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金持ち脳と貧乏脳

カテゴリー:人間

著者  茂木 健一郎 、 出版  総合法令出版
 この本を読んで、金もうけのヒントでも得ようかと思う人にとっては、その期待は裏切られます。脳科学者が金もうけのヒントを与えてくれるはずがありません。そうではなくて、人生を豊かなものにしたい、意義のある人生をまっとうしたいと思う人にとっては、役立つヒントが満載の本なのです。
 金持ち脳を持っている人は、夢中になれる好きなことを仕事にしているので、たとえ辛い場面に遭遇しても、我慢という感覚はない。これに対して、貧乏脳は何よりも自己欲求を満たすことで満足してしまう脳。
お金持ちになった人は、数多くの修羅場やリスクを経験しつつ、ピンチをチャンスに変えてきた人たち。リスクテイクに優れている。
 人間関係におけるネットワーク、信頼、そして自分のスキル、知識、経験、そういうものが総合的に脳の安全基地となって、確実性が生まれる。
 自信がないお金持ちほど、お金を使う傾向にある。お金を払うと、「お客様は神様です」とあがめてくれるから。
借金する立場は、お金を借りた人に支配されることになる。そうなんです。だから、私は、借金したくないし、他人に借りをつくりたくありません。いつだって、自由、フリーでいたいのです。
 経験以外に人間が持ち運べるものはいない。だからこそ、若いうちのお金は経験という経済活動に使うべきなのです。
 お金と幸せは必ずしも一致しない。人間の幸せや人生観というのは複雑系なので、お金では測れないもの。人間の本質的な幸せというのは、お金によって得られるものではないことを理解するためには、ある程度経験しないといけない。
 お金は、人間関係を目に見えるようにしたもの。人間関係が充実している人には、お金も集まってくる。お金を貯めるのと同じくらいに、人間関係や自己投資にお金を使うことが大切だ。
 仕事の満足は、決してお金で買えるものではない。仕事の面白さ、やりがいは、自分で決めるもの。
私は弁護士になれて本当に良かったと思っています。受験時代は苦しい日々でしたが、人助けをして、喜んでもらって、お礼を言われて、お金までもらえるのです。こんなに充実感の味わえる職業は滅多にありません。もちろん、すべてがうまくいくとは限りません。でも、一生けん命にやっていれば、いつかはなんとかなるものです。
(2014年1月刊。1300円+税)
 東京は大雪で大変だったようですが、私のところはこの冬はまだ雪が降っていません。それでも寒い日が続いています。
 庭から小鳥の澄み切った流れるようなさえずりが聞こえてきました。声のするほうを見ても姿は見えません。名前も知りませんが、春先になると聞こえてくる小鳥の声です。とうとう春告げ鳥がやって来たのでした。
 庭の紅梅や白梅が咲いています。黄水仙も咲きはじめました。チューリップの芽があちこちに顔を出しています。
 もうすぐ春になります。うれしいことです。

にぎわいの場・富山グランド・プラザ

カテゴリー:社会

著者  山下 裕子 、 出版  学芸出版社
 楽しいマチづくりにとって、とても役に立つ本です。読んでいると、元気が湧いてきます。
 マチづくりはハコモノづくりではないのです。やっぱり、人が集まり、楽しめる場をつくることこそ大切です。富山駅の近くに稼働率100%の公共空間がつくられ、市民がゆったり過ごせる場となっているそうです。すばらしいアイデアです。そして、それを運営している人々の実行力にも敬意を表したくなりました。
 2007年9月、富山市まちなか賑わい広場(グランドプラザ)が誕生した。まちなかに広場空間を形成しているガラスの建物。富山市は百貨店と駐車場ビルのあいだにある広場に、ガラスの屋根をつくらえた。東西21メートル、南北65メートルの広場。
 当初は富山市直営の運営。現在は第三セクターによる。平均年齢30代前半の若者が運営を担っている。富山は雨雪の多い気候風土。だから屋根付の広場が発案された。グランドプラザの総工費は15.2億円。厚さが15ミリメートルの強化合わせガラスを使用。屋外空間として認められたので、スプリンクラーなど、防火設備は不要。使用料を支払えば、だれでも活用できる広場。最高額は土日休日の1日(12時間)の20万円。
 このグランドプラザでは、年間100件以上のイベントが開催され、休日のイベント実施率はほぼ100%。休日はいつも賑やかな光景にするため、イベントを仕掛け続ける。子どもの来街促進に重きをおいている。
 広場には、いつもカフェテーブル、椅子がある。そのおかげで、人が佇み、くつろぐ人がいる。そこに交流が生まれ、その光景が賑わいとして人の目に映る。間仕切りのための壁やテントはなるべく立てず、会場の隅々まで一望できる。
 木の植栽5台、カフェテーブル25セット(100席)、ベンチ3本が常設されているが、すべて移動が可能。スタッフは、全員が同じ物を身につける。そして、スタッフ全員が拍手して盛りあげる。倉庫(収納庫)は、地下からせり上がってきて、舞台としても使える。
 人工芝を設置し、つみ木を毎日おいていく。しかし、夜にはすべて撤収し、朝には広場に何もない。
 277インチの大型ビジョンは、あえてローカル情報に徹した映像を流す。
 つみ木広場では、子どもたちは靴を脱いで遊ぶ。ベンチも壁際に置くと、疲労感漂う人が座る。拠り所のない真ん中に置くと、笑顔の素敵な母親が座る。
 グランドプラザが2日間だけのみの市に変身する、ココマルシェ。県内のフラダンサー1000人が集結する発表会、アロハ・ヘブン。高校生ダンスライブ。そして、本物の人前式の結婚式。そして、夕方からは、カジュアルワイン会に人が集う。
 楽しい、ワクワクする広場ですね。ぜひもう一度、富山市に行ってみたくなりました。
(2013年10月刊。2000円+税)

食の戦争

カテゴリー:社会

著者  鈴木 宣弘 、 出版  文春新書
 食料の安さだけを追求することは、命を削ることと同じである。
 私も、まったく同感です。生活が苦しくなっているなか、なんでも安ければいいという考えが広まり、強くなっています。でも、食料を得るには大変な苦労がいります。安全かつ安心して食べられる食料を安定的に確保するのは国の最低限の責務でしょう。それを安倍政権は放り投げようとしています。TPP参加です。
 日本全国の郵便局でアフラックの保険を売り出すといいます。アメリカの民間保険会社に郵便局が乗っとられようとしています。郵政民営化とは、実は、アメリカ資本への市場開放だったのです。小泉純一郎に大勢の日本人がうまうまとだまされてしまいました。そして、今なお、だまされたことを自覚していない日本人が多数います。
中国の富裕層は、日本へ輸出している自分の国の野菜は食べず、日本から輸入した5~10倍の値段の日本の野菜を食べている。なぜか?
 安い粗悪な農薬が使われているから。
 日本の食は徹底してアメリカの戦略下に置かれ、変わるように仕向けられてきた。アメリカは、第二次世界大戦後、余剰小麦の援助輸出なども活用しながら日本の食生活をじわじわと変革していった。
 巧妙な食料戦略は功を奏し、いつしか、アメリカの小麦や飼料穀物、畜産物なしでは、日本の食生活が成り立たないような状況がつくられていった。食糧自給率が39%にまで低下しているのはその証である。
 日本政府は、国内の肉牛農業者や酪農業者には成長ホルモンの使用を禁じている。しかし、輸入については何の制限もしていない。
アメリカの企業であるモンサントは、1990年代半ば以降、次々と大手種子企業を買収し、現在では、世界のトウモロコシ種子市場の41%、大豆種子市場の25%、主な野菜市場の2~4割を占めている。
 モンサントは、遺伝子組換え(GM)作物の開発をすすめ、大豆で93%、トウモロコシで92%、綿花で71%、菜種で44%をGMが占めている。
 日本の農業は「過保護」ではない。日本の農業保護制度は、世界的にみて、かなり低い。日本農業は過保護だから高齢化したのではない。むしろ、関税も国内保護も削減し続けてきたために高齢化などの問題が生じた。
 TPPに参加して、この流れを加速させてしまったら、日本の農業は完全に崩壊してしまう。輸出で経営が成り立つ農家はいないし、考えられない。
 アメリカのスティグリッツ教授は来日したとき、次のように言った。
 「TPPはアメリカ企業の利益を守ろうとするもので、日米国民の利益にはならない。途上国の発展も妨げる」
 TPPとは、人口の1%ながらアメリカの富の40%を握る多国籍な巨大企業中心の、「1%の、1%による、1%のための」協定であり、大多数を不幸にするもの。
 たとえ99%の人々が損失をこうむっても「1%」の人々の富の増加によって統計としての富が増加すれば効率的だという、乱暴な論理である。
 安倍政権がすすめているTPP交渉参加は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の典型です。
農産物を安く買いたたいてもうかったと思う企業や消費者は間違っている。それによって、国民の食料を生産してくれる産業が疲弊し、縮小してしまったら、結局、みんなが成り立たなくなる。
 本当にそのとおりです。私よりひとまわり若い著者の講演を聞いたことがありますが、本当に明快な話でした。TPP参加は阻止しなければいけないという熱意がひしひしと伝わって来る本です。ぜひ、ご一読ください。
(2013年8月刊。710円+税)

ネットと愛国

カテゴリー:社会

著者  安田 浩一 、 出版  講談社
 日本を愛しているのは自称右翼の専売特許ではありません。むしろ、素直に愛せる日本を子や子孫に守り伝えたいと思っているのが左翼ではないでしょうか・・・。
 ザイトク会という特異な団体がマスコミを騒がしています。「在日特権を許さない市民の会」というのですが、「在日」の人に「特権」があるなんて、まともな人の主張とは思えませんが、本人たちはいたって本気のようですから、怖いです。
 そして、その「ザイトク会」は会員が1万1000人というのです。それだけ、世の中の真実をまともに見れない人がいるということですから、悲しくなります。しかも「ザイトク会」の幹部のなかに祖父が在日韓国人だったという人物もいるというのです。そう言えば、ユダヤ人を大虐殺したナチス・ドイツのトップにもユダヤ人の血が混じっている人が何人もいたようです。
 在特会のリーダーの桜井誠の本名は高田誠。北九州八幡西区の出身。高校生までは影の薄い男だった。
 在特会は2007年1月にスタートした。幹部のほとんどが本名ではなく、ペンネームをつかっている。本部事務所の住所も公表していない。在日の人の通名を「特権」と批判しながら、自らは通名を名乗るというのは、どういう神経でしょうか・・・。
 新右翼団体「一水会」は、在特会を「まるで弱い者いじめで、とうてい賛同できない」ときびしく批判する。
 在特会のメンバーは既存の右翼を嫌う者が多い。右翼と混同されないよう、「特攻服」を着ない。
 在特会はソフトバンクを攻撃する。オーナーが元韓国籍だから。
 私は、これだけで、なんと心の狭い人々なんだろうかと哀れに思いました。これでは世界平和も何もあったものではありません。
この本は、「在日特権」なるものが、全くのデマだということを事実をあげて証明しています。私もまったくそのとおりだと思います。
 在日の人に生活保護が多いというのも「特権」ではなく、そういう現実があるという悲しい状況を反映しているだけなのです。それを「特権」だなんて、話がアベコベです。
 そして、ヘイトスピーチは単なる言論の域をこえて(逸脱していて)、もはや犯罪(コトバによる暴力)です。京都地方裁判所などが犯罪としたのは正当な判断です。
 「ザイトク会」の実態を明らかにした労作です。それにしても、こんなにも心の狭い人が増えている日本は心配です。マスコミは、きちんと犯罪(現行犯)とみて扱うべきです。間違ってもヘイトスピーチを言論の自由のレベルで論じるべきではありません。その点では、判例にしたがう必要があります。
(2013年6月刊。1700円+税)

こんなとき、会社は訴えられる!

カテゴリー:司法

著者  渡辺 剛 、 出版  中央経済社
 熊本の若手弁護士による、中小企業の経営者向けの分かりやすくて実践的な、「被告」にならないための心得を解説した本です。
 弁護士の文章にしては実に明快で、実践的なのに驚嘆して読みすすめました。そして、最後の「著者紹介」を読んで、なるほど、と納得しました。
 著者は、もともと名古屋大学の経営学部で経営組織論を専攻していたのです。そのうえ、顧問会社に対する経営指導をしたり、商工会議所で中小企業経営者を対象とする法律セミナーを担当してきた経験が本書に生かされているのでした。
 そんなわけで、本書は中小企業の経営者が裁判で「被告」として訴えられないための「リスクに気づく能力」を高めるための本なのです。
中小企業の経営者にとって、知らないうちに訴えられ、費用や労力、時間をさかれるというのは最悪の事態。そんな費用・労力・時間は社会の経営に役立てるべき。社長が「リスクに気づく能力」を身につけ、リスクの発生可能性を最小限に抑えることは、これからの訴訟社会においては欠かせないもの。
 本書の目的は、法律の勉強ではなく、企業の利益を防衛するために必要な「気づく」センスの向上にある。
 大事なことは法律に何と書いてあるかを学ぶことではない。そんな細かいことは専門家にまかせたらよい。専門家に相談すべきことが目の前に起きているかどうか、この判断ができたら、経営者としては十分なのだ。
 裁判は生き物だと言われている。そして、裁判はそれ自体で、会社にとって損失が生じている。裁判にたとえ勝ったとしても、かかった時間や労力は回復できないし、弁護士費用なども、基本的にはすべて自腹になる。
 客からのクレームは正当なクレームなのか、単なる金銭目的のクレーマーなのか、その見きわめが求められる。
 問題社員を解雇するときには金曜日の夕方に呼び出し、人事役員と弁護士が同席のうえ、解雇通知書を手渡す。そのうえで、解雇通知を渡して解雇したこと、月曜日に自主退職する意思があるときには、それを受けて解雇通知は撤回することを告げる。このとき、解雇通知書には、そのまま裁判所に提出できるくらい詳しい解雇理由をあげておく。
 金曜日に言い渡すのは、土日をはさむことで、家族や第三者に相談して考える時間を与えるため。いずれにせよ、解雇するための段取りは事前に十分に検討しておいて損はない。
 わずか200頁たらずの本ですが、経営者のセンスみがき、リスクをいち早く発見し、どう対処したらいいか、いつ専門家に相談するかを身につけるのに格好の本となっています。
 私にとっても勉強になりました。ありがとうございます。
(2013年12月刊。2200円+税)

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