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空っ風

著者:諸岡玲子、出版社:講談社文庫
 浪曲の世界を読みものにした雰囲気なんですが、時代についていけない小政の心情を心憎いばかりに描いていますから、また一味ちがう印象も受けます。
 子どものころ、ラジオから流れてくる広沢虎造の浪曲を聴いていました。清水の次郎長親分の話もあったように思いますが、それは湿っぽいムードの話ではなく、江戸っ子のカラっとした雰囲気で語られていたように思います。
 清水次郎長一家の大政・小政といえば知らない人はいません(いえ、今どきの若い人の大半は知らないのでしょうか・・・?)。その小政が次郎長親分にいわば拾われ、ヤクザに身を投じたものの、江戸から明治へ変わろうとする時代の波に抵抗感があり、流れに乗ってお上(おかみ)の下でヤクザ稼業から市中取締りへ華麗なる転身を遂げようとする次郎長を逆恨みしていく状況が刻明に描かれています。まるで小政本人の聞き語りを読んでいるかのような筆力に感嘆させられました。

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