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続・日本軍兵士

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 吉田 裕 、 出版 中公新書
 アジア・太平洋戦争の敗戦までに230万人の日本軍兵士が死亡した。その多くは戦闘による死ではなく、病気による死(戦病死)だった。また、大量の海没死(船舶の沈没による死)もあった。
 日本軍は直接戦闘に使われる兵器・装備、すなわち正面装備の整備・充実を最優先したため、兵站(へいたん)や情報、衛生医療、休養を著しく軽視した。
 腹が減っては、イクサは出来ない。日本軍は、こんな基本をすっかり忘れ、精神一到、何事が成らざらん。そればかりでした。まさしく単細胞そのもののトップ集団でした。
1941年、国家予算に占める軍事予算の割合は日本は75%、アメリカは47%だった。
 日本敗戦時、陸軍では全兵員の2.4%が将校、9.2%が下士官、88.4%が兵士。
 日清戦争のとき、全戦没者に占める戦病死者の割合は9割に近かった。ところが、日露戦争では、それが26%にまで低下した。これは伝染病による死者が激減し、凍傷も減少したことによる。軍事衛生・軍事医学の近代化の成果でもあった。
 ところが、日中戦争が始まった1941年には、戦病死者の割合が50%をこえた。1941年の主要疾病は、マラリアが第1位で3万5千人、次に脚気(かっけ)が5千人、第3位が結核の2千人。脚気が増えたのは、軍隊の給養が急速に悪化したことによる。栄養失調と同じ。
 日本敗戦後に亡くなった兵士が18万人もいる。戦場の栄養不足のため、克服されたはずの脚気が復活し、戦争栄養失調症が大流行した。
 日本軍は兵站を無視して、食料は現地調達主義をとっていた。中国軍は日本軍に何も渡さないようにして撤退していったので、戦場には食べるものがなかった。
 米が完全に主食になるのは意外に遅く、戦後の1950年代後半のこと。兵舎に入って主食の白米を食べられるのは、一般の兵士にとって大変魅力的なものだった。軍隊に入って、初めて白米を食べたという兵士も少なくなかった。これはこれは、意外でした…。
 1933(昭和8年)に入営した兵士の半数近くは、パン食の経験がなかった。なので、兵舎でパン食はなかなか普及しなかった。
日本は陸海軍とも歯科医療を軽視した。ところが、アメリカ陸軍には、第一次大戦前から歯科軍医がいた。第二次大戦中、1944年には、1万5千人もの歯科将校がいた。いやあ、これは違いますね。歯痛に悩む兵士が満足に戦えるはずはありません。私は「8020」を目ざして、年に2回、歯科検診を受けています。
 イギリス軍では、兵隊に月1回の歯科検診を義務づけていた。日本軍の立ち遅れは明らかです。
日本軍は、中国戦線で高級将校の戦死傷者が思いのほか多数にのぼった。宇垣一成はこの事実を知り、その原因が、部下の兵士が戦闘意欲に乏しいため将校が前に出ざるをえなくなったことによると嘆いている。
 日本兵は過労、ほとんど睡眠がとれず、老衰病のようにして死んでいった。また、精神病患者が増大した。
中国戦線に派遣された日本軍兵士は、その多くが家庭をもつ「中年兵士」だった。そして、彼らは戦争目的が不明確なまま、厳しい戦場の環境の下で、長期の従軍を余儀なくされると、自暴自棄で殺伐とした空気が生まれた。これが日本軍による戦争犯罪をつくる土壌の一つとなった。長期間の従軍の結果、軍紀の弛緩が目立ちはじめた。
身体検査規則が改正(緩和)されると、知的障害のある兵士が入営してきた。こうした兵士は、軍務に適応できずに、自殺したり逃亡したりする例が少なくなかった。
 日本軍の前線での救命治療の中心は止血であり、輸血はほとんど普及しなかった。
 たしかに、日本軍が輸血している光景というのは全然見たことがありません。この面でも遅れていたのですね…。
南方でもっとも恐るべきは敵よりもマラリヤである。栄養失調によって体力が衰えると、ダメージは大きかった。
 軍医の重要な仕事の一つは詐病(さびょう。インチキ病気)の摘発だった。いやあ、これはお互い、たまりませんよね。
日本陸軍の機械化・自動車は立ち遅れた。1936年の自動車生産台数は、日本が1万台なのに対して、アメリカは446万台、イギリス46万台、ドイツ27万台。これは圧倒的に負けてますね。トラックでみると、日本が1945年までの8年間で11万5千台なのに対して、アメリカは245万台と、ケタ違いに多い。
 日本軍兵士には、十分な軍靴も支えられなかった。中国人から掠奪した布製の靴や草履をはいていた。これに対してアメリカ軍は、軍靴を4回も改良している。そもそも日本軍兵士には、靴をはいた経験のある兵士は2割でしかなかった。
 こうやってみていくと、日本軍兵士がいかに劣悪な環境の下で戦わされていたのか、あまりに明らかで、これで勝てるはずがないと妙に確信させられました。
 日本軍なるものの実態を知るうえで、必須の本です。
(2025年2月刊。990円)

ロシアから見える世界

カテゴリー:ロシア

(霧山昴)
著者 駒木 明義 、 出版 朝日新書
 ロシアがウクライナに侵攻して始めた戦争が、3年たっても終わりません。
プーチン大統領は2000年からなので、首相の4年間も含めると、あのスターリンも超えている。そして5期目の今の任期は2030年まで。
プーチンは大統領選挙ではいつも圧勝しているが、テレビの候補者討論会に常に欠席していて、1回も参加したことがない。よほど自信がないのでしょうね…。
プーチンは、ピョートル大帝を崇拝してやまない。プーチンは若いころからピョートル大帝を崇拝していた。ウラジミール大帝と呼ばれることを夢想しているのではないか…。
プーチンを好きなのは年寄りばかり。若者、とくに20代は誰もプーチンを支持していない。でも、みんな自分の人生で手いっぱい。抵抗したら危険。牢屋に入れられ、すべてを失ってしまう。誰もそんな危険を冒したくはない。
 プーチンはウクライナを「非ナチ化」すると高言している。「非ナチ化」とは、ロシアに刃向かうことは許さないという意味。
プーチンは、レーニンをきわめて否定的に評価している。ウクライナはレーニンがつくり出した人工的な国家であり、レーニンが革命によって政権を奪取したから。
 国際刑事裁判所(ICC)はプーチンに対して逮捕状を出している。ロシアがウクライナから子どもたちを連れ去ったことが戦争犯罪だと断罪した。このICCの所長は、日本人女性の赤根智子裁判官。ロシア側は報復措置として、主任検察官と赤根所長を指名手配した。なので、赤根裁判官はロシアには入れません。
 ロシアの教育現場は、戦時体制に組み込まれている。「欧米の軍事支援が戦闘を長引かせ、犠牲者を増やしている」と、学校で子どもたちは教えられているのです。
ソ連時代の11月7日の革命記念日は廃止した。街頭に出る市民の抗議活動によって政権が倒れるというシナリオはプーチンは忌み嫌っている。
 これって、アメリカのトランプと同じですよね。トランプは自分の選挙もプーチンの助けを借りたという疑惑がありますが、まさしくアメリカの王様気取りです。この2人とも、つくづく嫌になってしまいます。
 この本を読んで怖いと思ったのは、ロシア市民の29%が核兵器が使われる可能性を現実のものとして受けとめていること、そして、核を使おうとしているのは、ロシアではなく、ウクライナだというロシア政府のクロロパガンダがロシア市民にしっかり浸透しているという事実です。
 「日本に原発を落としたのはアメリカではなく、連合国だと日本の教科書に書かれている。教科書に事実を書けないほど、日本は抑えつけられている」
 こんなことをプーチンは高言したそうです。いやはや信じられません。そして、日本人は原爆を落としたのがアメリカだとは知らない。こんな俗説がロシアで広く信じられている。とんでもないデマがロシアに広がり、定着しているようです。
 「ロシア人を獣にしたのはテレビだ。テレビはウクライナを敵として描き、人々を、ウクライナを憎む獣にするために働きかけた」
 これは、ノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家の言葉。ところが、わが日本もロシアの現況を笑うわけにはいきませんよね。大軍拡予算が着々と進行していって、全国各地に弾薬庫が大拡充されるなかで、その問題点を具体的に報道することもなく、ただ目先の「手取りをふやす」ことにだけ焦点をあてて報道するという、目くらまし戦法を日本の主要マスメディアはとっています。プーチンの威光にひれ伏すロシアのマスメディアと、どれほどの違いがあるのでしょうか…。
 でも、まだ日本は、こんなことを書く自由があるだけでいいじゃないか。そんな「反論」も聞こえてきそうです。でも、でも…。
(2024年9月刊。990円)

立ち退かされるのは誰か?

カテゴリー:イギリス

(霧山昴)
著者 山本 薫子 、 出版 慶応義塾大学出版会
 ジェントリフィケーションと脅かされるコミュニティ、こんなサブタイトルのついた本です。いったい、ジェントリフィケーションって何…。
 ジェントリフィケーションとは、市中心部の労働者住宅地域・低所得地域が再開発され、高級住宅や中流層(ミドルクラス)以上の人々を対象とする商業施設が新たに開業することで、住民の入れ替わりが起き、より高所得の住民が増加する現象のこと。
 1980年以降、都市のグローバル化、経済のサービス化、情報化が進んだことで、都市の社会構造に変化が生じた。再開発されたインナーエリアで何が起きたかというと、地価の上昇に加えて、老朽化した建物の取り壊しや改装、新しい商業施設やマンション(集合住宅)の建設、中流層向けの小売店や飲食店が増加した。地域が「高級化」したのだ。
ジェントリフィケーションについて当初は好意的に評価された。それが2010年代半ばに一変した。ジェントリフィケーションの負の側面に警鐘が鳴らされた。
2018年、ジェントリフィケーションについて、地域にマイナスの影響を及ぼしかねない「高級化」であり、地域の特性や文化が失われる、時代遅れの開発主義・拡張主義として批判されるようになった。
 ジェントリフィケーションという語を創出したのは、ドイツ生まれのルース・グラスという女性学者。イギリスに渡って、イギリス人と結婚し、社会学者として、活動した。
 グラスは、第二次大戦後のロンドンの都市化を調査・研究し、人々にとって住宅の持つ意味の変化に気がついた。ロンドン市内の老朽化した民間賃貸住宅(下宿)の住人を追い出すために法外な家賃を要求し、追い出しに成功すると、より不安定的な立場に置かれているアフリカや西インド諸島出身の移民に部屋を貸し、彼らがほかに行き場がないことを承知の上で高額の家賃を徴収するという悪質な家主がいた。すなわち、高額な家賃と、それに見合わない不十分な住環境にある民間賃貸住宅の存在が明るみに出た。
グラスは、人種問題(非白人問題)というのは、実は「白人問題」なのだと看破した。
 イギリス人は国内に差別も偏見もないというが、それは、イギリス人が自らのもつ偏見や外国人嫌いにまったく気がついていない、自覚がないというだけのこと。
 イギリスでは、偏見が必ずしも差別とはみなされないという傾向がある。
 当初、ジェントリフィケーションは、地域の中流化を意味していた。しかし、今や、都市が直面しているのは経済的・社会的な衰退。買い物客の減少、店舗の撤退、空き店舗・空き家の増加…。
 1990年代以降、横浜の寿町では、高齢者・障がい者・生活保護受給者という福祉ニーズの高い住民の増加が著しい。寿町の高齢化率は52.8%(2023年)で、全国平均(29.1%)を大きく上回っている。寿町は、今ではホームレスが暮らせない町となっている。
 寿町では、地域福祉施策が重点化され、福祉機能が拡充されていった裏面として、かつては町内にいるのが当たり前だったホームレスが暮らせない町となった。
日本ではカナダほど住宅価格が高騰しておらず、また住民の階層的な入れ替わりも顕在化していない。
 なるほど、そうかもしれないな…。そう思いました。
 かつてはホームレスが駅周辺に普通に見かけていましたが、今やほとんど見かけません。それでもホームレスの人々は今もいるとのこと。いったい、どこで、どうやって生活しているのでしょうか…。その人たちの生活実態を知らせる報道や本が少ないという気がしてなりません。
(2024年12月刊。2700円+税)

継体大王と地方豪族

カテゴリー:日本史(古代)

(霧山昴)
著者 若狭 徹・埼玉県さきたま史跡の博物館 、 出版 吉川弘文館
 継体大王とは不思議な存在です。「万世一系の天皇」という神話を疑わせる存在でもあります。
 このころ、まだ天皇とは呼ばれず、大王でした。有力豪族集団のなかで、それらに支えられつつも、頭ひとつ飛び抜けた存在だったのです。私はまだ行っていませんが、このさきたま史跡には、ぜひ一度現地に行ってみたいと思っています。埼玉県行田(ぎょうだ)市にある有名な古墳群です。ここの稲荷山古墳からは文字を刻んだ鉄剣が発見されましたが、そこに「ワカタケル大王」という雄略天皇の名前が刻まれていたのでした。
 そして、最大の古墳である二子山(ふたごやま)古墳はレーダン調査によって、継体大王のころにつくられたことが判明したのです。
 継体大王の当時といえば、八女市にある全長132メートルの岩戸山古墳が有名です。ここは、筑紫君(ちくしのきみ)一族の本拠地であり、熊本県南部の八代地域を地盤とする火(肥)君(ひのきみ)一族とともに大和政権に抗して、磐井(いわい)の乱を起こしましたが、あえなく敗れてしまいました。でも、子孫が根絶やしされたのではないようです。
 磐井は、北部九州の有力豪族であったが、王権に反発して新羅(しらぎ)と謀(はか)り、朝鮮半島との交易を担う外港を封鎖した。同じく北部九州の火君とも連合して、新羅征討軍を率いた近江(おろみ)毛野臣(けなのおみ)を阻んだ。
 また、このとき胸肩(むなかた)君一族は、筑紫君一族とは距離を置いたそうです。
 そして、継体大王が死んでまもなく、武蔵国造である笠原直(かさはらのあたえ)一族で反乱が起きたのでした。一族内部で、国造の地位をめぐる抗争が勃発したのです。
 継体大王は5世紀的な手続きにのっとって即位した5世紀的な大王。その前の倭の五王と本質は変わらない。
 政権継承の安定化のため、継体大王は初めて大兄(おおえ)制を敷いた。これは、王位継承者を事前に指定する制度。
継体大王の墓と推定される奈良の今城塚(いましろつか)古墳には、埴輪(はにわ)が大量に樹立されていたとのこと。内側と外側に二重に円筒埴輪列があって、墳丘に2000本、内堤に4000本、あわせて6000本もの円筒埴輪が樹立されたとみられている。しかも、大型品は高さが80~90センチ、超大型品となると、高さ130センチというのです。数といい、高さといい、すごいです。そして、人物から家や鳥や動物など、レパートリーもさまざま。人物埴輪は全身像というのも、すごいです。
継体大王は、地方の有力豪族たちに支えられていたというのを初めて認識しました。ところが、九州の磐井も、武装国造も反乱したのです。結局、どちらも押さえ込むことが出来て、天皇(大王)制は続いていったのでした。
 継体大王のころの日本の状況をさらに深く認識できました。
(2025年2月刊。2300円+税)
 日曜日、庭に出ると、なんとジャーマンアイリスが今にも咲きそうで驚きました。ああ、もう5月が近づいていると感じました。青紫色の華麗な花です。アイリスの黄色い花も咲いています。チューリップはまだ咲いています。今はピンクの花が優勢です。スノードロップの白い花の近くにシャガの白い花びらも見えています。足もとに土筆(つくし)を見つけました。
 夕方6時半まで明るいので、がんばって庭の手入れをしました。

どこからお話ししましょうか

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 柳家 小三治 、 出版 岩波書店
 このごろ落語を聴くことはちっともありませんが、落語はとても好きです。尊敬する山田洋次監督も子どものとき落語大全書を読みふけっていたそうです。映画「男はつらいよ」は落語のペーソスをベースにした展開ですよね。万が一、目が悪くなって本が読めなくなったら、オーディオブックスで落語を聴くつもりです。心をほっこりさせ、豊かな気分に浸ることができるからです。
 落語協会の会長をつとめ人間国宝にもなった著者は40代のころはオートバイに乗って北海道を周遊していたとのこと。また、クラシック音楽を好むそうです。忘れられない映画として「バベットの晩餐(ばんさん)会」が紹介されているのには、我が意を得たりと思いました。私は映画館でこの映画を観ましたし、本も買って読みました。すばらしい映画です。観ていない人はぜひDVDを借りて観て下さい。
人間を理解できなきゃ、落語はできない。落語は、人生の、社会の縮図ですから。
 著者は落語のせりふがなかなか覚えられないそうです。言葉で覚えるというより、了見で覚えていく。登場人物の気持ちになって、その人の発言として覚える。登場人物の気持ちに、すっかり沿えないと、せりふは出てこない。むなしいせりふは言えない。せりふが、ただなま覚えになっちゃったら、それは私としては言えない。せりふを覚えるってことは、私にとって至難のわざ。名人でも、そうなんですね…。
 うまくやろうとしない。でも、それがとても難しい。下手なまんまでいいのかっていうと、そうじゃない。
人間が分かんなきゃ、落語にならない。
落語の面白さは、歌とか声帯模写とは違って、我慢がいる。我慢しながら、歯を食いしばりながら、頑張る。
 落語をくり返しやっていると、慣れて、飽きてきます。それが表に出ると、お客さんもつまらなくなっちゃう。そこで、落語を面白くやるコツ。師匠の柳家小さんは、初めて聞くお客さんにしゃべるつもりで落語をやれと言った。客もよく知ってる。はなし手もよく知ってる。だけど、噺(はなし)の中に出てくる登場人物は、この先どうなるのか、何も知らない。そう気がつくと勇気が出てくる。そう思ってやると、いつもやってる噺ではなくなる、なぞることをしなくなる。しゃべるっていうより、その人にまずなるというわけです。なーるほど、ですね。
 著者は高校生のとき、昼休みにクラスで独演会をやっていたそうです。お弁当はその前、3時間目の休みのときに済ましておきました。クラスのみんなは弁当を食べながらゲラゲラ笑っていたとのこと。さすが、すごいですね。
 そして、高校3年生のときは、ラジオの「しろうと寄席」に出て、15週、勝ち抜いたそうです。いやあ、たいしたものです。さすが、です。
世の中が進んでくればくるほど、人間の本来のおろかしさバカバカしさに気づかされたとき、人はみんな心底、腹がよじれるほど笑いたがるもの…。
 客を飽き飽きさせてはいけない。いくら面白くても…。最初から盛り上げてしまうと、自分もくたびれてくるし、客もくたびれる。そりゃあ、まずい。ふむふむ、なるほど、なるほど。
 落語っていうシンプル芸は、いろんなものを極力おさえて、お客さんを感じさせ、誘導していって、最後にほっと安堵(あんど)感を感じさせる。これは、他の芸能にはないもの。
 いやはや、さすがは人間国宝になるだけの人の言葉です。腹にズシンと響きました。
(2019年12月刊。1650円)

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