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セミパラチンスク

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著者:森住 卓、出版社:高文社
 セミパラチンスクとは、カザフスタン共和国の東部、草原地帯にあった旧ソ連の各実験場のこと。その広さは日本の四国全体に匹敵する。1949年から40年間にわたって、実に467回もの核実験がなされた。それによってひき起こされた放射能汚染は深刻であり、ガンや白血病が多発し、多数の奇形児がうまれた。
 旧ソ連には地図にのっていない秘密都市があった。秋山さんが行った宇宙開発の都市が秘密都市として有名だが、ここは核実験のための秘密都市だった。核戦争で生き残るための実験として、モスクワの地下鉄と同じものがつくられ、核爆発の破壊力や放射能の影響などが調べられた。
 核実験は地表面だけでなく、地下でも行われた。その343回のうち、120回、つまり3回に1回は失敗した。ということは放射性ガスが周辺に流れたということ。今でも、放射能は、東京の30倍以上を示す。セミパラチンスクのガン死亡率は他州に比べたら3〜4倍と高く、とくに食道癌は18倍以上。母親の染色体異常は他地域の3倍以上。
 人々は、そんな高濃度に放射能汚染された地域に今も住み、生活している。二重胎児、一つ目の胎児など、奇形児のすごさには息を呑む。顔じゅうが大きなコブで覆われてしまった少年など、可哀想で、とても正視できません。それでも家族に見守られて生活しているのが救いです。一見すると静かで平和な草原地帯なのですが、その実相はあまりにも衝撃的です。
 核兵器を根絶しようという叫びを、日本人の私たちはもっともっと声高く上げなければいけない。つくづくそう思いました。

ポンパドゥール侯爵夫人

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著者:ナンシー・ミットフォード、出版社:東京書籍
 フランス国王ルイ15世の愛妾としてフランスの宮廷に20年間君臨しつづけた世にも名高い侯爵夫人の伝記です。
 太陽王・ルイ14世は1715年に亡くなるまで実に72年間もフランスに君臨しました。しかし、この本によると、その長命は国のためにはならなかったと決めつけられています。ルイ15世はその孫になります。
 ポンパドゥール夫人が死んだとき、遺産目録を作成するのに、弁護士2人が1年以上かかったといいます。家具から彫像、宝石そして馬車からドレスまで、3000点以上あり、品数が1ダース以下というのはほとんどありませんでした。本も3500冊以上、詩集、小説、歴史と伝記ものが各700冊以上ありました。
 ポンパドゥール夫人はパリ警察報告書を読んで、それを国王に面白く話して聞かせていました。この報告書は、今日の大衆紙と同じで、ゴシップ満載でした。また、郵便物を検閲のため抜きとったものも読み、冗談の種としていました。
 ポンパドゥール夫人は善良で愛想がよかったのですが、リシュリュー?などの敵意をもつ人々が、当時も、その後もたくさんいました。貴族からすると、彼女はパリのブルジョワ階級を体現する人物だったのです。貴族が遊んでいるうちに貧乏になっていくのと反比例して、ブルジョワ階級はますます裕福になり、権力をもつようになっていったことから、貴族はブルジョワ階級を憎み、その階級に属するポンパドゥール夫人を憎んだのです。
 また、民衆にとっては別の意味からも不人気でした。フランスでは、国王の愛妾は伝統的に人気がありません。成り行き次第で、国王のかわりに非難の標的にされることがありました。国王の不人気な行動はすべて愛妾のせいにして、なおも民衆は自分たちの君主を愛しようとしたのです。
 これは日本でも同じです。君側の奸を斬る必要があるというのは、戦前の日本でも右翼の常套語でした。実は天皇自身の意思にもとづく行為であったのに、その側近が悪いのだ、天皇は悪い側近にのせられているだけ。だから、悪い側近を取り除けば、誤りのない賢王の政治が実現できる。そんな論理です。
 ポンパドゥール夫人は、国王のおかげで地位が上昇していき、侯爵夫人から公爵夫人となり、ついに王妃つき女官に任命されました。これはフランス国内最高の身分の女性だけに与えられる地位でした。
 ところで、国王ルイ15世は、ベルサイユ市内に娼婦を囲っていました。労働者階級出身の若い娘たちです。借りていた建物は「鹿の苑」と呼ばれていました。この少女たち自身は、通ってくる男性が国王だとは思っていなかったといいます。金持ちのポーランド人で、王妃の親類だと聞かされていたのです。それほどルイ15世は健康でもありました。いえいえ、なんと幼いころは、ひ弱で、育ちあがるかどうか危ぶまれていたのです・・・。ルイ15世が壮年期の30年間に射止めた雄鹿は、1年で210頭にものぼります。
 わが亡きあとに洪水はきたれ。この言葉はポンパドゥール夫人のものです。平民出身でありながら、美貌と才気で国王ルイ15世の寵愛を得て貴族になって20年間、42歳で亡くなるまで権力をほしいままにした女性の一生を少し知ることができました。

教養の再生のために

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著者:加藤周一、出版社:影書房
 日本型全会一致集団というのは、目的を与えられたとき、とくに困難な問題を与えられたとき、それを実現するためには非常に有効に働く。みんなが協力してチームワークが滑らかにいく。ところが、目的がまずかったり、方向転換しなくてはいけないときには、その能力がない。無惨な無能力性を暴露してしまう。カタストロフになる。
 だから、少数意見の尊重をきちんとしない限り、いまも多数党がわれわれが多数なんだから言うことを聞けといっている限り、戦前の過ちと同じことをくり返す危険がある。民主主義の最大の危機は多数党の横暴にあります。少数意見の尊重が民主主義なんです。いまの日本の国会では、日本国憲法改正論者が圧倒的多数を占めています。まさに、この多数党の横暴によって憲法改正が具体化しつつあることを、私は心から心配しています。
 アメリカのイラク攻撃が始まる前、全世界で史上空前の反戦運動が起きた。しかし、アメリカは戦争を始めた。それを全面的敗北と感じて思考停止してしまった人がいる。しかし、それは一種の頽廃なのだ。
 シカゴ大学では昨年の3月、大学内の学生、教官、労働者が集まった反戦ティーチインがありました。1300人の会場が満席になったそうです。そこで、労働組合の代表がこう叫んで、満場の拍手を浴びました。
 労働者と学生が団結すれば、絶対に負けない。
 市場経済派(よくシカゴ学派と言われます)の総本山のあるシカゴ大学で、このような反戦集会が開かれているのを知って、私はとても励まされました。
 いま大学は、企業のように活動することが望ましいという風潮ばかりです。教養学部は役に立たないということで削減される一方です。しかし、本当にそれでいいのでしょうか?全般的な知性の拡充と洗練をめざし、技術的もしくは専門的訓練のための必要に狭く限定されないもの、それが教養です。
 それって、何の役に立つというのか。就職に有利になること、お金になること、地位につながることをやれという発想は、奴隷的もしくは機械的な技術を身につけるだけではないか。そういうのは、この社会で生きていくために不可欠なことではあっても、人生の唯一の目的ではない。このことがいまの日本では、あまりに語られていないように思えます。
 さまざまな物事を自分自身の知識や判断力で判断することのできる人を目ざすには、一見すると何の役に立つのか分からないような古典を学んだりすることにも意味があるものなのです。大学を卒業して、いつのまにか33年もたった私も、今、つくづくそう思います。
 そして、そのためには創造力が大事だということが再三、この本のなかで強調されています。他人の苦しみに関心をもつことです。自分とかけ離れた境遇の人間の痛みが分からないではすまされないのです。
 国家は経済難を戦争で解消しようとする。民主主義とは、一度もったら持続するというものではなく、永久革命を必要とする制度であり、思想であり、生き方に他ならない。そのためには、想像力を解放し、教養の再生を図る必要がある。
 東京経済大学でなされた学生向けの講演録なのですが、まさしく、そのとおりだ、今の私にも本当に必要な内容だと何度もうなずき、すごく感銘を受けました。

海外企業進出の智恵と工夫

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著者:田中四郎、出版社:経済産業調査会
 日本輸出入銀行に30年間いて、世界銀行に出向したり、トロントやリオデジャネイロに駐在して、いまは日本国際協力機構にいる調査マンが海外へ進出した企業が成功するポイントを分かりやすくコンパクトにまとめた本です。
 私は、マルドメという言葉が気になりました。ドメスティックという単語を丸で囲んだものです。国内業務専門、外国語は大の苦手、海外のことはまったく分からない、海外ビジネスに無関係の人間だということを意味します。一つの会社内で、国際派と国内派の二つの派閥ができ、2つのグループの間で人間関係が円滑にいかない状況がよく生まれる。しかし、このような溝は埋める必要がある。国際派と呼ばれる人ほど国内業務の核心を理解していなければならないし、国内業務に従事している人こそ海外の動きに絶えず目を光らせ、国際感覚を磨いている必要がある。
 なるほど、なるほど、よく分かります。そうなんですよね・・・。
 日本企業が海外に進出すると、出先の企業は必然的に法的には日本企業ではなくなる。出先の企業は現地法人であって、日本法人ではない。当然のことながら現地の国の法律にしたがうことになる。日本の親会社は現地法人の株主にすぎない。日本から派遣されている現地法人の幹部は、自分は日本企業を経営しているのではなく、駐在国の企業を経営しているのだということを、片時も忘れてはいけない。
 この点も、実際には頭で理解していても、身体がついていかないところなのでしょうね。
 世界経済フォーラムは、日本企業は、世界第17位という悪いビジネス環境のなかで、世界第7位という良い企業活動をしているという評価を与えています。
 日本のビジネス環境は世界的にみて相当に低い。日本は世界で一番ビジネス経費が高い。日本を100とすると、アメリカは66.3、ドイツ66.0、イギリス64.0となる。日本は、安全で能率的な場所ではあるけれども、賃金水準が高いうえに、サービスコストも高い。そして経費も高い国のひとつである。
 うーん、そうかなー・・・。なんだか、しっくりこないところもありますが、ひとつの視点ではあると思いました。

世界遺産・高句麗壁画古墳の旅

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著者:全 浩天、出版社:角川ワンテーマ21
 奈良県明日香村の高松塚壁画古墳そしてキトラ古墳には、天井に精密な天文図が描かれ、また、壁面には鮮烈でカラフルな貴族男女像が描かれています。さらに東西南北の方角を守護する神獣の四神(東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武)もありました。
 そのキトラ古墳の天文図は高句麗の都、いまの平壌の夜空で観測されていたものだという指摘には驚かされます。なるほど、この本で紹介されている高句麗の装飾壁画をカラー写真で見ると、そのあまりの共通点に言葉を失います。
 有名な聖徳太子の画像には両脇に2人の王子が立っていますが、その髪型「みずら」は、高句麗古墳の壁画とまるで同じです。高句麗のお寺(定陵寺)が一塔三金堂であったとほとんど変わらない形式で、奈良・飛鳥寺も一塔三金堂でした。
 日本ではいまも相撲が盛んですが、高句麗壁画にも2人の力士が四つに組んでいる姿が描かれています。高句麗壁画には、疾駆しながら真紅の舌を吐き出す青龍が描かれていますが、首に蛇腹のような包帯を巻いていて、獰猛な足と3本の爪をもっているところは、高松塚の壁と共通しています。
 高松塚古墳・キトラ古墳の源流が高句麗にあるというのが、たくさんのカラー写真を見れば見るほど、うなずけます。やっぱり日本の古代文化は朝鮮半島の方から伝わってきたものなんですね・・・。

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