960年代にあれほどもてはやされていた白土三平が、東大・安田講堂の落城、そして連合赤軍内部で「総括」と称する大量殺人がなされていたことが明らかになったあと、急転直下、見向きもされなくなってしまった。私も、そう言えば『ガロ』を読まなくなった。なんだか、いつまでも暗くて泥臭い雰囲気を敬遠してしまった。
 この本は、白土三平のマンガをところどころで紹介しながら、その思想的な変遷をふくめて、刻明にたどっている。白土三平を語るこの本を、単なるノスタルジーの本と切って捨てていいのか。私にも、いろいろ考えさせられるところがあった。

アメリカの正義の裏側

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著者:スコット・タイラー、出版社:平凡社
 元カナダ軍人のジャーナリストによるコソボ紛争の実情を現地レポートした本です。
 NATOの空爆は、150億ドルものミサイルや爆弾を投下したものの、78日間で、わずか13両の戦車を破壊しただけだった。アメリカのオルブライト国務長官は、1999年にミロシェヴィッチをヒトラーになぞらえて批判した。しかし、実は、その前の1996年には「平和の人」ともてはやしていた。
 ユーゴスラビアの内戦について、私は正直言って何が正しいのか、どこが間違っているのか、よく分かりません。でも、ひとつ言えることは、ジャーナリストがけたたましく叫びたてている「事実」は決してうのみにしてはいけないということです。セルビア人とアルバニア人の双方に過激派が存在している以上、単純にどちらかを全面的に悪いと決めつけるのは間違っているように思います。過去のいきさつを捨ててでも、なんとか平和共存していかなければならないからです。そうでないと、民族が違う、宗教が異なるというだけで殺しあい、その憎悪の連鎖は止まらないでしょう。
 アメリカのコソボ介入の本当の目的は、コソボにアメリカ軍の基地を手に入れることだったのではないか。訳者は、そのように解説しています。イラク復興で有名になったアメリカの建設会社ハリバートン社が、周囲14キロ、内部には300もの建物が立ち並ぶ3つの居住地区とショッピングセンター、教会、図書館、24時間営業のスポーツ施設、ヨーロッパ最高水準の病院まである基地をつくりあげました。このボンドスティールの基地は、中東からカスピ海までをカバーする最大規模の海外基地だというのです。
 アメリカによるマスコミ操作の怖さを、ここでも感じました。

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