法律相談センター検索 弁護士検索

セネカ、現代人への手紙

カテゴリー:未分類

著者:中野孝次、出版社:岩波書店
 2000年前の古代ローマに生きていた哲学者の言葉が、現代日本にも立派に通用することがよく分かります。
 金だの物だのは、真に自分のものではない。いくら惜しんでしがみついたところで、運命がその気になれば、いつでも取り戻してしまう。我々は、いわば一時それを預かっているだけだ。それに反し、時間は、これだけは完全に我々のもの、何人にも奪われない自分の所有物だ。よき人生を生きようと志すなら、まず時間をこそ惜しまねばならない。かき集め、大事に守って、おのれ一個の魂のためにのみ使用せよ。
 もっとも恥ずべきは、怠慢による喪失だ。人生の最大の部分は、悪事をしているあいだに、大部分は何もしないでいるあいだに、そして全人生は、どうでもいいことをしているあいだに、過ぎてしまっている。生きるときは、今このときしかないのだ。
 荷物を背負ったまま泳いでいて、助かった者は一人もいない。自分のこと、自分のすることについて、きちんとした計画を立てて行っている人は、ごくわずかしかいない。それ以外の人は、自分で歩いていくのではなく、運ばれていっているにすぎない。
 だから我々は、何をしたいかしっかり確かめ、それを堅持しなければならない。
 死が我々を追いかけ、生が逃げていく。我々は日々死んでいる。人生の一部分は、我々が成長しているときでさえ、一日一日と奪い去られている。過ぎ去ったときは、すべてなくなったのだ。いま我々が送っているこの日だって、我々はそれを死と分かちあっているのだ。我々が生存を止める最後の瞬間が死を完成させるのではなく、それはただ終わりの封印をするだけ。そのとき我々は死に到達したのであって、それまで長いあいだ我々は死に向かって歩み続けてきた。
 老人とは、すでに生涯のほとんどを死の側に引き渡している者ということになる。
 我々は今日、個人の領域ばかりでなく公共の領分においても狂気の愚行を行っている。我々は殺害を禁じている、とくに個人による人殺しは。ところが、戦争や民族殺戮というとき、個々人に禁止されていることが国家の命令によって行われる。ひそかに行われたことは死をもって償わされ、軍服の男たちがしたことは賞賛される。
 もっとも柔和な種族の人間たちが、相互の流血騒ぎには大喜びし、戦争をし、その継続を子孫に託して恬(てん)として恥じることがない。
 我々は連帯しよう。我々は共存するために生まれてきたのだ。
 最後のあたりは、あたかもイラク戦争をすすめてきたアメリカとイギリス、そしてそれを支えている日本に対するもののようです。古今東西、人間の本質はそれほど変わらないことを確信させてくれます。たまに古典にふれるのもいいものですね。

国税査察官

カテゴリー:未分類

著者:立石勝規、出版社:講談社
 政治家の裏ガネのからくりを国税局のノンキャリア査察官が追いかけるという小説です。金丸脱税事件をモデルにしています。
 政治家の裏ガネに税務当局がどれだけ迫っているのか、実は私は不信感を募らせています。ときどき、アリバイ的に摘発しているだけではないのか、ということです。巨額の裏ガネに利用されるのは、絵画のようです。絵画は、値段があってないようなものだからです。たった絵一枚が何十億円もするなんて、とても信じられません。絵画は、美術館で鑑賞すべきもので、個人が私蔵するべきものではないと思うのです。
 話が脱線しましたが、政治家と大企業の脱税の摘発にもっと税務当局は力を入れてほしいと思います。巨悪は眠らせない。いいセリフだと私は思います。

新西遊記

カテゴリー:未分類

著者:小島一夫、出版社:批評社
 この夏シルクロードに出かけたので、シルクロードの先の観光案内のつもりで読んだら、とんでもない間違いだった。シリアスなインド、パキスタンに関する本なのだ。
 インドの仏教徒は700万人。しかし、これは、ヒンズー教のカースト差別に抗議して改宗した人がほとんど。だから、ネオ・ブッディストと呼ばれている。ところが、ヒンズー教徒の側からすると、お釈迦さまもヒンズーの有力な神様であるビシュヌの9番目の化身にすぎないので、お釈迦さまもヒンズー教の一神なのだ。ということは、新仏教徒もヒンズーの一派ということだから、不可触賤民が新仏教徒になっても、ヒンズー教の枠のなかにあって最下位には変わりないということ。うーん、そういうものなのかー・・・。
 プーラン・デビというインドの女性国会議員の伝記を読んだ。彼女は、まさに不可触賤民の出身。盗賊団の首領にもなった。ところが、彼女は自宅を襲撃され、至近距離から銃弾を頭に撃ちこまれて即死する。犯人は報復しただけだと叫んだ・・・。
 イスラム教徒が、インドに2億人、パキスタンとバングラデシュに合計3億人、インドネシアに2億人、マレーシアとフィリピンに2千万人ずつ、アジアに10億人もいる。中東のイスラム人口より多い。えーっ、そうなの・・・?
 宗教戦争。宗教が異なるだけで殺しあうというのは、まったく理解できない・・・。

昆虫おもしろブック

カテゴリー:未分類

著者:矢島稔、出版社:知恵の森文庫
 「男おいどん」の松本零士(『銀河鉄道スリーナイン』の方が有名かな・・・)のマンガつきですから、昆虫のことが面白く手軽に理解できる文庫本です。
 キャベツを栽培したことがありました。春キャベツです。毎日毎朝、アオムシとのたたかいでした。割りバシでとってもとっても、アオムシは次から次に出てきます。無農薬でキャベツを栽培するのは不可能だというのが実感で分かりました。でも、そのアオムシですが、一匹のメスチョウが100個の卵をうんで、チョウになれるのは、なんと2匹だというのです。なかなか厳しいですね。
 バッタ、とりわけトノサマバッタは子どものころ、捕まえるとヤッター、と思いました。でも、この同じトノサマバッタが、ある日突然、変身してしまうというのです。そうです。アフリカ大陸を食べ尽くすバッタの大群と化すのです。
 昆虫の世界も奥が深いことがよく分かります。

卵のふわふわ

カテゴリー:未分類

著者:宇江佐真理、出版社:講談社
 見事な心理描写です。江戸情緒をたっぷり楽しむことができます。
 夫と心が通いあわず離婚しかないと思う若妻は、食い道楽で心の優しいしゅうとの温かい言葉に励まされながらも、ついに別居に踏み切ります。でも、好き嫌いの激しい若妻ですが、淡雪豆腐や卵のふわふわの美味しさに心が次第にとけていき・・・。
 しっとりとした情感に包まれて、読み手の心をもどかしさとともに、そうだよね、その気持ち分かるよね・・・。そんな気にさせます。頭のなかをさっぱりしたものに切り換えたい気分のときにおすすめの本です。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.