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過労死ゼロの社会を

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 高橋 幸美・川人 博 、 出版  連合出版
電通に入社して1年目に過労からうつ病になって自死した女性について、母親と代理人弁護士が電通の異常すぎる労働環境を厳しく弾劾しています。
就職人気ナンバーワン企業の一つに夢をもって入社した有能な女性社員をたちまち死に追いやるなんて、絶対に間違っていると思います。
亡くなった高橋まつりさんのつぶやきが残っています。
「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」
「会議中に眠そうな顔をするのは管理ができていない」
「髪ボサボサ、目が充血したまま出勤するな」
「今の業務量で辛いのはキャパがなさすぎる」
「女子力がない」
ひとすぎますよね、この上司のコトバは・・・。いったい、どんなキャパをもった上司なんでしょうか。
まだ24歳の女性が1日に2時間しか眠れない、週に10時間しか眠れない。そんな状況に追いやっていながら、それを知らないわけはない上司が「眠そうな顔をするな」「充血した目で出勤してくるな」なんて、どうして平気で言えるのでしょうか・・・。ここまでくると、社蓄ならぬ鬼畜ですよね。
残業も月に20時間なんてものではありません。週に47時間なのです。それはもう「ムダ」というレベルをとっくに過ぎています。
電通は、表向きはフラッパーゲートを全員に通過させることで出退勤時間を制限しようとしていました。ところが、上司は実際にあわない「残業時間」を押しつけたうえ、それは「社内飲食」のため、勝手に従業員がいていたことにしようとしたのです。ひどすぎます。
さらに、電通は新人社員に深夜に乾杯のしかた、花束贈呈のしかた、さらには二次会を予約するときには偽名をつかい、ウソの電話番号を言うように指導していたのです。まるっきりヤクザの経営するブラック企業のやり方ですね、これって・・・。
電通は国政選挙で自民党を指導し、国民だましの手口をすすめているという指摘がありますが、社内でも社員にだましの手口を教え込んでいたのですね、信じられません。
これが天下の電通の正体かと思うと、他人事(ひとごと)ながら腹が立ちます。
そして、高橋まつりさんのつぶやきを読んで、私はつい不覚の涙をこぼしてしまいました。どんなに辛かったろうか・・・と思いました。前途ある有能な女性をここまで追いやるなんて、あまりに可哀想です。
「もう4時だ、体が震えるよ・・・。しぬ。もう無理そう。疲れた」
「かなり体調がやばすぎて、倒れそう」
「生きるために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなって・・・」
高橋まつりさんの過労死が社会の大きな注目を集めたのは、働く人々が「自分も同じ境遇」と受けとめ、50代や70代は、「自分の息子・娘は大丈夫か」、80代以上は「自分の孫は・・・」と心配しているからだろう。
まさしく、そのとおりですね。現にこのあとNHKの女性記者の過労死も報道されました。
この本を読んで、多少なりとも救いがあるのは、社長が退陣したあと、電通の幹部社員に向かって川人弁護士が労働条件改善について講演し、まつりさんの母親も訴える場が与えられたということです。
人間を金銭に置きかえてしか評価せず、働く人を大切にしない企業は社会に存在価値はないということをみんなでしっかり確認する必要があると痛感した本でした。
川人弁護士から贈呈を受けて紹介します。いい本です。ありがとうございました。
(2017年12月刊。1500円+税)

ヘンな浮世絵

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 日野原 健司 、 出版  平凡社
歌川広重は有名ですが、その弟子に歌川広景(ひろかげ)という浮世絵師がいたって、私は初めて聞きました。
知る人ぞ知る無名の浮世絵師で、その正体は謎。広景の代表作は、「江戸名所道戯尽(どうけづくし)」。老若男女の江戸っ子たちが、江戸の名所を舞台に、笑ったり、騒いだり、転んだりと、見ているほうが思わず脱力してしまうユーモラスな姿で描かれている。さしずめ「お笑い江戸名称」と言ってよい珍品。
ばかばかしさが満載の「ヘンな浮世絵」です。ぜひ一度、手にとって眺めてみて下さい。ニンマリ、ニッコリ、ホッコリしてくること請けあいです。師匠である歌川広重、そして葛飾北斎の描いた絵を平然とパクっているというのも特色です。
この「ヘンな浮世絵」が描かれたのは幕末のころ、安政6年(1859年)から、文久元年(1861年)までの2年8ヶ月あまり。社会が大きく揺れ動いているなかでマンガみたいな浮世絵が刊行され、江戸町民の人気を集めていたのでした。
犬のケンカがあり、馬が暴れて運んでいた料理が空を飛び、トンビが油揚げをさらっていく。ナマズが蒲焼屋から脱走し、子どもが水鉄砲で遊んでいて通りかかった武士に水をかけてしまう。さらに、いろんな人がすってんころりんしている姿がユーモアたっぷりに描かれます。
東大本郷の赤門(加賀藩前田家上屋敷の御守殿門)前を、男たち3人が突然の雨で、1本の傘しかないので2人が下になって1人を肩車で担いで傘をさす姿が描かれています。ナンセンスなマンガそのものです。幕末のせちがらい世の中だったからこそ、人々はこんな笑いを求めていたのでしょうか・・・。
知っていて損はしません。江戸の人々の生きた姿を実感できる楽しい本です。
(2017年8月刊。1700円+税)

汚染訴訟(上)(下)

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 ジョン・グリシャム 、 出版  新潮文庫
アメリカの若い女性弁護士が進路選択に苦悩していく姿を描いた司法小説でもあります。いま、日本では、地方に根ざして弁護士活動をしてみようという若手弁護士が急減しています。いまや雪崩をうってビジネス界へ一目散という雰囲気のようで、怖い気がします。
この本に描かれているように、ビジネス弁護士は、下手すると、へとへとになるまで超こきつかわれて、しかも、実は悪(わる)の手伝いをさせられていたということになりかねません(もちろん、すべてだなんて決して言いません。超高給取りの一部に、そんな弁護士がいるようです、と言っているのです)。
なんのために弁護士になったのか、弁護士として何を生き甲斐にするのか、主人公の女性弁護士は真剣に悩んでいます。ぜひ、日本の若手弁護士も同じように悩み、そのうち何人かは、ビジネス弁護士から華麗なる転身をとげてほしいものです。
この本の主人公は、ついに、ニューヨークではなく、超高級取り(年俸16万ドル、1600万円を提示されます)ではなく、アメリカのド田舎で年3万9000ドル(390万円)の給与で働くことを選択したのでした。
「お願いですから、助けてください。私たちを助けてくれる弁護士さんは、あなた以外にはいません。石炭会社を相手にして戦おうとした勇敢な弁護士さんは、あなただけなんですから・・・」
石炭会社、つまり○○鉱山ですね、は森林を大規模に破壊して地域の環境を破壊するうえ、働く労働者をじん肺にし、その補償をしないで切り捨てる。医学的立証ができない状況に追いやり、証拠隠滅を図るのです。そのため、強力な法律事務所をかかえています。
労働者たちは会社に反抗しようという気力を失っているし、孤立している。労働組合はとっくの昔になくなってしまった。わずかな労働者を原告として裁判をしていた弁護士には尾行がつき、盗聴され、ついには不可解な事故で死んでしまう。
さあ、そんな大変な現場に、まだ弁護士としての力量もない、都会育ちの女性が弁護士としてやっていけるのか・・・。
さすがジョン・グリシャムです。ぐいぐい引っぱって読ませます。
ケンタッキー州に本拠を置く地方住民法律センターに取材したり、NPO法人に取材して出来あがった本のようですから、大変な迫力があります。旅行の友の文庫本として、一読をおすすめします。
(2017年10月刊。1600円+税)
天神で韓国映画「密偵」をみてきました。日本の統治下にあった朝鮮が舞台です。日本警察の下で働く朝鮮人が二重スパイのようになって活躍するのですが、日本警察が朝鮮独立運動の志士たちを拷問するシーンはとても残虐です。小林多喜二を拷問死に追いやった特高警察を思い出しました。
朝鮮半島を植民地として支配する日本の醜い姿が描かれています。史実をベースにしたフィクションですが、爆弾で世の中を変えようとしたこと自体は本当にありました。今の自爆テロと共通したところがあります。でも、結局のところ暴力ではうまくいくはずがありません。日本人として大いに考えさせられる、いい映画でした。

東芝の悲劇

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 大鹿 靖明 、 出版  幻冬舎
天下の東芝がガタガタと崩れていく様は見るも無惨です。こんな会社に入らなくて本当に良かったとつくづく思いました。本書を読むと、会社上層部の派閥抗争、いがみあいはこんなにひどいものなのか、ほとほと嫌気がさしてきます。
日本を代表する名門企業の東芝で異常な出来事が続いた。東芝の異常事態は年中行事化し、経営の迷走とぶざまな凋落(ちょうらく)ぶりは、この数年、日本全国に同時中継されてきた。
名門の東芝は、その声望にあぐらをかいた歴代の経営者によって内部から崩壊していった。強いトップを上にいただくと、その企業では、それだけ社員の自立する意識は弱まる。東芝の社風は、周囲とのマサツを起こさない穏やかな社風として形成されていった。穏やかでおっとりした人が多く、胆力のある者がめったにいない。それが東芝だった。
東芝は、かつて、総会屋たちに年間6~7000万円を広告費として支出していた。
東芝はアメリカの原発企業をバカ高い値段で買わされてしまった。売りつけたアメリカの企業(ウェスチングハウス)は東芝を「田舎企業」と馬鹿にし、見下していた。
経団連の副会長ポストは東芝の指定席になっていた。
東芝の粉飾決算はトップダウンで進行していた。それを止めることをしなかった。「模倣の西室、無能の岡村、野望の西田、無謀の佐々木」というのは、東芝の元広報室長の評価である。いやはや会計士も弁護士も、とんでもない大企業の社長連中とつるんでいます。いったい、その月給(年俸)は、いくらだったのでしょうか。また、退職金は・・・。
森、濱田、松本、西村、あさひ、TMI,丸の内総合という日本の大ローファームが名指しで、「同罪」だと指弾されています。弁護士法1条なんて、単なる建前にすぎないと嫌味を言われています。ぜひ反論してほしいものです。
東芝で起きたことは、日本大企業では、どこでも起きていることではありませんか。モノづくり日本の看板が大泣きしている今日、残念でたまりません。
さて、わが家に東芝製品って、あったかな・・・。
(2017年10月刊。1600円+税)
日曜日の午後、仏検(準1級)を受けてきました。準1級を受けはじめたのは1997年からですので、もう20回をこえました。この間、うけていないのは1回だけです。このところ、連続して合格しています。今回も120点満点で80点というのが自己採点の結果です。試験に向けて毎朝、NHKラジオ講座の(応用編)の書きとり、また20年分の過去問を繰り返して復習しました。上達するより、レベルを落とさないようにするので精一杯なのです。悔しいですけど、これが現実です。それでも認知症の予防にはなっていると自分を慰めています。

アインシュタイン

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 新堂 進 、 出版  サイエンス・アイ新書
天才アインシュタインについて書かれた本は前にも読んだと思いますが、この本でまた新しい発見がありました。
天才でありながらアインシュタインの実像は、むしろひょうきんで、ユーモラスなオッサンだったようです。その証拠が、例の有名な舌(ベロ)を出た写真です。このとき、カメラマンから笑って下さいと言われて、ついアインシュタインは舌を出したとのこと。カメラマンが怒られるかと心配したら、本人も気に入った写真だったとのこと。
アインシュタインは日本にもやって来ています。日本人に対しては高い評価を与えていますが、果たして現代日本人についても、あてはまるでしょうか・・・。
「私が会ったなかで一番好きなのは日本人です。彼らは知的で、控え目で、思いやりにあふれています」
アインシュタインはノーベル賞をもらっていますが、ノーベル賞受賞を決める側に反ユダヤ主義者がいて難航したとのこと。アインシュタインは貧しいユダヤ人の子どもだったのでした。
アインシュタインの遺体は亡くなったその日のうちに火葬され、遺灰は近くの川に流された。ところが、解剖した医師が無断で脳を摘出していた。ホルマリン漬けにされ、今ではプリンストン大学に保存されている。
クルマのカーナビにも、アインシュタインの相対性理論の効果が盛り込まれているというのを知りました。誤差を出さないようにするために必要なのだそうです。
アインシュタインの子どもたちは、親を恨んでいたとのこと。この点は、チャップリンの子どもたちとは違うようです。アインシュタインが離婚したことから、前妻の子たちが母を捨てた父を恨んだということのようです。
それにしても、光が波であり粒子であるというのは、何回きいても、もう一つぴんときません。光には質量はない。質量ゼロだからこそ、秒速30万キロで飛べる。逆に秒速30万キロでしか飛ぶことができない。止まったり、スピードを変えたりはできないというのは質量ゼロの存在の宿命なのだ。
アインシュタインの「2%演説」というのが有名だということも初めて知りました。アインシュタインは平和主義者であり、戦争を憎んでいました
「国民の2%が戦争に反対すれば、その国は戦争を起こせない。なぜなら2%をこえると刑務所がパンクするからだ。2%は刑務所の収容人数の上限で、これをこえると収容できない。だから国は、2%の国民の意見を無視するわけにはいかない」
それにしても16歳のときのアインシュタインの疑問というのは信じられません。さすが天才です。鏡の前に立って、次のように自問自答したというのです。
「光を背にして鏡をのぞくと、そこに光が映る。では、そのまま光のスピードで走ったら、光は鏡に映るだろうか?」
光速の絶対不変の原理がモノを言う世界です。やはり天才とは恐るべき存在ですね・・・。
(2017年9月刊。1000円+税)

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