(霧山昴)
著者 井手隊長 、 出版 ハヤカワ新書
私はラーメンを食べるのは年に1回あるかないか、です。メンを食べるなら、野菜たっぷりちゃんぽんにします。もちろん健康を考えてです。60年近く前、高校の修学旅行で東京に行ったとき、渋谷駅近くのラーメン屋に入って東京ラーメンを食べて、注文を間違えたのかと思いました。しょう油味のうどんのようなものが出てきたからです。ラーメンといえば、豚骨味のギドギドした、白濁スープのものだと思い込んでいましたので、びっくりしました。
当時は、百円でカツ丼が食べられましたので、ラーメンも百円前後だったと思います。その後、300円台となり、600円となり、今や1000円前後です。先日、久留米の駅で食べたのは、高菜のせラーメンでしたが1200円しました。喫茶店のランチも今では1200円ですから、仕方ありません。
この本によると、「1000円の壁」があるということですが、メニューに900円前後のものがあっても、トッピングをしたら、1000円をこえるのが当たり前になっていますよね。
私は、ラーメンを行列に並んでまで食べようとは思いませんが、福岡・天神でラーメン屋の前に行列が出来ているのは、見慣れた光景です。みんなで待てば会話を楽しめるし、ますますお腹も空いて、いいのかもしれません。なので、私は、この本にも出てくる、有名なジロー系とかイエ系というものは食べたことがありません。いずれもこだわりの味のようですね。
ラーメンの原価率の適正は35%ほど。博多ラーメンも2021年に690円だったのが2025年に1100円となった。6割の値上げ。食材費も職人の給料も値上がりしているので、やむをえないのでしょうね。
ラーメン屋の新規開業も多いですが、倒産件数も過去最多。2024年に倒産したラーメン店は57店で、前年比27%増。その原因の一つは、後継者問題をふくむ「人」の問題。
ラーメン専門店ではスープの食材にとことんこだわっている。この食材にかけるコストが昔とはまったく違っている。ダシの旨味(うまみ)の強さが桁違い(けたちがい)だ。
チャーシューには焼豚と煮豚の2種類がある。近年は、低温調理チャーシューが増えている。
スープに旨味や深いコクを与える背脂。かつては捨てる部位だった。今や、供給不足のため値段が上がり、店同士で奪いあいの状態。背脂をさばく人がいなくなったことにもよるという。背脂には等級があり、A脂、B脂、C脂と3種類ある。フランスではジュレと呼んで、高級品。
ラーメンの原価を考えるときは、1日に出る杯数が大事。杯数が多く出れば原価は下がる。1日200杯を売り切る。スタッフは月給35万円、週休2日で確保する。いやあ、これは難しそうですね……。
博多一風堂は、麺が極細のため、ゆで時間が短く、スピード勝負ができるのが強味。1分もかからない。
ラーメン店ではレシピをつくらない。ところが、今ではレシピをつくってマニュアルをつくっているラーメン店のチェーンもある。
今では、「冷凍ラーメン」もあるそうです。店の味がそっくり再現できていて、1000円台であっても女性に人気だとのこと。そして、それはスーパーだけでなく冷凍自販機まであるそうです。冷凍ギョーザの自販機もありますし(した)が、身近なところは撤収してしまいました。行列にかえて、ネットで500円を余計に払って予約制にしたラーメン屋もあるのですね。たしかに、路上に1時間も待たされるくらいなら、500円を払いますよね。
日本のラーメン店事情がよく分かる新書でした。
(2025年10月刊。1260円+税)


