(霧山昴)
著者 繁延あづさ 、 出版 亜紀書房
食鳥処理工場に働いていた人の話を聞いたことがあります。 毎日毎日、食べるためとはいえ、生きているニワトリの首を包丁でどんどん切っていくのが、どうしても耐えられなかったというのです。 私もその気持ちが分かりました。
目の前のニワトリをさっと殺すことだけに集中し、ただただ左手と右手を動かしつづける。 首を切ったニワトリは右へと流れ視界から外れていくが、左からはまだ生きているニワトリが視界に入ってくる。 血が噴き出す一瞬を見届けたら、目はすぐに左からくる次のニワトリへ向かうようになった。 それが果てしないほどに続く。
ブロイラーを養成する飼育場に入ったこともあります。 全自動です。 エサも水もみんな自分たちで食べて飲めるようになっています。 まさしく工場です。 エサはアメリカから輸入している配合飼料でした。
歯のないニワトリは砂肝の中でモグモグするために小石が必要で、ふだんから小さなものを飲み込む習性がある。 そして、この砂肝は1羽にひとつしかないので、貴重。
ニワトリは夏の暑さに弱い。
ニワトリの内臓を取り出す工程を中抜きと呼ぶ。 ニワトリの内臓は美しい。 肝臓はワイン色、キンカンはオレンジ、肺はピンク、脂はイエロー、胆のうは濃いグリーン。 ええっ、キンカンって何……。 キンカンは卵の黄身が大きく連なっているもの。 思い出しました。 私が小学生のころ、ニワトリを飼っていました。 ときに父がニワトリをさばくのです。 内臓をさいて開くと、卵が大小つらなっているのでおどろいたものです。 卵のカラはあとになって覆うのです。
ニワトリのオスは向かいあって直接対決する。 メス同士は戦うことはない。 ただし、序列を決めるために、うしろからつつく。
著者の家で飼っているのは採卵のためのニワトリ。 著者が働いた食鳥処理場は肉用ブロイラー。 なので、鶏種が違うし、育てる環境も違う。
ニワトリの産卵開始は生後半年後。 あたたかい季節に、前もってヒヨコを入れておく必要がある。
オス同士は、戦うときは戦うが、それ以外のときは、別に険悪な関係ではない。 互いに羽づくろいする仲むつまじい光景もある。
ニワトリは春になると卵をよく産むようになる。 つまり、ニワトリの卵にも季節がある。
親鶏は、肉質は硬くなるけれど旨味は増し、ダシもよく出る。 鶏飯は親鶏を余すところなく使う料理なのだ。
少し前に、豚を飼って大きく育て、そして食べた経過を紹介した本を読みました。 とても美味しかったそうです。 そして、著者の他の本、『山と獣と肉と皮』、『ニワトリと卵と、ぼくの思春期』も読みました。 いつも考えさせられながら、楽しく読んでいます。
(2026年7月刊。2420円)


