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ナルコトピア

(霧山昴)

著者 パトリック・ウィン 、 出版 光文社

 黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)とは、東南アジアにおける麻薬生産の中心地。ほぼ全体がビルマ(ミャンマー)に含まれるが、中国、ラオス、タイの国境地帯にも広がる山岳地帯。ナルコトピアとも呼ばれる。この地域におけるヘロインとメス(覚せい剤のメタンフェタミン)の経済規模は、ビルマ一国のGDPを上まわっている可能性がある。

 ワ州連合軍(UWSA)は密林に生息するただのマフィアではない。ワ州と呼ばれる、人口50万人以上の正真正銘の民族国家を運営している。独自の学校、電力網、国旗や国歌まである。その領土は3万平方キロメートル。ワ州には3万人の兵士と20万人の予備兵がいる。ワ人は、迫撃砲やドローンなどのハイテク兵器も保有していて航空機もミサイルで撃ち落とすこともできる。UWSAは東南アジアにおける麻薬取引の中心にいて、毎年、メスだけで600億ドルを稼ぐ。

UWSAは法律をつくり、祖先伝来の土地を守り、道路を建設し、税金を集め、運転免許証を発行している。ヘロインとメスはUWSAの最大の収入源。

アメリカの機関であるCIAとDEAは争っている。その職員の出自は異なる。DEA捜査官の多くは元警官か元軍人で、労働者階級の出身。CIAの職員は、アイビーリーグなどの名門大学の卒業生。DEA捜査官は悪人を投獄するのが第一の仕事と考えている。CIAは、悪人を雇って極悪人に関する情報を得ようとする。

ゴールデントライアングルには、CIAが先に現地入りし、DEAはあとから来た。ゴールデントライアングルの末端にいる最重要顧客はアメリカ人。

ミャンマーの軍は、アウンサン・スーチーを監禁し、その支持者を大量に虐殺した。1万人近くを射殺している。天安門事件をこえる大虐殺だ。

メス工場は上空から見ると、車庫や倉庫のようで、宇宙から探知されにくい。以前は、CIAがワ州のケシ畑を偵察し、ケシの潜在的な収穫量を推測できたのだが……。

現代アジアの労働力にとって、スピードは言うことなしのドラッグ。ヘロインのもたらす心地よい麻痺は魅力を失い、労働者はバニラの香りのするスピードを求めた。1錠わずか2~3ドル。1錠の煙を吸えば、連続シフトをこなせて、割増賃金でさらにピンクの錠剤を買うことができる。

今世紀、ヤーバーは500億錠以上も生産された。設計の勝利だ。見た目は菓子のようで、カラフルでブランド化しやすい。価格は1錠が1~5ドル。タイは、2001年の1年間で、9000万錠という記録的なヤーバーを押収した。

UWSAはアヘンケシ撲滅を完了させ、今ではビルマはアヘンの世界供給率の5%しか生産していない。アメリカ占領下のアフガニスタンがとって代わった。

2021年10月、タイとラオスの国境で摘発された麻薬は、アジア史上最高を記録した。5500万個。ヤーバーと、1.5トンのクリスタル・メスが隠されていた。それは、「ワ産メス」だった。

ワ州には、中産階級はほとんどいない。いるのは、エリートと平民のみ。今では、中国系犯罪組織がメス製造所を運営している。

まったく知らない地域の、恐ろしい話でした。世の中には、こんなところが今もあるのですね……。潜入ルポなので、ぞくぞくする展開です。

(2025年11月刊。3520円)

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