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シエラレオネの真実

(霧山昴)
著者 アミナッタ・フォルナ 、 出版  亜紀書房
読みすすめるのが辛くなる本でした。
著者が10歳のとき、父親は逮捕され、翌年、国家反逆罪で絞首刑となりました。
父親はシエラレオネで生まれ育ち、イギリスに渡って医師となります。スコットランド出身の白人女性と結婚して、シエラレオネに戻って医師として活躍するのですが、腐敗した国内政治を立て直すために政治家となり、財務大臣をつとめるのです。ところが、権力者の首相とそりがあわず、ついに辞表を出し、首相からぬれ衣を着せられて逮捕・有罪(死刑)となったのでした。
シエラレオネはアフリカ大陸の西側にある共和国で、面積は北海道よりも小さい。人口は1975年当時300万人で、現在は720万人。1961年4月にイギリスから独立した。シエラレオネはダイヤモンドを産出し、その利権をめぐって国内の民族を背景とする党派が激しく争った。映画『ブラッド(血)ダイアモンド』に状況が描かれています。
ユニセフ親善大使として黒柳徹子もシエラレオネを訪問していますが、子ども兵士がいたり、腕や脚を切断するなどの残虐行為も横行していました。
ガーナのエンクルマ大統領が一党制国家を提唱した。複数政党制民主主義は民族の分断を助長し、社会や経済の発展のために本来の仕事からあまりに多くのエネルギーを奪うとした。ケニアのケニヤッタ、タンザニアのニエレレ、ザンビアのカウンダ、アラブのバンダが単一政党制の政府をつくった。いずれも独裁政権をつくって腐敗していったのです。これって、いまのアベ「一強」と似たところがありますよね・・・。
著者の父は、被告席に立たされ、感情をこめて演説した。しかし、それはムダだった。そこには法も正義もなく、あったのは、ためらわずに前進し、みんなを圧倒したままにする、腐敗した巨大な法律の罠だけだった。死刑を宣告された父は、命乞いすることは拒んだ。判決の翌日、絞首刑を執行された。刑務所の前で棺の蓋を開いて公開された。墓地に運ばれると、酸をかけて集団墓地に投棄された。
アフリカの民主化というのはなかなか苦難の道をたどっているようです。暴力に頼っていては何事も解決しないと思うのですが、理性をみんなが発揮する日が来るのはまだ遠い先のことなのでしょうか・・・。暗然とした気分になりました。
(2018年10月刊。2400円+税)

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