(霧山昴)
著者 陳耀昌 、 出版 左右
1920年代の台湾は、日本の統治下にあった。そのなかで台湾人の文化啓蒙活動に焦点をあてた歴史小説です。500頁近い大作でもあります。
巻末に当時活躍していた人たちの写真があり、イメージを具体的に掴むことができます。多くは洋装ですが、昔ながらの国民服を着ている人もたくさんあります。
主人公の盧(ろ)丙丁と妻の林氏好が中心になって話は展開していきます。林氏好は日本人の声楽家である関屋敏子に師事して腕をみがきます。林氏好は、幼いころから教会で西洋文化、芸術に触れて育ち、また牧師夫人からピアノや声楽を学びました。そして台湾で歌い、絶賛されます。日本のレコード会社とも手を結んで、喝采をあびるのです。
盧丙丁は台湾民衆党とともに活動していましたが、ハンセン病の患者となり、強制隔離施設に入れられてしまいます。
台湾民衆党が結成されたのは1927年7月のこと。台湾人による最初の政党。
台湾には、日本の政治政策に協力する台湾の実業家がいて、御用紳士と呼ばれた。これに対し、自分たちを漢民族の一員とし、祖国派とされた。
その動きを抑圧、弾圧する日本人の官憲に対して、台湾の人々は「四本足どもめ、あまりにひどい」と反撃した。
台湾人は二つの欠点をかかえている。一つは、団結できないこと。もう一つは、一歩一歩順を追って進んでいけない、なかなか足並みをそろえられないこと。
日本人の圧制に反抗して運動会を襲撃し、日本人多数を殺害するという霧社事件が起きたとき、日本軍部は残虐に弾圧してしまいました。さらに、台湾人を抑圧していた日本軍が敗戦で撤退したあと、中国本土から国民党軍が進駐してきて、再び台湾の人々は弾圧されます。
今の台湾の繫栄は、そのような負の歴史の上に築かれているのだと、しみじみ思いました。
(2026年3月刊。4400円)


