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さらば外務省

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著者:天木直人、出版社:講談社
 団塊世代のキャリア外交官が、日本の対米追従外交を痛烈に批判した本。一部に同意できないところもあったが、多くに共感を覚えた。とくに同じ団塊世代のキャリア官僚のなかに、これだけ気骨のある人物がいたことに深い感銘を覚えた。著者は、国連決議なしの対イラク攻撃は何があっても阻止すべきだという次のような意見具申を外務大臣あてに公電で打った。日本の外交史上の汚点として残る小泉外交の誤りは、国際社会を無視して一方的にイラク攻撃に踏み切った米国を、胸を張って真っ先に支持したことである。
 外務省の米国崇拝、盲従の外交が果たして、長い目で見て本当に国益にかなうものなのかどうか。再考を迫られている時期にきているのは間違いない。にもかかわらず外務省の現実は、もはや「追従」を通り越して、米国は絶対視、神聖視される対象にさえなりつつある。著者のこの指摘に私はまったく同感だ。ところが、先日、聞いた話によると、駐フランス日本大使は訪仏した日本の国会議員に対して次のように発言したという。「フランスは外交の素人なので困る。外交の玄人だったら、アメリカに最後までは反対しないものだ。はじめのうち反対するそぶりを見せても、結局は賛成するのが外交のプロなんだ」。これに対して、その国会議員が「そうはいっても、フランスの国民の大半は政府を支持しているじゃないの?」と反問したところ、その大使は「素人は、素人を支持するものだ」と言い放ったという。本当に、いつまで日本はアメリカの言いなりになっているのだろうか・・・?

ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?

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著者:アレン・ネルソン、出版社:講談社
 子ども向きの本ですが、大人が読んでも感動します。
 ニューヨークのハーレム(スラム街)で生まれ育ち、海兵隊に入ってベトナム戦争に従軍し、そこでベトナム人を殺します。除隊後、ニューヨークに戻って、ホームレスの生活を送っているとき、同級生に出会って自分を取り戻すチャンスに恵まれます。小学校4年生に向かって、ベトナムでの自分の体験を心を開いて語ったのです。海兵隊員になるというのは、戦場で、おそれることなく、上官に言われるままに人を殺す人間になるということ。兵士は考えてはいけない。考えるのは上官の仕事。
 確実に命中させ、確実に敵の戦闘能力をうばい、死にいたらしめるためには下腹部を狙え。そこが人間のからだでもっとも大きな部分だから。下腹部には一発でなく、何発も弾丸を撃ちこむ。本当の戦争とは、ただひたすら歩くこと。自分の体重よりも重い(70キロ)荷物を背負い、熱帯のジャングルの中を気絶しそうになるまで歩くこと。戦い、殺し、生きのびるためには、死体を見て何かを感じてはならない。死体を探すには注意深く耳をすます。何百匹、何千匹のハエの羽音が聞こえてくる。臭覚に全神経を集中させる。死体特有の甘い臭いがただよっているのが分かる。ネルソンさんは、人間性を取り戻すために大変な年月をかけています。本当に戦争とは、むごいものです。

男はたのしく、たんこたろ弁護士

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著者:角胴立身、出版社:自費出版
 今も田川市で弁護士として元気に活躍しておられる角銅弁護士は、生粋の川筋男です。秋田鉱山専門学校(今の秋田大学鉱山学部)で学び、古河鉱業大峰鉱業所に働くようになりました。ところが、1957年(昭和32年)の労働争議に直面し、折から労働組合側の弁護士として応援に駆けつけた諫山博弁護士の颯爽とした姿に憧れて転身(転向ではありません)を決意したのです。まったく畑違いの分野に頭をつっこんだのですが、ダットサンと愛称される我妻栄の民法教科書を19回読み通して、わずか3年で合格を果たしました。たいした集中力です。1965年、憧れの諫山弁護士のもとで弁護士としてスタートし、やがて筑豊地域で活動するようになりました。炭鉱災害の事件やカネミ油症事件のほか、数多くの事件を手がけてこられました。
 その豪放磊落なお人柄が、この本にはよくあらわれて、とても楽しい本になっています。(ご注文は角銅法律事務所 0947−42−2266まで)。

韓国社会の歴史

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著者:韓永愚、出版社:明石書店
 1997年に初版が出て13回増刷、5万部も出版されたという最新の韓国通史。700頁もある本格的な歴史書でずしりと重い。継志述事、東道西器、旧本新参。背山臨水。法古主義、法古創新。いずれも、私には目新しい言葉だった。
 昔、高句麗など三国では、合議制(合座制)で政治が行われていた。日本では、そのようなことを聞いた覚えがない。もちろん庶民の参加はなく、貴族民主主義という限界はあった。九州では加耶人が、また畿内では百済系統の韓国人が天皇家を形成し、日本の歴史を主導していた。三国の人々が日本に帰化したというのは誤りである、と述べられている。後段については「帰化」という言葉が誤解を招きやすいということで、日本でも最近は「渡来」という用語に変わっている。日本の天皇家に韓国渡来の人々の血が入っていることは日本の学会でも定説となっている。たとえば、桓武天皇の母親は韓国渡来の人である。
 ただ、万葉集の作者の半分が韓国系だと紹介されているが、この点は私も確証がない。
 豊臣秀吉による朝鮮出兵を韓国では壬辰倭乱( 1592〜1598)という。これによって朝鮮半島の国土は荒廃し、人口は150万人にまで減ってしまった。捕虜数万人が長崎のポルトガル商人によってヨーロッパなどへ奴隷として売り渡されてもいる。韓国を勝利に導いた英雄である李舜臣について、「日本スパイの奸計による謀略のために罷免された」という記述があるのには驚かされた。本当にそんな事実があったのだろうか?
 日本が韓国を併合してしまった乙己条約について、皇帝の署名・捺印がなかったという指摘があり、無法な日本の手口を再認識させられて恥ずかしい。さらに、土地調査と称して無申告の土地を奪って日本の所有としていったが、このことによって人々が飢えに苦しみ、日本へ自主的に渡り、また強制連行につながっていった。日本の責任が重大であることを痛感する。
 それにしても、韓国人の朋党対立(たとえば西人と東人、北人と南人。変法開化派と衛正斥邪派)の激しさは日本人の私たちの想像を超えるものがあるように思えてならない。

大統領の秘密の娘

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著者:バーバラ・チェイス・リボウ、出版社:作品社
 トーマス・ジェファーソンといえば、アメリカの格調高い独立宣言を起草した大統領。そのジェファーソンには黒人女性に生ませた7人の子どもたちがいた。それは異人種混交として処罰されるべき行為だった。
 1997年にスティーヴン・スピルバーグ監督は『アミスタッド』という素晴らしい映画をつくった。奴隷運搬船アミスタッドで発生したアフリカ人たちの反乱を当時のアダムズ大統領がどう扱ったかを描いたもので、息づまる展開にドキドキさせられた。この映画について、この本の著者は、自分の本の盗作だとして訴えを起こした(後で和解が成立)。
 そこで、この本の内容を紹介したい。といっても、2段組みで600頁という大作。要するに、ジェファーソンの娘ハリエットがどのようにして白人世界へ逃亡し、そこで奴隷解放のためにいかに奮闘したかという展開なのだが、途中で南北戦争がはさまっているため、劇的な物語となっている。
 ジェファーソンは39歳で妻と死別し、独身を通したため、黒人女性と同棲することに今日の考えからは何の問題もないし、同じ町に住む人々にとっても公然の秘密だった。しかし、アメリカ大統領がそうであってよいのかというマスコミの攻撃には、それでは耐えられない。ジェファーソンは一言も弁明しなかったという。といっても、ジェファーソンは遺言で奴隷の身から全員を解放すると宣言できたはずなのに、それをしていない。自分のかかえていた借金の支払いのために、子どもを競売にかけることも認めた。えっ、あの独立宣言はいったいどこにいったの?
 いろいろ考えさせられる長編小説だった。

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