著者:アンナ・ポリトコフスカヤ、出版社:NHK出版
世界中でジャーナリストが殺されています。イラクでも多くの記者がアメリカ軍に狙われて殺害されました。日本の大手新聞や民放の記者はいつもアメリカべったりだから、心配はないかもしれません(もちろん、テロリストに狙われる危険はあります)。
モスクワ劇場占拠事件のあと、航空機2機同時墜落があったかと思うと、北オセアニアで学校が占拠され、何百人もの罪なき人々が大人も子どもも殺されてしまいました。悲惨です。いったい、どうしてこんなテロ事件が頻発するのか?
誇り高いチェチェン人たちは、ロシアの圧力をはねのけて独立しようとしてきました。トルストイも、かつて、チェチェン人の独立を抑圧するロシア軍の将校として従軍したことがあったそうです。現在のチェチェン人の3分の1が、スターリンによる強制移住の悲劇的体験をしています。このチェチェンで戦争が続いているのは、この戦争によってもうかっている者が多くいることによる。著者のこの指摘は重大です。
契約志願兵は検問所で贈賄をもらい、モスクワの本部にいる将軍たちは戦争予算の一部を個人運用する。中間の将校は人質や遺体の引き渡しで身代金を稼ぎ、下っ端の将校は、掃討作戦と称して略奪する。そして、全員で、石油や武器の取引にかかわっている・・・。やっぱり、戦争でもうかる連中がたくさんいるのですね・・・。
銀行も税務署も、チェチェンでは機能していない。しかし、その方が石油取引を自分の思うようにできて好都合だと考えている集団がいる。
読みすすめると、心に寒風が吹きすさび、首筋がゾクゾクしてきます。暗たんたる気分になって、早く家に帰って、布団をかぶって寝よう。そんな暗い気分にさせる本です。でも、この現実から私たちは目を逸らすわけにはいきません。だって、いつのまにか飛行機に安心して乗れない世の中になってしまったのですから・・・。力ずくでチェチェン人を抑えつけられないとしたら、ここは日本国憲法の前文と9条の精神を生かすべきときなのではないでしょうか・・・。
チェチェン、やめられない戦争
