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調査・朝鮮人強制労働②

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 竹内 康人 、 出版  社会評論社
韓国向けの缶ビールの製造を中止したアルミ会社。韓国人の団体客が来なくなって困っている観光バス会社。韓国と日本を結ぶエアラインの相次ぐ停止。本当に困った状況です。
福岡には韓国語を話す旅行者があふれています。日本の韓流ドラマの人気も根強いものがあります。ところが、アベ政権と日本のマスコミは韓国への輸出制限を当然視し、「韓国が悪い」というキャンペーンばかりです。
日本と韓国は、お互いにもちつもたれつの関係にあります。かといって過去に日本が韓国(朝鮮全土)を植民地として支配していた事実を忘れるわけにはいきません。加害者はすぐに忘れてしまいますが、被害者側は、そんなに簡単に忘れられるはずもありません。
日本が韓国(朝鮮半島)から大量の朝鮮人を強制的に連行してきて、苛酷な労働状権の下で働かせていたことは歴史的事実なのです。このシリーズ第2弾は、全国の鉱山を舞台として、朝鮮人と中国人、そして連合軍捕虜たちを厳しい監視下で働かせていた事実を丹念に掘りおこしています。本当に貴重な労作です。
本書だけでも342頁、2800円もしますので、売れない本だと思いますが、せめて全国の図書館には全巻そろえて置いてほしいものです。
日本全国の鉱山が登場します。私の行ったことのあるのは、そのうち足尾鉱山と小坂鉱山くらいです。あとは、名前だけなら神岡鉱山、生野鉱山、花岡鉱山は知っていますが、残る多くは、名前を聞いたことすらありませんでした。伊豆に金鉱山があったとか、丹波にマンガン鉱山があったというのも初耳です。
そして朝鮮人連行の状況が鉱山ごとに人数でこまかく明らかにされています。本当に貴重な労作です。粗末な食事と暴力的な労務管理のもとでの強制労働でした。しかし、そこで働かされていた朝鮮人たちも黙ってはいませんでした。積極的な逃亡、サボタージュ、そしてストライキに立ち上がったのです。なかには、朝鮮独立運動の志士もいました。「特高月報」が朝鮮人の抵抗の様子を記録しているのです。
また、足尾など各所に朝鮮人追悼碑が建立されています。
あまりにも貴重な労作です。著者に対して心より敬意を表します。
(2014年3月刊。2800円+税)

恐竜まみれ

カテゴリー:恐竜

(霧山昴)
著者 小林 快次 、 出版  新潮社
子どもも大人も、恐竜が大好きだというのは世界共通だと思っていました。だって『ジュラシック・パーク』はアメリカ映画ですし、世界的に大人気だったわけでしょ。
でも、著者によると日本は世界のなかでも飛び抜けて恐竜ファンが多いのだそうです。
私も恐竜ファンの一人です。現代に生きる恐竜が鳥類だなんて、不思議そのものです。
そして、恐竜時代にわが人類の原型(祖先)は深夜だけウロチョロしていたネズミのような哺乳類だったというのです。うひゃあ、恐竜が絶滅しなければ、人類だって、昼間おおっぴらに活動できなかったというわけです。
著者はアンモナイト少年から長じて恐竜博士になりました。
恐竜発掘のため、危うい目に何度もあっています。巨大なグリズリー(ハイイログマ)に襲われそうになったり、ヘリコプターで墜落寸前になったり、ゴビ砂漠では道に迷って転落死寸前、ガラガラヘビを目前に見たり・・・。それでも無事に研究生活を続けているのですから、たいしたものです。
発掘体験記を読むと、まさしく恐竜発掘の大変さと楽しさがビンビン伝わってきて、ともに感動の余韻(よいん)に浸ることができるのです。これだけでも一読の価値があります。
化石の発掘調査。じつは発掘というのは、恐竜研究の一部にすぎない。だが、結論を言えば、恐竜研究の醍醐味はここにある。自分の足と手、目を使って発見する。抜群の面白さだ。
姿を消してしまった恐竜を研究する面白さは、恐竜そのものに挑むことにある。圧倒的に少ないデータを、自分の力で増やしていくのだ。
現在まで1000種類の恐竜に名前がついている。その75%は、たった6ヶ国から発見されている。アメリカ、カナダ、アルゼンチン、イギリス、中国そしてモンゴル。残念ながら、日本は入っていない。
恐竜の化石を見つけるには、人の歩いた形跡のないところ、歩きづらいところをあえて歩く。どんなに疲れていても、あえて違う道を歩くように心がけ、常に化石が落ちていないか目を配る。
大発見は、予期せぬ形で起きる。最終日の夕方に・・・。
絶滅した恐竜の祖先系がワニ類で、末裔(まつえい)が鳥類だ。そこで、恐竜の行動や姿形を推測するためには、ワニ類と鳥類の両方を見比べる。
化石は日本の研究室へもち帰ることはしない。化石は、それが埋まっていた町や村、市の宝なのだ。
フィールドに到着すると、ひたすら歩く。今日も歩いて、明日も歩く。とにかく気力と体力の勝負。ほとんど土砂をショベルで掻(か)いている。
恐竜の研究者は、骨の形と体で覚えている。
いま、東京・上野の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2019」には「むかわ竜」の全身骨格が復元展示してあるとのこと。ぜひみてみたいものです。
そして、中国からも全身骨格が届いているそうです。
実際に恐竜がいたら怖くてたまりませんが、夢とロマンの対象として恐竜には限りなく関心があります。小林先生の次の本が楽しみです。
(2019年6月刊。1450円+税)

新しいチンパンジー学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 クレイグ・スタンフォード 、 出版  青土社
人間とチンパンジーは、どれほど違う存在なのか・・・。この本を読むと、人間はチンパンジーによく似ていることがしっかり分かります。
アルファオスの平均在位期間は4年間。アルファオスであっても、必ずしも大部分のメスと交尾できたり、ほとんどの子どもの父親になれるというものではない。
ただし、アルファオスになったことのあるオスは、他のチンパンジーよりも平均33.4歳と長生きした。他のオスは25.5歳だった。
高順位メスは、娘よりも息子の育児により時間をかけ、結果としてオスの幼児期生存率を高めている。
メスのチンパンジーは、11歳前後で性皮腫脹を経験する。おとなオスはすぐにそのメスを違った目で見るようになり、交尾が始まる。メスは、たいてい1年か2年のうちに生まれたコミュニティを出ていく。そして、13歳ころに別のコミュニティに落ち着き、残りの一生を過ごす。メスは死ぬまで、5年間隔で出産を続け、閉経を迎えることはない。
性皮腫脹期間のメスは、きわめて性的に活発で、1時間に3.5回の交尾をする。あるメスは、1日のうちの11時間に、異なる18頭のオスを相手に、65回も交尾した。10分に1回の計算だ。
すべての交尾行動のうち、4分の1はメスが開始し、オスはその80%がメスの誘いに応じた。
チンパンジーのオスは、若いメスよりも年長の雌を好む。経産メスのなかでも、若い母親より年とった母親が好まれる。なぜか・・・。高齢のメスは、若いメスよりも順位の高いことが多く、繁殖成功度も高いからではないか・・・。
チンパンジーの母親にとって出産はそれほど大仕事ではない。チンパンジーの新生児の頭蓋骨はヒトの新生児の3分の1の大きさしかない。
チンパンジーの幼子は、母親が死ぬと孤立無援の状態に陥ってしまう。野生では、チンパンジーの出生時の平均余命はわずか15~19歳でしかない。しかし、性成熟まで生きのびると、そこからさらに平均で15~24年は生きる。野生チンパンジーが老衰で死ぬことは、ほとんどない。病気のため、またヒョウに襲われて死んでしまう。
読めば読むほど、チンパンジーの世界は人間そっくりなのです。
(2019年3月刊。2600円+税)

パスタぎらい

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ヤマザキ マリ 、 出版  新潮新書
私はパスタが大好きです。日曜日の昼食には、よく食べています。福岡空港でも、よく日替わりパスタを食べます。赤ワイン1杯とともにいただきます。
ところが、長くイタリアに住んでいた著者は、若いころ過剰に摂取したため、パスタに食欲をそそらなくなったといいます。悲しいことです。パスタの代わりにソバやソーメンを食べるとのこと。
著者がたまに食べるパスタはカルボナーラ(私の好物のひとつです)ではなく、また和製ナポリタン(私はこれも好きです)、納豆パスタ(私の大好物です)なのです。
イタリアのパンは、あまり美味しくない。日本のパンは、すこぶる美味しい。私もパンは好きなのですが、いかんせん腹持ちしないので、むしろコンビニのおにぎりを買ってしまいます。
この本では、著者も、そして日本に来たことのある海外の人に圧倒的に好まれているのは、なんとラーメンだというのです。これには驚きました。私はトンコツラーメンが好物なのですが、実は最近あまり食べていません。体重制限と健康管理を意識している身として、ラーメンはあまりにも身の毒というイメージが強すぎるからです。
それに反して、日本のおにぎりは、海外では、あまり受けがよくないようです。私は、ときに近くの小山にのぼりますが、そのときに見晴らしのよい頂上で食べるおにぎり弁当は最高です。おにぎりを包むノリの「独特の臭いを放つ海苔」がハードルを高くしているとのことです。これは食習慣の違いでしょうね。
日本人の舌が肥えているという例証として、著者があげたのはなんとポテトチップスです。私は久しく食べたことがありませんし、食べるつもりもありません。味覚と食感が徹底的に追及されて、世界最高だといいます。まあ、これは好みの問題でしょうね・・・。
海外では卵かけご飯を食べたら、すぐに病院送り、医師は、「生卵を食べたって・・・、死にたかったのかい?」と言う。生卵にはサルモネラ菌が多く生息している。生卵のもたらす食中毒の苦しみは半端なものではない・・・。
博多駅にある「卵かけご飯」の店は、入ったことがありませんが、いつ前を通っても満席です。
著者のマンガは読んでいないのですが、先にこのコーナーでも紹介しました『ヴィオラ母さん』は絶賛します。
軽く読める世界の美味しい食文化紹介の本です。
(2019年5月刊。740円+税)

東京は遠かった、改めて読む松本清張

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 川本 三郎 、 出版  毎日新聞出版
松本清張の本は、それなりに読みました。読み終えたとき、心の底に黒々としたオリのようなものがたまっているのを感じる本が多かったという印象です。
小倉にいた松本清張は東京(中央)の文壇から認められたいという思いを強くもっていました。東京と地方の格差の問題が松本清張の本に通底しています。
『Dの複合』を読むときには、かたわらに日本地図を置き、しばしばそれを開いて、地名、場所を確認しながら読むことになる。それは主人公たちと一緒に旅することでもある。旅といっても、にぎやかな観光地を訪ねる旅ではなく、旅先は、一般に広くは知られていない、地方の小さな町や村である。
松本清張にとって、東京は遠かった。東京は、いつかそこで作家として成功する約束の地。晴れ舞台であり、同時に地方在住者からみて、強者の威圧的な中央だった。
松本清張は、東京をつねに地方からの視線で描く。弱者が強者を見る目で東京をとらえる。中央の権威、権力によって低く見られている地方の悲しみ、憎しみ、怒り、そして他方での憧れといった感情が複雑に交差しあう。
東京(中央)に出たい。東京の人間に認められたい。それによって地元の人間たちを見返してやりたい。松本清張の作品には、しばしば東京への強い思いをもった人間が登場する。ときに、その思いは、歪んで異様なものになることもある。
男の趣味がカメラと旅行。写真帖を見せてもらうと、東尋坊、永平寺、下呂、蒲郡、城崎、琵琶湖、奈良、串本など・・・、名勝地ばかり。普通、孤独好きで一人旅する人間は、こんな観光地には行かない。これらの旅は、女が連れ添っていたに違いない・・・。なるほど、ですね。
松本清張は、酒をたしまなかった。それでも、文壇バーには通っていたようです。作家仲間との交際は続けていたのでした。
松本清張には、「追いつめられた作家もの」と呼びたい作品がいくつかある。原稿が書けなくなった作家が盗作する。代作を頼む。かつては人気のあった作家が零落して殺人を犯す・・・。
松本清張にしても、
「アイデアが浮かばない」
「書けない」
などの悩みは決して他人事ではなかっただろう。
松本清張は古本屋をよく利用した。歴史小説を書く人間として当然のこと・・・。
松本清張の本をもう一度読んでみたいと思ったことでした。
(2019年3月刊。1800円+税)

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