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小説・司法試験

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 霧山 昴 、 出版  花伝社
ほとんどの弁護士にとって、司法試験とは悪夢のようなもので、とても思い出したくない、早く忘れ去ってしまいたいものです。ところが、著者は、その悪夢の日々を当時の日記やメモをもとに刻明に再現していきます。
それは、司法試験の勉強って、どうやって何を勉強するのか、授業には出席したほうがいいのか、ゼミでは何をどうやって議論するのか、それがまず明らかにされます。
そして、毎日の味気ない勉強をどうやったら集中して続けることが出来るのか、スランプに陥ったときの脱出法も語られます。たまには息抜きも必要です。アルコールにおぼれないように、健康管理しながら、意気高く、集中力を維持するにはどうしたらよいか。そのときには、笑いだって必要です。ええっ、受験生が笑って過ごしていいのか・・・。いや、むしろ必要不可欠だと著者は断言します。何を、どうやって笑うのか。
ついに試験本番に突入します。試験会場で心を落ち着ける秘訣は何か、もっている実力を過不足なく発揮するには、どうしたらよいのか。体調管理、とりわけ良質な睡眠時間をいかに確保するか・・・。時間配分はどうするか、正解なのか迷ったときの対処法、論文式試験で答案を書きすすめるときの筋道(アウトライン)のたて方をどうするか、そもそも文章を書きなれておくために有効なことはないか・・・。最後に遭遇する口述式試験で、試験官と気持ちよく対話するためにはどんな心構えが必要か。頭が白紙状態になったとき、どうやったら泥沼から脱出するか・・・。条文をおさえ、定義を述べて重要な論点を落とさない、そんな受験生になるためには、毎日、何が必要なのか・・・。
夏に試験勉強をはじめて5月に短答式を受けてなんとか乗り切り、7月の論文式には実力のすべてを出し切って、8月に山歩きをして、9月下旬の口述式試験では、試験官となんとか対話して合格にこぎつけた。そんな苦闘の日々が手にとるように刻明に再現された画期的な本です。
悪夢の日々が目の前によみがえってきます。全国の受験生を大いに励ましてくれると確信しています。480頁もある大作なのに、なんと定価は1500円。価値ある1500円です。ぜひ、手にとって読んでみてください。『司法修習生』(花伝社)の前編にあたります。
(2018年4月刊。1500円+税)

否定と肯定

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 デポラ・E・リップシュタット 、 出版  ハーバー ブックス
映画の原作です。文庫本で580頁もあり、読むのに骨が折れました。あまりにシリアスなテーマだけに読み飛ばせなかったのです。
ナチスによる大量虐殺はなかった。これって日本軍による南京大虐殺なんてなかったというインチキ・プロパカンダとまるで瓜二つですよね。
アウシュヴィッツにガス殺人室はなかった。その証拠に、ガス抜きの煙突はなかったし、シラミを殺す濃度より低い濃度のシアン化合物毒しか部屋の壁から顕出できなかった・・・などと、まことしやかに語られるのです。それを「一流」として定評のある歴史学者が公然と言うのですから始末に悪いです。
シラミを駆除する毒性は人間を殺すより、はるかに高濃度でなければいけない。シラミの耐性は恐ろしく強い。それにひきかえ、人間はいちころで死んでしまう・・・。まるほど、そうなんですね。ガス室の煙突は、ちゃんと残っていて写真で確認できます。
リップシュタットの弁護団はアウシュヴィッツに出かけています。やはり現地に立ってみることは、法廷での弁論を支えるのですね・・・。
リップシュタットの代理人弁護士はインチキ学者を法廷で尋問するとき、わざと視線をあわせなかった。なぜか・・・。長いあいだ、人にじかに視線を向けつづけると、その相手とのあいだに絆(きづな)が生まれかねない。そんな絆なんて、まっぴらごめんだ・・・。もう一つは、インチキ学者の「業績」なんて、たかがしれている、そのことを態度で示すことだ。
アウシュヴィッツの焼却炉は、人間の脂肪を燃やして高温を維持するため、やせ衰えた死体とまだやせ衰えてない死体の両方を同時に火葬できる設計にする必要があった。やせ衰えた死体だけだと、絶えず燃料を補給しなければいけない。知りたくない知見ですね・・・。
もっとも過激な反ユダヤ主義者が、ユダヤ人の友人と親しくしている例は少なくなかった。そんな彼らは決まって、こう言う。ああ、この男は私の友人だ。例外さ。他のやつらとは違う。
イギリスでは名誉棄損の裁判では、訴えられた方が真実であることを立証しなければならない。立証責任がアメリカとイギリスでは正反対。アメリカでは立証責任は原告にあるが、イギリスでは逆に、真実であることを被告が立証しなければならない。
リップシュタットの代理人弁護団として、ダイアナ妃の離婚訴訟の代理人をつとめたイギリスの弁護士に依頼した。1時間5万円という料金の弁護士だ。
リップシュタットの弁護団は、アウシュヴィッツの生き残りの人々を法廷で証言させない。また、リップシュタット本人にも法廷で証言させず、沈黙して押し通すという戦術を貫いた。いずれも、日本人の弁護士には信じられない方針です。
アウシュヴィッツの生き残りの人々を法廷に立たせて、自分の体験していないことをいかに知らないか、インチキ学者の立場で責めたてさせ、悲しみ、辛さをかきたてたらまずいいという事情(情景)説明は、それなりに理解できます。でも、本人に沈黙を強いるというのは、どうなんでしょうか・・・。日本でも同じような作戦で法廷にのぞんだというケースがあるのでしょうか。私には心あたりがありませんので、知っている人がいたら、どんな状況でとった作戦なのか、ご教示ください。
もちろん、リップシュタットの側で、学者証人は何人も繰りだして、インチキ学者のインチキぶりを刻明にあばいていったのです。
リップシュタットの弁護団にかかった訴訟費用は200万ポンドという巨額でした。これはユダヤ人の組織と個人が多額のカンパで支えました。
結局、敗訴したインチキ学者は、この訴訟費用が支払えずに破産してしまったのでした。
戦前の日本軍は植民地を解放しただとか、国の近代化に大きく貢献したから、かえって感謝されるべきだいう声は、昔からほそぼそとですが、上がっていました。ところが、今では恥知らずにも声高で言いつのる人がいます。植民地の表通りだけがきれいになったとして、それを支配されている民族は喜ぶべきだなんて、そんな押しつけ論法はありえません。
かつての日本人は、貴重な血を無為に流させられてしまったのです。その反省なしに、今の日本の「繁栄」は続くわけがありません。
映画をみていない人にも一読をおすすめします。骨ある文庫本です。
(2017年11月刊。1194円+税)

炎と怒り

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 マイケル・ウォルフ 、 出版  早川書房
トランプ大統領って、本当に知性のカケラもない人間だということがよく分かる本でした。
わがニッポンのアベ首相と共通点がありすぎです。
トランプには良心のやましさという感覚がない。
トランプとクリントンのアウトローぶりは、二人とも女好きで、セクハラの常習犯だ。そして、二人とも、ためらいなく大胆な行動に出る。
トランプのスピーチは、だらだらと長く、支離滅裂で、すぐに脱線し、どう思われようがおかまいなしの主張の繰り返しだ。
これも、わがアベ首相の国会答弁そっくりです。答えをはぐらかし、質問とかけ離れた持論をだらだらと展開し、変なところで急に断定する。
トランプは、社交の形式的なルールを一切身につけていない。トランプは礼儀をわきまえているふりすらできない。
トランプの髪型は、頭頂部にある禿(はげ)を隠すために、周囲の髪をまとめて後ろになでつけ、ハードスプレーで固定して隠している。
トランプを相手に、本物の会話は成り立たない。情報を共有するという意味での会話はできないし、バランスよく言葉のキャッチボールをすることもできない。
トランプの率いる組織は軍隊式の規律からほど遠い。そこは、事実上、上下の指揮系統は存在しない。あるのは、一人のトップと彼の注意をひこうと奔走するその他全員という図式のみ。そこでは、各人の任務は明確ではなく、場当たり的な対処しかない。
トランプは文字を読まず、聞くこともしない。常に自分が語る側になることを好む。実際には、つまらない見当違いだとしても、自分の専門知識をほかの誰よりも信じている。
トランプは文字を読もうとしない。読み取る能力が乏しい。トランプには、そもそも読書の経験がない。一冊も本を読み切ったことがない。話を聞くにしても、自分が知りたい話にしか耳を傾けない。トランプは、公式情報、データ、詳細情報、選択肢、分析結果を受けとることはない。トランプにはパワーポイントによる説明など何の役にも立たない。
トランプは集中力の持続時間が、きわめて短い。
トランプ政権の矛盾は、他の何よりもイデオロギーに突き動かされた政権であると同時に、ほとんどイデオロギーのない政権もあるということ。
トランプは驚くほど、アメリカの重要な政策をなにひとつ知らないし、知りたくない。
アメリカ・ファーストとは、アメリカさえ良ければ、あとはどうなってもかまわないという意味なのだ。
トランプには、そもそも読書の経験がない。一冊も本を読み切ったことがない。
よくぞ、こんな低レベルの人物が偉大なアメリカの大統領になれたものですね。
トランプは、自分を律することが出来ない。政治的戦略と立てる能力も皆無だ。どんな組織のなかでも歯車の一つになれず、どんな計画や原則にも従うとは思えない。
不動産業界出身の大統領は、トランプの前には一人もいない。というのも、不動産市場は規制が緩く、多額の債務と激しい相場の変動に耐えなくてはならない。
ホワイトハウスに入ると、「完全に健康体の人間」でも、やがて老いぼれて不健康になっていく。
噂どおりの本で、面白く読みました。しかし、同時にこんな男が核ボタンをもっているかと思うと背筋が氷る思いです。
(2018年2月刊。1800円+税

日本の戦争、歴史認識と戦争責任

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 山田 朗 、 出版  新日本出版社
大変勉強になる本でした。司馬遼太郎の『坂の上の雲』がまず批判されています。なるほど、と思いました。日露戦争は、成功の頂点、アジア太平洋戦争は失敗の頂点と、司馬は単純に二分してとらえている。しかし、実のところ、近代日本の失敗の典型であるアジア太平洋戦争の種は、すべての日露戦争でまかれている。
日露戦争で日本が勝利したことによって、日本陸海軍が軍部として、つまり政治勢力として登場するようになった。軍の立場は、日露戦争を終わることで強められ、かつ一つの官僚制度として確立した。
日露戦争において、日英同盟の存在は、日本が日露戦争を遂行できた最大の前提だった。日露戦争の戦費は18億円。これは当時の国家予算の6倍にあたる。そしてその4割は外国からの借金で、これがなかったら日本は戦争できなかった。そのお金を貸してくれたのは、イギリスとアメリカだった。
日本海軍の主力戦艦6隻すべてがイギリス製だった。装甲巡洋艦8隻のうち4隻も、やはりイギリス製で、しかも最新鋭のものだった。このように、イギリスが全面的にテコ入れしたため、日本海軍は世界でもっとも水準の高い軍艦を保有していた。
日本軍は、大陸での戦いでロシア軍に徹底的な打撃を与えることが常にできなかった。その最大の要因は、日本軍の鉄砲弾の不足にあった。
「満州国」のかかげた「五族協和」でいう「五族」とは、漢・満・蒙・回・蔵の五族ではない。日・朝・漢・満・蒙の五族だった。
満州国には、憲法も国籍法も成立しなかった。日本は国籍法によって二重国籍を認めていない。満州国に国籍法ができると、満州国に居住する日本人は、満州国民となるのを恐れた。というのは、日本国籍を有しているのに、「満州国」に国籍法ができると、満州国に居住する日本人は「満州国民」になってしまう。
アベ首相がハワイの真珠湾を訪問したときのスピーチ(2016年12月27日)についても厳しく批判しています。日本軍が戦争を始めたのは、ハワイの真珠湾攻撃ではなかった。それより70分も前に、日本軍はマレーシアで戦争を始めていた。日本軍にとって、ハワイは主作戦ではなかった。つまり、マレーやフィリピンへの南方侵攻作戦が主作戦だった。ハワイ作戦は、あくまでも支作戦だった。
日本が韓国・朝鮮を植民地した当時に良いことをしたのは、あくまでも植民地支配のために必要だったから。統治を円滑におこなうためにすぎない。単なる弾圧と搾取だけでは支配・統治は成り立たない。地域振興とか住民福祉を目的とした政策ではない。そして、アジア「解放」のためという宣伝をやりすぎてはならないというしばりが同時に軍部当局から発せられていた。
戦後の日本と日本軍がアジアで何をしたのか、正確な歴史認識が必要だと、本書を読みながら改めて思ったことでした。
(2018年1月刊。1600円+税)

モノに心はあるのか

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 森山 徹 、 出版  新潮選書
心があるのは人間だけに決まっている。なんて変なタイトルの本なんだ。モノに心はない。心がないからこそ、人間とちがってモノなんだ・・・。
著者は、子どものころ、死ぬと決して生き返ることはない。死ぬと夢を見ないで寝ているのと同じ状態になることを確信した。人間は、死ぬと、まったくなくなってしまう。そして、世界は、自分の生まれる前から、そして自分が死んでからも存在するということを実感した。
この点は、私もまったく同じです。ですから、私は、この世に自分というものが存在したことを、たとえ小さなひっかきキズでいのでなんとかして残したいと考え苦闘してきました。こうやって文章を書いているのも、そのあがきのひとつなのです。
心とは、隠れた活動体、すなわち潜在行動決定機構群だ。それは、動物行動学の言葉を用いたら、自立的に抑制する複数の定型的行動の欲求だ。
石においても、隠れた活動体は存在している。つまり、石にも「心」が存在する。石器職人が石を割るとき、自分の力だけで石を思いどおりに割ったとは考えていない。職人は石の自律性を感じている。石の個性に気がついた職人は、石の内部でそれを生成する何者か、すなわち「隠れた活動体」の存在を知ることになる。
アメーバ動物である粘菌が迷路のスタートとゴールを結ぶ最短経路を探し出せること(知)、魚が恐怖や不安の反応を示すこと(情)、ザリガニの脳内には自発歩行の「数秒後に」活動しはじめる神経回路があること(意)が判明している。これらの研究報告は、無脊椎動物をふくむヒト以外の多くの動物に、知・情・意を代表とする精神作用が備わっていることを示唆している。したがって、心はヒトに特有なものではなく、あらゆる動物に備わるものだということになる。
この本は、「心」というものを平易で明瞭なコトバでもって語り尽くそうとしています。読んでいると、なるほど、なるほど、そういうことだったのかと思わずひとりつぶやいてしまいます。
(2017年12月刊。1200円+税)
 初夏と勘違いさせる陽気となり、ジャーマンアイリスが一斉に花を開いてくれました。ほとんどが青紫色で、いくつか黄色の花が混じっています。そのあでやかさは目を惹きつけます。チューリップは終わりました。庭の一区画からアスパラガスが次々に伸びて、春の香りを毎日のように味わっています。
 博多駅の映画館で韓国映画「タクシー運転手」をみてきました。1980年に起きた凄惨な光州事件がテーマです。軍隊が市民を守るものではないこと、当局はひたすら真相を隠してデマ宣伝をすることが描かれ、思わず鳥肌が立ちます。
 自衛隊がイラクのサマワに行ったとき、何が起きていたのか・・・。日報かくしは絶対に許せません。ぜひ時間をつくってみてください。

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