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炭鉱町に咲いた原貢野球

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著者:澤宮優、出版社:現代書館
 1965年8月。私の高校2年生の夏のことでした。甲子園に初出場した三池工業高校ナインが、あれよあれよというみるまに勝ちすすんで、決勝戦へ進出し、なんと優勝してしまったのです。当時の人口21万人を上まわる35万人が三池工ナインを歓迎すべく大牟田の街道を埋め尽くしました。
  実は、わが生家は、その三池工業高校のすぐ前にあり、小売酒屋を営んでいたのです。8月25日は、黒山の人だかりのため、まったく身動きとれない状況だったことしか記憶に残っていません。
  その優勝に至る試合の経過が刻明に再現されています。当時の選手たちにもインタビューして、何が起きたのか複眼的に後追いすることができます。ところどころに三池争議のことなども紹介されていて、大牟田市民にとっての意義も語られていますから、さらに認識が深まります。それにしても、圧倒的な熱気でした。あのような感動を味わうことはもはやできないことでしょう。

ベネズエラ革命

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ウーゴチャベス演説集、出版社:現代書館
 いまラテンアメリカは大きく変わりつつあることを実感します。コスタリカは軍隊をもたない国として有名です。ブラジルもアルゼンチンも、アメリカべったりの腐敗政権が倒されました。ベネズエラも、いまではキューバと親交を結ぶ国です。
  そのベネズエラで、軍部のクーデターによって倒されかかったチャベス大統領が、国民の自然発生的な大デモンストレーションによって見事によみがえり、政権を確保しなおしました。その当の本人による感動的な演説をまとめた本です。演説集ですから、本としてはくり返しがあります。それでも、聴衆とのかけあいがあるため、かえって人々の息吹にふれられる利点もあります。
  子どもに、本、知識、自由という望ましい武器を与えれば、ファシストのメッセージが子どもに浸透するのは一層困難になる。自覚、組織、動員は大衆の3つの基本的要素だ。
  大多数のメディア、とくに民間テレビ放送が民主主義の認める表現の自由の権利を乱暴に歪めてきた。虚報を流し続け、メディアを心理テロの道具に変えた。
  反動的なクーデター勢力の最大の拠りどころは、民間テレビ放映などのメディアだったという点は、日本人としても大いに自覚すべきところだと私は思いました。日本のメディアの現状は本当にひどいものがあると思います。視聴率競争のもとで、国民が真面目に考えないようにするための空疎で馬鹿げた番組ばかりだと言って過言ではないでしょう。マスコミ、とくにテレビは、もっと社会の現実を直視すべきことを国民に伝えてもいいと私は思います。アメリカ合衆国からの相対的自立を大切にしようとするベネズエラの動きに、日本は大いに学ぶべきだと痛感しました。

オトナ語の謎

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著者:糸井重里、出版社:ほぼ日ブックス
 私たちが日頃なにげなく使っているコトバも、よく考えてみると、不思議なものがたくさんあります。そして、どうしてこんなふうに言うのかなとギモンに思うコトバはもっと多いと思います。この本では、そんな大人の「あいまいな」コトバを紹介しています。
  なるはや・・・なるべくはやくの略。うーん、そっかー・・・。
  いまいま・・・まさにいま、最新の情報として・・・。
  ざっくり・・・だいたい。弁護士会でも、よく使います。
  テンパる・・・忙しくて余裕がなくなって近寄りがたくなっている状態。
  アジェンダ・・・会議における議題。
  スペック・・・性能、仕様。
  シナジー・・・相乗効果。
  マスト・・・非常な重要で外せないものごと。
  デフォルト・・・最初から決められているもの。常識。
  ブレイクスルー・・・マンネリ状態を打破すること。
  てっぺん・・・深夜0時。
  てれこ・・・逆になること。
  私も50年以上生きてきて、それなりに本を読んでいるのですが、それでも、こんなに知らないコトバがあるのかとガク然としました。

九十三齢春秋

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著者:北林谷榮、出版社:岩波書店
 明治44年(1911年)生まれの現役(?)女優です。最新作の映画『阿弥陀堂だより』には腰が抜けるほど感嘆しました。四季折々の風景に見事に溶けこみ、実に自然な、そしてナイーブなお婆さんでした。
  今から30年前、司法修習生のとき、銀座あたりの劇場へ青法協活動の一環として、クラスの仲間たちと『泰山木(たいざんぼく)の木の下で』を観劇に出かけました。舞台を見るのは久しぶり(初めてだったのかもしれません)が、北林谷榮の名演技は今も記憶に鮮明です。実に不思議な役者です。何の違和感もなく、観る者が安心して舞台のつくる世界に没入していくことができます。
  わずか200頁ほどの本ですが、JRの列車の中で一時間ほど一心不乱に読みふけりました。読み終わったとき、心に安らぎというか、ほんわかとしたぬくもりを感じることができました。本が読めるっていいな。自分で自分をほめてやりました。
  よく化けるというだけでは役者は無意味に近い。生まれてから今までの生活の全体が嗅ぎとられるような、根っこのようなところをつかまえて立たなければならないのだ。
  映画『にあんちゃん』にも出演しているらしいので、こんどビデオを捜し、借りて見てみようと思っています。
  劇で天草のお婆さんを演ずるときには、2日ほど前から天草へ出かけて、地元のおばちゃんたちの話にじっと耳をすましたり、その地の人々の生活を自分の身につける努力をするそうです。さすが芸のプロはちがうと、ほとほと感心しました。
  ちなみに、私の母は大正2年生まれですが、いまでは十分な会話は成り立たなくなってしまいました。残念です。

天下布武の城・安土城

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著者:木戸雅寿、出版社:新泉社
 織田信長による安土城の創建当時の姿が、発掘を通じて明らかにされていく過程が紹介されています。ご承知のとおり、安土城は明智光秀による本能寺の変で、わずか3年で焼滅してしまいました。安土城のあったところは安土山と呼ばれて海に囲まれていました。空から見た写真があります。戦後の干拓事業によって、今では、周囲の海は埋め立てられて水田になっています。
  大手道の石段には石仏も使われています。でも、これは信長が不信心であったというより、当時はよくあることで、無縁となった石仏は石材にすぎないとみられ、よく転用されていたようです。それにしても、大手道は幅6メートル、直線130メートルです。かなりの勾配があり、そこを登っていくわけですから、頭上にそびえたつ天守閣は、実に壮観だったでしょう。なにしろ天守閣の瓦には金箔が貼られ、キラキラ輝いていたのです。
  安土城には天皇を迎えるための建物も用意されており、そのための本丸御殿より上に信長の住む天守閣があったのです。安土城の様子を知ると、49歳で暗殺された信長が、いかにスケールの大きい人物であったか、より偲ぶことができます。
  この5月、安土城にのぼってきました。現地に立ってみると、信長の発想のスケールの大きさに圧倒されます。近くに「信長の館」があり、安土城の天守閣の5層と6層が想像復元されています。スペインの万博にも出品されたものです。その壮大さに気圧されて声が出ないほどでした。大いに一見の価値があります。
  『安土城』(小学館ウィークリーブック)は、CGも使って、ビジュアルに安土城の全体を復元しています。

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