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白土三平論

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著者:四方田犬彦、出版社:作品社
 今から30年前の学生で白土三平の『カムイ伝』をまったく読んでいない人は、どれだけいただろうか・・・。少しあとに出てきた『ゴルゴ・サーティーン』も人気が高かったが、白土三平のマンガには、なにより香り高い思想性があった。しかし、人物描写は決してスマートではない。いかにも劇画調で、いささかの泥臭さがあった。でも、自然の風物がふんだんに登場してきて、一揆というのはこういう状況だったのか、と勉強になったものだ。
 私の生活していた学生寮では、白土三平が連載していた『ガロ』は、『ジャンプ』や『マガジン』などとは違った愛読者がいて、奪いあうようにしてまわして読んでいた。
 340頁もあるこの本で、私たちは白土三平について、その生いたちからたどることができる。父親が左翼美術家の岡本唐貴だということを知り、白土三平が信州の真田村に疎開していたことも分かる。白土三平の自然の風物は、この子ども時代の原体験をもとに発展させられたものだ。
 ところが、1960年代にあれほどもてはやされていた白土三平が、東大・安田講堂の落城、そして連合赤軍内部で「総括」と称する大量殺人がなされていたことが明らかになったあと、急転直下、見向きもされなくなってしまった。私も、そう言えば『ガロ』を読まなくなった。なんだか、いつまでも暗くて泥臭い雰囲気を敬遠してしまった。
 この本は、白土三平のマンガをところどころで紹介しながら、その思想的な変遷をふくめて、刻明にたどっている。白土三平を語るこの本を、単なるノスタルジーの本と切って捨てていいのか。私にも、いろいろ考えさせられるところがあった。

アメリカの正義の裏側

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著者:スコット・タイラー、出版社:平凡社
 元カナダ軍人のジャーナリストによるコソボ紛争の実情を現地レポートした本です。
 NATOの空爆は、150億ドルものミサイルや爆弾を投下したものの、78日間で、わずか13両の戦車を破壊しただけだった。アメリカのオルブライト国務長官は、1999年にミロシェヴィッチをヒトラーになぞらえて批判した。しかし、実は、その前の1996年には「平和の人」ともてはやしていた。
 ユーゴスラビアの内戦について、私は正直言って何が正しいのか、どこが間違っているのか、よく分かりません。でも、ひとつ言えることは、ジャーナリストがけたたましく叫びたてている「事実」は決してうのみにしてはいけないということです。セルビア人とアルバニア人の双方に過激派が存在している以上、単純にどちらかを全面的に悪いと決めつけるのは間違っているように思います。過去のいきさつを捨ててでも、なんとか平和共存していかなければならないからです。そうでないと、民族が違う、宗教が異なるというだけで殺しあい、その憎悪の連鎖は止まらないでしょう。
 アメリカのコソボ介入の本当の目的は、コソボにアメリカ軍の基地を手に入れることだったのではないか。訳者は、そのように解説しています。イラク復興で有名になったアメリカの建設会社ハリバートン社が、周囲14キロ、内部には300もの建物が立ち並ぶ3つの居住地区とショッピングセンター、教会、図書館、24時間営業のスポーツ施設、ヨーロッパ最高水準の病院まである基地をつくりあげました。このボンドスティールの基地は、中東からカスピ海までをカバーする最大規模の海外基地だというのです。
 アメリカによるマスコミ操作の怖さを、ここでも感じました。

けっこん、せんか

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著者:檀ふみ・阿川佐和子、出版社:文芸春秋
 この2人の女性は、ともに有名作家の娘であり、慶応大学卒業であると同時に50歳になろうとする(なった)今も、なぜか独身であるという共通性がある。
 2人とも知的であり、美人である。結婚願望がない(かった)わけでもない。しかし、本人たちが言うように男運には恵まれなかった。『ああ言えばこう食う』『ああ言えばこう嫁行く』『太ったんでないのッ!?』どれも読ませるし、笑わせる。
 女同士の絆はもろい。女友達が長続きしないと言われることを、まんざら的はずれではないと思っている。アガワサワコはこう言う。しかし、なぜかこの2人の女性はお互いを悪しざまに罵倒しあうのに、20年来の友人であり続け、その対談集というか共著が爆発的に売れて、お金を稼げるまでになっている。不思議な女性(ヒト)たちだ。
 女は、男のように、暇さえあれば引き出しのなかから「過去」という思い出を引っ張り出し、ウジウジぐずぐずロマンチックな気分に酔いしれるような動物では決してない。
 うーん、そうなのかー。トホホ、マイッタネ・・・。いつまでもウジウジしている私は泣けてくるばかりだ。オビに恋を語るとあるが、実は、そんなことはない。この本には結婚願望をめぐるバトルはあっても、恋は真面目に語られてなんかいない。家族は語られている。それぞれの父たる有名作家の素顔が描かれ、父と娘の関係は語られている。しかし、敬遠しているのは似ているからで、「結婚」相手も父親に似たような人になりがちだ(なってはいない)という。いつまで続くコンビなのか。おばあさんになっても続くかもしれないなと思わせる序文とあとがきではあった・・・。

フューチャー・イズ・ワイルド

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著者:ドゥーガル・ディクソン、出版社:ダイヤモンド社
 2億年後の地球がどうなっているか、それをビジュアルに示した本です。SF小説ではなく、学者がまじめに研究した成果です。今から2億年後の地球上には、たとえば森林地帯に巨大な陸生イカが暮らしている、というのです。とても信じられません。でも・・・。
 地球上の大量絶滅は、これまで5回起きた。目下、人類は6回目の大量絶滅が起こる原因を積み重ねている。これまでの5回の大量絶滅は気候の変化、火山活動、隕石の衝突などで起きた。しかし、6回目は、環境を破壊しつづけている人類によるものだ。
 この本では、人類は既に絶滅してしまったあとの地球が前提となっています。まず、地球全体が氷河期に入ります。だから寒さに強い動植物のみが生き残って活動します。1億年後には、海水面が上昇し、暖かくなり、海中生物が活躍しています。
 2億年後には、七大大陸が再び一つになって、第二パンゲアが誕生し、中央は広大な砂漠地帯です。このとき、体重8トンの陸生イカも出現するのです。うーん、今の私たちは化石のかけらも残っていないでしょう。だから、検証のしようのない話ではあります・・・。

筑後争乱記

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著者:河村哲夫、出版社:海鳥社
 筑後の戦国期で活躍した蒲池一族の興亡を中心として、戦国時代の筑後の争乱の過程が詳しく描かれています。蒲池一族は、大分の大友氏に服属しながら、「筑後15城、24頭の旗頭」と称されていました。
 キリスト教に改宗した大友宗麟の島津氏攻撃が惨敗に終わり、大友氏は滅亡するに至った。このとき、蒲池一族も出兵したが、全滅してしまった。
 龍造寺隆信は、蒲池一族を攻めたが、蒲池一族は柳川城にこもって徹底抗戦した。そこで、龍造寺隆信は謀略をつかった。蒲池鎮並の妻が自分の娘であることを利用して安心させ、猿楽一座とともに招待して、旅の途中で抹殺してしまった。
 その龍造寺隆信も、島津氏との島原における沖田畷(なわて)の戦いで、慢心から敗死させられた。やがて天下統一のなした秀吉の大軍が九州全土を席巻するようになり、蒲池一族も辛うじて命運を保つこととなった。
 やはり自分の生まれ育った郷土の歴史も少しは知っておくべきだと痛感しました。自分の住んでいる近くに今山城があったなんて、ちっとも知らなかったものですから・・・。

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