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恐竜学

カテゴリー:恐竜

(霧山昴)
著者 小林 快次 、 出版 東京大学出版会

 私は恐竜の話が大好きです。福井の恐竜博物館には2回行きました。最近、リニューアルされたそうなので、また行きたいです。
残念なのは、九州にも恐竜化石が出土していて、博物館まである(天草にも近い御船町恐竜博物館)というのに、まだ行ってないことです。ここでは、ティラノサウルス、ヴェロモラプトル、ヨロイ竜類など多様な恐竜化石・卵殻化石が発見されているそうです。
あの恐竜学研究の第一人者である小林快次(よしつぐ)博士によると、日本の研究者は、世界の恐竜研究において重要な位置を占めているとのこと。頼もしい限りです。モンゴルはともかく、アメリカのアルバータの恐竜博物館にいくのが私の夢です。この夢が実現することを願っています。
恐竜映画「ジュラシック・パーク」には、度肝を抜かれました。その後のシリーズは観ていませんが、今ではNHKの恐竜特集番組でもCGによって恐竜が地上をのっしのっし歩き、食うか食われるのかという格闘場面が再現されていますし、身体のカラフルな模様もイメージをかきたててくれます。
恐竜化石からタンパク質・アミノ酸を取り出し、DNA復元を目ざしている(?)とのこと。まるで「ジュラシック・パーク」の世界です。でも、恐竜は巨大天体がメキシコ湾あたりに衝突したことで絶滅してしまったのですよね。簡単に復元されても困ります。ゴジラの復活と同じように、人類は対抗できないでしょうから・・・。
恐竜が出現したのは2億3000万年前の三畳紀。絶滅したのは6600万年前の白亜紀。ということは1億7000万年ほども地球上の王者だったわけですよね。
そして、恐竜は本当は絶滅なんかしておらず、今の鳥類が恐竜の子孫であることは間違いないこと。まあ、鳥類といっても小鳥から大型のコンドルまで、いろいろいますけどね・・・。
鳥類といえば、歯がないと思います。クチバシはありますが、一気に吞み込んでしまいますよね。でも、途中では、歯がある鳥類の仲間もいたようです。
生痕化石とは、過去に生きた生物の痕跡が化石として残されたもの。恐竜の食性研究では、糞石がある。恐竜が何を食べていたかが、これで分かる。
ティラノサウルスの糞石として高さ44センチ、幅16センチ、長さ13センチという長大なものが見つかっている。これに3センチほどの骨片を多く含んでいることから、ティラノサウルスが獲物の骨を砕いて飲み込んでいたことが分かる。
恐竜の羽毛はウロコから退化したものであり、これは皮膚が変形したもの。この羽毛に色がついていたと考えられるが、構造色というものがある。昆虫の玉虫と同じで、それは色がついているわけではない。
日本の恐竜化石は北海道から九州まで全国各地で発見されている。そして、北海道のカムイサウルスは全身骨格の8割が発見されている。これはすごいことです。
500頁近い大作で、いい値段もしているのですが、4月の初版から3か月後には第4刷というのもすごいですね。私のような日本全国の恐竜ファンが買っているのでしょう。
(2025年7月刊。5800円+税)

平家物語の合戦

カテゴリー:日本史(平安)

(霧山昴)
著者 佐伯 真一 、 出版 吉川弘文館

 平家物語というのは、源氏に負けた平家の姿を描いたものなんですね。
そして、この作品は、一人の著者が書いた小説のようなものではなく、さまざまな資料を継ぎあわせできた、パッチワークのような側面をもっている。琵琶法師が語り伝えたものというイメージがありますよね。
「平家物語」には多くの写本があり、写本間の相違は大きく、ほとんど別作品のようだ。
語り本系と読み本系の二つの系統があり、むしろ読み本系の方に古い形が残っている。
以仁(もちひと)王の号令によって挙兵した頼朝や義仲が平家を倒すことになる。以仁王の号令こそが平家を滅ぼしたといえる。
橋合戦では三井(みい)寺の悪僧(あくそう)たちが活躍する。この「悪」は、強いとか猛烈なという意味であって、悪いという意味ではない。
源(木曽)義仲は、賢く、容顔もよく、武芸の能力もあった。
「平家物語」などの軍記物語では、だまし討ちは珍しくない。「正々堂々と戦う武士道」というものはなかった。
平家が最後に頼ったのは、比叡山延暦寺だった。ところが、この延暦寺でも、もとからいた反平家派が義仲の攻勢を後押しとして勢力を握った。
院政が続いていた当時、実質的な最高権力者は上皇だった。ところが、後白河法皇がひそかに逃げ出してしまった。法王を失った時点で、平家政権の正当性は半減してしまった。木曽義仲が都入りしても、参謀役はいないし、後白河法皇から頼られてもいないので、京都を支配することは難しかった。後白河法皇は、義仲を見捨てて、頼朝に頼ることにした。
当時の武士たちの発想は、味方をだまし、主君をだましてでも、勲功を目指すのは当たり前というもの。この時代の下位武士たちは、ともかく手柄を立てることを目的として戦場にのぞんでいた。味方の勝利より、自分の功名のほうが大事なのだ。
一ノ谷合戦というけれど、「一ノ谷」は小さな谷の名前にすぎない。実際には、広く、今の神戸市全域が戦場だった。
武士たちは、とくに弟子を大事にした。このころ、武士道というコトバはなかった。「平家物語」の描く武士には嘘つきが多い。
平家が屋島の内裏を焼かれたことは平家の権威を失わせる大事件だった。
壇ノ浦合戦の真相として、潮流説もあるが、信じられない。また、水夫を源氏方が狙って殺傷したというが、当時、非戦闘員は保護すべきだという感覚があったとは思えない。
この当時の合戦においては、個人技を競うことがとても重要な位置を占めていた。
壇ノ浦合戦で平家方が敗北したのを見てとると、平清盛の妻・時子(60歳)は、二位尼(にいのあま)として、宝剣を腰に差し、8歳になる安徳天皇を抱いて、海中に身を投げた。時子は、正統な天皇家をここで終わらせるべきだと判断したのだ。このとき、時子が言ったのが、「浪(なみ)の下にも都のさぶらふぞ(都がありますよ)」という有名な言葉です。
平家一門の人々が海底の竜宮城で生きている。そんな夢を建礼門院(時子の娘で、安徳天皇の母)が見たという回想を後白河法皇に語ったとのこと。これは当時の人々にとって大変な脅威だっただろうとされています。
天皇が持つべき宝剣が海底に沈んだことは、この時代の人々に深刻な動揺をもたらした。
それはあったでしょうね。今でもエセ科学を信じて動揺している人がいかに多いことでしょう・・・。
「見るべきほどのことは見つ」という、平知盛の言葉は有名です。その反対に、「まだ見たきものあり」として、私は父の物語(戦前の東京での生活)を描いてみました。
(2025年4月刊。2310円+税)

内部告発てんまつ記。原子力規制庁の場合

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 松田 文夫 、 出版 七つ森書館

 読んでいて腹だたしくなる本です。いえ、著者に対してはありません。ここに書かれているとについて、です。久しぶりに公憤を覚えました。
まず、原子力規制庁という官庁組織です。あくまで原子力利用を推進することを前提として、原子力利用における安全の確保を図ることを任務している。原子力規制庁は、原子力規制委員会の事務局として業務をしている。
ところが、この規制庁に勤める人々(官僚)は、まったく仕事をしない。すべて外部の業者に丸投げ。ところが、千人もいる職員が入居するのは六本木にあるファーストビル。なんとその6フロアーを占めていて、賃料月4千万円、年間5億円。いやあ、すごく高い。
ところが、2014年に人員は倍増され、平成29年現在は13フロアーに拡大されて、月の賃料は1億円なので、年12億円。いやはや・・・。
そして、ここは原子力村を構成している企業などから送り込まれた不用人員の吸収装置になっている。やがて規制庁は老健施設かと間違われてしまうのでは・・・と著者は鋭く批判しています。
著者は規制庁の何を内部告発したのか・・・。要するに1700万円の案件をある業者が落札したが、その落札率は99.8%だったこと。それは禁止されている意見交換の結果ではないか、ということです。
すると、この内部告発について一応の調査はなされた。しかし、その結論は不適切ではあるが、法令違反には当たらないということだった。
著者は納得できないので、この事実と経過を公表することにして出来上がったのが、本書。
これに対して国家公務員としての守秘義務に違反するおそれがあるとの警告がなされたが、国益を著しく侵害したり、行政の遂行を阻害するものでないから、個人情報にもあたらないと考えて、公表に踏み切った。
著者は、原子力規制庁が不正な入札よって税金をムダづかいしていることを告発すると同時に、福島等で甲状腺がんを含めて被ばくを原因とするがん患者が増加している事実があるのに、行政がそんなことはないと間違った判断をして、国民に押し付けていることを厳しく批判しています。
福島のこどもたちが発症しているがんは、実際に3.11原発事故によって、それが原因
発症していることは明らかだと著者は断言しています。
平成29年3月末の時点で、福島のこどもたち190人が甲状腺がんを発症していたし、将来的に発症の増加が心配されている。ところが、原発利用を推進するのに支障をもたらすと考えた原子力規制庁は、この事実をことさら隠蔽しようとしています。そのうえで、いま、自民党政府は原発を再稼働させようとしています。
あの3.11から何も学ばず、目先の金もうけしか考えていません。恐ろしいことです。880トンもあるデブリを、今なお1グラムも取り出せていないのに、再稼働させようなんて、とんでもありません。狂っているとしか言いようがありません。
(2018年3月刊、1980円+税)

最高裁判所長官 石田 和外

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 西川 伸一 、 出版 岩波書店

 最高裁判所のなかで史上最低・最悪というのは、なんといっても田中耕太郎です。このコーナーで何度も紹介していますが、裁判(砂川事件)の実質当事者であるアメリカ政府と駐日大使を通じてこっそり接解し、最高裁の合議の秘密をもたらしたうえ、アメリカ政府の指示どおりに判決するようにもっていったのです(アメリカの公文書館に証拠があるのを日本人ジャーナリストそして学者が発見しました)。
 この石田和外は、最悪二番手になります。青法協を迫害し、日本の司法をズタズタにしてしまいました。その後遺症は、今も司法(とくに裁判所)に顕著です。あまりに効果がありすぎて、その後の最高裁判官が、今やヒラメ裁判官(上ばかり見て気にしながら判決を書くという、まったく気骨のない裁判官)ばかりになってしまったと公式に嘆くほどになりました。
 1971年4月、宮本康昭判事補の再任が拒否された。大変なことです。青法協会員の裁判官であった宮本再任拒否は、石田長官の下で周到に計画され、実行された。
 ちなみに、宮本判事補は判事として再任されなくても、簡裁判事のほうは身分が残っていたことから、しばらく裁判所で仕事を続けました。その任期満了のあと、弁護士に登録し、司法改革問題に取り組み、裁判所改革における第一人者として活躍しました。法テラスにも関わり、後進の養成にあたり、今も東京で元気に弁護士を続けています。つい最近も自分の生い立ちと再任拒否当時の生々しい状況を活写した本を刊行されました。
続いて起きたのが、阪口徳雄司法修習生の罷免処分です。1971年4月のことです。私が弁護士になる3年前で、私はこのころ司法試験の受験生でした。
 この本で、阪口修習生の罷免処分を決めたとされている最高裁判官会議の議事録がないことが確認されています。石田長官が、臨時に召集したうえで、議事録は作成しないよう命じたらしいのです。これは明らかに違法です。成立要件を満たしていません。
 あとから追及される根拠となる紙の資源は一切残さず、阪口罷免ありきの、石田の凶暴なまでの「リーダーシップ」が発揮されたということ。いやあ、これは恐ろしいことです。
 阪口修習生が「演壇用マイクを無断で抜き取」ったとか、「マイクをわしづかみに」したとか、まったく事実に反する国会答弁(矢口洪一・人事局長)が紹介されています。この矢口洪一も、後に最高裁判官となり、司法反動を強引に進めました。罷免された阪口徳雄さんは弁護士になって、大阪で大活躍されていましたが、先日、亡くなられました(82歳)。
 石田長官の負(マイナス)の功績としては、最高裁判事の構成をリベラル派優勢から保守派優勢に変えてしまったということもあげられる。弁護士枠が5人から4人に減らされてしまったのです。
 もっとも、最近の弁護士出身の最高裁判事は、ことなかれ主義、大企業・国家権力追随型ばかりで、まったく覇気が感じられません。五大事務所出身でほとんど占められていることの蔽害です。
 最高裁長官は13人連続で裁判官出身者が占めている。しかも、全員が「裁判をしない裁判官」だ。なかでも、私の同期でもある寺田逸郎にいたっては、ずっと法務省に出向していたから、もはや裁判官ですらない。
 最高裁の内部統制に服しないとどうなるか…。「見せしめ」にされる。そのターゲットは、宮本さん、阪口さんに続いて、寺西和史判事、藤山雅行判事そして、近くは岡口基一元判事。
 残念ながら、今や裁判所のなかは、「ヒラメ判事」そして委縮判事が多く、しかも、そのことに自覚のない判事がほとんどになっています。たまに、気骨のある判事にあたると、おっ、まだ絶滅危惧種がここにいた…と感激してしまう状況です。なんとかしたいものです。
(2025年6月刊。2900円+税)

えん罪原因を調査せよ

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 日弁連人権擁護委員会・指宿 信 、 出版 勁草書房
 えん罪事件は残念ながら、今なお後を絶ちません。近いところでは、警視庁公安部が「犯罪」をでっち上げた大川原化工機事件があります。この事件では、裁判所の責任も極めて大きいと思います。なにしろ、ガンのため重病だということが分かっていながら、最後まで保釈を認めなかったため、被告人とされた無実の人は病死してしまったのです。許せない裁判官たちです。
本来、有罪の立証は検察官の役目です。ところが、日本の司法の現実は弁護側が無罪の立証をしなくてはいけません。
 電車内で起きた痴漢えん罪事件を扱った映画『それでもボクはやっていない』で、弁護側が苦労してつくった「犯行状況再現ビデオ」を上映すると、ヨーロッパの人々は爆笑するというのです。そりゃあ、おかしいですよね。でも、無罪にするためには、それくらいの努力が必要なのです。映画監督の周防正行氏が冒頭のインタビューで明らかにしています。
被疑者の取調に弁護人が立会するのは日本では認められていません。ところが、お隣の韓国では、2007年に刑事訴訟法を改正し、翌2008年1月から弁護人立会権を認めて今日に至っています。先日も日本の弁護士たちが視察に行っていますが、韓国では弁護士立会はすっかりあたり前のこととして定着しているそうです。日本はまだまだです。せいぜい、廊下で待機しているくらいです。
 韓国だけでなく、台湾でも認められているそうです。もちろん、アメリカでもイギリスでも認められています。そもそも、日本と違って諸外国では被疑者の取り調べ自体が短いのです。
 それでは、どうするのか、しているのかというと、自白ではなく客観的な物証に頼るということです。とても、真っ当な考え方です。
 DNA鑑定によってえん罪が明らかになった261件のうち、104件で真犯人が判明したそうです。アメリカの話です。アメリカには「イノセンス・プロジェクト」というグループがあり、DNA鑑定によって、無実を明らかにする取り組みを進めている。すでに292人が、その結果、無実が明らかになって釈放されたそうです。
 つい最近、佐賀県警で、DNA鑑定を担当者がごまかしていたという記事が大きく報道されました。DNA鑑定の信頼性を揺るがしますよね。
 アメリカのイリノイ州では、死刑囚について、DNA鑑定の結果、救われた人が13人もいるそうです。問題は、なぜ真犯人でない人が捕まり、ときに死刑判決に至ったりすることです。怖い話です。
 さてそこで、えん罪をなくすためにはどうしたらよいのか…、です。この本ではえん罪事件の原因究明と、どうしたら防止できるか、について、えん罪原因調査究明委員会を設置する法律をつくることが提言されています。
 これは、3.11原発大災害についての事故調査委員会が設立されていることに自信をもって提言されています。この委員会は国会の下に、独自性をもって権限を行使することが不可欠です。そのためには、法律で権限を明記しておき、予算措置も確保しておくことが必要です。資料を提出させ、証人喚問できるし、立入調査権も付与される必要があります。財政が十分であるからこそ、調査は十分に出来るのです。ぜひ実現したいものです。
 この本には愛媛県警の「被疑者取調べ要領」というマニュアルが紹介されています。
粘りと執念をもって「絶対に落とす」という気迫が必要。
 「否認被疑者は朝から晩まで調べ出して調べよ」。これには被疑者を「弱らせる」目的もある。ともかく、相手(被疑者)を自白させるまで粘り強く、がんばれというのです。
 これによって被疑者が一刻も早く解放されたい一心から警察の描いたストーリーを我が物にして、それが「自白」調書になって、裁判官も騙されることにつながるわけです。やっていない人が嘘の「自白」をしてしまうのです。
 えん罪を究明するのは、本来、法務省、検察庁の責任のはずですが、まったくやろうとしません。そこで、弁護士会はあきらめることなく、えん罪の原因究明のための第三者機関を国会の下に設置せよと要求しているわけです。
 2012年9月の初版を、今回増補して刊行されています。この関係の日弁連の部会長として活躍している小池振一郎弁護士より送られてきましたので、ここにご紹介します。いつもありがとうございます。
(2025年8月刊。3520円)

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