著者:田城 明、出版社:岩波書店
テロとの戦争のもとで、アメリカに今なにが起こっているのか、ヒロシマ記者が歩く。そんなタイトルのついた本です。いやあ、ホントに、日本がアメリカのような国になったら大変だと、つくづく思わせる本です。
2001年9月11日のテロ事件から5年たったアメリカにおいて、現場で救助活動にあたった人のなかに、その後遺症に悩む人々がいかに多いか。マイケル・ムーア監督の映画『シッコ』にあるとおりです。
9.11テロの直後、被災者の救援活動にあたった人々の大半に呼吸器疾患がみられる。ぜん息、のどや胸部の痛み、頭痛、全身の倦怠感。PTSDも見逃せない。
現在、WTC崩壊現場で働いた人たちによる、障害者年金や労働補償を求める訴訟が 8000件にのぼる。
アメリカから危険人物と一方的に認定されて国外追放された人は、2005年だけでも10万人にのぼる。
アメリカの退役軍人省は、全米で20万人のホームレスがいると推定している。男性のホームレスの3人に1人は、退役軍人だ。年間では、40万人の退役軍人が1日以上ホームレスの状態を体験している。退役軍人のホームレスのうち、ベトナム戦争関係が45%ともっとも多く、湾岸戦争、イラク・アフガニスタン戦争の関係者も10%はいる。
イラクへの派遣を拒否して軍法会議にかけられた兵士が10人いて、うち2人は服役中。イラク派遣を避けてカナダに移った兵士が200人。イラク戦争が始まって、無許可の隊離脱者は6400人。
アメリカでの軍隊勧誘は、貧困層の若者をターゲットにしている。
アメリカでは、ベトナム戦争中の1973年に徴兵制が廃止された。志願制になったが、その勧誘の標的は圧倒的に貧困層だ。軍人を勧誘する年間のリクルート予算は40億ドル(4800億円)。
メディアとして、イラク戦争に加担したことへの反省も、ニューヨーク・タイムズなどを除いて、ほとんどない。
新聞もテレビも寡占化がすすみ、多様な意見が反映しにくくなっている。利益優先主義がジャーナリズムの質を低下させている。
イラク戦争にアメリカは3780億ドル(45兆3600億円)をつかっている。追加予算が承認されたら、4560億ドル(54兆7200億円)に達する。これはアメリカの納税者1人あたり1500ドル(18万円)になる。1時間あたり1150ドル(13億8000万円)、1日だと2億7500万ドル(330億円)の出費となる。
気狂いじみたアメリカのイラク戦争遂行状況がよく分かる本です。こんな国に追随するなんて、日本をますます不幸にしてしまうだけですよね。
(2007年11月刊。1900円+税)
戦争格差社会アメリカ
