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真田信繁

カテゴリー:日本史(戦国)

(霧山昴)
著者  平山 優 、 出版  角川迸書
 真田幸村についての本格的な研究書だと思いました。真田幸村は昔からマンガ本その他で身近な存在でしたが、この本を読むと知らないことだらけでした。
 大坂冬の陣のとき、家康方の大名家臣には、関ケ原合戦以降、14年間も大規模な戦争が起きていなかったために、実戦経験のないものが多数を占めていた。そのため、戦場での駆け引きや出頭らの指揮の命令に従う要諦など、多くの点で経験に欠け、ややもすると暴走する者が少なくなかった。大名やその家臣たちは、それぞれの立場や思惑をかかえて大きな戦場にのぞんだ。そして、そこで、功績をあげ、自分たちの身上を上昇させていこうと考えていた。ここに、真田丸に攻撃を仕掛けてきた寄せ手たちが、思わぬ不覚をとった背景がある。
 真田丸や惣構に向けて、東軍の情勢は、とりわけ先手衆が功を焦り、面子を競いつつ攻め寄せる事態となった。これに釣られて後方の軍勢も先行を焦って続々と前に出てきてしまい、前田利常ら大将の命令も無視された。これが各軍の指揮系統を麻痺させ、混乱に拍車をかける結果となった。
 真田信繁が守る真田丸とその背後の惣構の連携により、東軍は甚大な打撃を蒙り、敗退した。前田、井伊、越後衆らが大敗を喫し、多大な損害を受けた。
 真田丸の戦闘で大敗を喫したことに、家康は大きな衝撃を受けた。そこで家康は穏やかに真田信繁を調略しようと試みた。真田昌幸・信繁父子は、家康が調略工作に置いて破格の条件を提示し味方につけて難局を打開すると、約束を反古した経緯をそれまで嫌というほど見せつけられてきた。それで、失敗に終わった。
外国人宣教師たちは、大坂冬の陣を徳川方の雅色が悪かった合戦だと認識していた。
大坂城の濠が埋め立てられて無惨な状況になったにもかかわらず、牢人衆たちは大坂を去ろうとせず、小屋掛けして居座り続けていた。そればかりか、全国から、豊臣家に奉公を望むものが方々から流れ込んできて、太閣在世中よりも人数が多いと言われたほどになった。豊臣方は、大坂城下に立札を出し、仕官は受け付けないと告知していたものの、実際には新参者の牢人たちを優遇していたので、彼らは妻子を連れて居座るようになった。冬の陣のときよりも多数の牢人たちが集まり、大坂方の動きは活発化していった。
 大坂方に味方する牢人が増えたのは、冬の陣における徳川方の作戦と、秀頼の主張に正当性が認められていたから・・・。
 牢人たちは、和議によって赦免されても召しかかえてくれる大名はまったくなかったので、大坂を去ることが出来なかった。牢人問題は豊臣方の責任事項であり、その召し放ちこそ和睦時の約束だった。
 家康は豊臣氏を滅ぼす気はまったくなく、あくまで国替えに応じさせて徳川将軍体制下に組み込むことで問題を解決しようと考えていた。そのため、東北、北陸、畿内のみに動員をかけ、西国大名には待機を指示していた。
大坂方には、牢人して時節を待っていただけあって、年齢は経ていても実践経験のある者が非常に多かった。
大坂夏の陣における東軍で目立ったのは、大した理由もないのに軍勢がいきなり崩れ、陣形を乱したばかりか、算を乱して逃げ崩れることになる。これを「味方崩」と呼んだ。味方崩が重大な事態を招いたのは、一部の兵卒が逃げ崩れ、味方の軍勢に逃げ込むことからであった。これは東軍の兵士たちの多くが実戦経験に乏しい者たちで占められていることから起きたこと。
 大坂夏の陣のとき、死戦を覚悟していた越前松平忠直軍の抜け駆けによって、東西両軍が望まない形で開戦することになってしまった。東軍は、兵力こそ15万を数えたというが、各軍勢は大名単位で思いおもいに活動している。家康・秀忠の指示は届きかねる状況だった。
家康は豊臣氏を最初から潰すつもりなどなかったし、大坂の陣が勃発したあとも、なんとか戦争を回避しようと秀頼の説得につとめていた。
家康は、兵糧の欠乏と寒気に悩まされ、戦闘での敗退などで諸大名が徳川から離反することを恐れていた。他方、豊臣方は、玉薬などの欠乏に悩まされ、これ以上籠城戦は困難になりつつあった。このようにして、双方の思惑が一致して、和睦は成立した。このとき、双方で問題となったのは、大坂城に籠城した牢人たちを、どう扱うかという問題だった。
敵方からも称賛された信繁は当時から大いに注目され、5月8日の首実験には多くの武将が見物にやってきた。
このようにして信繁は幸村として、軍記物のなかで大活躍するようになっていった。
 大変新鮮な切り口の幸村についての本です。NHKドラマ「真田丸」の時代考証を担当する著者の語りは明快です。
(2015年10月刊。1800円+税)

日本の社会保障、やはりこの道でしょ!

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  都留民子、唐鎌直義 、 出版  日本機関紙出版センター
 日本もアメリカも福祉国家と呼ぶべきではない。
 アメリカは公的年金だってまともじゃないし、公的な健康保険制度もない。日本は、生存権が十分に保障されていない。生活保護は受給すべき人の1.5%のみ。それなのに自民党は保護基準をさらに10%も下げるという。
 イギリスのブースは、調査によって、貧困の原因は飲酒や家計の浪費ではなく、雇用の問題だと明らかにした。ヨーロッパの福祉国家は、医療は無料、教育費も幼稚園から大学まで無料、住宅は公共住宅が住宅手当が社会保障として支給される。
 日本の総世帯4900万世帯のうちの1204万世帯(5%)は実質的生活保護基準以下の収入で生活している。ところが現実に生活保護を受けている世帯は127万世帯(176万人)でしかない。今の日本には、表面化していないだけで、膨大な量の貧困層が存在している。
 この点は、地方都市で30年以上も弁護士として生活している私の実感にぴったり合致します。それも年々ひどくなってきているように思います。
 この本では大学で教えている体験から、現代の大学生の貧困、アルバイトに追われる日々にも言及されています。
 私の大学生のころ、国立大学の授業料は月1000円でした(奨学金は月3000円)。それが今では年間40万円とか50万円というのです。とんでもないことです。
 フランスやイギリスでは、失業しても、働いているときとほとんど変わらない生活を送ることができる。失業保険は1年半も支給される。なんでもいいから働けというのはやめている。
 大阪では、生活保護を申請すると、市役所が北新地での夜の仕事を斡旋している。うひゃあ、と、とんでもないですよね。
 アベノミクスなんて、とんでもないまやかしですが、いまなお幻想もっている日本人が少なくありません。だまされたと気がついたときには手遅れのことが多いのですが、勘違いしているのは男性に多いですね。
 その不満が排外的なヘイトスピーチに流れているようです。悲しいですね。もっと、自分の周囲と足元をよく見てほしいです・・・。
 ズバリ本音トークの本でした。一読の価値があります。
(2015年9月刊。1400円+税)

動物翻訳家

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  片野 ゆか 、 出版  集英社
 日本の動物園がリニューアルしつつあり、そのなかでの飼育担当者の奮闘ぶりを描いた傑作です。登場する動物は、ペンギン、チンパンジー、アフリカハゲコウそしてキリンです。
 動物園は旭山動物園ではなく、埼玉県こども動物自然公園、日立市かみね動物園、秋吉台自然動物公園サファリランド、そして、京都市動物園です。
 かつて動物園は絶大な人気を集めるスポットの一つだった。ところが、1990年ころ、転機が訪れた。退屈そうな動物の姿を見るのに人々が飽きてしまったのです。入場者が激減して、存続の危機にさらされるのでした。
 ペンギンは、ほとんど絶滅を危惧されている。ところが、日本では、動物園での繁殖に成功し、全国に2600羽のフンボルトペンギンがいて、世界の半数を占めている。
ペンギンは大食い。一日に体重とほぼ同じだけの魚が必要。
 ペンギンは、夫婦とその子どもたちで成り立っている。ペンギンの社会にボスはいない。
ペンギンのクチバシはナイフ並みの切れ味。ペンギンが人間になつくことはないし、またその必要もない。ペンギンは、強く、賢く、環境適応能力の高い動物だ。
ペンギンキャンプ。1人2食付で8000円。定員20人。5月末の土曜日に、テントでペンギンヒルズで一晩を過ごす。午前3時すぎがもっとも面白い。うひゃあ、そんな企画があるのですね。
 チンパンジーは、人間の言葉を確実に理解している。チンパンジーは50年ほど生きる。
ジョーに出演しているチンパンジーの子どもも、5歳か6歳になると人間への反抗心が芽生えてきて、人間による制御が難しくなり、ショーを引退する。
 飼育員は、朝夕、必ずリーダー以下、全員に声かけする。かならず一対一でコミュニケーションをとるのだ。不公平間を与えない。そして、仲間の前で叱ってはいけない。ささいなことでも、ともかく褒める。
 アフリカハゲコウは自分で狩りをする鳥ではない。大空を自由に飛べるようにしたところ、エスケープして、和歌山まで飛んで行った。どうやって連れ戻すのか・・・。すごい忍耐です。
 キリンは、1頭につき1000万円以上もして、海外から譲り受けることが不可能になっている。
 キリンはとくに怖がりの動物。細心の注意が求められえる。
動物園には子どもが大きくなって久しく行っていません。今度、孫が大きくなったら行きたいと思います。大変興味深い話が満載の本でした。
 
       (2015年10月刊。1500円+税)

ザ・ブラック・カンパニー

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  江上 剛 、 出版  光文社
  マックじゃありませんが、ハンバーガー店がブラック企業であり、そこで働く人々が過労死したり、その寸前の状況にあることを告発している本です。
 日本のマックも身売り話が出ているようですが、私はマックを食べないことを自慢にしている者の一人です。いえ、マックだけではありません。化学調味料と促成ホルモン材漬けの牛肉なんか食べたくないということです。
ハンバーガー店の店長が店内で過労死してしまった。なにしろ、店内に寝泊まりせざるをえないという過酷な労働条件。そして、売上高を確保するためには、店長自身が商品を買い取るしかない。パート従業員の賃金だって、人件費割合を削減するためには、店長が自腹を切っている。
 あまりにも長い拘束時間、ノルマに追われて精神的余裕をなくし、過酷なストレスにさらされたら、過労死しなくても、いずれ病気になるのは必至だ。しかし、本社だけではぬくぬくとしている。
 そんな商社こそ、ブラック企業そのものです。そして、理不尽な客がいて、トラブルになったり、フェイスブックやツイッターで店の悪評が書きたてられたり・・・。いやはや、大変な職場ですね。
 そして、マックに対抗する独立系のハンバーガーのチェーン店があると思うと、実はアメリカのファンド会社の支配下にある会社であり、社長以下、いつでも首のすげ替えは出来るというのです。強欲なアメリカ資本の言いなりになってはたまりません。
 過労死するまで働かされるなんて、ゴメンですよね。
 ハンバーガー店という典型的なブラック企業の実情が、面白い読み物として生き生きと書かれています。マックなどのハンバーガー店の内情を知りたいという人には必読です。
 
       (2015年11月刊。1500円+税)

帰蝶

カテゴリー:日本史(戦国)

(霧山昴)
著者  諸田 玲子 、 出版 PHP研究所
 織田信長の正妻は、明智光秀の従妹であり、斎藤道三の娘だったというのです。知りませんでした。織田信長の正室、つまり正妻です。
帰蝶は、斎藤道三(どうさん)の娘の濃姫(のうひめ)である。これまでの通説によると、本能寺の変のずっと以前に早世したが、離縁されたと考えられていた。ところが、近年そうではなくて慶長17年(1612年)に78歳で亡くなったという記載が見つかった。別の資料にも、信長の一周忌の法要を信長公夫人がとりおこなったと書かれている。
では、帰蝶は本能寺の変に至るときに明智光秀といかに関わっていたのか、そして本能寺の変が起きたあと、いかなる行動に出たのか、誰もが知りたいところです。
そのあたりを小説として、女性の立場でこまやかに丁寧に描いた小説です。
私は安土城には二度のぼったことがあります。やはり織田信長の「天下布武」という発想を知るためには、ぜひ一度は安土城の跡地に立つ必要があると考えました。
広い大手門の坂道をのぼっていき、あとは曲がりくねっています。天守閣を再現した博物館が近くにあって、当時をしのぶことも出来ます。
信長の周囲にいた女性たちが、栄光と恐怖の背中あわせに生きていたことを偲ばせる小説でした。
作家の想像力というのは、本当にたいしたものです。
(2015年10月刊。1700円+税)

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