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スウェーデンの中学校

カテゴリー:未分類

著者:宇野幹雄、出版社:新評論
 コペンハーゲンには一度だけ行ったことがあります。落ち着いたすごくいい町でした。
 団塊世代の日本人男性が日本で大学を卒業したあとスウェーデンの大学に入り、卒業後、公立中学校の教員になります。その20年以上の体験をふまえてスウェーデンの教育状況が紹介されていますが、日本との違いも分かって面白い本です。
 中学校の生徒会は国会と呼ばれ、イジメをなくす委員会、快適委員会、授業委員会の3つから成っている。ということは、スウェーデンでも生徒のイジメはあるということ。
 スウェーデンの学校には、何らかの理由で学校の生徒名簿に名前がのらない生徒がいる。
 スウェーデンの高校・大学に入学するときには入学試験はない。たとえば中学3年の春学期の成績による内申書のみで、学力試験はない。だから受験塾もない。
 中学校には、中間テストとか期末テストとか、まったくない。しかも、一週間に同一クラスで2科目以上の試験をしてはならないという不文律がある。
 スウェーデンの中学校には、3年間のうちに合計5週間の労働実習がカリキュラムのなかに組みこまれている。生徒に給料は出ないけれど、何かプレゼントすることはある。
 日本では、わずか1週間の実習をする県が2つ(兵庫県と富山県)あるけれど、まだまだ。スウェーデンに学ぶところは大きいと思いました。

古代エジプト人の世界

カテゴリー:未分類

著者:村治笙子、出版社:岩波新書
 古代エジプトの神殿や墓の内部に描かれた絵やヒエログリフ(文字)をカラー写真で紹介しながら、その意味が解説されています。
 ヒエログリフは音と意味と両方をあらわす文字ですから、いってみれば漢字のようなものです。ロゼッタ・ストーンを解読したシャンポリオン以来の研究がすすみ、いまでは何が描かれているのか、だれの墓なのかすぐ分かります。それにしても、今から4000年とか5000年も前のことが手にとるように分かるなんて、すごいことですよね。
 手にとってながめるだけで4000年前の人々と「対話」できるのです。定価1000円の新書ですが、ずしりとした重みを感じてしまいました。

緑の島に吹く風

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著者:吉村和敏、出版社:知恵の森文庫
 カナダ東岸にある「赤毛のアン」の舞台、プリンス・エドワード島の写真と話が満載の楽しい文庫本です。残念ながら、私はまだ行ったことがありません。ぜひ一度は行ってみたいと思っています。
 ところが、写真家と巡るプリンス・エドワード島の旅というツアーを企画したところ、大当たりのつもりが、なんと9人の申し込みしかなかったというのです。驚きました。応募したのは全員女性でした。それはやっぱりねと思うのですが、それにしても、わずか9人だったとは・・・。よほど宣伝が足りなかったのでしょう。
 広い平原にポツンと建っている白い木造の教会はすがすがしさを感じさせます。川にそって、おとぎの国のような建物が並んでいます。紫色のルピナスが一面に咲き広がるお花畑があるなんて・・・。ルピナスはわが庭にも咲いてくれますが、何万本と咲いたら、それはそれは壮観な眺めです。
 冬になると一面の雪景色です。クリスマスツリーを玄関のところに飾り、建物全体を電飾で埋めている光景が紹介されています。今では、日本でもイルミネーションをする家をあちこちで見かけるようになりましたが、さすがに、この島では雪景色との取りあわせが絶妙です。ほんわか心が温まる気がしてくる写真です。
 しかし、なんといっても圧巻というか、心をホンワカさせてくれるのは、赤ちゃんアザラシの写真です。生後10日目という赤ちゃんアザラシの可愛い顔といったらありません。丸くて黒い大きな瞳が、こちらを「何してるの?」と見つめます。たれ目で笑っている赤ちゃん、ひっくり返って気持ちよさそうに氷原の上に寝ころんでいる赤ちゃんがいます。チョコンチョコンと手でつついて、現地の人がゴロンと半回転させても、その赤ちゃんはまだ眠っていたというのです。もちろん触っちゃいけないのでしょうが、ついつい触りたくなってしまう、そんな吸引力のある写真です。

イノベーションの経営学

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著者:ジョー・ティッド、出版社:NTT出版
 本文450頁の部厚いビジネス書です、ずっしり重量感があります。
 イギリスのサセックス大学の学者集団によるマネジメントのテキストです。
 マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」(1848年)が引用されています。久しぶりに読みましたが、現代ビジネス指南テキストで再会するというのは意外でした。
 「生産の絶えまない変革・あらゆる社会状態の止むことのない変化、永遠の不安定・・・。以前に確立された国内の古い産業のすべては、すでに破壊されたか、もしくは日々破壊されつつある、それらは新しい産業によって駆逐され・・・新しい産業の製品は、われわれの家庭ばかりか、世界の隅々において消費されている。国内の生産物によって満たされていた昔の欲望の代わりに、新しい欲望が現われ、・・・諸国民の知的な創造力が共有の財産となる」
 おやおや、これが今から160年ほど前に書かれた文章だとはとても思えませんよね。この本でも、不確実性と国際化とイノベーションが決して新しい現象ではないという例証として引用されています。
 ところで、イノベーションとは何でしょうか?
 この本は、いくつかの定義を紹介しています。
 イノベーションとは、機会を新しいアイデアへと転換し、さらにそれらが広く実用に供せられるように育てていく過程である。
 イノベーションとは、飛躍的な技術進歩を商業化すること(画期的イノベーション)のみを意味するのではなく、技術的ノウハウを少しずつ変化させ、実用化すること(改善もしくは漸進的イノベーション)をも包含する言葉である。
 企業機密がもれるのは、人から人へ話が伝わったりして防ぎようがない。しかし、蓄積された暗黙知は永く持続するし、とくにそれが特定の企業や地域と一体化しているときには、模倣することは困難である。
 日本の自動車産業のもつ優れた特質も、やがてアメリカの自動車製造企業に模倣され、両者の生産性の差は解消されていった。
 「コアの硬直性」が凝り固まってしまうと、それを取り除くためには、トップ経営者の入れ替えが必要になることがある。なるほど、だから、創業者オーナーだって追放するしかないことがあるんですね。
 世界最大の携帯電話機メーカーであるフィンランドのノキア社は、11の国で4万4000人を雇用しているが、その半分はフィンランド人。成長率が高かったので、ノキア社のスタッフの半分は勤め始めて3年以下、平均年齢32歳。売上げの9%が研究開発に費やされ、3分の1のスタッフがデザインと研究開発に従事している。
 稼働中のロボットの労働者1万人あたりの数は、イギリス21台、アメリカ33台、ドイツ69台に対して、日本は338台(1995年)。
 イノベーションの本質は学習と変革であり、それは時として破壊的でリスクが高く、コストがかかる。イノベーションを成し遂げるためには、このような慣性を克服するためのエネルギーと、物事の秩序を変えるのだという強い意志が必要である。
 イノベーションに内在する不確実性と複雑性によって、多くの有望な発明が外の世界に出る前に死んでしまう。だから、もともとのアイデアを擁護し、組織のシステム内を通り抜けるための支援に、エネルギーと熱意を注ぎこむ覚悟をもった、カギとなる個人またはグループが不可欠である。ゲートキーパーが必要だということです。十分に理解できたわけではありませんが、なかなか勉強になりました。

半島を出よ

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著者:村上 龍、出版社:幻冬舎
 今から6年後の福岡。北朝鮮の特殊戦部隊兵士9人が開幕戦が進行中の福岡ドームを武力占拠します。そして、2時間後に484人の後続の特殊部隊が来て、ドーム周辺を制圧し、シーホークに本部を構えるのです。
 福岡市内でほとんど物語は進行しますので、地名が次々に登場しても土地勘が働き、具体的なイメージが湧きやすい小説です。近未来の日本でいかにも起こりそうな状況設定ですし、いろんなオタク族の描写が微に入り細をうがつものですので、ついつい引きずられてしまいます。話のテンポも速く、上下2巻本で920頁もありますが、一気に読みとばせます。
 6年後の日本と福岡の状況が、殺伐としたものとして描かれています。
 ホームレスが4倍に増え、自殺者は9万人(今は3万人)、失業率は9%(今の2倍)、若い世代の犯罪率が異様に増加し、治安悪化は著しい。公園にはホームレスがいて、NPO法人が管理している建前だが、実はギャング団が支配している状況にある。
 朝鮮労働党の3号庁舎の内部の様子もことこまかく描写されていますが、巻末の参考文献リストで、相当の裏付け取材がなされていることが分かります。私も、その大半は読みました(残念なことに映像の方は全然見ていません。なんとか私も見たいものです)が、脱北者から直接体験談を聞いているところに迫力の違いを感じます。
 特殊戦部隊兵士は身体のなかに正確な時計を持つことを要求される。訓練を続けるうちに、睡眠が5時間と言われたら、就寝してきっちり5時間後に目を覚ますようになる。
 家柄が良く頭が抜群に良くてスポーツも万能という少年少女は、北朝鮮ではまず特殊部隊の兵士になる。訓練は過酷をきわめ、3年から6年の訓練期間を終えると、鋼のような身体と全身が凶器であるような格闘能力をもつ最強の兵士ができあがる。
 特殊部隊への入隊を認められるのは、核心成分と呼ばれる特権層の子どもたちだけであり、衣食住に加えて医療や教育でも最優遇されているので、金正日への忠誠心は揺らぐことがない。
 特殊部隊に福岡が制圧されても、東京の政府は無為無策で、九州を切り離してテロ部隊の状況を阻止しようとするだけ、危機管理の甘さを露呈させます。ところで、アメリカ軍の動きがまったく出てこないところが不思議で、奇妙な感じです。自衛隊の動きもなく、ただ大阪から警察の特殊部隊(SAT)がやって来て逆に全滅させられてしまうのです。アメリカ軍はやっぱり日本国民を見捨てる存在でしかない、ということを言いたいのかしらん・・・。
 自民党右派がもともと反米であるにもかかわらず、ブッシュ政権に忠誠を示すために自衛隊をイラクに送ったなんていう記述は、読み手をがっかりさせてしまいます。自民党右派が反米だなんて、少なくとも私は聞いたこともありません。アメリカ追従の程度を競っているのが自民党右派だと思うのですが・・・。
 やがて、北朝鮮から12万人の反乱軍が船でやって来るという緊張した状況になり、その受け入れに福岡市当局は協力します。軍資金の確保のために、福岡市内の金持ちが次々に重犯罪人として逮捕連行され、酷い拷問の末に財産放棄書にサインさせられます。
 また、特殊部隊のなかからテレビに出ているうちにスターのようにもてはやされる将兵が出てきます。うーん、ありそうですよね。
 やがて、得体の知れないオタク族の若者たちが実にさまざまな武器、弾薬をシーホークに持ちこんで爆発させていくところは、まるでハリウッド製のアクション映画だし、現実離れしています。まあ、そうでもしないと、結末を迎えることができなかったということなんでしょう・・・。

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