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心の進化を語ろう

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 松沢 哲郎 、 出版 岩波書店
哲学には2つの使命がある。一に、この世界はどうなっているかを知ること。その二は、人間はいかにふるまうべきかを考えること。
なるほど、それだったら、私も立派な哲学の徒ですかしらん…。
人間以外の霊長類でも死児を持ち運ぶものは少なくない。高崎山のニホンザル6000例のうち、157例の死児の運搬が観察されている。それも、生まれてすぐに死んだ子は持ち運ばない。生まれて1日でも赤ん坊が母親にしがみついていると、10例に1例の割合で、母親は死児を持ち運ぶ。
これも死を弔う行動と言えるのか…。
チンパンジーのアイは女性だが、昔から気が強い。幼なじみのアキラ(男性)はそれをよく知っていて、アイにはなかなか逆らえない。へたにケンカをしようものなら、アイがほかの女性たちを引きつれて逆襲してくる。
ゴリラはケンカしない。大騒ぎもしない。道具をつくらない。使わない。狩猟をしない。食物分配がない。群れ間での殺しあいもない。人間の狂気に近いものをゴリラからは感じとれなかった。
ボノボは女性優位で、ほとんど道具を使わず、隣りあう群れは平和共存している。
ボノボは、チンパンジーと違って、メスが集団の中心にいる。
ボノボの果実分配は、豊かな森で、独力でも手に入れられる果実をあえて分けあって食べている。
一般的にチンパンジーには、「おばあさん」という役割がない。死ぬまで自分の子どもを産み、育て続ける。
チンパンジーでは見張り役をするのは、おとなの男性であることが多い。
チンパンジーは好奇心旺盛だが、とても用心深い。
ボノボは、面と向きあうと、じっと目を見返してくれる。これに対して、チンパンジーは視線をあわせようとはしない。
チンパンジーには、複数の男性と複数の女性から成る共同体はあるが、家族はない。数十からときに200ほど近い個体が集まっているが、特定の男女の結びつきはなく、「乱婚」と形容される。
ゴリラには、シルバーバックと呼ばれ大人の男性がいて、複数の女性と子どもたちがいる。しかし、家族だけであって、それを束ねた共同体は何もない。
オランウータンは、母子の結びつきしかない。
人間は、親だけでなく、複数の大人が共同して手のかかる子どもたちを育てている、
人間とは何者かを考えるときに必須の本だと思います。京都学派は、この分野では世界をリードしてがんばっています。本書は、いわば百科全書のような内容になっています。
(2019年12月刊。2600円+税)

みんなの家

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 光嶋 裕介 、 出版 ちくま文庫
建築家1年生の著者が内田樹邸である「凱風館」を設計し、完成させるに至った過程を語った文庫本です。
著者はアメリカ生まれで、早稲田大学の理工学部を卒業したあと、ドイツの建築設計事務所で働き、そのあと日本に帰国しました。
施主である内田樹は、言わずと知れた大学教授、哲学者そして合気道の武道家でもあります。この本を読んで麻雀愛好家でもあることを初めて知りました。
駅近くの85坪の土地に、自宅兼合気道の道場(80畳)をつくる。道場は、能楽師として活動している配偶者のため、能の敷き舞台兼用にしてほしい。また、宴会や麻雀もできるセミパブリックな場所がほしい。1人でこもる個室としての書斎は不要。
いやあ、いろいろ大変な注文がついていますね…。
これを著者は1か月間かけて考えて、3つの案をつくったのでした。3つの模型をつくって東京から神戸へ運んだのです。結論として、3案のいいところを折衷して進めていくことになりました。
建築プランが決まったら、次は材木選び。京都の美山町の杉の木を使うのです。小林直人さんが丹精こめて育てた杉の木です。
そして、次には施工する工務店選び。岐阜県加子母(かしも)村を本拠とする、木造建築の技術に定評のある中島工務店を選びました。
中島工務店は山林も管理していて、その隣には「木曽ヒノキ備林」がある。伊勢神宮の式年遷宮のときに伐り出される樹齢400年の檜を育てている森だ。
内田邸をつくったのは、岩木棟梁(とうりょう)のもと、常時4人の大工がいた。
瓦は淡路島で焼かれたもの。山田修二さんの焼いた瓦。
カーテンは、テキスタイル・デザイナーの安東陽子さん。
道場の床下にはオルガヘキサを敷きつめた。備長炭の4倍の吸収力があり、水分、悪臭そして電磁波まで吸収するという。
さらに、エネファーム。家庭用燃料電池コージェネレーションシステム。都市ガスなどから燃料の水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電する。その発電の際に生まれる熱で給湯もまかなう、配電ロスの少ない合理的システム。
「凱風館」は9ヶ月かけて無事に竣工。2011年11月12日のオープンハウスには、なんと400人以上が参加したのでした。
いやはや、こうやってプロの職人に建てられた家に住んでみたいものです。まあ、それは無理としても、見学くらいはしてみたいです…。
(2020年3月刊。960円+税)

やまと尼寺精進日記

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 NHK「やまと尼寺精進日記」制作班 、 出版 NHK出版
ただ今、NHKのEテレで放映中らしいですね。この本を読むまで知りませんでした。なにしろ、日頃はテレビをまったく見ないものですから…。
奈良の山深いお寺に暮らす2人の尼さん、お手伝いの女性1人の計3人。尼さんは、さすがに2人ともツルツル頭です。その笑顔の写真からは、愉快な笑い声まで聞こえてきそうなほど…。
奈良の山奥にひっそり3人の女性が住んでいるかと思うと、実は、いろんな人がこの山寺(尼寺)にやって来て、同時にいろんなものを持ち込みます。
そして、この山寺の庭や近くの山で四季折々に採れるものが、バラエティーに富んだ、美事においしい料理に生まれ変わります。
この料理の写真がまた実に素晴らしいのです。ぜひぜひ一度は味わってみたいと思わせる料理のオンパレード。こんな美味しそうな料理を自分たちでつくって食べていれば、そりゃあ自然に笑顔になるでしょうよ…と、いらぬやっかみまで生まれてきます。
住職は料理の達人。食べることへの情熱は誰よりも強く、どんな食材もおいしく調理してしまう。そばにいたら、食いっぱぐれのしようがない人。
わが家でも先月、梅の実がザル2杯分とれましたが、この山寺では採れた梅の実で、梅酒、梅味噌、梅干しの天ぷら、梅の甘露煮といろいろに味わいます。すごーい…。
秋のギンナンも、天ぷら、ギンナンご飯、かぼちゃ団子の上のアクセントに…。
冬には薪ストーブで焼くピザ。具材は、コーンに干しトマト、干しかぼちゃ、シイタケの煮物、じゃこピーマン、自家製チーズ。いやはや、なんとも美味しそうですよね…。
もう放送開始から2年になるそうですが、楽しそうな尼寺精進日記を私も近いうちに見せてもらうことにします。この本は、写真集としても人物も料理もピカピカ輝いていて、見事な出来映えです。
(2019年11月刊。1600円+税)

先生も大変なんです

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 江澤 隆輔 、 出版 岩波書店
全国一斉休校。あれって、本当に必要だったんですか。いったい、どんな状況になれば、そうするのか、その基準は設定されていたのでしょうか。専門家の意見も十分きかないまま、首相官邸のなかの「情報」でアベ首相が独断したのではありませんか…。そして、「3蜜」を避けると言いながら、学校を再開したら40人学級に戻るって、何なんですか。せめて20人以下学級にしたらどうなんですか。共産党は教員を10万人増やしたら実現できるし、1兆円かければ、可能だと発表してましたよね。イージスアショアだって1兆円近かったし、F35なんて、1兆円ではすみませんよ。辺野古も同じです。そっちを止めて、日本の子どもたちの将来のために使ったほうが、どれだけ日本全体にとって良いことか、あまりにも明らかではありませんか…。
この本は、小・中学校での教員経験のある著者が、学校での教員の労働の実際を語り明かしています。読めば読むほど、アベ政権はお金(みんな私たちの納めた貴重な税金です)の使い方が間違っていることを知らされ、怒りが全身にみなぎってきます。
日本の教員は、いま、歴史的にも世界的にも、かつてないほど忙しい状況に置かれている。教員の置かれている苦しい状況は、教員志望を減らしていて、それが現場で教育の質の低下を招いている。
教員志望の低下がひどいのは、なにより「維新の会」が牛耳る大阪に顕著です。「維新の会」は、マスコミ受けすることばかり大げさに言いたてて、教員と子どもをなおざりにしています。学校に成績をつけて競争させるなんて、気狂いじみています。まったくの間違いです。子どもたちが楽しく伸び伸び勉強できるようにしましょうよ…。
一般的な教員は、朝7時半までに学校に出てくる。
昼休みは休憩時間どころか子どもたちと談笑しながら様子を観察する、貴重な時間。
トイレを巡回し、日誌チェックを怠ることはできない。
学校は、一般企業では考えられない「常識」によって支えられている。
そもそも教員には「残業代」という概念がない。教員にとって、「労働時間」なるものは、あってないようなものにすぎない。ごく最近までタイムカードのある公立学校はほどんどなかった。
教員が多忙やストレスから精神疾患にかかって病気休職に至る人が年に5千人をこえている。
2011年から小学校で英語教育が始まった。私は英語の早期授業には反対します。英語より国語力をしっかり身につけるほうが先決です。
学校の大変な実態を教えてくれる本です。コロナ禍にある休校のあとです。焦ることなく、子どもたちがゆとりをもって伸び伸び勉強できるようにすることが求められています。
(2020年3月刊。1800円+税)

私が愛する世界

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ソニア・ソトマイヨール 、 出版 亜紀書房
アメリカ初のヒスパニック系女性で最高裁判事である著者が自分の半生を振り返った本です。
アメリカの連邦最高裁判所の判事って、たった9人しかいなくて、しかも終身制なんですね。著者は2009年にオバマ大統領から任命されました。
著者はプエルトリコ出身です。1954年生まれで、8歳のとき糖尿病と診断され、ずっと毎日インスリン注射を1本うってきました。ときに意識不明になることがあり、そのときはケーキか何か甘いものを補給しなくてはいけません。大変な生活ですよね。
父親はアルコール依存症となり、42歳の若さで死亡。著者が9歳のときのこと。
著者はテレビの『ペリー・メイスン』をみて、弁護士を志した。しかし、同時に判事のほうが常識的な仕事だと思った。
弁護士(または判事)になろうとするのなら、説得力ある、確信をもって言い方を学ばなければならないことに気がついた。
たしかに、自信のない言い方では説得できませんよね…。
著者はよほど頭がいいようです。ニューヨーク州の高校在学中に統一試験(リージェント試験)で100点満点をとり、教師からカンニングしたのではないかと疑われたほどです。
プエルトリコ人に手を使わずに話せだなんて、鳥に飛ぶなというようなものだ。
こんなたとえが出てきます。身ぶり手ぶりつきで話すのがプエルトリコ人なのですね、きっと…。
何かを論証しようとするときには、自分の感情をわきまえるのと同じく、聞き手の感情も考慮する必要がある。要するに、聞いてくれる耳をもってくれないと会話は成り立たないのです。
ハーバード大学でもイエール大学でもなく、著者はプリンストン大学に入りました。すごいですね…。そして、ロースクールはイェール大学に入ります。学生が180人しかいない少人数制が気にいったようです。
そして、地区検事助手を振り出しに、検察官となり、弁護士事務所に入り、ついに念願の連邦地裁判事になったのでした。検察官のときは、逮捕現場にも行っていたようです。
そのころの写真を見ると、バイタリティーあふれた顔つきで、正直いって怖いほどです。
著者は夢をあきらめない人。意思が強くて楽観主義者。物事の真相を見きわめる理性的なまなざしをもつ。
共和党に誘われたが、断って無党派のままでいた。そして、プエルトリコ人のための協会で活動もしたが、それが連邦裁判所の裁判官になるのに障害にならないようにしてくれる人脈があった。
決して自慢話のオンパレードではないのですが、あまりにも頭が良いからでしょうか、どれほどの努力をしたのか、そのやり方などをもっと語ってほしかった…、という思いが残りました。
さて、日本でも女性の最高裁判事は何人も出ています。大牟田の高校(北高)を出て九大から官僚になり最高裁判事になった人もいましたが、総じて日本の女性裁判官は印象が薄いですね。残念です。
(2019年10月刊。2600円+税)

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