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邪馬台国時代のクニの都・吉野ヶ里遺跡

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 七田 忠昭 、 出版  新泉社
 私は遠くから福岡に来た人には吉野ヶ里遺跡に行くようにいつも強くすすめています。青森の三内(さんない)丸山遺跡にも二度行きましたが、日本の古代国家をイメージするのには、なんといっても吉野ヶ里遺跡を抜きに語れません。行くたびに整備されていて、新しい発見があります。
この冊子は、その吉野ヶ里遺跡の意義を写真とともに分かりやすく解説してくれます。吉野ヶ里遺跡は、筑紫平野に位置します。佐賀市からは遠くありません。
 1989年2月に全国デビューを果たした。発掘が始まったのは1986年5月のこと。
 1988年9月、日本初の巴形(ともえがた)銅器の鋳型が発見された。
 1989年3月、朱塗りの甕棺から、類例まれな把頭飾付き有柄銅剣とあざやかに輝く青色のガラス管玉(くだだま)が発見された。これによって工業団地として造成がすすんでいた吉野ヶ里が遺跡として保全されることになった。売れるかどうかも分からない工業団地より遺跡として保全されたことを日本人の一人として素直に喜びたいと思います。
吉野ヶ里遺跡は、縄文時代そして弥生時代から始まる。そして、稲作を始めていた。
甕棺墓は、高さ1メートル以上の素焼きの巨大な土器を棺としている。大型は成人用、中型は女性と小児用、小型は乳幼児用。全帯で1300基の甕棺墓が確認されている。いくつかの家族の墓地が集まっているとみられる。
墳墓の副葬品からは、沖縄や奄美産の貝殻(イモガイ)製腕輪も発見されている。そして絹布(けんぷ)や大麻(たいま)布も見つかっていて、日本茜(あかね)や貝紫で染めたものもあった。つまり、袖のある華やかな衣装をまとった人がいたことを示している。
 300人分以上の人骨も出土していて、成人男性の平均身長は162.4センチと高身長。私は165センチですから、たしかに昔では高身長ですよね。高身長・高顔の渡来系人骨ということです。
甕棺のなかの人骨には、石鏃(せきぞく)。弓の矢先が突き刺さっていたり、頭骨のないもの、刃傷があるものなどもあり、その大半が戦いの犠牲者だと考えられる。
 女性の人骨は、左腕に11個、右腕に25個のイモガイ製の腕輪を装着していた。司祭者ではないか・・・。
 そして、吉野ヶ里遺跡から、銅鐸(どうたく)も発見されている。
 結局、邪馬台国時代に吉野ヶ里集落内で多くの人々が活発に生活していたことが証明されたのです。ということは、やっぱり邪馬台国は九州にあったということになりますよね・・。
 吉野ヶ里にまだ行っていないという人は、必ず一度は行くべきです。邪馬台国論争が加わりたいなら、まずは吉野ヶ里の遺跡に立ってみてください。奈良は、ずっとずっとあとなんですよ・・・。
(2017年13月刊。1600円+税)

プーチンの世界

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 フィオナ・ヒル・クリフォード・G・ガディ 、 出版  新潮社
 ロシアのプーチンとは何者なのか・・・。それが知りたくて読んでみました。この本は決してプーチン賛美のキワモノではありません。手ごたえ十分の本です。
 現代の著名人のなかで、プーチンはもっとも謎多き人物だ。プーチンの妻や子どもがメディアで紹介されることもないし、プーチンの個人資産も明らかにされていない。
 プーチンという人間を単純な言葉で説明したり、たった一つのレッテルを貼りつけたりできると考える人は間違っている。プーチンは非常に複雑な人間である。
プーチンが世界のほかの指導者ともっとも異なる点は、その個人的な経歴として諜報機関で訓練を受けたプロの工作員であるということにある。
 プーチンは、ソ連崩壊後に形成された現在の世界政治と安全保障秩序は、ロシアの「特別な役割」を否定するだけでなく、主権国家としての存続を脅かすほどロシアを不利な立場に置くものと考えている。そのため、プーチンは、現在の秩序を変えることを自らの責務としている。
 西側諸国の多くの人々はプーチンを見くびりすぎている。プーチンは目標実現のためなら、どれだけの時間や労力、汚い手段をも惜しまない人間だ。使える手段は何でも利用し、残酷になることもできる。
プーチンは戦士であり、サバイバリストである。決してあきらめないし、勝つためには汚い手も使う。だからプーチンの言葉は常に真剣に受けとめなければならない。
プーチンは嘘の約束や脅しはしない。プーチンが何かをすると言えば、いったん準備がととのったら、あらゆる手を尽くして、その実行方法を見つける。
国内・国外対策の両方において、相手よりも優位に立つことがプーチンの主たる戦術である。
プーチンがもっとも重視するのは経済だ。プーチンが大統領になってからの10年間に、ロシアは世界でもっとも急成長を遂げた国の一つになった。それは、石油と天然ガスの価格高騰によってもたらされた。この10年間にせっせと外資準備を築きあげたおかげで、ロシア国家とプーチンは、2008~2010年の世界金融危機を乗り切ることができた。
 プーチンは、側近たちを資産とみている。だから、プーチンのチームは常に少人数だ。人材を見つけ、側近グループへ勧誘し、その動きを管理する人物は自分だけ。それがプーチンの考えだ。プーチンの企業モデルは、少人数のグループの上に成り立つもの。
「株式会社ロシア」の上層部の人間関係は、すべてプーチンとの関係によって成り立っている。
 プーチンの源泉を知った気にさせる本格的なプーチン解説書です。
(2017年3月刊。3200円+税)

青春の柩

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 岡村 治信 、 出版  光人社
 あまりにも過酷な戦争体験記です。よくぞ戦後まで生きのびたものだと驚嘆せざるをえません。戦後は裁判官として活躍しました。
 この本で印象に残った言葉をいくつか紹介します。まずは艦長の言葉です。
 「主計長(著者のことです)は司法官だそうだね。そして一人息子か。ご両親は、きみのことを本当に心配しているだろうね。戦争が終わったら、立派な仕事につけるのは、うらやましい。せいぜい命を大切にするんだね」
これが海軍の将校(川井大佐)の言葉なのです。いかにも命が粗末に扱われる戦場(海域)での言葉ですから、重味があります。
 次は著者の言葉です。
 「いのちの家である『木曽』(著者の乗っている巡洋艦)は、いったい、いつここを脱出できるだろうか。なるものなら、ぶじに故国の土を踏みたい。そして、もう二度と、こんなラバウルになど来るものか、という、いわば厭戦的な気持ちなのである。こういう気持ちは開戦いらい抱いたことはなかったのに、こんどの作戦中だけは終始、ぬぐうことができなかった。なぜであるか、自分でも分からない。おそらく、戦中2年に近い海上生活に疲れたのだろう。そんな弱いことでどうするのだと、心に苛責を感じながらも、やはり生きたいのであろう。結局は、捨てきれぬ小さな命にひきずられて思い迷う自分なのである。
 そうだ、この現実がある以上、私はなお生き続けなければならない。この抜きがたい刻印が胸の中にいっぱいに醗酵しながら、私に厳然と命令する、お前は生き続けなければならない。絶対に彼らの様に負傷したり、死んだりしてはならないと」
 著者は駆遂艦「追風」の庶務主任、巡洋艦「木曽」の主計長として、いくつもの海上作戦に参加しました。南洋のウェーク島占領作戦、ラバウル・ソロモン海戦、ガダルカナル救援作戦、そして北方のアッツ島攻略作戦、キスカ撤収作戦などです。まさに歴戦の海軍将校でした。生きのびたのは不思議、奇跡としか言いようがありません。
 もともと軍艦における死傷の様の残酷なことは、陸戦の場合とは比較にならない。艦上は四周みな鉄であって、一個の爆弾の破裂によって、そのことごとくが、同時に、残酷、凶悪の化身となって飛散する。その断片、鉄片がひとたび人体に振れれば、たちまち肉を裂き、骨を砕き、文字どおりの肝脳地にまみれしめねばやまない。
 海軍主計中佐だった著者は、戦後裁判官になり、東京高裁の判事をつとめました。前に紹介した原田國男元判事の著書(『裁判の非情と人情』)に紹介されていたので、ネットで注文して読んだ本です。その記憶力のすごさにも感嘆させられます。相当詳しい日記をつけていたのでしょうね。
(昭和54年12月刊。980円+税)
金・土・日と桜の花が満開でした。例年より一週間ほど遅れましたが、ちょうど入学式に間にあって喜んだ家族も多かったと思います。わが家の庭のチューリップもようやく全開となりました。朝、雨戸を開けるのが楽しみです。赤や黄そして白など、その華やかさは心を浮きたたせます。ハナズオウの小さな豆粒のような紫色の花も咲きました。アイリスの花が出番を待っているのに気がつきました。春、本番です。

戦場に行く犬

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 マリア・グッダウェイジ 、 出版  晶文社
2011年、アメリカ軍の特殊部隊がパキスタンに潜んでいたウサマ・ビンラディンを暗殺しましたが、そのとき犬も参加していたことを初めて知りました。
この作戦を映画化した映画『ゼロ・ダーク・サーティ』は、私もみたのですが、うかつなことに犬がいたことに気がつきませんでした。「カイロ」という名前の軍用犬だったそうです。映画ではジャーマン・シェパードが出ているけれど、本当はベルジアン・マリノワなんだそうです。マリノワって、どんな犬なのでしょうか・・・。
いずれにしろ、アメリカ軍がイラクやアフガニスタンで軍事作戦をするときには大量の軍用犬も連れていきます。犬は、頼りになる「兵士」なのです。
軍用犬はハンドラー(人間)からほめられることだけが仕事のごほうびだ。それを楽しみに作戦に参加している。
アフガニスタンでもっとも殺傷能力が高い武器はIEDだ。そのため、犬にとってもっとも重要な感覚器が、かつてないほど頼りにされている。現代の軍用犬に一番多く課せられる任務は、爆発物の探知だ。数十種の爆弾を、犬なら嗅ぎわけることができる。アフガニスタンにいる軍用犬のほとんどは、パトロール兼爆発物探知犬だ。
軍で使用される犬は、柔軟性があり、無駄がなく、簡単に配置でき、必要とあれば素早く移動させることのできる兵器システムだ。
アフガニスタンに従軍した軍用犬が2010年に見つけた爆発物は5670キロ以上ある。
もちろん、多大の犠牲を払っています。2001年以降、17人のハンドラー兵士が戦死し、2005年以降には44頭の軍用犬が戦地で死亡した。
軍用犬は、かけがえのない存在である。軍用犬として採用される犬は、純血種でも登録種
でなくてもかまわない。大切なのは能力である。実のところ、純血種でないほうが元気であり、問題も生じにくい。
アメリカの軍用犬は、ヨーロッパ生まれが多い。買い付けチームは、1回のヨーロッパ出張で60~100頭の犬を買ってくる。アメリカには軍用犬の候補になりうる強い犬が少ないらしい。
犬は人間の仕草にとても敏感で、ほんの小さな動きでも、緊張を示す行動は見逃さない。
人間は困ったときには、声の周波数がわずかに上がる。ほかの人間が気がつかないことにも、犬は反応する。恐怖も心配も、哀しみさえも、犬は匂いとしてかぎとっている可能性がある。
犬のいらない、戦争しない平和な国際社会であってほしいものです。
ウサマ・ビンラディンをアメリカ軍が暗殺して、何かいい方向に変わったことがありましたか・・・。代わりの人物が、いくらでも出てくるだけですよね・・・。やっぱり武力に頼らず9条の力で平和共存するしかないのです。軍用犬の活躍なんて不要とする、そんな国際社会を目ざしましょう。
(2017年1月刊。2500円+税)
天神の映画館でオーストラリア映画「ライオン」をみました。心温まる、とても感動的ないい映画で、涙が止まりませんでした。忙しいなかに時間をつくり出して、来てよかったと思いました。
インドで5歳のときに突然、親から離ればなれになり、オーストラリアに養子としてもらわれた男の子が25年後に、グーグル・アースで探し出した生まれ故郷に戻って生母と再会するという実話を映画化したものです。
グーグル・アースは弁護士も活用している人は多いと思いますが、こんなことも出来るのですね。5歳の子役の愛らしさと賢さに脱帽でした。インドの広さも実感させられます。
 

チア・ダン

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 円山 夢久 、 出版  KADOKAWA
映画は見ていませんが、感動のノンフィクションというオビのフレーズは本当です。
なにしろ、わずか3年で福井県の女子高校生たちがアメリカのチアダンス大会で優勝した実話を紹介しています。その苦労話が実に生き生きと紹介されていて、著者の筆力もたいしたものだと感嘆しました。
前に、このコーナーで長崎の女子高校のブラスバンド部の活躍ぶりを紹介しました。そのときは監督も自ら音楽を演奏していましたが、今回の教師は自分ではチアダンスの経験はないのです。有名コーチをひっぱってきて指導してもらい、チームを育てていきました。その苦労がすさまじいのです。生徒たちと大変な格闘をしていたことがよく分かる描写です。
なぜアメリカで日本の女子高生が優勝できたのか、それはチアダンスの特性による。
日本チームの強みは、なんといっても、チームワーク。振付の難易度は下げてでも、おたがいを尊重・強調して演技する。しっかいりそろった演技を一番の見どころにする。
先日、ネットで日本体育大学の学の集団行進を見せてもらいましたが、大集団が一糸乱れず、さまざまな形になって行進するのには、息もつけないほど感動しました。まさしくそれと同じなんですね・・・。
バレエやダンスなら、個人としての表現力が第一。しかし、チアは、ラインダンスで脚の高さをそろえるとか、全員で同じ動きをするために、必要なら自分を抑えるという協調性が第一の競技。
となると、そのチームワークをいかに築き上げるのか、ということになります。
もちろん技術力の高いコーチが必要ですが、それだけでは十分ではない。そこに監督の指導が求められるわけです。
監督の仕事は孤独である。生徒たちと同じ目標をもってはいても、決して仲間や友だちにはなれない。なーるほど、そうですよね・・・。
この福井商業高校のすごいところは、2009年に全米チアダンス選手権大会で優勝してから、2016年まで実に6回も優勝していること、そして2013年から2016年まで四連覇だというのです。これはすごいことですよね。全米の大会で一回だけ、奇跡が起こったというのではなく、毎年、新しい高校生を迎え入れながらレベルを落とさなかったというわけですから、たとえようもないくらいの賞賛に価します。
夢はかなう。大きな夢をもち、あきらめずに前進し続けば、夢がかなう。この信念を現実のものにした教師、それにこたえた生徒集団に心から声援の拍手を送ります。
ちなみに、このチアダンスのチームJETSを卒業した109人のほとんどがアメリカのステージで輝き、優勝を体験したとのこと。この109人の周囲にはそれを支えてくれる大勢の高校生、そして家族がいるわけです。これまたすごいことです。
こんな地道な努力が日本を支えているのだと思うと、胸が熱くなります。
(2017年1月刊。1400円+税)

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