(霧山昴)
著者 斎藤幸平 、 出版 安英任
とても衝撃的な問題提起をしている本です。私たちの多くは、デジタル・プロレタリアートになりつつあるというのです。
アメリカの1%の富裕層の資産は下位90%の総資産よりも多い。
華々しい技術革新が続いているのに、生活環境の劇的な変化はなく、経済成長率も低迷。
プラットフォーマーは、マッチングの場を独占することによって、30%という高額の手数料を利用者から徴収している。
ユーチューブやフェイスブック Gmail、チャットGPTのような無料サービスはもはや当たり前のものではない。サービスが無料なのは、私たちが、自分の好みから位置情報まで、膨大なデータを提供しているからだ。プライバシーや個人情報の保護はなく、GAFAMのやりたい放題となっている。
今や、世界を支配しているのは、テクノ資本主義。アメリカの経済成長を牽引しているのは、わずか7社のテック企業だ。アップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、メタ、エヌビディア、テスラという。
今、技術革新が私たちを貧しくしていき、階級社会が固定化している。
ネットをずっと視聴させることによって、人々の本や動画を読まなくなり、テレビも見なくなる。たれ流される情報の質は下がり続けている。ここに日本では、ネトウヨがはびこる地盤がある。
著者は危機的状況にある現代社会の諸問題を解決するには、エコロジー独裁、社会主義的な総動員体制を発動するしかないと強調しています。「独裁」というと、すぐに暴政とか専制に結びつくイメージですが、本当はそんなものじゃないと著者は強調します。
古代ローマの独裁官は、平時の枠組みでは対応できない危機に対処するための緊急措置としての職。そして、独裁という制度は、あくまで過渡期のもの。
著者は1870年代のパリ・コミューンに学ぶべきものがあるとしています。また、コロンビアやエクアドルにも学ぶべきがあるともしています。
さらに、オーストリア共産党の住宅政策に注目しています。基本的な生活保障(電気・ガス・水道)は毎月一定量まで無償で使用でき、一定量をこえたら、追加料金を徴収されるのです。これもいいアイデアだと思います。
そして、先日スタートした「赤いニューヨーク」です。新市長ゾーラン・マムダニはイスラム教徒であり、民主的社会主義者を自称していますが、「荒々しい個人主義の冷たさを、私たちは集団主義の温かさで置き換えよう」と呼びかけています。
労働者の街としてのニューヨークが目指しているのは、他者との協力から生まれる社会的な拡がり。マムダニ市長は、慎ましやかな善い暮らしを市民に保障しようとしている。これは大切な視点ですね。
今、再び「ファシズムか社会主義か」が問われている。著者は手を取り、温かい社会主義の道を歩んでいこうと呼びかけています。
私は、本を読んで、自分に緊張感が欠けていたことを反省しました。戦争が身近なものになっているとき、自分の意見を表明をためらってはいけないのです。広く読まれるべき本だと思いました。
(2024年4月刊。1870円)


