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日本のお金持ち研究

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橘木俊詔・森剛志/著、日本経済新聞社
 「全国規模のアンケート調査とデータから現代日本の富裕層とは誰かを浮き彫りにし、金持ちになった背景や社会制度の実態に迫る興味深い1冊」とネットで紹介されているとおり、社会学の学者による日本の金持研究です。
 目次をぱらぱらと見たところ、医師・弁護士・経営者などアンケートを踏まえて、お金持ちに関する分析がされていましたので、弁護士の欄と医者の欄を本屋で立ち読みで対比しました。
 「弁護士はなるまでのリスクやその労働時間に比べると、医師やほかの仕事に比べて経済的に報われていない。ロースクールができても、現状程度の収入であれば、優秀な人間はますます他業種に流れてしまう」「裁判官と弁護士は有名になればなるほど忙しくなるが、検事は逆にヒマになる」等等フムフムと自分と対比して納得できる部分もあれば、ええっ弁護士はこんなに他業種に比べ(金銭的に)報われていないの?と驚かされる部分もあり、買う気が失せました(TT)。高額所得弁護士の4タイプの中身は忘れましたが、自分はそののどれにも当てはまりませんでした(ガックシ)。
 眼科の業界で、白内障バブルなんて事象があったことも知りませんでした。弁護士業界の倒産バブル(東京で高額納税弁護士の相応の割合を倒産関係の弁護士が占める)のようなものなんでしょう。目次だけでも学者の論文にしては目を引くものです。読んだ上で買えたアナタの性根は強いですよ、マジ。

武装解除

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著者:伊勢崎賢治、出版社:講談社現代新書
 紛争屋という職業についている48歳の日本人男性の体験にもとづいた本です。すごい日本人だと感嘆します。いえ、日本人女性もいるそうです。すごいですね。このような人たちがいるおかげで、日本人も少しすこしは国際平和に貢献していると言えるのですね。なにも平和貢献は自衛隊の専売特許ではありません。
 東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンの現地に出かけ、ゲリラと政府軍のあいだに入って武装解除をすすめるのです。もちろん、実際にはたびたび難問にぶつかります。それを丸腰でさばいていくのですから、たいしたものです。勇気があります。
 人道援助は、もはや戦争利権のひとつになっている。人道援助の利権をめぐって、NGOと営利企業とが競うような時世になっているのです。
 世界の紛争現場に身を置いてきた著者は憲法改憲論に組みしないと強調しています。
 海外派兵はおろか軍隊の保持をも禁止している現行憲法下でひどい状況が生まれているから、たとえ平和利用に限定するものであっても海外派兵を憲法が認めてしまったら、違憲行為はさらに拍車がかかるのではないか。
 つまり、現在の政治状況、日本の外交能力、大本営化したジャーナリズムをはじめ日本全体としての「軍の平和利用能力」をみたとき、憲法とくに9条には愚かな政治判断へのブレーキの機能を期待するしかないのではないか。あえていう。現在の日本国憲法の前文と第9条は、一句一文たりとも変えてはならない。
 世界の内戦の現場で、身を挺して平和を守ってきた著者の言葉にはズッシリとした重みがあります。

政策秘書という仕事

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著者:石原伸晃、出版社:平凡社新書
 日本の大学を卒業して、外資系銀行のディーラーとして活躍したあと、離婚の試練を経て司法試験に挑戦して合格。ところが、司法修習が終わって、川田悦子議員(無所属)の政策秘書となる。川田議員が落選して今は弁護士。そんな著者の経歴はまさに異色。
 政策秘書試験は合格率が4.7%という難関。ところが、合格しても政策秘書になれる人はほとんどいない。大半は、別の審査認定を受ける方法によっている。
 著者は秘書が議員へ献金するのを禁止すべきと提言しているが、まったく当然のこと。なぜ議員へ献金なんかするのかと不思議に思うと、実は、議員の集金方法のひとつになっているから。
 類書がたくさん出ているなか、無所属議員の秘書から見た国会という点で目新しいところがある。

つくられる命

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著者:坂井律子、出版社:NHK出版
 AID(人工授精。夫以外の男性の精子をつかうもの)で生まれた子どもは、すでに全世界に100万人以上いる。日本でも1万人以上はいる。
 1人の医学生が1年間で最大10人に精子を提供する。液体窒素で精子は冷凍され、アメリカだったら1回分が2万5千円で売買される。
 体外受精も、現在では日本の赤ちゃんの100人に1人がこの技術で生まれるほど普及している。人工受精児が成長したとき、自分の父親を知りたいと思ったときどうなるのか・・・。ここには、きわめて難しい問題がふくまれています。遺伝学上の病気の対策をとるためにどうしても知る必要がある。そう言われたときにどう対処したらよいか・・・。長いあいだ父親だと思っていたのに、実は違っていた。それを知らされたとき、子どもは親に裏切られた思いを抱くに違いない。その心の痛手はいかにしたら回復できるのか・・・。重い問いかけがなされている。

暗殺・伊藤博文

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著者:上垣外憲一、出版社:ちくま新書
 伊藤博文暗殺事件と大逆事件がほぼ同時期だということを初めて自覚しました。
 韓国併合を推進していた桂太郎総理と小村寿太郎外相にとって、伊藤博文は最大の障害であった。といっても、伊藤が韓国で行ったことはひどいものだった。しかし、伊藤が死んだあと、中心になると思われる桂や寺内はもっと過酷なことを行うのではないかと心配する。中国の新聞は当時、このように的確に論評しました。まさに、そのとおりのことがおきました。伊藤博文はつねに対外軟弱論者として攻撃の対象になっていました。内治優先型の志向をもっていたからです。といっても、対外戦争も同時に想定していたのですから、平和主義者ではありませんでした。世論の動向には決して逆らわず、権力の中心に居つづけるのが伊藤博文の習い性だったのです。
 明治天皇は、日清戦争について、「朕(ちん)の戦争ではない」として、伊勢神宮への戦況報告を拒んだそうです。これも初めて知りました。聖裁を仰いだと称して、勝手に戦争を始めた軍部の者たちに怒っていたというのです。
 日本軍は日清戦争のときにも旅順要塞を攻撃し、占領しています。そして、そのとき市民を多数虐殺したことが欧米の新聞に報道され、非難をあびました。この虐殺には、乃木希典少将のひきいる歩兵第一旅団も加わっていたそうです。乃木将軍の影の部分です。
 伊藤博文は日清戦争が始まったときに、軍部の謀略にしてやられたことを知って、真っ赤になって怒り出しました。同じことが閔妃殺害時件のときにも起きたようです。
 いえ、伊藤博文が日韓併合に反対していたというのではありません。もっと抵抗の少ない巧妙な方法で朝鮮半島を支配すればいいと考えていただけです。ところが、日韓併合を即時断行しようという右翼や軍部の強硬派からみると、伊藤博文の対韓政策は穏健策に過ぎ、手ぬるいものであり、日韓併合を容認しないものと見えていたのです。朝鮮を日本の純然たる領土にしなければ気がすまないというのですから、まさに狂信的な連中です。
 その連中に伊藤博文は消されてしまったのではないか、というのが著者の考えです。福岡の玄洋社、とくに杉山茂丸が関わり、また、明石元二郎の指揮する韓国駐在の日本憲兵隊の手先である韓国憲兵隊補助員が実行犯だというものです。それは安重根がもっていたブローニング拳銃ではなく、フランス騎馬銃(カービン銃)によるものだということによります。
 手にとったらいかにも軽い新書ですが、歴史の闇が深いことを実感させられる、ずっしりと重い本ではありました。

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