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持続可能な都市

カテゴリー:未分類

著者:福川裕一、出版社:岩波書店
 東京に行くたびに超高層ビルが増えているなと思います。芝あたり、新橋あたり、続々と建ち並んでいます。モノレールの沿線もすごいものです。いえ、国会議事堂のすぐ近くにもすごいビルが建っていて驚きました。国政の中心たる国会議事堂を毎日、足元に見おろしながら仕事をしている人たちがいるのです。どんな気持ちなんでしょうか・・・。ただし、さすがに皇居を見おろす超高層ビルは少ないようです。
 この本では和歌山城の天守閣(67メートル)を見おろす20階建ビル(80メートル)がまず槍玉にあがっていますが、古都京都の駅ビルとタワーも問題だと私は思います。景観との調和が考えられたものとは、とても思えません。駅ビルのホテルに泊まりましたが、細長くて迷路のような通路でした。いかにもゴチャゴチャした超近代的ビルです。古都らしさを残すという発想がまったくないのに改めて呆れてしまいました。
 和歌山では、デベロッパーが中高層ビルでは経済的な採算がとれないと主張し、自治体が同調したということです。そんな超高層ビルに入りたがるのは、いったい誰なのか。
 仕上がりのよい超高層タワービルに入居したがっているのは、ひとフロアーだけ借りられたらよい小企業や3〜4フロアーを借りたい法律事務所である。彼らは大きなフロアーを要求しているのではなく、超高層ビルの提供する建物のイメージによって自社のイメージアップを狙っている。
 うーん、なるほど、もうかっている法律事務所は超高層ビルに入居したがるのですね。9.11で狙われたWTCにも法律事務所がたくさん入っていました。そうなんです。超高層ビルは、偉ぶったり、優位性の誇示だったり、単なる虚栄心をみたす存在なのです。
 東京の都区部だけで、20階以上の超高層のマンションやビルが5年間で200棟ほど建つといいます。大変なラッシュです。私はこの本を読んで驚きました。規制緩和のかけ声のなかで、超高層ビルを建てるについて環境影響評価(アセスメント)手続が必要ないとされたというのです。
 イギリスでは、反対に、公共住宅について超高層ビルを建てるのをやめてしまったそうです。子どもの健全な心身の成長に悪い影響があるからです。そのことは既に実証ずみのところなのです。同じ面積の土地に75戸を建てるより、低層型かそれとも中層型とオフィス・商店を混在させた町づくりの方がよほど住みやすいものになるという研究成果があります。私もそうだろうと思います。人が居住するには、せいぜい5階建てくらいがいいということです。車が入ってこれない、歩いて動きまわれるのが真のコミュニティです。その意味では、ショッピングセンターは、コミュニティではありません。営利目的の企業が人々の購買意欲をかきたてる。人工的に人々を自然のサイクルから引き離し、時間を忘れさせ、天候の変化にも気づかせない。人並みにお金を使うことのできない人は排除される。ショッピングモールが与えるのは自分の住む土地そして隣人への愛着ではなく、煩わしさのない匿名性でしかない。
 なるほど、と思いました。わが町にもデパートがなくなり、銀座通り商店街はシャッター通りとなって閑古鳥が鳴いています。ただひとつのショッピングモールのみ人が集まっていますが、町全体はさびれていく一方です。

スパイのためのハンドブック

カテゴリー:未分類

著者:ウォルフガング・ロッツ、出版社:ハヤカワ文庫
 イスラエルにモサドというアメリカのCIAをしのぐ秘密諜報部があるというのは有名です。そのエジプト駐在員として大活躍し、エジプト政府に逮捕され、第三次中東戦争のときに5000人のエジプト人捕虜と交換に釈放されたという大物スパイが自分の体験をふまえて、スパイになる方法を一般人に向けて書いた本です。面白い内容ですが、私には、とてもスパイはつとまりそうにもないと実感しました。
 嘘に熟達していなければ、スパイとして決して成功しない。
 著者は捕まるまで5年間もちこたえたが、一般に現地工作員の平均稼働年数は3年間。ゾルゲは日本にどれくらいいたんだったっけ・・・。
 二重スパイに転向する工作員の大部分は、短期間に大金をつくるつもりでそうするが、その富を楽しむほど長生きした者はほとんどいない。
 スパイになりたいと思う人は多いが、いくじなし、ひっこみ思案の人、あるいは決断力のない人がこの業界に入る余地はない。規則は破るしかない。この仕事につく者はおのれの才覚だけをたよりに生き、そして生き続けるしかない。
 著者は元ナチス軍にいたドイツ人ビジネスマンを装いました。そこで、ロンメル・アフリカ軍団にいたことにするため、ことこまかいことまで記憶するよう100回も書いて努力したそうです。
 人生の盛りを情報部で過ごし、たびたび不愉快な目にあい、毎日のように自由や生命を失うような危険に直面した。その代償としてもらうわずかな手当では、いざというときのための貯金さえできない。しかし、そのいざという日は、情報部を退職するときに必ずやってくる。
 捕まったときは、相手がどの程度知っているか探りだそうとせよ。黙りこくってはいけない。相手と議論し、論争し、弁明せよ。英雄的沈黙を守ろうとしてはいけない。話し続けよ。もっとも大切なことは、相手に話し続けさせること。黙秘権の行使ではダメなんですね・・・。
 相手に悪口雑言をぶつけて怒らせよ。腹をたてた人は、自分のいうことに注意しなくなる。相手が具体的な証拠をつきつけてくるときは、十分な予備知識がある。ともかく殴ってくるときは、彼らの知っていることは少ない。全部知っていることはまずない。
 大きな嘘に小さな真実を混ぜる。ほんの少し真実を提供して相手に確かめさせ、それを手のこんだ嘘で飾りたてて違った方向に導くのだ。
 なるほど、なるほどと思いました。スパイになるのは大変ですし、スパイを続けるのはいかにも非人間的な大変な苦労をともなうようです。

スウェーデンの中学校

カテゴリー:未分類

著者:宇野幹雄、出版社:新評論
 コペンハーゲンには一度だけ行ったことがあります。落ち着いたすごくいい町でした。
 団塊世代の日本人男性が日本で大学を卒業したあとスウェーデンの大学に入り、卒業後、公立中学校の教員になります。その20年以上の体験をふまえてスウェーデンの教育状況が紹介されていますが、日本との違いも分かって面白い本です。
 中学校の生徒会は国会と呼ばれ、イジメをなくす委員会、快適委員会、授業委員会の3つから成っている。ということは、スウェーデンでも生徒のイジメはあるということ。
 スウェーデンの学校には、何らかの理由で学校の生徒名簿に名前がのらない生徒がいる。
 スウェーデンの高校・大学に入学するときには入学試験はない。たとえば中学3年の春学期の成績による内申書のみで、学力試験はない。だから受験塾もない。
 中学校には、中間テストとか期末テストとか、まったくない。しかも、一週間に同一クラスで2科目以上の試験をしてはならないという不文律がある。
 スウェーデンの中学校には、3年間のうちに合計5週間の労働実習がカリキュラムのなかに組みこまれている。生徒に給料は出ないけれど、何かプレゼントすることはある。
 日本では、わずか1週間の実習をする県が2つ(兵庫県と富山県)あるけれど、まだまだ。スウェーデンに学ぶところは大きいと思いました。

古代エジプト人の世界

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著者:村治笙子、出版社:岩波新書
 古代エジプトの神殿や墓の内部に描かれた絵やヒエログリフ(文字)をカラー写真で紹介しながら、その意味が解説されています。
 ヒエログリフは音と意味と両方をあらわす文字ですから、いってみれば漢字のようなものです。ロゼッタ・ストーンを解読したシャンポリオン以来の研究がすすみ、いまでは何が描かれているのか、だれの墓なのかすぐ分かります。それにしても、今から4000年とか5000年も前のことが手にとるように分かるなんて、すごいことですよね。
 手にとってながめるだけで4000年前の人々と「対話」できるのです。定価1000円の新書ですが、ずしりとした重みを感じてしまいました。

緑の島に吹く風

カテゴリー:未分類

著者:吉村和敏、出版社:知恵の森文庫
 カナダ東岸にある「赤毛のアン」の舞台、プリンス・エドワード島の写真と話が満載の楽しい文庫本です。残念ながら、私はまだ行ったことがありません。ぜひ一度は行ってみたいと思っています。
 ところが、写真家と巡るプリンス・エドワード島の旅というツアーを企画したところ、大当たりのつもりが、なんと9人の申し込みしかなかったというのです。驚きました。応募したのは全員女性でした。それはやっぱりねと思うのですが、それにしても、わずか9人だったとは・・・。よほど宣伝が足りなかったのでしょう。
 広い平原にポツンと建っている白い木造の教会はすがすがしさを感じさせます。川にそって、おとぎの国のような建物が並んでいます。紫色のルピナスが一面に咲き広がるお花畑があるなんて・・・。ルピナスはわが庭にも咲いてくれますが、何万本と咲いたら、それはそれは壮観な眺めです。
 冬になると一面の雪景色です。クリスマスツリーを玄関のところに飾り、建物全体を電飾で埋めている光景が紹介されています。今では、日本でもイルミネーションをする家をあちこちで見かけるようになりましたが、さすがに、この島では雪景色との取りあわせが絶妙です。ほんわか心が温まる気がしてくる写真です。
 しかし、なんといっても圧巻というか、心をホンワカさせてくれるのは、赤ちゃんアザラシの写真です。生後10日目という赤ちゃんアザラシの可愛い顔といったらありません。丸くて黒い大きな瞳が、こちらを「何してるの?」と見つめます。たれ目で笑っている赤ちゃん、ひっくり返って気持ちよさそうに氷原の上に寝ころんでいる赤ちゃんがいます。チョコンチョコンと手でつついて、現地の人がゴロンと半回転させても、その赤ちゃんはまだ眠っていたというのです。もちろん触っちゃいけないのでしょうが、ついつい触りたくなってしまう、そんな吸引力のある写真です。

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