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鉄道人とナチス

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 鴋澤 歩 、 出版  国書刊行会
ナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺を可能にした有能な道具はドイツ鉄道でした。
そのドイツ国鉄総裁を長くつとめていたユリウス・ドルプミュラーに戦争責任はないのか、そんな問題意識で書かれた本です。
本人は、戦後まで生きのびて、ユダヤ人大量絶滅作戦なんて知らないと言い通したようです。そんなはずはありませんよね・・・。
ユダヤ人迫害は、その資産の略奪・没収する側にまわった人間にとっては、決して不合理でも非経済でもなかった。
ドルプミュラー総裁以下のライヒスバーンは、組織全体としては、基本的に受け身で場当たり主義的な対応に終始した。結果的には、組織内外のユダヤ人への迫害を重ねたが、輸送という鉄道業本来の業務によって大量虐殺への直接的関与を大々的におこなうには、やはり第二次世界大戦の勃発という契機が必要だった。
ドルプミュラーたちは、ユダヤ人大虐殺の事実を知っていながら、知らないふりをし、ユダヤ人という他人の運命に無関心を通した。
ドルプミュラーは、ユダヤ人虐殺について、くわしいことは何も知らなかった。都合の悪い事実は、すべて忘れることにした。
列車によるユダヤ人移送のピークは1942年だった。本数にして270本、14万人が移送された。狭い車両に押し込められ、ものすごい密集状態で運ばれたという体験、それだけが生き残った犠牲者の思いだせることだった。
まさしく、隣は何をする人ぞ、という世界へいざなっていきます。
ナチスとドイツ官僚とのあいだに若干の矛盾があったことは間違いないでしょう。しかし、ヒトラーのユダヤ人絶滅に手を貸した責任はやはり免れないものです。
(2018年3月刊。3400円+税)

権力と新聞の大問題

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 望月 衣塑子 ・ マーティン・ファクラー 、 出版  集英社新書
日本のマスコミは本当に大丈夫なのかと、ときとして不安にかられます。とくにテレビ、そしてNHKです。
そんななかで、大いに気を吐いているのが我らがモチヅキ記者です。なにしろ、あの鉄面皮のスガ官房長官に対して「分からないので訊いています」と何回も鋭い質問を浴びせ、タジタジさせたという猛者(つわもの)です。それにしても、質問力を喪った記者って、ジャーナリズム失格ですよね・・・。
そして、我らが「エナーシュカ」(フランス語読みです)は、どうなってるんでしょう。大量死刑執行前夜に万歳する法務大臣、豪雨災害で警報が発令しているのに飲んだくれている国土交通大臣と防衛大臣、そしてそれを統括するアベ首相は、災害初動の遅れは他人事(ひとごと)ですまします。いやはや、「天下泰平」(ではありません)の日本のデージンたちです。
Jアラートが鳴る前、不思議なことにアベ首相は珍しく首相官邸に泊まりこんだ。それを追及すると、スガ官房長官は、目を吊り上げて、「あなた北朝鮮の肩をもつんですか?」と逆襲した。とんでもない権力者です。
アベ政権は北朝鮮へ圧力(制裁)一本槍の政策できた。ところが、トランプ大統領が金正恩委員長と米朝会談を成功させると、さすがアメリカと絶賛するものの、日本のマスコミは金正恩への警戒一色に染めあげる。「金正恩に騙されるな」と・・・。
では、いったい、日本の平和と安全をどうやって守るというのでしょうか。朝鮮半島で戦争を終結させることのどこが悪いというのでしょうか・・・。
日本のマスコミのトップはアベ首相との食事会に喜々として参加し、その模様を報道することはない。この食事会の源資は、例の月1億円のつかい放題の内閣官房機密費に決まっています。
美味しいものを腹いっぱい食べさせられ、手土産もってハイヤーで自宅へ帰ったら、アベ首相の提灯もちの記事の一つでも書きたい気になることでしょう。でも、その裏には、自然災害で泣いている多くの被災者がいて、日本の民主主義がダメになっていくのを許せないと思っている市民がいるのです。
アベ首相、あんまり日本の市民を舐めすぎたらいかんぜよ。
そう叫びたくなる日本ジャーナリストの対談集です。
(2018年6月刊。860円+税)

ソウル・ハンターズ

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 レーン・ウィラースレフ 、 出版 亜紀書房
シベリアに住む少数民族、ユカギールの社会を研究した学者の本です。
ユカギール人は、トナカイ牧畜によって生活している。イヌが唯一の家畜である。
ユカギール人は、エルクを狩猟によって得ると、狩猟者たちのあいだで、森の中でシェアされる。
分け前は、集団内の狩猟者の数に応じて山積みにされ、全員が年齢や技術に関係なく平等な分け前を得る。
村に戻ると、肉は再びシェアされる。狩猟者は全員と分け合う義務はなく、親戚にだけそうする義務がある。親族は「よこせ」と言う。そこには「お願いします」とか「ありがとう」という言葉はない。肉が調理されてしまうと、それは再び、その場にいる者、通常は、世帯の全員にシェアされる。肉が保存とか貯蔵されることは、ほとんどない。ユカギール人は、新鮮な肉を食べることを好む。
ユカギール人の狩猟者は、森に行くとき、わざと食料は2日か3日分しか持っていかない。古い世代のユカギール人は、野草を食べることをかたくなに拒絶する。赤くて脂肪の多い肉が何より重要視され、そんな肉のない食事は、まったく正しい食事ではないと、ほとんどの人は考えている。
ユカギールの子どもたちは、寄宿学校に入れられて学ぶよう義務づけられるが、ほとんど6年くらいで脱走して、両親の元へ戻った。
学校を必要としない社会、親と子のつながりで生きていける社会もあるのですね・・・。
(2018年4月刊。3200円+税)

コンビニ外国人

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 芹澤 健介 、 出版  新潮新書
日本全国に5万5000店舗あるコンビニには、外国人が4万人以上つとめている。コンビニで働くスタッフ20人に1人は外国人。
コンビニで働いている留学生のほとんどは、多額の借金をかかえて来日している。
日本にいる27万人の外国人留学生のうち、アルバイトをしているのは26万人。
日本は今、600校以上の日本語学校がある。授業料は60万円から80万円。このほか、入学金や教科書代が加算される。日本語学校の授業は、午前中だけ、あるいは午後だけというところが多い。
在日韓国・朝鮮人は48万人で、この20年間で20万人も減っている。中国人は71万人。いま急増しているのがベトナム人23万人、ネパール人7万人。
外国人技能実習生は25万人。在留期間は最長5年。
高度専門職ビザで在留している外国人は、わずか5000人。
労働力を呼んだら、来たのは人間だった・・・。
日本政府は、「移民」は断じて認めないが、外国人が日本に住んで働くのはOK。むしろ積極的に人手不足を補いたい、というもの。
JR新大久保駅の周辺には外国人の比率が4割を占める地区がある。
日本のコンビニを支えているのが外国人留学生であり、ベトナム、ネパール、ミャンマーなどの学生が多いという現実を知ることが出来ました。
(2018年16月刊。760円+税)

マーチ 1

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ジョン・ルイス 、 アンドリュー・アイディン 、 出版  岩波書店
先日、マルティン・ルーサー・キングの伝記を読みましたが、同じように黒人牧師として活躍し、アメリカ下院議員でもあるジョン・ルイスの半生をマンガで紹介した本です。
冒頭のシーンは、有名な「血の日曜日事件」です。黒人の集団が橋を渡ろうとしているところへ、白人警察隊が襲いかかってきます。
黒人は、住む地区が白人とは別、学校も店も乗るバスや列車も白人とは別なのです。
黒人が、そのルールに従わなかったときには、白人による凄惨なリンチが待ち受けています。黒人が殺されても、リンチした白人は晴れて堂々と無罪になります。全員が白人の陪審員団は、「ニガー」殺しで白人を有罪にするなんてとんでもない、そんな考えにこり固まっているのです。
そこへ、黒人の学生たちが無抵抗・非暴力主義で立ち上がります。少数の白人も応援しますが、見つかると大変な目にあいます。白人だからといって容赦なんてありません。コーヒーショップのカウンターに座って、じっと耐えるのです。白人の暴徒に襲われます。非暴力だから、やられっ放しです。でも、応援に次々にやって来ます。みんなブタ箱に入れられます。
バスに乗る人がいなくなり、商店で商品を買う人がいなくなります。
アメリカの自由と権利を守るたたかいのすさまじさ、これを実感させてくれるマンガ本です。
(2018年6月刊。1900円+税)

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