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崖っぷちの私立大学

カテゴリー:社会

(霧山昴) 

著者 朝日新聞取材班 、 出版 朝日新書

大学の授業料は高すぎます。国立大学の授業料は年が50万円から60万円。私立大学は100万円だなんて、ひどいものです。私の大学生のころは、月1000円。年に1万2000円でした。貸与制の奨学金は月3000円です。私は大学の寮に入っていましたが、寮費も月1000円でした。もちろん食費は別ですが、1食80円ほどでした。

今の大学生の多くがアルバイトに追われているなんて、国の教育政策が間違っています。ヨーロッパでは学費はタダ、学生に生活費を支給して、アルバイトなんかしなくても勉強に集中できるように配慮しています。

国の将来を背負う学生を、もっと国は大事にするべきです。トマホークやらオスプレイなんて、有害無益の危険な 軍事備品の購入をやめたら、すぐに実現できます。国の税金の使い方根本的に間違っているのです。

国は、定員割れのような私立大学への助成金を減らすといいます。これも間違いです。 その前に、国はやるべきことがあります。なぜ定員割れしているのか、何が問題なのかを大学と一緒に考え、対策を打つべきです。

少子化もあって、私立大学は経営が悪化している。私立大学の3割が経営困難です。 

地方都市に大学があると、そこには若者がいますから、町が活性化します。

18歳人口は減少傾向にあるが、大学入学者は微増している。1990年に49万人だったのが、2000年に60万人、2025年は65万人になっている。 

女性の大学進学率は1990年に15.1%だったのが2025年には56.5%。つまり6割近くの女性が大学に入っている。男性は60%をこえています。

大学の数も増えている。1990年に507校だったのが、2025年 には812校となっている。短大は減っている。

宮崎国際大学は、すべての授業を英語で実施する。2年次の後期には海外研修が必修。卒業生は中・高校の英語教員になり、旅行会社や航空会社に入る。

 「面倒見の良い大学」のナンバーワンは石川県にある金沢工業大学。学生の75%が県外出身。学生の自立心を育てる学生を活かすことを優先な教育に切り替えたことで、退学者が減った。 

福岡工業大学は、就職支援が手厚い。ここは半導体人材の育成に力を入れている。

昭和女子大学(東京)は、国内にいながら海外大学への留学ができる。学内にテンプル大学のキャンパスがあり、授業はもちろん英語。

大阪観光大学は、「自由と共に楽しみ、社会と共に生きぬく」という教育理念を有する。卒業生は多くの観光・サービス業界に就職している。

かつての学生は、政府や大学当局などの権威を批判し、 また、自分の考えを疑った。今の学生は指導者や自分の考えを疑う感覚が薄れている。そうなんですよね。私たちが学生だったころは、当局も社会もみんなを敵みたいな感覚があり、何かというと「打倒せよ」なんて叫んでいました。今の 学生は「ヘルプ・ミー」が優先のようです。

それにしても大学の生き残り策をしっかり考えて実践している大学が存在することを知り、少しばかり頼もしく思いました。

(2026年7月刊。990円)

日ソ中立条約

カテゴリー:日本史(戦前)

(霧山昴) 

著者 河西陽平 、 出版 角川新書

スターリンのソ連は、日本がソ連を攻めてくるのか、南下政策をとるのか、大いなる関心を抱いていました。そこにスパイも活躍しています。有名なゾルゲもその一人です。

近年、プーチン大統領がゾルゲを高くもち上げたことから、ロシアではゾルゲが英雄として高く評価されています。しかし、スターリンはゾルゲの情報を高く買っていません。その何よりの根拠は、ヒトラーのナチスの軍がソ連への奇襲攻撃を成功させたことに端的に示されています。

スターリンは、ヒトラーのナチス軍がすぐにはソ連に侵攻してこないと確信していたため、ソ連の諜報部が「ナチスの侵攻近し」と報告しても、取りあわなかったのです。 

スターリンの大粛正は情報部にも及んでいましたので、スターリンの気に入らないような情報はスターリンに上げず、自分の保身を優先していたのです。

そして、ゾルゲとは別のラインで、日本やドイツの情報を伝えるスパイが多くたくさんいました。

ソ連諜報網は日本社会に驚くほど浸透していた 満州事変が始まって3ヶ月後、モスクワの日本大使館内で秘密裏に行なせた会談の内容はスターリンに筒抜けだった。

本書では、ソ連の諜報機関に協力していた(スパイとなった)日本人の氏名が明らかにされています。「アベ」と「サソウ」です。「サソウ」は、ウラジオストクの日本軍特務機関にいた歩兵中尉の佐相寅秀だった。

日本陸軍の中枢の大勢はソ連赤軍の戦力を極度に過小評価していた。いや、赤軍は恐ろしいと言うと、「恐ソ病」のレッテルが貼られた。

スターリンによる粛正は情報部にまで及び、NKVDの外国部にいた450人の職員のうち275人が「人民の敵」として処刑されている。

ノモンハン事件でソ連赤軍は莫大な物量を投入した。それでも、日本側を上回る2万6千人もの死傷者を出した。ジューコフ将軍が指揮をとっていますが、人命軽視は日本軍と同じだったようです。

日ソ中立条約を締結したあと、スターリンは、ソ連駐在海軍武官の山口捨次大佐に対して、「これで日本は安心して南進できますね」と耳打ちした。スターリンは、日本軍の南進計画を知っていたわけです。

ソ連側の諜報機関がゾルゲのほか、何人もの日本人スパイを確保していたことを初めて知りました。今、高市政権はスパイ防止法を制定しようとしていますが、もちろん戦前にスパイ防止法はあったわけです。法律をつくったらスパイを止められるものではないことを歴史は示しています。すると、その目的は、国民の思想統制だということです。怖いです。

(2026年7月刊。1100円)

硫黄島の戦い

カテゴリー:日本史(戦前)

(霧山昴) 

著者 久山忍 、 出版 創元社

日米決戦の地となった硫黄島の戦いについて、新しい知見を得ました。なるほど、きっとそうなんだろうと、うなずきながら読み進めていきました。

私は映画二部作も見ているし、その後、NHKのドキュメントも見ています。日本兵が地下深くにたてこもって迫るアメリカ兵と白兵戦をやったことになっていますが、果たしてそんなことが可能だったのか、とても無理ではなかったのかという話です。

硫黄島にいた日本兵は防空壕づくりに追われ、高熱・硫黄臭、そして水不足のなかでの過酷な労働によって、栄養失調、アメーバ赤痢にさらされ、満足に動けない状態だった。さらに肝心の戦うための武器・弾薬も欠乏していた。

硫黄島の戦いが長引いたのは、日本兵が防空壕から出ずに中に潜んでいたため、アメリカ軍は、一つひとつの壕を爆破し、水攻めなどをして言ったからではないのか。

この本は硫黄島戦を戦い、生還した大曲覚海軍中尉の手記に大きく依拠しています。また、栗林忠道陸軍中将をあまり美化してしまうと史実に反するという視点もあります。この点もなるほどと思いました。

硫黄島の日本軍は2万人もいたとのこと。その9割以上が戦死しましたし、その遺骨の多くが今日まで回収されず、 地下の洞窟内に眠っています。

ペリリュー島を除いて、日本軍は水際撃滅作戦を展開していましたが、この水際撃滅作戦はうまくいきませんでした。そこで、栗林中将は、上陸時には黙って見過ごしたうえで叩くという戦法をとりました。ところが摺鉢山にたてこもる海軍の部隊は、アメリカ軍が上陸してきたときに叩くという戦法を実行し、栗林中将は命令違反として激怒しました。この点、海軍側にも言い分があるようです。

硫黄島の地下陣地構築は困難をきわめた。岩盤が固いうえ、高温のガスを噴き出す特異な地質を、重機なしで人力のみで手掘りするしかない。いかにも重労働です。硫黄島には水がない。地質は石灰岩。地熱が高く、穴を掘り進むと硫黄ガスの熱風が噴き出す地層だった。雨が降ると天幕を外に出して水を溜めた。

硫黄島に送られた日本兵は35歳から45歳まで、つまりは老兵の集まりだった。

毎日支給される水は、1人につき1.5リットルのみ。どの兵士も真っ黒で皮膚にはあせもが絶えず、手も足も骨と皮ばかりにやせ細っていた。水はコップ1杯のみ、それも酸性で硫黄臭と塩分でノドをヒリヒリさせるものだった。地下を掘り進むとき、5人1組で、1昼夜掘って1メートル掘れたらよい方だった。

兵士たちがあまりに疲労しているのを見て、一部の部隊長たちが連名で栗林中将に休息を求める意見書を提出した。しかし、栗林中将は拒絶した。

硫黄島の日本兵たちは、補給なし、撤退なしという全滅間違いなしの兵士たち。地下の掘削には、削岩機が使えない。兵士たちは、防毒マスクをかぶって作業した。そして、18キロメートルの長さの地下トンネルが掘削された。

摺鉢山に星条旗があげられる様子の写真が有名ですが、この写真は2度目のものです。1度目の旗はもっと小さく、しかもすぐに日本兵の反撃で倒されたのでした。

著者はアメリカ軍の兵士の死傷者が多いのは、白兵戦によるものではなく、海軍の爆弾ロケットによるものではないかとしています。海軍の噴進砲は簡単な構造で、60キロから250キロの爆弾を、陸上したアメリカ兵の頭上にあびかけた。これがアメリカ兵に大量の死傷者を出したとするのです。私もそうかもしれないと思いました。

アメリカ軍にとって硫黄島を確保できたことによって、2251機ものB29が不時着して助かっている。つまり2万5千人近くが助かったということ。硫黄島でのアメリカ兵の死傷者2万人を上回る。

そうか、そうなのか、やっぱり戦争をしてはいけない。戦争そして栗林中将を美化してはいけないと思わされた本でもありました。

(2026年8月刊。2420円)

吹きすさぶ嵐をついて

カテゴリー:社会

(霧山昴) 

著者 奈良教育大付属小を守る会 、 出版 喜楽研

かの有名な灘中・高校では、中・文科省のカリキュラムなんて まったく無視した教育がなされていても、誰も問題とせず、文科省も放置しています。ところが、全国的には文科省のカリキュラムとちょっとでも違ったことをすると、「不適切な教育課程」があるとして、目くじらをたて、指導が入って、厳しく統制しようとします。

現場の教員をもっと信用して、のびのび授業をまかせたほうが、よほど子どもたちの学力はのびていくと思います。今は、あまりに「管理」が過ぎていて、教員が疲れきっているのではないかと心配しています。

奈良教育大学附属小学校(以下、附小)は、教育課程の自主編成に挑戦してきて、全国から注目されていました。それが気にくわないと考える人たちがいて、事件が起きました。懲罰的な出向・配転が強行されました。対象となった3人の教員は奈良地裁に提訴し、附小を支援する取り組みも始まりました。そして、提訴して後、1年もしないうちに和解が成立し、当事者復帰が実現したのです。すばらしい成果です。

問題になったものの一つは、教科書を使わなかったことです。新しく県教委から着任した校長は、小学校教育も校長の経験もない人でした。附小の教育について、自民党の文部科学部会でも国会で問題にした議員がいたとのこと。それは、東京の養護学校で取り組まれていた性教育について、自民党の議員たちが問題にし、教育的見地・配慮を欠如させた攻撃をして、自主的な性教育が圧殺させられたことを思い出しました。国や国会議員が自らの勝手な価値観を教育現場に押し付けるのは明らかに間違っています。

学習指導要領は法令ではなく、大綱的な基準なのです。一言一句まで拘束力があるようなものではありません。

附小の子どもたちは、自分が意見を言い、自分の言葉に自信をもって話すことが出来ていました。教員の取り組みの成果です。

自民党の国会議員は附小は「左翼の巣窟」と言ってはげしく攻撃しました。灘中・高に対しては絶対に言えないコトバでしょう。

附小では、児童会が主催して週1回の全校集会が開かれる。子どもたちが自発的に自治の力をつける目的で、全校集会や行事がすすめられる。これは全校な仲間づくりの実践でもある。学級だよりや教科だよりが発行され、月々に豊かな授業参観とPTA懇談会で、教員と父母とが交流している。

夏休み算数教室では、文章題を苦手とする子どもたちのために、設問を工夫。

奈良駅に電車が6台とまっています。発車して西大寺に着きました。電車4台がガターン、つなぎました。何台になりましたか?

なるほど、これなら、子どもは頭に具体的なイメージをもって計算できますね。

算数の授業を「おいしい科目」にするという発想での取り組みもあります。いろんな切り口、アプローチがあるのです。

2ヶ月ごとの裁判では、毎回、定員70人の法廷を満席とし、抽選もしたそうです。見事な取り組みです。

灘中学の有名教師(橋本武氏)は中学1年から3年まで、中勘助の「銀の匙」だけを徹底的に読み込んでいくというものです。誰も問題にしませんでした。それどころか、クビになることもなく、教員生活を全うしたのです。

私も、高校のとき、歴史の先生による手描きの詳細なプリントでしっかり勉強しました。いかにも心こもったプリントでしたので、大切に読み込み、自信をつけることができました。

たたかえば光を手にすることができるという確信を与えてくれる本でした。貴重な記録になっています。

(2026年6月刊。1650円)

世界一面白い脳の講義

カテゴリー:人間

(霧山昴) 

著者 日本脳神経科学学会 、 出版 講談社ブルーバックス新書

高校3年生になる直前の春、私は理系から文系に転向しました。それまでは脳の生理学を研究するのも面白そうだと考えていたのです。でも、数学 の図形問題などで、ひらめかないので、これは向いてないとあきらめました。物理や化学は好きだったのですが…。

なので、今でも人間の脳だけではなく、鳥の脳や恐竜の脳がどうなっているのか、すごく関心があります。

ミイラをつくっていた古代エジプトでは、脳には特に重要な役割はないと考えられていて、脳みそは捨てられていました。思考や感情の中枢は心臓にあるとされていたのです。脳は、心臓がうみだす熱を冷ますための「冷却装置」だとみられていました。なんとも驚くばかりです。

ところが、紀元前4世紀のアリストテレスとヒポクラテスは、喜びや悲しみ、思考はすべて脳から生まれるとしました。

それでも、「心臓こそが知性の座である」という考えは根強かったようです。

今では、脳の動きや電気信号を測定することも できて、脳の働きが精密に判明しています。

脊髄損傷によって歩行できなくなった人について、ワイヤレスで腰の脊髄に埋め込んだ装置によって歩行を可能にすることもできるようになっています。すごいことです。こんな科学技術の発達は大歓迎です。軍事ドローンの進歩やらAIの軍事活用なんていうのは恐ろしいばかりで困りますが…。

眠っている人に話しかける実験が紹介されています。すると、かなりの確率で睡眠中であってもコミュニケーションはとれるそうです。

くじけた心を回復させることもできるようです。アストロサイトを正常に機能させることによって可能になる。

脳の活性化には好奇心と柔軟性が大切。何か新しいことを知ろうとしたり、新しいものを創造するには、これまでのレパートリーから外れ、いつもと違う脳の活動をしなくてはいけない。私にとって、この世は不思議だらけなことだらけです。

だって、国民のことなんてこれっぽっちも考えておらず、自分の体制を維持することしか頭にないタカイチ首相について世論調査で半分の支持率があるというのが、不思議でなりません。

地下鉄の電車の中で、 ケータイが使えるというのは、なぜなのか、実感として理解できません。

楽観性は身体の健康とも関係している。楽観性の高い人は、そうでない人に比べて平均寿命が11〜15%ほど長く、 85歳以上まで生きる割合が高い。

私も、85歳までボケることなく、そこそこ健康で生きていけること、できたら弁護士もしていたいと思っています。

脳は、目から入ってきた情報をカメラのようにそのまま写している のではない。

うつ病患者の腸内細菌を無菌のマウスに移植すると、ヒトのうつ病に近い症状が出ることが確認されている。

夢はよく見ますが、起きてからも思い出せるのはごくわずかです。起きて1分前のものは記憶になく、20秒前のものを記憶している。うひゃ、そうなんですか…。

AIを使ったら、人を操作できるようになる、なんて恐ろしすぎる世の中になっています。

(2026年9月刊。1430円)

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