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「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 グレゴリー・J・グバー 、 出版 ダイヤモンド社
 猫は高いところから落ちると、最初にどんな姿勢であっても、必ず、足から着地するという驚きの能力をもっている。
 この本は、超一流の物理学者たちが、この「ネコひねり問題」を理論的に解明し、説明しようとした苦闘の歴史を解説しています。
 なので、その理論のところは、とても難しくて、正直言って私にはよく分かりませんでした。
 それでも、長い尾がなくても、目隠しされていても、そして宇宙(無重力)空間でも無事に着地できるという猫の能力には、改めて驚くばかりです。
 しかも、猫は高層ビルから落下したときにも、意外や意外、ほとんどケガせずに着地するというのです。それも9階より高いほうが猫はケガしないという、私たちの常識に反する事実があるのです。
 信じられません。その理由の一つは、猫の体重が人間よりはるかに軽いからです。
 猫は高いところから落下するとき、完全に無重量状態にある。なので、「加速」を感じることはない。しかし、終端速度に達すると、通常の重さを感じて、衝突に備える。
 32階の高さからコンクリートの地面に落ちた猫は、軽度の気胸と歯が1本欠けただけですんだ。いやあ、まったく信じられません…。
 イスラムの世界では、猫が西洋よりも、はるかに敬意をもって扱われている。それは預言者モハメッド(ムハンマド)が猫を愛したことにもとづく。
 いずれにせよ、猫の身体が想像以上に柔軟であることに関連していることは確実です。
 世の中には、本当に不思議なことが山ほど、次から次に出てくるものなんですね…。だからこそ、この世は果てしなく面白いのですが…。
(2022年5月刊。税込1980円)

進化の謎をとく発生学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 田村 宏冶 、  出版 岩波ジュニア新書
 エンハンサーという聞いたことのないコトバが登場してきます。
 進化しているのは形づくりの仕組みだ。
 動物の特徴は、エサをとること。それは、細胞がエサを必要としているから。
 タンパク質は、ヒト(人間)の体の組成成分としては、水(17%)に次いで多く、全体重の16%を占めている。ヒトの体はタンパク質でできているどころか、タンパク質によって作られる。
 エンハンサーは、ある遺伝子が脳で発現したり、心臓で発現したり、あるいは筋肉で発現するのに使われる配列。
 ゲノムは数万個以上になるだろうエンハンサー配列がちりばめられていて、その組み合わせで2万5千種類の遺伝子がどの細胞で、いつ、どれくらい機能するかが決められている。
 ヒトでは、200種類に分化した細胞が、さまざまな機能をもつことによって、ひとつの生命体として統合された運動をしている。遺伝子は2万5千種類しかないので、200種類、37兆個から成るヒト1個体分をつくり出すためには、遺伝子をあちこちで使いまわす必要がある。遺伝子の時空間特異的な発現を可能にするのがエンハンサーだ。
 エンハンサーの働きによって、遺伝子は、いつ、どこで発現して、どれくらいタンパク質をつくのか、制御される。 すなわち、受精卵からゲノム情報をもとに発生する。
 鳥の先祖は恐竜。そして、現生の動物で恐竜に一番近いのは、ワニ。恐竜のゲノムは不明。 化石のなかにDNAや塩基はほとんど残っていない。「ほとんど」というのは、少しは残っているということなのでしょうか…。
 魚のカレイはヒラメに近い仲間。ヒラメは成魚になる過程で右眼が左に移動し、左半身にだけ色がついて、左を上に向けて泳ぐ。カレイは逆に、すべて右に動き、右を上にして生活する。 例外もあるが、ひだりヒラメにみぎカレイと覚える。
 世の中、ホント、知らないことだらけですね…。この本は、とてもジュニア向けだとは思えません。
(2022年3月刊。税込902円)

「小倉寛太郎さんに聞く」

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 小倉 寛太郎 、 出版 全日本民医連共済組合
 『沈まぬ太陽』(山崎豊子。新潮社)の主人公である恩地元(はじめ)のモデルである小倉(おぐら)寛太郎(ひろたろう)氏が今から20年以上も前、2000年ころに話したものをテープ起こしした、40頁ほどの小冊子です。
書庫を断捨離しつつ整理していたら、ひょっこり出てきました。『沈まぬ太陽』は本当に傑作です。いかなる苦難・困難にも耐えて、不屈にがんばり続ける主人公の恩地元には、大いに励まされます。まだ読んでいない人は、ぜひぜひ、私から騙されたと思って、明日からでも読んでみてください。決して後悔することはないと断言します。
 私は第1巻を1999年8月28日に読了し、完結編の第5巻を9月15日に読み終えました。速読をモットーとする私が5冊を読むのに珍しく2週間以上もかけたのは、あまりに素晴らしく、泣けてきて、読みすすめるほどに胸が熱くなるので、読み飛ばすなんて、もったいなくて出来なかったからです。それは今でもよく覚えています(少し前に読んだ、アメリカの本『ザリガニの鳴くところ』もそうでした・・・)。
 小倉さんとは、私も一度だけ会って挨拶させていただきました。大阪の石川元也弁護士の同級生だというので、日弁連会館2階「クレオ」でのパーティーのときでした。いかにも古武士然とした風格を感じました。
 「私も辞めたくなるときがあった。でも、私が辞めると喜ぶ奴がいるし、反対に悲しむ者がいる。そして、私が喜ばしたくない奴が喜び、悲しませたくない者が悲しむのだったら、やはり辞めないほうがいい」
 「子どもに知られて困るようなこと、子どもに見られて困るようなことはしたくないと思った」
 「何も特別のことはしていない。ただ、愚痴ってもしょうがない。こそこそ陰で恨んでもしょうがない。そして、どんな所へ行っても、胸はって、そこの土地のもとを糧(かて)にしていけばいい」
 「次の世代のためにも、自分があとで考えて後ろめたく思うような心の傷をもってはいけない」
 「余裕とユーモアと、ふてぶてしさとで生きていかなければいけない。とくに働く者は、ふてぶてしくなければいけない。転んでもただでは起きない。何か拾って、立ち上がったという生き方、そんな生き方を伸び伸びとしたい。いつも悲壮な顔をしていたら、ほかの人はついていきようがない」
 「人間に必要なのは冷静(クール)な頭脳と温かい心(ハート)だ」
 「JALに来るような東大卒はクズかキズものだ。頭がよくて人柄もいい。そんな人間はJALには来ない。JALには頭は良いけれど、人柄が良くないのが来ることが多い。一番困るのは、頭の悪さを人柄の悪さで補うという者。こんな人間が、けっこう世の中にいる」
 いやあ、さすが苦労した人のコトバは重みがありますよね。
 小倉さんはナイロビ支店長に飛ばされたあと、1976年に、戸川幸夫、田中光常、羽仁進、渥美清、小原英雄、増井光子、岩合光昭の諸氏らと「サバンナクラブ」を結成しています。また、8年間のナイロビ勤務を通じて、アフリカのケニアやウガンダ、タンザニアなどの国の首脳陣とも親密な交流をしたのでした。まことに偉大な民間交流です。
 20年以上も前の、わずか40冊ほどの小冊子ですが、ひととき私の心を温めてくれました。
 (2022年3月刊。非売品)

亜鉛の少年たち

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 スヴェートラーナ・アレクシエーヴィッチ 、 出版 岩波書店
 ソ連時代、アフガニスタンの戦場へ送られ幸いにも帰還できた将兵の証言集。
著者は『戦争は女の顔をしていない』の作家でもあります。苛酷すぎる戦争体験を聞きとり、活字にする作業をすすめていったわけですが、そのあまりの生々しさは反戦記録文学とみることもできます。なので、それへの反発から、誰かが黒幕となって、聞き取り対象となった兵士や遺族の母親から、自分はそんなことは言っていない、アフガンで戦った兵士の名誉を侵害したとして、ロシアで裁判になったのでした。
 著者が法廷で、あなたはあのとき私に本当にそう言ったのではありませんかと追及されると、彼らも全否定はできず、いや、そのつもりではなかったんだ、と話をそらそうとしたのです。裁判所は、結局、事実に反するとは認めなかったものの、一部は兵士の名誉を毀損しているとして、著者にいくらかの損害賠償を命じました。
 銃弾が人間の身体に撃ち込まれるときの音は、一度聞いたら忘れられないし、聞き違えようがない。叩きつけるような、湿った音だ。
 戦場にいる人間にとって、死の神秘なんかない。殺すってのは、ただ引き金を引くだけの行為だ。先に撃ったほうが生き残る。それが戦場の掟だ。
 オレたちは命令のとおりに撃った。命令のとおりに撃つよう教え込まれていた。ためらいは
なかった。子どもだって撃てた。男も女も年寄りも子どもも、みんな敵だった。オレたちは、たかだか18歳か20歳だった。他人が死ぬのには慣れたけど、自分が死ぬのは怖かった。
 アフガンでの友情なんて話だけは書かないでくれ。そんなものは存在しない。
 なぜ、相手(敵)を憎めたのか。それは簡単なこと。同じ釜の飯を食べた、身近にいた仲間が殺される。さっきまで、恋人や母親の話をしてくれていた仲間が全身、黒焦げになって倒れている。それで即座に、狂ったように撃ちまくることになる。
 罪の意識は感じていない。悪いのは自分たちを戦場に送り込んだ人間だ。
兵隊になって、オレはなにより味方に苦しめられた。古参兵たちのいじめだ。
「ブーツをなめろ」。全力でぶちのめされる。背骨が折れそうなくらいズタボロにされる。
ヘロインは文字とおり足元に転がっていた。でも、オレたちは大麻で満足していた。
 戦場で生き残るもうひとつの秘策は、なにも考えないこと。将校は自分では女や子どもを撃ちはしない。撃つのは自分たち兵士だ。しかし、命令するのは将校。なのに、兵士がみんな悪いって言うのはおかしいだろ・・・。兵士は命令に従っているだけなのに。
死体はさまざまだ。同じ死体はひとつとしてない。
兵士が死ぬのは、戦地に到着して最初の数ヶ月と、帰国する前の数ヶ月がいちばん多かった。最初のうちは好奇心が旺盛だからで、帰国前は警戒心が薄れてぼんやりしているからだ。
 著者を訴えた兵士や遺族は、「息子は殺されたというのに、それを金もうけのタネにしている」「裏切り者」「あなたは、私の息子を殺人犯に仕立てあげた」と強調した。
 死んだ兵士は亜鉛の棺に入って自宅に届けられる。一緒に届けられるのは、歯ブラシと水泳パンツの入った小さな黒いカバンひとつだけ。
 ソ連によるアフガン侵攻の戦争は1979年から1989年まで10年間も続いた。そして、ソ連は侵略者でしかなく、しかも勝利はしなかった。今のウクライナへのロシア(プーチン大統領)の侵略戦争と同じですよね。一刻も早く、ロシア軍が撤退して、ウクライナに平和が戻ることを願うばかりです。
(2022年6月刊。3520円)

聞くだけの総理、言うだけの知事

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 西谷 文和  、 出版 日本機関紙出版センター
 一見ソフトな「聞くだけの岸田」は、選挙前、あたかも新自由主義と決別するかのようなウソをついた。国民に寄りそうフリをして当面の選挙を乗り切り、あとですべてをホゴにする作戦に出たので、自民党は選挙で負けなかった。 
 「言うだけの吉村」は、分かりやすい。コロナ対策に「イソジンがいい」と明らかなウソを言ってのけた。これで塩野義製薬の株価が上がった。松井と吉村をトップとする維新の目玉はカジノと大阪万博。これには吉本興業と維新そして大阪財界がカジノ利権で結託している。吉本興業はカジノに隣接する劇場の運営利権を手に入れる予定。そして万博の大使(アンバサダー)に吉本の会長が、マネージャーのダウンタウンが就任。芸人が権力にすり寄っている。その代表格がダウンタウン。コロナによる死者は大阪が日本中で最悪。
 橋下徹は大手サラ金・アイフルの子会社の弁護士で、吉村知事はサラ金最大手だった武富士の弁護士だった。サラ金の顧問弁護士だから悪いということではありませんが、そんな仕事をしていたことは広く知られていいことです。
 大阪テレビ局の朝・夕のワイドショーに吉村知事がずっと出ている。大阪では「へつらい」がまかりとおっている。
 パソナの竹中平蔵は公共・切り崩し作戦。公務員を削って、パソナがもうかる仕組み。水道も鉄道も民営化して、パソナと竹中平蔵がもうかる仕組みをつくろうとしている。
 橋下徹の1回の講演料は200万円。年に何回もするので数千万円になっている。その原資は維新の会なので、結局のところ、私たちの税金。
維新の汚れた部分は報道されないので、なんとなく維新が改革者だと誤解している人が多い。でも、本当は違う。
 ロシアのウクライナ侵攻戦争で、1日2.5兆円の戦費がかかっている。それでもうけている人たちがいる。そんな人は戦争が早く終わるのを決して望んでいない。
 安倍首相はロシアのプーチン大統領と27回も会って、会食もし、3000億円を渡した。
 「ウラジーミル(プーチン大統領)、キミとボクは同じ未来を見ている。ゴールまで駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」。よくもまあ、こんなことを臆面もなく、言い切ったものですよね、聞いているほうが恥ずかしくて思わず赤面します。
 漫然とテレビも新聞も見ずに、好きなネット情報だけに頼っていると、維新を改革政党だなんて、とんでもない誤解をしてしまう。ホント、そうですよね。わずか160頁ほどの小冊子ですが、ぜひ多くの、とくに若い人に呼んでほしいと思いました。
(2022年6月刊。税込1430円)

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