(霧山昴)
著者 佐道 明広 、 出版 吉川弘文館
アメリカのトランプ大統領がいきなり始めたイラン攻撃は、まさしく国際法にも国連憲章にも明らかに反します。そのアメリカに対して批判することもしない(できない)高市首相は情けないとしか言いようがありません。スペインの首相はいち早くトランプを批判しましたし、極右と言われているイタリアの首相までトランプを批判しました。
高市首相がアメリカに行って、手を差しのべて握手しようとするトランプに抱きついている映像はみっともない限りです。アメリカの航空母艦の上で、トランプの横に立った高市首相はとんだりはねたりという醜態をみせました。日本の首相がこんな低レベルの人間だというのを世界に見せて、同じ日本人として恥ずかしいとしか言いようがありません。
本書は、戦後日本の軍事との関わりをたどっていますが、最後にトランプ下のアメリカとの関わりで次のように厳しく指摘しています。
トランプ大統領の言動は、自由や民主主義という価値観を重視せず、パワーによって諸国を動かす、場合によっては服従させようとしているようにも見える。そのため、ヨーロッパではNATOによる安全保障体制に頼るのではなく、独自の安全保障体制を構築しようとする試みが生まれている。アジアの多くの国々でも米国への不信は増大し、米中のどちらにも組しない在り方が模索されている。
トランプ大統領は、在日米軍基地駐留経費の負担や、冷戦終了後に国際法共財的役割を担ってきたはずの日米同盟について、基本的な理解が足りないのではないかと思える。
財政的には、現在の日本は余裕がなく、しかも現在進められている日米の一体化は、最悪の場合、日本の国土が戦闘に巻き込まれることになる。多くの国民は、沖縄が戦場になる危険は認識していても、自らの居住地がそうなる可能性は考えていないだろう。
トランプ政権の登場によって生じた事態は、日本も含めた多くの国の予想を超えているのではないだろうか。トランプ大統領は、国際秩序の意義を認めようとせず、破壊に導くような政策を展開している。国際社会はパワーが第一となり、まるで19世紀に戻ったかのような様相を呈しつつある。
日米安保体制に依存する日本の安全保障政策についても、徹底的に議論すべきであると考える所以(ゆえん)である。
もっとも重要なことは、在日米軍基地は日本の防衛を直接の役割としていないことである。米軍は世界全体を視野に入れて戦略を作成しており、日本という一つの戦域だけで判断できることには限界がある。
トランプ政権は、高関税政策で自由主義貿易体制を混乱させ、米国内政治でも自由主義や民主主義、法の支配とは相いわないと思える施策を行っている。日米同盟は、自由主義という精神的基礎を失いつつあるのだろうか。
米中対立が本格化した場合には、日本を戦火に巻き込む可能性も生じるものとなっている。トランプ大統領の、一方的に高関税や防衛費増額の要求をしてくる姿勢に、同盟国としての信頼性も揺らいでいる。
今後の日米関係に不安を感じるものが多くなり、米安保体制の見直しや自主性が改めて唱えられるようになっているのも不思議ではない。
幸いにして一度も戦線に出ることがなかった自衛隊は、本当の戦場を知らない「甲隊」でもある。実際に死傷者が出る戦闘に耐えられるのかという問題もある。
本書の刊行は昨年(2025年)12月20日です。今年はじまったアメリカとイスラエルによるイランへの先制攻撃、しかも交渉途中であり、宣戦布告もない突然の攻撃でした。戦前の日本の真珠湾攻撃について多くのアメリカ人は卑怯だと怒ったわけですが、それでも数時間遅れではあっても宣戦布告はしたのです。アメリカは卑怯すぎませんか………。
戦後日本の「専守防衛」対策の破棄をふくめて、基礎的な軍事知識も得て、大変勉強になりました。
(2025年12月刊。2750円)


