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つながりすぎた世界

カテゴリー:アメリカ

著者   ウィリアム・H・ダビドゥ 、 出版    ダイヤモンド社 
 インターネットは便利ですが、その反面とても怖いものですよね。
 2008年9月に起きたリーマンショックは、世界を震撼させた。その中心地となったがアイスランドである。アイスランド人は、長いこと漁業という当たり外れの大きい職業を生業としてきたこともあって、もともと過剰に走る国民性だった。これはあてにならない気候から産まれた国民性だ。今回も、事態がどれほど深刻であっても銀行家たちは、どうにかなるさと一向にリスクをかえりみなかった。
 大恐慌が発生した1929年当時は、アメリカの人口1億2000万人のうち株式をもっていたのは、わずか150万人の富裕層に限られていた。証券市場の暴落によって直接的に損害を受けたのは、比較的少数にとどまった。もし、当時、インターネットがあったら、中流層まで職を失い、銀行が倒産するなど、被害はもっと拡大していただろう。
 今日では、インターネットのおかげで、株式所有は、はるかに分散している。一般的なアメリカ人は401Kや引退年金制度を通じて株式を保有している。10年前には、7000万人が株式を保有していた。2008年以降の株価暴落では、多くの米国国民が損失をこうむり、経済をまわす資産をもはや持っていなかった。
 個人情報が詐欺に悪用されたという事件が次々に発生している。今日では、収入を得たいと思っている高齢者の個人情報なら330万人分、がんやアルツハイマーなどを患っている高齢者のデータなら470万人分、55歳以上のギャンブル好きのデータは50万人が売り買いされている。
 2006年に有罪判決を受けた男性は、データベースに違法に侵入して、137件の検索を実行して、16億件にのぼるデータを盗み出した。
インターネットは思考感染を促す。ネオナチの集団はフェイスブックで会員集めをしていた。
 ネット上では、匿名で自分たちの教義や主義を広めることができる。
 インターネットの有用性は私も否定しません。でも、本当に必要な情報を、よくよくかみくだきながら取り入れることができるのか、いささかの疑問も感じています。つまり付和雷同型の、自分の頭で考えない人間を増やすばかりなのではないかということです。そこに根本的な疑問があるからです。
(2012年4月刊。1800円+税)

ネゴシエイター

カテゴリー:ヨーロッパ

著者    ベン・ロペス 、 出版    柏書房 
 さすが、交渉のプロは目のつけどころが違うなと感嘆しながら読んだ本です。テーマは身代金目的の誘拐事件で、犯人といかに冷静に交渉するか、というものです。
 誘拐事件は、毎年2万件が報告され、当局に通報されるのは1割のみ。
誘拐事件の半数以上がラテンアメリカで起きている。メキシコでは毎年7000件の誘拐事件が報告されている。実際には、もっと多い。コロンビアでは1日に10件の誘拐事件が発生している。
 ラテンアメリカで救出作戦によって無事に生還する人質は21%。誘拐事件の7割は身代金の支払いで解決している。力ずくでの人質救出は10%のみ。誘拐は、ウィークデイの午前中、被害者の自宅ないし仕事場あたりで起きる。
 誘拐の被害にあうのは地元の人間であって、海外居住者や旅行者ではない。
ロンドンでは、誘拐に備える保険の保険料が年間1億3000万ドルにもなる。ブラジルは、年間の誘拐発生件数が世界第3位。サッカー選手の家族が狙われるようになった。
 ネゴシエイター(交渉人)には、破るべからず大切な二つの黄金律がある。一つは銃を使わないこと。二つ、自分自身で交換をおこなわないこと。
現場に出た交渉人は待つことに耐えなくてはならない。誘拐犯がもつ最強の武器の一つが待たせること。誘拐犯が再び連絡してくるまで、何週間もかかることがある。数ヶ月あるいは数年ということもある。たいていの場合、待つのは拷問に等しく、コンサルタントに大きなプレッシャーがかかる。しかし、どんなときにもどっしりかまえていなければならない。少なくとも、そう見えるようでなくてはいけない。
交渉人は話し上手でなければならないと思われている。しかし、もっと重要なことは、聞き上手であること。電話で、向こうの言うのに耳を傾けることだ。
睡眠を奪うことは、誘拐犯が使用できる、きわめて効果的な拷問手段だ。
 人質は、たいてい、もっとも基本的な人間の機能を奪われる。そして内に秘めた不屈の精神をくじかれる。もし、誰かを手なずけたければ睡眠を奪うのが、何よりてっとり早く、有効な方法だ。
個人富裕層を狙った誘拐は、かなり高度な計画が求められる。犯罪者たちは、時間をかけて標的となる人物の習慣や日課、警備状況などの情報を集める。
交渉人として事件を担当することを合意して最初にすることは何か?それは、小便である。合意した瞬間から、次はいつ小便するチャンスがあるか分からないからだ。
スケジュールはサディスト的にすさまじいものになり、全エネルギーと時間を事件の解決に集中させることになる。交渉人のいる部屋は、危機管理室となり、一般人の立ち入り禁止、鍵がかかり、無期限で24時間つかえ、電話とインターネットがつながっていて、コンピュータープリンターそれから、たくさんの電源ソケットがあり、誘拐犯との会話はすべて録音できることが必要だ。さらには、防音装置のあることが望ましい。
 生存確認のもっとも良い方法は、電話で人質と話すこと。人質しか答えを知りえない質問する。
 決して、こちらから電話を切らない。常に誘拐犯が電話を切るのを待つ。彼らが切り忘れる可能性があり、いつの間にか犯人たちの個人的な話が聞こえてきて、交渉の場で優位に立てるかもしれないからだ。
 交渉人は、ふつうは誘拐犯の言い値の10%にまで下げさせる。時間は交渉人の味方である。
 誘拐犯との交渉を指揮官にさせてはならない。その下位にいるものなら、「まずボスに相談しなければ・・・」と言って牛歩戦術を使える。
なーるほど、誘拐犯との交渉にあたる交渉人が職業として成り立つ理由がよく理解できました。
(2012年7月刊。2200円+税)

路上の信仰

カテゴリー:朝鮮・韓国

著者   朴 炯圭 、 出版    新教出版社 
 激動の韓国現代史を生きたキリスト者の証言とオビに書かれていますが、この本を読むとまさしくそのとおりで、心の震えるほど感動していました。こんな気骨のあるキリスト教のリーダーがいたのですね。なにしろ、何回も警察に捕まっては刑務所に入れられ、教会堂での礼拝が当局に妨害されたら、なんと警察署前で6年間も路上礼拝を続けたというのです。まさしく信念の人です。信仰を実践し続けた不屈のキリスト者です。
 『世界』に連載されていた「韓国からの通信」の裏話も紹介されています。この「通信」は1973年から1988年まで15年にわたって続いたものです。KCIAがやっきになって犯人探しをして、妨害しようとしたのですが、果たせませんでした。
 著者の「TK生」が誰なのか、ずっと謎でした。これは、キリスト教のNCCKが金観錫牧師を中心として、徹底した安全対策を講じて資料を日本に送った。送ったのは主として宣教師ときに外交官郵袋や米軍の軍事郵便も利用した。これを日本で呉在植先生のところに集め、池明観教授が原稿をかいた。それを、『世界』の安江編集長が自らないし夫人によって書き写して植字工に渡した。並々ならぬ注意が払われたのですね。15年間、よくぞ続いたものです。
 王に直言し、民衆の堕落を告発し、またそのため、ときには犠牲を受けるのが旧約聖書の予言者の伝統である。キリスト教の牧師として監獄に行くのは、聖書からすると当然のこと。旧約の時代から予言者たちは絶えず監獄に出入りするのを当然のことと考えてきた。聖書の伝統は、キリスト教が何か哲学的、仏教的な空の思想というが、世を捨てて山中にこもり神秘境にひたるというか、脱世俗的な宗教ではなく、少なくともキリスト教の正しい伝統は世俗の中に入っていき、この世の問題に関与し、その時々に神の意を明かし、それに背くものに対しては直言する。そのような伝統がある。
 なーるほど、これはよく分かる話でした。
 韓国の民主化闘争の過程においてキリスト教を信じる人々の力は大きかったと改めて認識させられた本でした。
(2012年4月刊。2381円+税)

原発民衆法廷①②

カテゴリー:社会

著者  原発を問う民衆法廷実行委員会 、 出版  三一書房 
 昨年の3.11福島第一原発事故は決して天災ではなく明らかに人災でした。ですから、東電の会長そして社長に厳しく刑事責任が問われるべきです。
 検察庁も告訴、告発を受理したと報道されています。
 私個人は前から死刑廃止に賛成なのですが、東電の会長・社長が死刑にならないというのなら(これは必ず死刑にしろということでは決してありません。念のため)、日本の死刑制度なんて直ちに廃止したほうがいいと思います。
 人間一人を残虐な方法で殺して死刑に処せられるというのなら、東電の会長・社長のように、お金のために単なる一私企業が日本という国を全体として住めなくしようとしたわけですから、当然、何万回と死刑宣告があって然るべきでしょう。
 東京・首都圏に日本人が住めないかもしれなかった大惨事を引き起こしておきながら、当時の会長・社長が今なおのうのうと贅沢ざんまいに明け暮れているなんて、あまりにも許しがたいことです。
 もちろん私は、東電の幹部だけを責めるつもりはありません。財界・政府そしてアカデミーの「原子力村」と呼ばれる人々の責任も厳しく弾効したいと思います。でも、なんといっても、そのためには当時の東電の会長・社長の刑事責任を問うことが先決だと思うのです。
 この本は、原発事故についての刑事責任を追及しようという画期的な取り組みを報告したものです。先駆的偉業に私は心から拍手を送りたいと思います。騙した側に責任はあるけれど、騙された市民の責任も大きいのではないかという冷笑的な指摘があります。これについて、高橋拓哉・東大教授は次のように述べています。
 騙された側にも責任はある。しかし、騙した側には最大の責任がある。騙されていたものが騙されていたことに気がついたら、騙した側の責任を追及するのは、まったく当然のこと。
 今回の3.11原発事故について原発推進を黙認してきてしまったという責任が市民にあるとするならば、むしろ、このような事故を二度と繰り返さないために、市民は、刑事的責任の所在追及する責任がある。
私は、このような高橋教授の指摘にまったく同感です。
 大飯原発の3号機が1機稼働するだけで、関西電力は、1日24時間で5億円、1月30日で150億円、1年12ヵ月で1800億円もの電気料金を得ることになる。ところが、大飯3号機が1日稼働しただけで、広島原発3発分の死の灰が生成される。さらに、普通の海水温度よりも7度も高いし、温水廃水が何十トンも1秒間に吐き出される。
原発に頼るしかないと、まだ多くの国民は信じこまされています。でも、首相官邸の周囲に毎週金曜日の夜に集まっている何万人という市民は、それは完全な嘘だと見破っています。一刻も早く、原発推進勢力の言っているのは真っ赤な嘘だと認識する国民を増やしましょう。
 また、そうでないと、なんのために辛抱して猛暑のなかを原発にたよらないでがんばったのか分かりませんよね。原発なんてなくても、立派に日本の経済が成り立つことをこの夏実証し、体験したわけですから・・・。
(2012年6月刊。1000円+税)

イルカの認知科学

カテゴリー:生物

著者   村山 司 、 出版    東京大学出版会 
 イルカは親子間の絆が深い。イルカは、一般に授乳期間は2年くらい。子イルカは、母イルカの上部にくっついている。母親のつくる水流に乗って前進できるので、楽になる。
イルカは、「音感の動物」とも言われるように、優れた聴覚能力を反映して音を使ったコミュニケーションを行っている。
 バンドウイルカは個体固有のホイッスルを一度獲得したら、一生変わらない。発信者の特定や個体を識別するための信号の役割をしている。
 イルカは、アイコンタクトが大切だ。イルカは、なんの報酬(エサ)も与えていないのに、嬉々として実験に応じる。かといって、どのイルカも、みんな喜んでずっと遊んでまわるというわけではない。
 ヒトがタバコをふかすしぐさをまねすると、子イルカが口から空気の泡を吹き出す。ヒトが手を上げるとイルカは胸ビレを上げ、ヒトが身体を回転させるとイルカが自分もそれに合わせるようにまわる。このように、イルカはヒトの動作をまねしたりする。
 シロイルカは、海のカナリアと呼ばれるように、ふだんから、さまざまな鳴音を発する。実に、にぎやかで、美しい声である。
海中にすむイルカの生態を研究するというのは、実に根気のいる仕事だと思いました。でも、そんな真面目な努力がこうやってまとまると、生物の能力のすごさを、私のような一般人が理解できるわけです。早いとこ、天草のイルカ・ウォッチングに行ってみたいものだと思ったことでした。
(2012年3月刊。3400円+税)

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