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カメの文化誌

カテゴリー:未分類

著者:ピーター・ヤング、出版社:柏書房
 亀が2億2500万年も生きながらえてきたということを初めて知りました。ツルは千年、亀は万年といいますが、亀一族の歴史が、そんなにも古かったとは、驚きです。
 亀がこんなに長く生き残ったのは、外骨格、身体をしまいこむ骨質の甲羅をもっていたから。これは長い時間をかけて進化した。はじめは肉を保護するため、ウロコが生えた。このウロコ板が外からの脅威に対応して大きくなり、最終的につなぎあわさって、今のような甲羅ができた。そして、背中と胸の皮膚や筋肉は機能が衰え、萎縮して、骨と甲羅が接触するようになった。ついには体内の骨の大半が、現在の骨の外被と融合し、首と尾の骨が自由に動く状態で残った。
 亀は冷血動物、性格には変温動物のため、体温を維持するのは周囲の環境を頼りとする。亀は温暖な環境に生息する。オーストラリア・ニュージーランドにはいない。
 ゾウガメの強みのひとつは、首と脚を伸ばして寄生虫を外にさらし、鳥についばんでもらうこと。
 亀は冬眠する。野生の状態で6〜10週間、最長で6ヶ月間、亀は飲まず食わずで生き、静止状態の四肢は、そのまま。冬眠に入る数週間前に摂食を停止し、老廃物を一掃して体内で腐敗をおこさないようにする。冬眠のあいだ、亀は水分を行って来も摂取しない。
 亀は基本的に声を出さない。例外的にオスは交尾のクライマックスで歓喜のあまり、口を開いて、金切り声をあげる。ええーっ、本当でしょうか・・・。
 ある女性が1.6キロも離れた場所に引っ越した。飼っていた亀を一緒に連れていくのを忘れていたところ、7年後に、新居に現れたという。信じられません・・・。
 イギリスだけでも、100年間に1000万頭をこえる亀が輸入された。しかし、輸入されて1年をこえて生き延びたのはわずか100万頭だとみられている。
 イスラム教では亀の肉を食べるのは禁じられている。しかし、亀の卵は食べてもよい。ふつうの亀の寿命は30〜50年。しかし、つい先日死んだガラパゴス亀のように175歳の誕生日を元気に迎えた亀がいることも間違いありません。
 福岡城のお濠に、大小とりどりの亀が群がって、よく日なたぼっこをしています。人間も、亀のおおらかさに学びたいものですよね。

となり町戦争

カテゴリー:未分類

著者:三崎亜記、出版社:集英社
 不思議な雰囲気の戦争物語です。いえ、日常生活に戦争が入ってくると、このようにして戦争は身近なものになっていくのでしょうか・・・。
 たとえば、本日の戦死者12人。町の掲示板にこう書かれるのです。いま警察署の正面掲示板に「本日の交通事故による死者○人」と書かれているのと同じです。
 市役所の職員の手になる小説だということです。道理で、職場の情景描写が実にリアルです。主人公は戦略特別偵察業務従事者に町長から任命されます。要するに、交戦状態にある隣り町の様子をスパイとして探ってこいということです。
 それでも、日常生活は、戦争が始まったとは、とても思えないほどの単調さと平穏のなかで続いています。まさに、現代日本の状態です。
 次第に1日の戦死者は増え、53人にもなります。やはり、見えないどこかで戦争がたたかわれているのです。ちょうど、イラクと日本の関係のようです。アメリカのイラク侵略戦争に日本は全面的に加担し、重装備の自衛隊までくり出しました。しかし、日本人の毎日の生活には、イラク戦争はまったく見えてきません。
 僕は、異国の、名も知らぬゲームの競技盤の上にいた。香西さんの弟が、佐々木さんが、主任が、おかっぱの男が、そして多くの死んでいった兵士たちが、盤上の駒として並べられていた。それぞれの駒は何者かによって定められた道筋どおりに動かされ、今は役目を終えて、石のように動きを失っていた。それは勝ち負けを目的としたものではなかった。そしてゲームですらなかった。
 これが、戦争なんだね。
 これが、戦争なんですよ。
 イラクの戦場に出かけた自衛隊員は5500人をこえました。幸い、今のところ一人として殺されることなく、またイラク人を殺したこともありません。日本の自衛隊員が一人死ぬと、2億5000万円の一時金と月70万円ほどの年金が出る特別支給がなされることが、小泉純一郎の一声で決まっていました。この発動がなかったのは、なによりです。でも、報道によると、日本に帰ってから自殺した自衛隊員が3人いるそうです。やはり、イラク派遣がどこかで心身の変調をもたらしたのでしょうね・・・。

江戸庶民の楽しみ

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著者:青木宏一郎、出版社:中央公論新社
 三代将軍家光が江戸城内の大広間で町人向けの「お能拝見」のイベントを催したというのです。そんなこと初めて知りました。寛永11年(1634年)のことです。この年、江戸の主な町の町人を江戸城内の庭に集めて銀5000貫を配るということもしています。もちろん、町人の人気取りのためです。町人といっても全員ではなく、江戸に20年以上居住した世帯主であることという条件があったそうです。もらった町人は町総出で大騒動のお祝いをしました。そりゃあ、そうでしょう・・・。
 「お能拝見」は、観世、金春、宝生、喜多の四座の能役者が総出演し、午前8時から夜9時まで昼夜入れ替え制で、酒や折詰も支給されました。そして、町人は無礼講状態だったというのです。将軍の前だからって、町人がコチコチだったというのではなかったんですね。なんだかイメージがまるで違いますよね。
 尾張藩の下屋敷で、御町屋なるものをつくって将軍たちが町人ごっこをしていたというのにも驚かされます。御町屋というのは、宿場町を再現したものです。現代のテーマパークですね。小田原宿と呼ばれていたそうですが、南北に36の町屋が140メートルの長さの町並みを連ね、本陣、旅籠屋、米屋、酒屋、菓子屋、本屋、植木屋、鍛冶屋などが忠実に再現されていた。ここには本物の町人は1人もいかなったが、将軍たちは庶民の日常を疑似体験できた。将軍家斉は、この御町屋が気に入り、再三たずねていた。ただし、外聞があるので、鷹狩りのついでに立ち寄るという形で、裏門から入り、裏門から出ていった、というのです。
 ベルサイユ宮殿にあるプチ・トリアノンを思い出しました。マリー・アントワネットが村を再現して遊んでいたというものです。洋の東西を問わず、支配層は庶民の気ままで自由な生活にあこがれて、同じような遊びを考えるんですね。
 天保の改革にとりくんだ水野忠邦が失脚したあと、寄席が自由化された。江戸に66軒あったのが、とたんに700軒になった。寄席芸人が800人もいた。すごいですね。当時の江戸の人口を考えたら、これって大変な人数ですよ。江戸時代は日本全体で人口3000万人ですからね。江戸に100万人いたとしても、今の東京の10分の1です。
 さらに、相撲取り(力士)がストライキを決行したこともありました。ええっー、まったく知りませんでした。嘉永4年(1851年)に、相撲の人気が高まり、力士の志願者が増えた。しかし、取組数がふえないので相撲を取れない者の不満が爆発し、それを支援する力士が回向院念仏堂に立てこもった。相撲の観客数は、一場所10日で5万人をこえていた。このように、江戸時代、庶民はおおらかに楽しく生活していたようです。
 日米条約を結ぶためにアメリカから日本にやってきて、伊豆の下田に3年近く滞在して日本の庶民の生活を隅々まで見ていたハリスは次のように述べています。
 人々は楽しく生活しており、食べたいだけ食べ、着物にも困っていない。家屋は清潔で、日当たりもよくて気持ちが良い。世界のどんなところよりも、労働者の社会で下田におけるよりも良い生活を送っているところはないだろう・・・。
 そうなんです。今の日本の方が異常なんです。みんな、仕事のし過ぎですよ。あなたは、どうですか・・・。

革命のベネズエラ紀行

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著者:新藤通弘、出版社:新日本出版社
 いま南アメリカが大きく変わりつつあります。反米政権が次々と誕生しているのです。
 チリに出来た社会主義を目ざすアジェンデ政権がアメリカの謀略によってピノチェト司令官によって倒されたのは1973年のことです。ところが、今や、ベネズエラだけではなく、ブラジル、ボリビア、ウルグァイ、アルゼンチン、ガイアナがアメリカの帝国主義的支配にノーをつきつけています。メキシコの大統領選挙でも左翼が健闘中です。
 この本は、ベネズエラですすめられている政治変革の実情と問題点を具体的に明らかにしながら、大変読みやすい現地紀行文となっています。
 1960年代に西田佐知子が歌った「コーヒー・ルンバ」がベネズエラの曲だとは知りませんでした。ベネズエラの人口は2510万人。混血(メスティソ)66%、白人22%、黒人10%、先住民2%。国民の2〜3割を占める富裕層には白人が多く、7〜8割を占める貧困層は混血、黒人、先住民。
 ベネズエラには美人が多いそうです。この24年間の世界の三大美人コンテストで、ミスユニバースを4回、ミス・ワールドを5回、ミス・インターナショナルを3回、合計12回も一位を受賞した。小学校から高校まで美人コンテストがあるという。そして、キューバと同じく、野球が国技となっている。日本のヤクルトのペタジーニ、西武のカブレラがベネズエラ出身。
 ベネズエラの憲法は五権分立となっている。ええーっ、何のこと。三権分立じゃないの。いったい、あと二つは何なの・・・。立法、司法、行政のほかに、ここでは市民権力と選挙権力というのがあるのです。市民権力というのは分かる気がしますが、選挙権力って聞いたこともありません。市民権力には、オンブズマン制度もふくまれます。選挙権力の独立性は、ラテンアメリカで不正選挙が日常化していることによります。
 ベネズエラとキューバは、契約を結んでいます。キューバは3万人の医師をベネズエラに派遣しています。その見返りにベネズエラは年間530万トンの石油をキューバへ供給するのです。これはキューバの年間石油消費の55%にあたります。
 ベネズエラは文盲を一掃し、今また奇蹟計画をすすめています。13万人の視覚障害者(主として白内障患者)をキューバに送って視力を回復させるのです。
 チャベス大統領は、与党の議長と書記長を兼任しています。ただし、その与党は大会も定期的に開かれず、党規約も発表されず、まだ政党の体をなしていません。
 ベネズエラ共産党は1960年代に4万人の党員がいたものの、武装闘争を放棄したキューバ共産党と激しい論争し、ソ連からの資金援助も受けて自主路線を確立できず、1990年はじめに壊滅した。いま再建されて国政選挙で15万票をとるまでになった。
 ベネズエラでは、大土地所有が発達している。その農地を配分しようとして、大土地所有者から強力な抵抗にあっている。この2年間で180人もの農民リーダーが殺されている。
 チャベス大統領は社会主義を唱えている。しかし、国有化すればうまくいくというのは間違いだと著者は主張しています。
 キューバ国営企業の非効率、労働規律の低さ、生産性の低さを長いあいだ見てきた者として、国有化して、はたして現実経済が効率的に機能するか、疑問だとしています。
 現在のチャベス政権の弱点は何か?
 それは、汚職と官僚主義である。在任中に私腹を肥やさないものは馬鹿だといわれる風潮がある。政府高官になると、家族、親類縁者が寄ってたかって、特権にあずかりたいと集まってくる。ラテンアメリカの汚職はどこもひどい。コスタリカでは、90年代の大統領が3人も汚職で逮捕された。
 こんな大変な状況のもとで、チャベス大統領は1998年の大統領選以来、10連勝を記録しています。その元気な息吹が伝わってくる本でした。

裏社会の日本史

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著者:フィリップ・ポンス、出版社:筑摩書房
 「ル・モンド」の日本特派員をつとめるフランス知識人が日本のやくざと貧苦の人々について書いた本です。ここまで日本の文献を読みこんでいるのかと感嘆してしまいました。
 著者は、住民の大半が定住農民であった日本において、旅人は恐怖と猜疑の目で見られた、と書いていますが、私は最近そうではなかったのではないかと考えています。日本人は、昔から自由気ままに旅行するのが大好きな、好奇心旺盛の民族だったという説が最近では有力です。それを裏づける旅行記が数多く存在するからです。日本人の旅行ブームは昔からあったと考えるべきです。そんなに一朝一夕に民族性が変わるはずはありません。
 そういう異論もありますが、著者の指摘は大半あたっていると私は思いました。
 1872年。東京には5万6000人、大阪には1万6000人の車夫がいた。人力車の車夫である。もと駕籠かきであった人々が車夫に転職した。彼らは貧民窟の住人でもあった。
 東京都はホームレスの人数を公表していない。民間の統計では、1998年に東京23区に1万2000人のホームレスがいた。山谷の住民8000人のうち、2500人が高齢のホームレス。
 賭け事の世界には掟がある。組の親分とその手下との間には、もうけの分配について、厳格な原理が存在している。頭に60%、手下に40%である。
 旅順や大連など、遼東半島南部にあった日本租界は、1906年から日本政府の管轄下にあり、日本人やくざの界隈となっていた。雇われていた中国人やくざは1930年代初めに23万人もいた。
 現代日本では、権力の舞台裏で暗躍する黒幕の仲介により、やくざと極右と保守陣営とが結びついている。政治とやくざの癒着はすっかり定着している。九州新幹線を建設するについても、自民党の有力政治家と暴力団が手をつないでゼネコンから大金をせしめ、三者もちつもたれつの関係にあると見られています。ところが、マスコミはまったくこの実態を報道しません。
 敗戦直後の東京には370のテキヤの組があり、7000人の親分と2万人のメンバーがいた。1963年、暴力団は5300のグループ、18万4000人いた。1996年、組は3120、メンバーは8万人。そのうち66%が三大暴力団(山口組、住吉会、稲川会)に所属していた。
 山口組は上納金システムをとっている。関西の16組が月3億5000万円、中部地方が2億4000万円、関東の組が1000万円、北海道の組は3億5600万円。この上納金システムは、幹部らが非合法な事件に直接かかずらわなくてすむようにし、逮捕の危険を阻止するためのもの。また、この上納金により、系列下の組への組織の保護が保証される。暴力団の総売上は1兆3000億円で、その3分の1の4530億円は、覚せい剤の取引によるもの。
 警視庁の統計によると、やくざの60%が中流家庭に、40%が恵まれない層に属する。80%は義務教育をこえる教育をうけていない。多くは失踪の癖があり、また不和を抱えた家庭の出身である。日本のやくざのかなりは被差別マイノリティ出身である。
 野村證券は稲川会に巨額の融資をした。
 佐川急便は、京都の暴力団会津小鉄会と結び、政治家にお金をバラまいた。
 日本の社会の隅々にまで暴力団がはびこっていることを弁護士として実感する毎日です。彼らにちょっとでもたてつくと、チンピラヤクザが鉄砲玉になって飛びかかってくるというのは決して大ゲサな話ではありません。そんな現実をマスコミが紹介しないものだから、少なくない日本人がノホホンとして、ホラー映画で恐怖心を味わっているのです。そんな映画を見なくったって、恐怖はあなたのすぐ隣りにあるのですよ。私は、そう教えてやりたいのですが・・・。

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