(霧山昴)
著者 亀﨑 直樹 、 出版 南方新社
ウミガメが産卵できる砂浜が減っていることを知り、これは大変なことだと思いました。
ウミガメ屋は、必然的に地元の人になる。なぜか・・・。砂浜でウミガメを探し、体の大きさを測り、卵の数をかぞえ、ふ化率を求める。こんなデータをとる人をウミガメ屋と呼ぶ。しかし、ウミガメが産卵する場所を探り当てるのは大変。空振りの宛もある。だから、地元の人じゃないと、とても無理、ということになる。
データをとる人、研究する人。どっちが大変かというと、間違いなくデータをとる人。
砂を採取する量が増えて、砂の絶対量が減った。砂浜がやせている。海岸にコンクリート護岸をつくると、砂浜はできない。前に、土は人間で人工的にはつくれないという本を読んで紹介しましたが、砂浜も似たようなものなのですね。
砂が飛んでいかないようにしているのは植物。植物が海岸からなくなれば、砂浜から砂が奪われる。港湾を拡張すると、砂浜がやせて、消滅していく。宮﨑海岸の美しい姿は消滅した。
ウミガメの産卵する砂浜は暗くて、静かな砂浜。そこは安全だから。アカウミガメの母親は子ガメが黒潮に乗りやすい場所に産卵する。子孫を残すために有利だから。それは鹿児島であり、屋久島から種子島にかけて。
母ガメの大部分は同じ砂浜で産卵する。上陸する砂浜は視覚を使って認識している。産卵をひかえたアカウミガメは海面付近を遊泳し、砂浜が安全で植生等を気に入ったら、ふ化に適切だと判断して上陸する。ウミガメはサケと違って、厳密な回帰性はない。
日本で生まれたアカウミガメの子ガメたちは、黒潮、そして北太平洋海流に乗って、東のメキシコ沖の餌が多い海域まで流され、そこで餌を食べる。そして、遊泳力がつくと、日本に向かって帰ってくる。
産卵する砂浜は海に近く、しかし波が被らない場所を選ぶ。ウミガメの涙は体内にたまった過剰な塩分を捨てているだけ。産みの苦しみとは関係ない。
子ガメの性別は、砂の温度で決まる。沖縄でふ化した子ガメはオスが多く、本土のほうはメスが多かった。砂の温度が高くなるとメスが生まれ、低いとオスが出てくる。
子ガメは寒い海でも生きられる。
アカウミガメは太平洋を横断する。アカウミガメの一生は、年齢に左右されない。20歳で成熟するカメもいれば、60歳でも成熟しないカメがいる。60歳になっても、まだ交尾もせずに、これから結婚しようというカメもいる。
ウミガメの候らは、肋骨で出来ている。背甲は肋骨から成っている。ウミガメの心臓は2心房1心室。ウミガメは、300メートルの深さまで潜る。すると、気圧は30気圧、肺はつぶれてしまう。しかし、心室が一つしかないと、血流だけは維持できる。
ウミガメの雌雄が判別できるのは成熟したものだけ。ウミガメの交尾の特徴は時間の長いこと。6時間以上も続く。時間が長いほど受精率も高くなる。
ウミガメの生態を詳しく知ることの出来る本です。
(2025年2月刊。980円+税)