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母に歌う子守唄

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著者:落合恵子、出版社:朝日新聞社
 私の母は大正2年生まれですから、90歳をこえています。家のなかを歩いていて骨折して入院したのです。それが、やはり良くありませんでした。痴呆というわけではありませんが、娘や息子をきちんと認識しているのか、かなり怪しいところがあります。それでも、声をかけると返事してくれますし、変に固まった身体を無理に動かそうとするとにらまれてしまいます。そんな母をつきっきりで介護してくれる姉夫婦には頭が下がります。まったく感謝するばかりです。
 この本には、自分の母親の介護をする女性の苦労がにじみ出ています。年をとって介護を受ける身になってから、その体験をもとに介護について発言できたら世の中は劇的に変わることでしょう。しかし、それはありえません。ということは、介護する人が介護される人の気持ちをおもんぱかるしかないのです。
 信頼していたヘルパーさんに裏切られた話も出てきます。できるはずのない床ずれが母親にできてしまったのです。なぜか。ヘルパーさんは家族の見えないところで手を抜いていたわけです。うーん、困りますよね・・・。
 いつかみんな介護される側にまわるはずなのに、なぜか年々冷たくなっていく世の中です。これって、おかしいですよね?

松下政経塾とは何か

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著者:出井康博、出版社:新潮新書
 松下幸之助が自民党に変わる新党結成を夢見て70億円を投資してつくった「現代の松下村塾」は、一見すると華々しい成果をあげているように見える。なにしろ200人をこす卒塾生のなかから、29人の国会議員、26人の地方議会議員、5人の首長を輩出しているのだから・・・。しかし、彼らは本当に日本のために役に立つ政治家と言えるのだろうか・・・。私はかなり疑問を感じている。街頭でラグビーのユニフォームを着たり、自転車で走ったりのパフォーマンスで、どうやったらテレビの話題づくりがうまくいくのか、そればっかりなのではないか。果たして、国民の生活の実態をふまえて日本の政治がどうあるべきかを真剣に議論しているのか。「負け組」を自己責任だとして突き放した議論をしていないのか。
 松下幸之助は、欲望は力であり、人間の活力だと考えると高言していた。同時に、欲望は力だから、悪にも善にもなるとも言った。
 現実に、政界のなかでの塾出身者の評判はいいどころか、悪い。政治家として何をするかではなく、政治家になること自体が目的となっている。塾出身者は人をだますことはできても、人の心までつかむことはできない。政経塾は、権力を持たない者が成り上がるための装置にすぎない。
 塾生の研修資金は1年目で月に20万円、2年目からは月25万円。加えて年間100〜150万円の活動資金が支給される。寮費は月4500円でしかない。
 塾出身者が民主党に多いのは、自民党から出たくても、すでに選挙区が埋まっているから。小選挙区で自民党候補の空きが出ても、公認されるのは2世か関係者のみで、前職と縁のない新人が出馬できる可能性は限りなく低い。だから、官僚出身者も民主党へ流れている。自民党も民主党もベースに違いはないからだ。
 高校のときの同級生が、いま県知事をしています。大学生のときに同じクラスにいた人物が自民党の代議士になっています。どちらも政界を渡り歩いてきました。ブームに乗って、新自由クラブとか新党なんとかです。当選しなければタダの人とは言うものの、国民不在、政策なしにただ権力と金力を握りたいという自己の欲望のみを優先させて考えているようで、2人とも私はどうにも好きになれません。

金貸しの日本史

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著者:水上宏明、出版社:新潮新書
 金貸しと売春は人類最古の職業だとよく言われます。弁護士生活を30年もしている私も、そうだろうなと思います。日頃の法律相談でもっとも多いのが金銭貸借と男女間のトラブルだからです。
 大化の改新(645年。もっとも史実ではないという学者の意見もあります)ころの出挙(すいこ)が歴史に登場する金貸しのはじめのようです。平安京をはじめた桓武天皇は、平城京にある寺院が金貸しで利子をむさぼりとっていると怒ったそうです。はじめて知りました。世界史としては、紀元前3000年のメソポタミヤ文明で、ハンムラビ法典の麦貸し付けが初めてだそうです。年利33%。銀貨の貸し付けだったら上限が20%でした。
 借金の問題は、貸し手をなくせばいいという簡単な問題ではありません。
 クレサラ被害をなくすことに取り組んでいる運動団体は何年も前から「高利貸しのない社会をめざす」というスローガンを掲げていますが、私には違和感があります。明らかに不可能なことを運動の目標としてよいとはとても思えないからです。銀行や政府系金融機関は高利貸しではないとでも言うのでしょうか。また、クレジット・カードを、今の日本からなくせるというのでしょうか。
 もちろん、暴利を取り締まることは私も必要と考えています。しかし、貸し手の対策とあわせて、借り主側のカウンセリングの充実をはからないと問題の根本的な解決はありえないと私は確信しています。
 ところで、明治10年にできた利息制限法(今の利息制限法は昭和29年に制定。民法制定は明治23年)でも、最高利率が年2割だったのを知りました。

死亡推定時刻

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著者:朔 立木、出版社:光文社
 この著者の『お眠り、私の魂』を読んだときには驚きました。東京地裁の裁判官の行状が迫真的に、まさに赤裸々に描かれていたからです。裁判所の内部に通暁していないと、とてもここまで細部にわたっての描写は無理だと思いました。
 小説家を志したものの、刑事訴訟法に興味を覚えて法曹になったと自らを紹介しています。覆面作家なのですが、いわゆるヤメ判の弁護士ではないかと想像しました。というのも、この本では弁護士界の内情がことこまかに描かれているからです。それも山梨県弁護士会の私選弁護人の無能ぶりが強調されています。被告人の老母から着手金60万円をもらっているのに、殺人事件で、まともな弁護をしませんでした。つくられた自白であり、自分は無罪だと被告人が訴えているにもかかわらず、です。それを、東京の若手弁護士が控訴審での国選弁護人に選任されて見破りますが、悪戦苦闘します。その努力が報われ、ついに逆転無罪を勝ちとる、と言いたいところですが、現実は厳しい。上しか見ていない強権的な判事たちは、重大な矛盾点に目をつぶり無罪とすることなく、死刑を無期懲役にしただけでした。
 刑事裁判の現実をフツーの市民に知らせるテキストにもなる面白い推理小説だ。そう思いながら一気に読みとおしました。

グローバリゼーションと戦争

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著者:藤岡惇、出版社:大月書店
 地球が無数の宇宙衛星にとり囲まれている絵が紹介されています。砂糖(黄ザラ)をまぶしたドロダンゴみたいに、びっしりと宇宙衛星が地球に取りつき、さらに少し離れた(3.6万キロメートル)の静止軌道を回る衛星も数え切れないほどたくさんあります。そして、これらのうち3分の2は軍事・スパイ衛星だというのです。恐ろしさに背筋が凍ります。
 アメリカが核軍備のためにつかったお金は、1948年から1996年までで、少なくとも5兆5千億ドル。アメリカの軍事費総額の3分の1強が核軍拡のために使われました。核弾頭づくりの平均単価は6億円、今では小型の核爆弾は1億円です。
 ところが、核爆弾の付帯品の方が今では高くついています。運搬手段の生産と運用に3兆ドル。発射基地の建設に4千億ドル、誘導・通信管制システムに2兆ドル。つまり、核爆弾の10倍かかるのです。
 いま、アメリカではミサイル防衛を推進しないことには、核兵器産業が干上がってしまう状況にあります。ともかく軍需産業はもうかるのです。
 アメリカの軍部のなかで、「情報の傘」派と「核の傘」派で、暗闘があった。将軍の一部が反核運動に動いたことがあったが、それは核兵器がない方が「情報の傘」が安定し、アメリカの軍事力より強大になるという考えにもとづいていた。なぜなら、もし敵が核ミサイルをもち、宇宙空間で核爆発させたら、「情報の傘」がマヒしてしまう。宇宙空間で核爆発が起きると、イオン化された電磁波が大量に発生し、宇宙空間に減衰しないまま広がる。それはコンピューター通信に大きな被害をもたらしてしまう。
 アメリカは海底ケーブルに盗聴機をしかけており、GPS衛星の傘に入るようにさせてアメリカに敵対したら使わせない戦略をとっている。また、アメリカ以外の国同士で国際通信するとき、アメリカ経由にした方が料金が安くなるようにもしている。これは、それで「合法的」に盗聴できるという魂胆からのこと。
 うーん、アメリカって、どこまでも自分の国の利益のことしか考えないのですね。
 アメリカの情報機関には外国を対象とする人間だけで15万人もいて、エシュロンは毎時200万通の通信情報を傍受している。これは年間175億通。これを2度のスクリーニングをへて、毎時2000通にしぼり、精査している。
 読んでいると、ソラ恐ろしくなって、冷や汗がタラリタラリと流れ落ちてきます。

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