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現代美術キュレータという仕事

カテゴリー:社会

著者   難波 祐子 、 出版   青弓社
 いま、パリにいる娘がキュレーターを目ざしていますので、親として少しは勉強しておこうと思って読みました。
日本でキュレーターになるのは、なかなか難しいことを再認識させられました。職業として自立できるかどうかはともかくとして、美術館や博物館に足繁く通うことは人生を豊かなものにしてくれることは間違いありません。
 数ヶ月パリに留学しただけで美術館で働くキュレーターになれるほど現実は甘くないのだけは確実だ。
 それはそうだと思います。何事によらず、何年かの下積みの努力が求められるものですよね。
 キュレーターの定義としては、展覧会の企画をおこなう人、そして展覧会を通してなんらかの新しい提案、ものの見方、価値観を創り出していく人。
 1951年に定められた博物館法に学芸員を定義している。学芸員は博物館資料の収集、保管、展示および調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。つまり、学芸員は、展覧会の企画展示や資料調査だけでなく、作品保存、収集保管、さらにはその他の関連事業という、なんとも曖昧な定義の事業も含めた多岐にわたる仕事をこなさなければならない。
 日本の美術館学芸員の守備範囲は、海外のキュレーターよりもかなり幅広い。
現在、日本全国で年間1万人が大学の単位修得によって学芸員の資格を得ている。しかし、すぐに現場で求められる能力をもった学芸員となることは、ほぼ不可能である。
 キュレーターの仕事のイメージがおぼろげながらつかめる本でした。娘よ、がんばれ。初志貫徹を心から望んでいます。
(2011年10月刊。2800円+税)

3.11と憲法

カテゴリー:司法

著者   森 秀樹・白藤 博行ほか 、 出版   日本評論社
 3.11を契機に、改憲派は、「このような緊急事態・非常事態に対応できない日本国憲法は改正しなければならない」と主張しはじめています。こんな火事場泥棒のような主張がサンケイ新聞の社説(3月22日)にあらわれていて驚くばかりです。
 3.11のあと、福島県民の気持ちは複雑に揺れ動いている。
 放射能の危険については、もう聞きたくないという人々がいる。いつまでも放射能の危険性を口にする人は、神経質な人、うとましい人となっている。それも、政府が大丈夫だと言っているからだ。子どもの疎開についても、もうそんなことは言ってくれるなと耳をふさいでしまう人もいる。ここらあたりは本当に悩ましい現実ですよね。
大災害の発生を奇貨として非常事態規定の欠如をあげつらい、憲法改正を声高に主張する国会議員がいる。彼らは国民の権利を制限することを狙っている。
 「自衛隊は軍隊ではない」という建前(政府解釈)は、結果的に「国民を守る」という面をより前に押し出している。自衛隊では国民に銃を向ける治安出動訓練はほとんどなくなり、災害への日常的態勢が強化されている。
 ところが、「軍」の本質は国家を守ることにあり、個々の国民を守ることではない。自衛隊は、「軍」となるのか、「軍隊ではない」という方向にすすむのか、今、大きな岐路に立たされているように私も思います。
 原発をめぐる裁判について、原発差止を認容する判決を書いたことのある元裁判官の次のような指摘は貴重です。
裁判所が判断するのは、その原発において過酷事態が発生する具体的危険があるか否かであって、原発の存置いかんという政策の相当性について判断するわけではない。差止判決は、十分な安全対策をとらないで原発を運転することを禁止しているのであって、およそその原発を運転することを禁止しているのではない。まるで、裁判官が一国の重要な政策を決するかのような言い方をして裁判官に不必要な精神的負担を与えるべきではない。なーるほど、そうなんですか。でも、ある程度は言わざるをえませんよね、どうしても・・・。
 憲法学の学者を中心とした論稿で、大変勉強になりました。
(2012年3月刊。1800円+税)

世界サイバー戦争

カテゴリー:アメリカ

著者   リチャード・クラーク、ロバート・ネイク 、 出版   徳間書店
 サイバー兵士が、損害や混乱をもたらす目的で、国家が別の国家のコンピューターもしくはコンピューター・ネットワークに侵入する行為が、サイバー戦争である。
 著者はアメリカの安全保障、テロ対策国家調整官などを歴任しています。この本を読んで、もっとも怖いと思ったのは、「敵」国家のコンピューター・ネットワークのすべてを破壊してしまったときには、最前線にいる司令官は孤立し、上官との通信ができず、また生き残った後任の存在を知らずに自分ひとりで決断せざるをえなくなり、それは、えてして戦い続けることを選択しがちだということです。
 つまり、情報を断たれた第一線の現場司令官は上部の停戦命令を知ることなく、戦争続行指令を出し続けるだろうということです。これは、現代世界では最悪の破局を招きかねません。これって、とても恐ろしいことですよね。
 サイバー戦争に関して、5つの教訓がまとめられています。
第一に、サイバー戦争は現実である。第二に、サイバー戦争は光速で展開する。第三に、サイバー戦争は全地球規模で発生する。第四に、サイバー戦争は戦場をとびこえる。第五に、サイバー戦争はすでに始まっている。
 ちなみに、北朝鮮の国内には、アメリカと韓国のサイバー戦士が攻撃するような目標がほとんど存在していない。
 サイバー戦争は、ある種の優位性をアメリカに与える一方、他のどの国よりも深刻な危機にアメリカを陥れる。
 アメリカの情報機関の高官によると、中国はサイバー空間におけるアメリカの最大の脅威ではない。ロシアのほうが絶対に上だ。そして、高度の技能をもつサイバー戦闘部隊は、イスラエルにもフランスにも存在する。
 サイバー犯罪者は、インターネット攻撃の経路をとして利用し、標的の情報を入手したあと、標的にダメージを与える。
 このように、インターネットにたよる国家は「敵」の国家から、そのシステムをスパイさせるだけでなく、破壊されてしまう危険があるのです。
 私のようにインターネットに頼らない生活を送る平凡な市民にとっては何でもありませんが、国家にとっては何でもありませんが、国家にとっては存立の危機につながるものがサイバー攻撃・戦争なのです。
(2011年3月刊。1700円+税)

武蔵成田氏

カテゴリー:日本史(戦国)

著者   黒田 基樹 、 出版   岩田書院
 『のぼうの城』(和田竜。小学館)を面白く読んだものとして、その史実はどうだったのか関心がありました。
関東攻めの秀吉軍の一員として石田三成指揮下の2万人の軍政にわずか2千で立ち向かい、水攻めにもめげず城を守り抜いたなんて本当なんだろうか、半信半疑でした。『のぼうの城』を読んで3年半たち、ようやく史実を知ることができました。まことに小説家の想像力は偉大なものです。史実を知ったからといって、小説の面白さが消えてなくなるわけではありません。
秀吉が北条氏政・氏直親子らの北条一族の守る小田原城攻めに動員した兵力は総勢24万人といわれている。これに対して北条勢は3万余人。
 天正18年(1590年)3月に小田原攻めの緒戦が始まると、秀吉軍は次々に北条方の城を攻略した。6月には、関東で残る北条方の城は小田原城のほかは忍城だけとなった。秀吉は忍城を攻めるため石田三成を指揮官として、佐竹義宣、宇都宮国綱、多賀谷重綱、水谷勝俊、結城晴朝ら関東の諸将をあわせて2万余の大軍を派遣した。ここに、関東の戦国合戦の最後を飾る忍城攻めが始まった。
忍城は周囲を沼と湿地に囲まれた難攻不落の城郭である。城内には、雑兵・百姓・町人・神官・女子供ら3000あまりが立て籠もった。
 秀吉は忍城の攻略方法として、石田三成に水攻めを指示した。三成の築いた堤防は石田堤と呼ばれ、現在も一部が残っている。秀吉の忍城攻めの方針は、周囲を包囲したうえで水攻めの用意を周到にさせて、開城させようというもので、力攻めは想定していなかった。
 7月1日、北条氏直は秀吉へ降伏し、7月5日に小田原城を出た。これにより、北条方で残ったのは忍城ただ一城のみとなった。そして、秀吉は最後に残った忍城攻めの仕上げに取りかかった。しかし、小田原城まで開城したとあっては、忍城も籠城する理由を失った。
秀吉は7月15日に忍城水攻めを見物し、17日には小田原を出陣して会津に向かう予定だったが、水攻めは出来ていなかった。いくら秀吉が忍城水攻めに執心を燃やしても、あと半月かかるか1ヵ月かかるか分からない状態では待ってはいられなかった。奥州平定がそのために遅れたのでは、忍城水攻めどころではない。秀吉は水攻め見物をあきらめ、北条氏直に忍城の開城を命じた。7月16日、忍城に立て籠もっていた成田勢は一同堂々と出城した。
 石田三成の忍城水攻めはなく、忍城総攻撃もなかった。実際にあったのは、5月1日の忍城の皿尾出張の乗取り合戦だけだった。
 ところで忍城攻めのために石田三成が高額の労賃を呈示して近隣から労務者をかき集めたのは事実でした。
昼は永楽銭60文と米1升を支給する。夜は永楽銭100文と米1升とする。
 この労賃の高さに、15歳前後の若衆から60代の老人まで応募した。そして、6ヶ所に区画して、1部隊が1区画を担当して、一斉に工事をすすめた。こうやって水攻め用堤防14キロは1ヵ月ほどの短期間で完成した。人海戦術が成功したわけである。そのうえで利根川の水を入れて、荒川をせき止めなければならない。それにまた大工事を要した。なーるほど、すごい工事だったようです。
 郷土史をここまで調べあげたことに驚嘆しながら、一気に読みすすめました。
(2012年1月刊。3800円+税)
 日曜日の午後、庭の桜の木が半ば枯れているのに気がつきました。根本のところが虫食い状態になっていたのです。道理で今年は花が少ししか咲かなかったのでした。
 そこで残念ですがノコギリで切りはじめました。幹の部分を切って、枝を切っている最中、誤って左手にノコギリの刃を当ててしまいました。
 そこで、指を口にふくんで、30分ほど、チューリップを眺めながらじっとしていました。ケガをしたとき、下手に消毒しないほうがよい、人間の自然治癒力に任せるべきだという記事を読んだばかりでしたので早速実践してみたのです。おかげで、痛みはありますが、まあ、なんとかなりました。

官邸から見た原発事故の真実

カテゴリー:社会

著者   田坂 広志 、 出版   光文社新書
 3.11直後から5ヵ月のあいだ内閣官房参与を務めていた原子力工学の専門家が「緊急事態」において直面したことを率直に語っています。
 著者自身が、「原子力村」にいて原子力の推進に携わってきた。そして、これほどの事故が起こるとは予測していなかった。
 現在の最大のリスクは、根拠のない楽観的空気である。
 「原子炉の冷温停止状態を達成した」という政府の宣言があって以降、あたかも「問題は解決に向かっている」という楽観的な空気が広がっている。しかしながら現状は、決して「冷温停止」と言えるものではない。あくまで、国民を安心させるための政治判断であって、技術的判断ではない。核燃料がメルトダウンを起こし、その形状も状況も分からなくなっている今の状態の原子炉について、「冷温停止」という言葉を使うのは適切ではない。
 最悪の場合には、首都圏3千万人が避難を余儀なくされている可能性があった。アメリカが80キロ圏内のアメリカ人に避難勧告を出し、フランスに至っては飛行機を飛ばして首都圏のフランス人の帰国を支援した。このようなアメリカやフランスの反応は決して過剰反応ではなかった。
 「原発の絶対安全の神話」は、自己睡眠の心理から生まれてきた。「原発は絶対に事故を起こさない施設です」という、技術的には疑問な説明であっても、それを繰り返しているうちに、「原発は絶対安全でなければならない」という責任感が、「原発は絶対安全である」という思い込みになっていた。
放射能は、文字通り「煮ても焼いてもなくならない」ものである。汚染水を浄化装置で処理すると、水の放射能濃度は下がる。しかし、そこで除去された放射能は、浄化装置の「イオン交換樹脂」「スラッジ」「フィルター」などに吸着された状態で残り、結果として、汚染水よりもきわめて放射能濃度の高い「高濃度放射性廃棄物」を大量に発生させてしまう。
 高レベル放射性廃棄物は、10万年以上ものあいだ人間環境から隔離し、その安全を確保しなければならない。ところが「10万年後の安全」を科学と技術で実証することはできない。それは、信じるか、信じないかという世界のレベルになっている。
 四号機の使用済み燃料プールの方が危険だ。それは、何の閉じ込め機能もない、いわば「むき出しの炉心」の状態になってしまうから。そして、燃料プールは、相対的に防御が弱いため、テロリストの標的になりやすい。
 メルトダウン(炉心溶融)を起こした原子炉そのものが、つまり福島原発は「高レベル放射性廃棄物」になってしまっている。その処理には30年以上かかる。
地層処理というのは、この日本が狭い国土であり、人口密度も高く、地震や火山の多い国であることから、きわめて難しい課題である。国内に処分地を選定するのは、ほとんど不可能ではないか。
除染とは、放射能がなくなることではない。除染作業によって膨大な汚染土が発生する。そして、すべての環境を除染できるわけではない。
 これから、将来、被曝によって病気になるのではないかという不安をかかえながら生きていく精神的な健康被害がすでに始まっている。
 自分以外の誰かが、この国を変えてくれるという「依存の病」をこそ克服しなければならない。
 この本はわずか260頁の新書ですが、問いに答えるかたちで物事の本質がズバリ分かりやすく解明されています。全国民必読の書として強く一読をおすすめします。
(2012年2月刊。780円+税)
 日曜日、団地の公園のそばの桜が満々開でした。となりに白いこぶしの花も満開で、ピンク色の桜がぐっとひきたちます。青空をバックとしたソメイヨシノの見事さには感嘆するばかりです。
 わが家のチューリップも一斉に花を咲かせはじめました。今、150本をこえた色とりどりのチューリップが妍を競うように咲いています。
 春らんまんの季節となりました。

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